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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B02B
管理番号 1140824
審判番号 不服2003-24938  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-02-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-25 
確定日 2006-08-03 
事件の表示 平成 8年特許願第209384号「脱ぷ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 2月10日出願公開、特開平10- 33997〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年7月22日の出願であって、平成15年10月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであり、請求項1〜3に係る発明のうち、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年2月17日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「軸位置が移動しない固定側ゴムロールと固定側ゴムロールに向けて軸位置が変位するように付勢された可動側ゴムロールを備え、これら一対のゴムロール間に穀粒を供給して籾摺を行う脱ぷ装置であって、上方の供給タンクから、一対のゴムロール間に穀粒を供給する案内シュートを備え、案内シュートは、案内シュートから投出される穀粒の投出線が、一対のゴムロールの回転中心軸を結ぶ直線と略垂直となるように、且つ、脱ぷ装置の処理能力を満足してロール周速度を超えない範囲の速度に穀粒を加速する傾斜としてあることを特徴とした脱ぷ装置。」

2.刊行物及びその記載内容
これに対して、原審の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物(特開昭56-28601号公報)には、次のことが記載されている。
「本発明は・・・精米機に関する。」(2頁左下欄19行〜右下欄1行)、
「第1図および第2図に示される本発明の・・・精米機は、ふるい6を内蔵すること、および・・・振動ふるい22と、籾摺装置33と、・・・穀粒精白/つや出し装置68と関連させることにより可能となつた。」(4頁右下欄9〜16行)、
「第9図および第10図に示す如く、・・・穀粒の籾摺装置の構成の概略は、供給された穀粒が容量を超過した時装置から穀粒が溢流することを許容するため、装置内の閉塞防止作用を提供する開口部34と,受取り室35を形成する傾斜板37とからなつており、前記傾斜板37は,その下端部において、板37と同じ勾配を有する摺動板39が継続し、これは運動してこの板と軸48の周囲に回転する供給ロ-ラ36との間の間隙を開閉するよう使用できる。更に別の反対方向に傾斜した板30が、機構40により運動させられる板39の下縁部と、ロ-ラ36の表面との間のみの穀粒の通過を許容する受取り室35を完成する。」(6頁左下欄12行〜右下欄5行)、
「板39とローラ36の下方には傾斜板43が設けられ、この板43は下記の如きいくつかの機能を有する。即ち、この傾斜板は、前述の如く板39とローラ36の協働作用により1粒の穀粒分の厚さの層に落下穀粒を収受し、この穀粒を籾摺ローラ44、45の間に案内し、穀粒を寝かせて前記板43上を前送し、穀粒が一層で籾摺ロ-ラ間を通過するように穀粒相互の間隙を与える。落下する層内の穀粒のこの間隙を与える作用は重力により生じる加速効果によつて得られ、この重力は穀粒が板43の表面上を前進する間その速度を増加させる。
板43の下縁部には1対の籾摺ローラ44,45がそれぞれ軸47,132上に取付けられて配置され、軸47と132の中心線として引かれた線が板43の表面と90°より若干大きな角度を形成するように相互に傾斜するよう配置される。この配置のため、穀粒がローラ間を通過する前に横に寝る、即ち平らになり、このため穀粒がローラの鋭い刃部の間に捕えられることを防止し、ローラ44,45間での穀粒の破砕を大巾に回避する。
・・・ローラ44,45は穀粒の破砕を殆んど生じることなく穀粒を研摩するため弾性を有する硬質材料のライニングを有し、ローラ44,45の回転は、比較的早い速度のローラが穀粒を押し比較的速い速度のローラが穀粒を保持することにより穀粒の籾殻に断続する摩擦作用を生じるように、異なる速度で行われる。」(6頁右下欄15行〜7頁右上欄5行)、
「回転の早いローラは他方より短かい期間で疲労するため、第9図および第10図に示される実施態様による籾摺装置は、一方のローラが他方のローラに対し半径方向に近くに配され、このため傾斜板43が両ローラの係合点と一致しない位置に止まるように配置される。
従つて、自動調整機構がこの籾摺装置に設けられるが、その構成は、上部のローラ45は2個の関節付きのレバー49,50(第10図)により構成される構造部に支えられた可動軸132に支持されるが、下部ローラ44は固定軸47上に支えられる如くである。レバー49はローラ44の固定軸47上に支持され、2個のレバー49と50間の間節運動はこれも又ローラ36の軸48を支持する軸132を装置の内側壁面に固定することによつて得られる。レバー50は、第10図に示される如くレバー50を上下に運動させるため、ねじを設けたブッシュ51を用い、車輪133によつて装置の外側から操作されるねじ送り部46と螺合している。このように、両ローラ間隙が疲労のため大きくなると、ローラ45をローラ44に対して接近させることができる。
ねじ46を用いてローラの調整を行うことにより、ローラ44、45の係合点と常に一致させるため傾斜板43に対して必要な調整作用も行うもので、この目的のため、レバー50はその下部に小さな突起52を有し、こゝで2個の小さなレバー54,55により構成される機構を枢軸53が枢着し、小さなレバー54はレバー50と係合するが、他の小レバー55はレバー54と関節付けされ、その他端部では枢軸135がブラケット134と係合し、このブラケットには傾斜板43が固定される。このように、前記傾斜板43と、ローラ44,45の接触点とは、穀粒の摩耗作用の故に前記ローラの直径を摩滅させるに伴つて、傾斜板43が常に前記ローラの接触点と一致するように調整可能である。」(7頁右上欄6行〜右下欄2行)。

上記記載及び図面の記載及び技術常識からみて、刊行物には、
「軸位置が移動しない籾摺りローラ44と籾摺りローラ44に向けて軸位置が変位するように付勢された籾摺りローラ45を備え、これら一対のローラ間に穀粒を供給して籾摺を行う籾摺装置33であって、
上方の開口部34または受取り室35から、一対のローラ間に穀粒を供給する傾斜板43を備え、
傾斜板43は、傾斜板43の表面が、ローラ44の軸47とローラ45の軸132の中心線として引かれた線と、90°より若干大きな角度となり、且つ、穀粒を加速する傾斜としてある
籾摺装置33。」の発明(以下、「刊行物記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比・判断
本願発明と上記刊行物記載の発明とを対比すると、両者ともに、砕粒を少なく脱ぷ率の良い脱ぷ装置の提供を課題とする点で一致しており(刊行物7頁左上欄14〜15行、19〜20行参照)、刊行物記載の発明の「籾摺りローラ44」が本願発明の「固定側ゴムロール」に相当し、以下同様に、「籾摺りローラ45」が「可動側ゴムロール」に、「籾摺装置33」が「脱ぷ装置」に、「開口部34または受取り室35」が「供給タンク」に、「傾斜板43」が「案内シュート」に、それぞれ相当し、刊行物には、案内シュートから投出される穀粒の投出線(傾斜板43の表面)が、一対のゴムロールの回転中心を結ぶ直線(軸47と軸132の中心線として引かれた線)と略垂直(90°より若干大きな角度)となるようにしたことが記載されているから、両者は、
「軸位置が移動しない固定側ゴムロールと固定側ゴムロールに向けて軸位置が変位するように付勢された可動側ゴムロールを備え、これら一対のゴムロール間に穀粒を供給して籾摺を行う脱ぷ装置であって、
上方の供給タンクから、一対のゴムロール間に穀粒を供給する案内シュートを備え、
案内シュートは、案内シュートから投出される穀粒の投出線が、一対のゴムロールの回転中心軸を結ぶ直線と略垂直となるように、且つ、穀粒を加速する傾斜としてある
脱ぷ装置。」である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点)
案内シュートは、本願発明が、「脱ぷ装置の処理能力を満足してロール周速度を超えない範囲の速度に穀粒を加速する傾斜としてある」のに対し、刊行物記載の発明にはこのような限定のない点。

上記相違点を検討する。
装置一般において、その処理能力を最大限発揮させるべく、その「処理能力を満足」させるように構成することは、機械設計上当然考慮されるべき事項である。
また、穀粒を加速する案内シュートを備えた脱ぷ装置において、(a)一対のゴムロール間に供給する穀粒の速度が該ゴムロールの周速度よりも速いと、一対のゴムロール間の供給側に処理されない穀粒が滞留してしまい、一方、(b)一対のゴムロール間に供給する穀粒の速度が該ゴムロールの周速度よりも遅いと、一対のゴムロール間を通過する穀粒が少なくなってしまうことは、明らかである。
そして、少なくとも、上記(a)のように、一対のゴムロール間の供給側に処理されない穀粒が滞留し、一対のゴムロール間以外の所からオーバーフローすることは、避けなくてはならないから、上記(b)のように、一対のゴムロール間に供給する穀粒の速度を該ゴムロールの周速度よりも遅くし、本願発明のように案内シュートを「脱ぷ装置の処理能力を満足してロール周速度を超えない範囲の速度に穀粒を加速する傾斜」とすることは、当業者であれば容易に想到しうることである。

したがって、上記刊行物記載の発明において上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易に思い付くことであり、このようにしたことによる格別の作用効果も認められない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができず、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-31 
結審通知日 2006-06-06 
審決日 2006-06-19 
出願番号 特願平8-209384
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田口 傑  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 西田 秀彦
柴田 和雄
発明の名称 脱ぷ装置  
代理人 竹本 松司  
代理人 杉山 秀雄  
代理人 魚住 高博  
代理人 湯田 浩一  

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