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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1140836
審判番号 不服2004-8630  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-08-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-27 
確定日 2006-08-03 
事件の表示 特願2001- 20945「携帯端末装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月16日出願公開、特開2002-232551〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年1月30日の出願であって、平成16年3月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、手続補正がなされたものである。

2.平成16年4月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年4月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の請求項1に係る発明
本件手続補正により、特許請求の範囲は、補正前の特許請求の範囲の、
「【請求項1】
公衆モードおよび事業所モードが登録された携帯端末装置において、
前記事業所モードを発信モードとして第1に選択して発信動作し、通信が確立できない場合には前記公衆モードを前記発信モードとして第2に選択して発信動作させる発信モード選択機能を有する制御部を備えることを特徴とする携帯端末装置。
【請求項2】
前記発信モード選択機能は、データ通信を行う際には、データ通信速度を優先した発信操作を行うために、事業者モードまたは公衆モードの64kbpsのデータ通信が可能なモードを前記発信モードとして優先的に選択して発信動作することを特徴とする請求項1記載の携帯端末装置。
【請求項3】
前記発信モード選択機能をOFFにできることを特徴とする請求項1または2記載の携帯端末装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記発信モードが圏外であると前記発信モードでは発信動作しない機能をさらに有することを特徴とする請求項1,2,または3記載の携帯端末装置。
【請求項5】
前記携帯端末装置として、PHSが用いられることを特徴とする請求項1,2,3,または4記載の携帯端末装置。
【請求項6】
公衆モードおよび事業所モードが登録された携帯端末装置の発信モード選択方法において、
前記事業所モードを発信モードとして第1に選択して発信動作し、通信が確立できない場合には前記公衆モードを前記発信モードとして第2に選択して発信動作する工程を含むことを特徴とする発信モード選択方法。」から、
「【請求項1】
公衆電話網を用いて通信を行う公衆モードと事業所コードレスシステム対応の接続装置を用いて通信を行う事業所モードとが登録された携帯端末装置において、
発信先電話番号が公衆電話網の電話番号である場合に、外線発信番号を付加して、前記事業所モードを自動的に発信モードとして第1に選択して発信動作し、通信が確立できない場合には前記公衆モードを自動的に発信モードとして第2に選択して発信動作させる発信モード選択機能を有する制御部を備えることを特徴とする携帯端末装置。
【請求項2】
前記発信モード選択機能は、データ通信を行う際には、データ通信速度を優先した発信操作を行うために、事業者モードまたは公衆モードの64kbpsのデータ通信が可能なモードを前記発信モードとして優先的に選択して発信動作することを特徴とする請求項1記載の携帯端末装置。
【請求項3】
前記発信モード選択機能をOFFにできることを特徴とする請求項1または2記載の携帯端末装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記発信モードが圏外であると前記発信モードでは発信動作しない機能をさらに有することを特徴とする請求項1,2,または3記載の携帯端末装置。
【請求項5】
前記携帯端末装置として、PHSが用いられることを特徴とする請求項1,2,3,または4記載の携帯端末装置。
【請求項6】
公衆電話網を用いて通信を行う公衆モードと事業所コードレスシステム対応の接続装置を用いて通信を行う事業所モードとが登録された携帯端末装置の発信モード選択方法において、
発信先電話番号が公衆電話網の電話番号である場合に、外線発信番号を付加して、前記事業所モードを自動的に発信モードとして第1に選択して発信動作し、通信が確立できない場合には前記公衆モードを自動的に発信モードとして第2に選択して発信動作する工程を含むことを特徴とする発信モード選択方法。」
に補正された。
上記補正は、請求項1,6において、「公衆モード」に「公衆電話網を用いて通信を行う」との限定を、「事業所モード」に「事業所コードレスシステム対応の接続装置を用いて通信を行う」との限定を付加し、「前記事業所モードを発信モードとして第1に選択して発信動作し、通信が確立できない場合には前記公衆モードを前記発信モードとして第2に選択して発信動作させる発信モード選択機能」を「発信先電話番号が公衆電話網の電話番号である場合に、外線発信番号を付加して、前記事業所モードを自動的に発信モードとして第1に選択して発信動作し、通信が確立できない場合には前記公衆モードを自動的に発信モードとして第2に選択して発信動作させる発信モード選択機能」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件手続補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用発明
原審の拒絶の理由に引用された特開2000-49961号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
a.「【0023】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の実施の各形態で使用されるPHS端末装置の概略的なシステム構成を示す。PHS端末装置には、電話部1、アプリケーション記憶部2、アプリケーション制御部3、通信方式種別照合部4、制御部5、表示部6、操作部7、一時記憶部8、通信方式種別記憶部9、絵記号記憶部10、アプリケーションデータ記憶部11、照合通信方式種別記憶部12および電話帳記憶部13が含まれる。」(4頁5欄第13〜21行)

b.「【0028】図3は、図2に示すようにして登録した電話帳記憶部13の記憶内容を用いて発信動作を行う手順を示す。ステップb1では、電話帳記憶部13から通信相手先の電話番号を選択可能な状態にする。たとえば表示部6に記憶内容を表示し、操作部7から選択を行うことが可能にする。携帯型のPHS端末などでは、表示部6の大きさが小さいので、電話番号帳記憶部13内の記憶内容は、必ずしも全部を同時に表示することができない可能性もある。そのような場合には、自動的にスクロールして順次全部の記憶内容を表示し、通信相手先の電話番号が選択可能にする。ステップb2では、操作部7からの操作で、表示部6などに表示されている電話帳記憶部13の記憶内容から、電話番号を選択する。」(4頁6欄第38〜50行)

c.「【0032】図6は、本発明の実施の第3形態としての発信動作手順を示す。本実施形態では、PHS端末装置に予め設定してある通信方式の通信方式種別を、照合通信方式種別記憶部12に記憶しておく。通信方式を変更するたびに、照合通信方式種別記憶部の記憶内容を用いて、変更した通信方式を発信前の状態に戻す。
【0033】ステップe1では、操作部7からの操作で、電話帳機能から通信先の電話番号が選択可能な状態にする。ステップe2では、操作部7からの操作で、電話帳記憶部13から通信先電話番号を選択する。ステップe3では、電話帳記憶部13に選択された電話番号とともに記憶されている通信方式種別を、通信方式種別照合部4に送る。ステップe4では、照合通信方式種別記憶部12から、照合通信方式種別を読出す。
【0034】ステップe5では、通信方式種別照合部4で、通信方式種別の照合判定を行う。電話番号とともに電話帳記憶部13に記憶されている通信方式種別が、照合通信方式種別記憶部12に記憶されている通信方式種別に一致しているときには、ステップe6でそのまま発信を開始し、ステップe7で通信を行い、終了後にステップe8で回線切断を行う。ステップe5で、照合結果が一致しないときには、ステップe9で通信方式を電話番号とともに電話帳記憶部13に記憶されていた通信方式に変更し、ステップe10で電話番号の通信相手に対して変更した通信方式で発信を開始する。ステップe11で通信を行い、通信が終了すると、ステップe12で回線切断を行う。ステップe13では、PHS端末装置が発信前に設定されていた通信方式の通信方式種別を、照合通信方式種別記憶部12から読出し、通信方式を発信前の状態に戻す。ステップe8またはステップe13が終了すると、PHSの受け持ち状態に戻り、発信動作を終了する。」(5頁7欄第44行〜同8欄第25行)

d.「【0040】本発明の実施の第6形態としては、図6のような手順で発信動作を行う際に、通信方式種別に対して複数の通信方式が優先順位を付けて対応させ、ステップe9の通信方式の変更の際に、優先順位の高い通信方式から順に変更を行うようにする。たとえば発信の優先順位を公衆回線→HA(内線)→HS(外線)の順に設定しておく。PHS端末装置は、送信電波の出力が小さいので、有効な通信を行うことが可能な圏内である範囲は狭い。公衆回線が圏内の場合には、公衆回線で発信する。公衆回線が圏外の場合には、HAを検索して、HAが圏内の場合には発信する。HAが圏外の場合は、HSを検索して、HSが圏内の場合に発信する。HSが圏外の場合もしくは利用不能な場合には、回線断とする。
【0041】また、HS→公衆→HAの順に設定することもできる。このとき、HSが圏内の場合は、HSで発信する。HSが圏外もしくは利用不能の場合は、公衆を検索して公衆が圏内の場合に発信する。公衆が圏外の場合は、HAを検索して、HAが圏内の場合に発信する。HAが圏外の場合は、回線断とする。」(6頁9欄第35行〜同10欄第3行)

上記摘記事項d.【0041】に記載の「HS→公衆→HAの順」は、上記摘記事項d.【0040】記載の「公衆回線→HA(内線)→HS(外線)の順」の別の実施例であることから、該「公衆」は、上記摘記事項d.【0040】でいうところの、公衆回線で発信する「公衆回線」であって、該発信される公衆回線は、「公衆電話網」であるとの技術常識を勘案すると、「公衆電話網を用いて通信を行う公衆モード」であるといえる。同様に、上記摘記事項d.【0041】に記載の「HS」及び「HA」は、上記摘記事項d.【0040】でいうところの、「HS(外線)」及び「HA(内線)」であって、これらをまとめて「内外線モード」といえる。
上記摘記事項d.の記載には、「HS(外線)モード」の次に「公衆モード」で発信しているから、どちらの場合も「発信先電話番号が公衆電話網の電話番号である場合」であるといえる。

よって、上記摘記事項a.〜d.の記載及び関連する図面を参照すると、
引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用発明」という。)
「公衆電話網を用いて通信を行う公衆モードと内外線モードとが登録されたPHS端末装置において、
発信先電話番号が公衆電話網の電話番号である場合に、前記内外線モードを自動的に発信モードとして第1に選択して発信動作し、前記内外線モードが圏外もしくは利用不能の場合は、公衆モードを自動的に発信モードとして第2に選択して発信動作させる機能を有する制御部を備えることを特徴とするPHS端末装置。」

(3)対比
引用発明の「PHS端末装置」は、上記摘記事項b.の「携帯型のPHS端末」との記載からみて、本願補正発明の「携帯端末装置」に相当する。
本願補正発明の「事業所モード」と引用発明の「内外線モード」とは、「非公衆モード」である点で、本願補正発明の「発信モード選択機能」と引用発明の「機能」とは「選択機能」である点で一致するから、両者は、
「公衆電話網を用いて通信を行う公衆モードと非公衆モードとが登録された携帯端末装置において、
発信先電話番号が公衆電話網の電話番号である場合に、前記非公衆モードを自動的に発信モードとして第1に選択する機能を有する制御部を備えることを特徴とする携帯端末装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点1>
上記「非公衆モード」に関して、本願補正発明は「事業所コードレスシステム対応の接続装置を用いて通信を行う事業所モード」であるのに対し、引用発明は「内外線モード」である点。
また、上記「非公衆モード」で発信動作時に、本願補正発明は「外線発信番号を付加」するのに対し、引用発明ではそのようになっているか否か不明な点。

<相違点2>
上記「選択機能」に関して、本願補正発明は、「第1に選択して発信動作し、通信が確立できない場合には前記公衆モードを自動的に発信モードとして第2に選択して発信動作させる発信モード選択機能」であるのに対し、引用発明は、「第1に選択して発信動作」する点。

(4)判断
上記相違点1について検討する。
PHSでは、事業所コードレスシステム対応の接続装置を用いて通信を行う事業所モードと、外線発信番号を付加して、前記事業所モードで発信動作することとは、周知技術である(特開2000-101707号公報【0002】【0005】【0009】等、特開平8-331650号公報【0001】【0002】【0014】等)。
引用発明の「内外線モード」と上記周知技術の「事業所モード」とは、ともにPHSにおいて、内線と外線を使うものである点で一致するから、該「内外線モード」を「事業所コードレスシステム対応の接続装置を用いて通信を行う事業所モード」とすることは、当業者が適宜なし得ることである。
さらに、上記周知技術から、当該モードの発信動作時に「外線発信番号を付加」することは、当業者が適宜なし得ることと認められる。

上記相違点2について検討する。
携帯端末装置に、あるモードを自動的に発信モードとして第1に選択して発信動作し、通信が確立できない場合には別のモードを自動的に発信モードとして第2に選択して発信動作させる機能を有する制御部を備えることは、周知技術である(特開平10-42032号公報【0013】〜【0015】等、特開2000-308142号公報【0029】〜【0035】等)。
引用発明と上記周知技術とは、ともに携帯端末装置において発信動作をする機能を有する制御部を備えた点で一致しており、携帯端末装置が発信動作した際に、通信が確立できないことは、一般的な事象であって、引用発明での発信モードの優先度が事業所モードの次に公衆モードが選択されていることを考慮すると、引用発明に上記周知技術を適用し上記相違点2にかかる構成とすることは、当業者が容易になし得ることと認められる。

また、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、引用発明及び周知技術から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
よって、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.補正却下の決定を踏まえた検討
(1)本願発明
平成16年4月27日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、願書に最初に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「公衆モードおよび事業所モードが登録された携帯端末装置において、
前記事業所モードを発信モードとして第1に選択して発信動作し、通信が確立できない場合には前記公衆モードを前記発信モードとして第2に選択して発信動作させる発信モード選択機能を有する制御部を備えることを特徴とする携帯端末装置。」

(2)引用例
これに対して、原審の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記2.で検討した本願補正発明における「公衆電話網を用いて通信を行う公衆モード」を「公衆モード」とし、「事業所コードレスシステム対応の接続装置を用いて通信を行う事業所モード」を「事業所モード」とし、「発信先電話番号が公衆電話網の電話番号である場合に、外線発信番号を付加して、前記事業所モードを自動的に発信モードとして第1に選択して発信動作し、通信が確立できない場合には前記公衆モードを自動的に発信モードとして第2に選択して発信動作させる発信モード選択機能」を「前記事業所モードを発信モードとして第1に選択して発信動作し、通信が確立できない場合には前記公衆モードを前記発信モードとして第2に選択して発信動作させる発信モード選択機能」とし、限定を省いたものである。
そうすると、本願発明に限定を施したものに相当する本願補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、同様に、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-02 
結審通知日 2006-06-06 
審決日 2006-06-20 
出願番号 特願2001-20945(P2001-20945)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
P 1 8・ 575- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲葉 和生  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 畑中 博幸
宮下 誠
発明の名称 携帯端末装置  
代理人 岩佐 義幸  

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