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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1140785
審判番号 不服2002-25189  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-05-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-27 
確定日 2006-08-03 
事件の表示 平成 5年特許願第287770号「弾球遊技機の前枠」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 5月 9日出願公開、特開平 7-116318〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】本願の手続の経緯
本願は平成5年10月21日の出願であって、平成14年8月2日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成14年9月10日付けで手続補正され、平成14年11月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成14年12月27日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成15年1月22日付けで手続き補正されたものである。

【2】補正後の本願発明
平成15年1月22日付けの手続補正により、補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、この発明を「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】外枠(1) と、該外枠(1)の前側に開閉自在に枢着され且つ略中央部に窓孔(4) が設けられた前枠(2) と、前記窓孔(4) に対応して該前枠(2) の取り付け部(8) に着脱自在に装着された遊技盤(7) とを備え、前記前枠(2)は板状の上枠部(38)と下枠部(39)と左右一対の側枠部(40)(41)とを備え前記下枠部(39)の上端側に、前記一対の側枠部(40)(41)を連結する裏枠部(42)を、前記上枠部(38)及び前記一対の側枠部(40)(41)の裏側に前記取り付け部(8) を夫々備えた弾球遊技機において、植物小片(49)、植物繊維(65)又は植物粉(68)と結合剤(6) とを混合して、前記上枠部(38)、前記下枠部(39)、前記側枠部(40)(41)、前記裏枠部(42)及び前記取り付け部(8) を一体に金型成形し、前記上枠部(38)、前記下枠部(39)及び前記側枠部(40)(41)の前面に化粧シート(48)を貼着したことを特徴とする弾球遊技機の前枠。」

【3】引用例に記載の発明
1.原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された特開昭60-5182号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。
(ア)「この発明は、パチンコ機の前枠の改良に関する。・・ パチンコ機の前枠は、従来一般的にはベニヤ合板やラワン材等の木材により製造されてきた。木材が、加工容易なこと、化粧性に優れていること、吸音効果が比較的良いこと等の理由による。ところが、近年木材資源の枯渇によって必要な木材材料の入手が困難になりつつあり、材料費も急騰している。」(第1頁右下欄第17行〜第2頁左上欄第7行)
(イ)「第1図は、この発明の対象であるパチンコ機1の外観斜視図である。図において、パチンコ機1は、外枠2と前枠3とを含む。外枠2は蝶番35を介して前枠3を保持する。それゆえ前枠3は、正面から見てその左上下に取付けられた蝶番35を中心に、外枠2に対して回動(開閉)可能である。なお、第1図において、31は金枠、32はガラス扉枠、33は玉受皿、34は操作ハンドル、36は前面板、37は賞品球払出口、38は打球供給皿であり、すべて前枠3に取付けられている。」(第2頁右上欄第18行〜同頁左上欄第8行)
(ウ)「第2図は、この発明の一実施例の斜視図である。図において、パチンコ機1の前枠3は、ほぼ中央部に窓孔301が形成された額縁状の形状をしている。窓孔301の周縁部で、前枠3の前面側には、溝部302が形成されている。この溝部302に、前述したガラス扉枠32が嵌め込まれる。さらに、前枠3の下方部には、操作ハンドル取付用の貫通孔304および玉受皿連絡口303が形成されている。さらに、後述する飾板や玉受皿等を取付けるため小孔305が必要に応じて形成されている。」(第2頁左上欄第9〜19行)
(エ)「この実施例の第1の特徴は、第1図に示すような必要な溝部や貫通孔等が形成されたパチンコ機の前枠3を、合成樹脂で一体成型したことである。このような一体成型は、所望の形状に成型された金型等を利用することにより一度に作り出すことができる。よつて、従来木材により製造されていた前枠のように、前枠の基になる枠体を形成した後、必要な貫通孔をあける等の作業の必要がなくなり、製造工程の簡易化が図れる。しかも、金型を利用することにより、同一形状のものを多数量産でき、しかもその量産には、熟練した技術等もほとんど必要としないという利点もある。」(第2頁右上欄第20行〜同頁左下欄第11行)
(オ)「この第4図および第5図に示す前枠3′が前述の前枠3(第2図,第3図)と異なる点は、遊技盤取付部材320をも含めて一体的に成型されていることである。すなわち、前枠3′の裏面側には、窓孔301を取囲むように(第5図参照)設けられた遊技盤取付部材320が一体的に成型されている。」(第3頁右上欄第3〜9行)
(カ)「さらに、第7図は、上記第2番目の実施例を裏面から見た斜視図であり、機構板70が開閉する状態が示されている。第7図において、40は遊技盤、41は締付金具である。」(第3頁左下欄第19行〜同頁右下欄第2行)
(キ)「第8図は、この発明のさらに他の実施例を示す斜視図である。第8図に示す実施例の特徴は、前枠3′の前面全部に、熱硬化性の樹脂板、たとえばメラミンで形成された化粧板306を接合したことである。このように、前枠3′の表面に熱硬化性の樹脂化粧板306を接合することにより、たとえば遊技者が遊技中に誤つてタバコの火等を前枠3′の表面に接触させても、その表面が熱変形せず、その美的外観が損われることはない。前枠3′の前面と熱硬化性化粧板306との接合は、接着剤や止めねじ等によって簡単に行なうことができる。なお、接着剤で接合する場合には、前枠3の表面を加熱した後接着剤を塗布し、化粧板306を接合することが好ましい。加熱により前枠3と化粧板306との接着力の強化が図れるからである。」(第3頁右下欄第13行〜第4頁左上欄第9行)

以上の(ア)乃至(キ)の記載事項及び図面から、「引用例」には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

<引用発明>
「パチンコ機1は、外枠2と前枠3′とを含んでおり、前枠3′は、蝶番35を中心に外枠2に対して回動(開閉)可能であり、ほぼ中央部に窓孔301が形成された額縁状の形状をしており、裏面側には、窓孔301を取囲むように設けられた遊技盤取付部材320とを備えたパチンコ機1において、前枠3′は、合成樹脂で所望の形状に成型された金型等を利用することにより、遊技盤取付部材320をも含めて一体的に成型され、前枠3′の前面全部に、熱硬化性の樹脂板で形成された化粧板306を接合したパチンコ機1の前枠3′。」

【4】対比・判断
1.本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「外枠2」が本願発明の「外枠」に相当し、以下同様に、「前枠3′」が「外枠」に、「中央部に窓孔301が形成された」が「中央部に窓孔が設けられた」に、「パチンコ機1」が「弾球遊技機」に夫々相当しており、引用発明の「前枠3′」は、上記記載事項(イ)「・・外枠2は蝶番35を介して前枠3を保持する。それゆえ前枠3は、正面から見てその左上下に取付けられた蝶番35を中心に、外枠2に対して回動(開閉)可能である。・・」なる記載及び第1図からみて、本願発明と同様に「外枠の前側に開閉自在に枢着され」ることは明らかである。
また、引用発明の「前枠3′」は、上記記載事項(ウ)「・・前枠3は、ほぼ中央部に窓孔301が形成された額縁状の形状をしている。」なる記載及び第2図、第3図、第5図からみて、本願発明と同様に「板状の上枠部と下枠部と左右一対の側枠部」を備えた構成のものといえる。
そして、引用発明の「遊技盤取付部材320」は、上記記載事項(オ)「・・前枠3′の裏面側には、窓孔301を取囲むように(第5図参照)設けられた遊技盤取付部材320が一体的に成型されている。」なる記載及び第5図、第7図からみて、本願発明と同様に「下枠部の上端側に、一対の側枠部を連結する裏枠部」、及び「上枠部及び一対の側枠部の裏側に取り付け部」を構成しており、上記のように、引用発明の「前枠3′」の構成部材である上枠部、下枠部、側枠部、裏枠部及び取り付け部全てが一体的に金型成形されていることから、本願発明と「上枠部、下枠部、側枠部、裏枠部及び取り付け部を一体に金型成形」した点で共通する構成を備えたものといえる。 さらに、引用発明の「前枠3′」は、上記記載事項(カ)「・・第7図において、40は遊技盤、41は締付金具である。」なる記載及び第7図からみて、本願発明と同様に「窓孔に対応して前枠の取り付け部に着脱自在に装着された遊技盤」を備えることも明らかである。

してみると、引用発明と本願発明とは

「外枠と、該外枠の前側に開閉自在に枢着され且つ略中央部に窓孔が設けられた前枠と、前記窓孔に対応して該前枠の取り付け部に着脱自在に装着された遊技盤とを備え、前記前枠は板状の上枠部と下枠部と左右一対の側枠部とを備え、前記下枠部の上端側に、前記一対の側枠部を連結する裏枠部を、前記上枠部及び前記一対の側枠部の裏側に前記取り付け部を夫々備えた弾球遊技機において、前記上枠部、前記下枠部、前記側枠部、前記裏枠部及び前記取り付け部を一体に金型成形した弾球遊技機の前枠。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
一体に行われる前枠の金型成形を、本願発明は、植物小片、植物繊維又は植物粉と結合剤とを混合して行うのに対し、引用発明は、合成樹脂で行っている点。
<相違点2>
上枠部、下枠部及び側枠部の前面に貼り付ける化粧部材が、本願発明は、化粧シートであるのに対し、引用発明は、化粧板である点。

2.相違点についての検討
<相違点1について>
前枠を植物小片、植物繊維又は植物粉と結合剤とを混合して成形する点に関して、パチンコ機分野において、パチンコ機の木枠や基板に使用する材料に「パーティクルボード」を用いた点が、例えば、特開平4-303487号公報、段落【0009】、特公昭55-37264号公報に記載されており、これら「パーティクルボード」は、本願発明と同様に主に木材の小片(削片または砕片)を結合剤を熱圧して作った板状物で成形される(株式会社彰国社、建築大辞典 第2版<普及版>1993年6月10日発行を参照)ものであるから、パチンコ機を構成する板状部材を、木材の小片(削片または砕片)、即ち植物小片と結合剤で成形することは、パチンコ機分野において従来周知の技術と云える。
また、植物の小片、又は植物粉と結合剤とを混合して金型成形することにより、部材強度の向上を図ることができ(例えば、特開平3-55202号公報、第1頁左下欄第18行〜同頁右下欄第5行参照)、且つ所定形状に成形でき(例えば、特開平3-76761号公報、第2頁左下欄第11行〜同頁右下欄第6行、第5頁左上欄第14〜16行参照)ることは周知の事項である。
そうすると、引用発明の前枠を金型成形する材料を合成樹脂で行うことに代えて、木材の小片(削片または砕片)と結合剤を用いるパーティクルボードの上記周知技術を採用し、本願発明に係る相違点1を構成することは、当業者であれば適宜選択し得る設計事項といえる。

<相違点2について>
パチンコ機の前枠を構成する上枠部、下枠部及び側枠部の前面に化粧シートを貼着する点に関して、パチンコ機分野において、パチンコ機の部材である表枠やパチンコ盤に化粧シートを貼着することは、従来周知の技術(例えば、実公平3-6378号公報、第1頁第2欄第2〜3行、特開昭58-206780号公報、特開昭60-161148号公報参照)であるから、引用発明の前枠の前面全部に貼着された化粧板に代えて上記周知技術の化粧シートを採用し、本願発明に係る相違点2を構成することは、当業者であれば適宜選択し得る設計事項にすぎないことである。

3.作用効果・判断
そして、本願発明における作用効果は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が当然予測できるものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

【5】むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-01 
結審通知日 2006-06-06 
審決日 2006-06-20 
出願番号 特願平5-287770
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 一宮 誠  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 辻野 安人
塩崎 進
発明の名称 弾球遊技機の前枠  
代理人 谷藤 孝司  

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