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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04J
管理番号 1140842
審判番号 不服2004-11026  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-07-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-27 
確定日 2006-08-03 
事件の表示 平成11年特許願第220827号「送受信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月18日出願公開、特開2000-201132〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成11年8月4日(優先日、平成10年11月6日)の出願であって、平成16年4月19日付けで拒絶査定され、同年5月27日に審判請求がなされるとともに、同年6月28日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年6月28日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成16年6月28日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1が次のように補正された。
「【請求項1】 誤り制御するための重要情報と前記重要情報以外の送信データとを互いに別系統で供給する供給手段と、
互いに別系統で供給された前記重要情報及び前記重要情報以外の送信データを、1シンボルを3ビット以上のビットを用いて表現する変調方式により変調する変調手段と、を具備し、
前記変調手段は、変調の際に、前記重要情報を構成するビットを、送信信号の1ビット目のみ、2ビット目のみ、又は、1ビット目と2ビット目の両方に配置するとともに、前記1ビット目又は2ビット目に配置するビットを、前記重要情報を構成するビットから前記重要情報以外の情報を構成するビットに変更可能である、ことを特徴とする送信装置。」

(2)新規事項について
補正後の請求項1の「誤り制御するための重要情報」に関して、本件出願の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、次の記載がある。
「図4において、Parallel-Serial変換器(以下、P/S変換器という)401は、送信データに重要情報を挿入する。この重要情報とは、通信相手による受信時における誤り率特性が悪い場合に、通常の通信の維持が困難となる可能性のある情報である。すなわち、上記重要情報は、他の情報(例えば送信データ)に比べて良好な誤り率特性が要求される情報である。
上記重要情報の例としては、再送情報や制御情報等が挙げられる。再送情報とは、通信相手からの再送指示により、この通信相手に対して再送される情報である。また、制御情報とは、通信相手が、確実に適切な信号を受信するために用いる情報である。制御情報としては、通信フレームにおける通信相手が受信すべきバーストを示す情報、適応変調時における現行変調方式を示す情報等が挙げられる。」(段落【0003】〜【0004】)
「重要情報として再送情報を例にとれば、送信側が再送情報を送信信号に挿入し、受信側は受信信号から再送情報を抽出することにより、受信側は、送信側に適切な再送指示をすることができる。すなわち、受信側は、制御チャネルにいずれのバーストのいずれのセルが誤りであったかの情報を乗せて送り返すことができる。」(段落【0013】)
「本発明に係る基地局装置は、1シンボルを3ビット以上のビットを用いて表現するような変調を行う変調方式で変調された受信信号の1ビット目及び2ビット目の少なくとも一方から再送情報を抽出する抽出手段と、送信元の無線局に対し制御チャネルを用いて前記抽出された再送情報に基づいて再送指示を行う再送指示手段と、を具備することを特徴とする。
本発明によれば、8PSKのように1シンボルを3ビット以上のビットを用いて表現するような変調方式であっても、1シンボルを2ビットで表現するQPSK変調方式を用いた場合と同等の品質で再送情報を取り出すことができるため、無線通信先である例えば移動局に再三再送を指示することがなくなり、通信相手の通信負荷を減らすことができる。
本発明に係る通信端末装置は、1シンボルを3ビット以上のビットを用いて表現するような変調を行う変調方式で変調された受信信号の1ビット目及び2ビット目の少なくとも一方から再送情報を抽出する抽出手段と、送信元の無線局に対し制御チャネルを用いて前記抽出された再送情報に基づいて再送指示を行う再送指示手段と、を具備することを特徴とする。
本発明によれば、8PSKのように1シンボルを3ビット以上のビットを用いて表現するような変調方式であっても、1シンボルを2ビットで表現するQPSK変調方式を用いた場合と同等の品質で再送情報を取り出すことができるため、無線通信先である例えば基地局に再三再送を指示することがなくなり、通信相手の通信負荷を減らすことができる。」(段落【0036】〜【0039】)
「例えば、重要情報として再送情報が用いられた場合には、送信側において再送情報が1ビット目に配置されることにより、受信側における再送情報の誤り率特性は良好に保たれる。これにより、送信側が再送情報を再送する回数を少なくすることができるので、非常に良好な誤り率特性が要求される画像通信等の通信を行う場合においても、通常の通信を維持することができる。」(段落【0058】)
なお、他の段落にも重要情報に関する記載があるが、重複するため省略した。

上記摘示箇所には、本願発明の「重要情報」に「再送情報」が含まれること、該「再送信号」とは、通信相手からの再送指示によりこの通信相手に対して再送される情報であること(段落【0004】)、送信側が再送信号を送信信号に挿入し、受信側が受信信号から再送信号を抽出することにより、受信側は、送信側に適切な再送指示をすることができること(段落【0013】等)が記載されている。しかし、このような「再送情報」と「誤り制御するための重要情報」とが同義であるとは認められないし、当初明細書等には、他に「誤り制御するための重要情報」を示す記載があるとも認められない。したがって、補正後の請求項1に記載された「誤り制御するための重要情報」は、当初明細書等に記載されたものではなく、当初明細書等の記載からみて自明な事項であるとも認められない。
以上のとおり、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

(3)独立特許要件について
次に、補正後の請求項1の「誤り制御するための重要情報」が当初明細書等の記載から自明な事項であるとした場合について、他の要件について検討する。
この場合、上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「重要情報」について「誤りを制御するための」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そこで、補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明1」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

ア.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-276211号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の記載がある。
「【実施例】本発明の変調方式の動作を、回路構成図(図1)および位相変調方式の実施例を示す信号空間ダイアグラム(図2)に沿って以下に説明する。複数のディジタル信号4は変調度制御回路2に入力される。このときディジタル信号は重要度によって区別されているものとする。ここでは、8相位相変調であるから、ディジタル信号入力は3ビットである。変調度制御回路2は、信号に応じて表1に示すように変調度を制御する。
【0006】
【表1】(省略)
【0007】表1に示す例では、第1ビットの距離を長く、逆に第3ビットの距離を短くしており、信号空間ダイアグラムでは図2に示す配置となる。従来の変調方式では、各符号の距離は45度で一定であり、図3に示す配置となる。変調度制御回路2に基づき、発振器3の出力を、変調回路1で変調し、所望の変調波出力5を得る。図4は、信号のレベル(C/N)に対する符号誤り率特性である。図4に示すように、8相位相変調では、18dBより小さくなると全ての符号について急激に誤り率が劣化するが、本発明の階層化変調方式では、第一ビットに関しては12dBまで弱くなっても信号を伝送することができる。重要な情報を第1ビットに割当て、重要度の低い情報を第3ビットに割当てることにより、効率の良い伝送をすることが可能である。また、本発明の変調方式は、4図に示すように全てのビットが同時に劣化することがないため、信号レベルの広い範囲において動作する。図5は直交振幅変調を階層化した実施例である。従来の16QAM(16相直交振幅変調)では、符号間の距離aとbは同じであるが、本発明ではこの距離を変えて信号に重み付けを行なう。aとbの比は任意でよい。従来の16QAMの場合、符号誤り率10-3を実現するためのC/Nは約19dBであるが、aとbの比を1:2にした階層化変調では、4ビットのうちの2ビットについてはC/N約15.5dBに改善される。」(2頁2欄23行〜3頁3欄25行)

引用例図2の8相位相変調方式では、第1ビットの距離を長く、逆に第3ビットの距離を短くすることにより、重要な情報を第1ビットに割当て、重要度の低い情報を第3ビットに割当てるようにしており、第2ビットについての記載がないので、重要な情報を第1ビットのみ、又は、第1ビット及び第2ビットの両方に配置することが示されているといえる。また、引用例図5の16QAM(16相直交振幅変調)方式では、1シンボル4ビットのうちの2ビット、即ち、第1及び第2ビットの距離を長くしてC/Nを改善しており、上記8相位相変調方式についての記載に照らせば、重要な情報を第1及び第2ビットの両方に割当てるようにするものであると認められる。さらに、引用例記載の8相位相変調方式や16QAM方式は、1シンボルを3ビット以上のビットを用いて表現する変調方式であり、通常、送信装置に用いられるものである。したがって、引用例には、「重要度によって区別される複数のディジタル情報を供給する供給手段と、前記複数のディジタル情報を、1シンボルを3ビット以上のビットを用いて表現する変調方式により変調する手段と、を具備し、前記変調手段は、変調の際に、前記複数のディジタル情報の内の重要な情報を第1ビットのみ、又は、第1ビットと第2ビットの両方に配置する送信装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

イ.対比・判断
本願補正発明1と引用発明とを対比する。引用発明の「重要度によって区別される複数のディジタル信号」は、本願補正発明1の「重要情報と前記重要情報以外の送信データ」に相当するものであるから、両者は、「重要情報と前記重要情報以外の送信データとを供給する供給手段と、前記重要情報及び前記重要情報以外の送信データを、1シンボルを3ビット以上のビットを用いて表現する変調方式により変調する変調手段と、を具備し、前記変調手段は、変調の際に、前記重要情報を構成するビットを、送信信号の1ビット目のみ、又は、1ビット目と2ビット目の両方に配置する、ことを特徴とする送信装置。」である点で一致し、次の点で相違するものの、他に実質的な相違点はない。
(相違点1)
本願補正発明1では、重要情報が誤り制御するためのものであるのに対し、引用発明の重要情報については特に限定がない点。
(相違点2)
本願補正発明1の供給手段は、重要情報と前記重要情報以外の送信データとを互いに別系統で供給するのに対し、引用発明の供給手段は、重要度によって区別される複数のディジタル信号を供給するものであって、これらが別系統で供給されるものであるかについては明示されていない点。
(相違点3)
本願補正発明1では、前記1ビット目又は2ビット目に配置するビットを、前記重要情報を構成するビットから前記重要情報以外の情報を構成するビットに変換可能であるのに対し、引用発明では、そのような構成となっていない点。

上記相違点1について検討する。本願補正発明1の「誤り制御するための重要情報」は再送情報を含むものであって、再送情報、すなわち、「通信相手からの再送指示により、この通信相手に対して再送される情報」は、通常、重要度の高い情報であると考えられるから(例えば、特開昭55-4107号公報、特開平2-312335号公報、特開平10-51426号公報、参照)、再送情報を重要情報とすることにより、相違点1に係る本願補正発明1の構成を得ることは当業者が容易に想到し得ることである。なお、「再送情報」には、特開平7-203555号公報、特開平7-273745号公報、特開平8-293857号公報に記載されるように、送信データが再送に係るものであることを示す情報を意味する場合があるが、この場合でも「再送情報」の重要度が高いことは自明であるから、これを重要情報とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
次に、上記相違点2について検討する。引用発明の複数のディジタル信号は、重要度によって区別されるものであり、それぞれ別の信号であることが十分に想定されるから、これらを互いに別系統で供給することは何ら特別なことではない。
さらに、相違点3について検討する。引用発明においても重要度の高い情報が常に生じるとは限らず、送信すべき重要度の高い情報がない場合も十分に想定されるから、引用発明において、1ビット目又は2ビット目に配置するビットを、重要情報を構成するビットから重要情報以外の情報を構成するビットに変換可能とすることは、当業者が必要に応じて容易になし得ることである。
また、本願補正発明1の効果も、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。
なお、本願補正発明1では、変調の際に、前記重要情報を構成するビットを、送信信号の2ビット目のみに配置することを含んでいるが、2ビット目のみに配置することは、共通点である1ビット目のみ、又は、1ビット目と2ビット目の両方に配置することとの択一的事項として記載されているから、この点は実質的な差異ではないし、引用発明の16QAM方式の例では、第1ビットと第2ビットとは誤り率に関して同等であるから、重要情報を構成するビットを2ビット目のみに配置することは当業者が適宜なし得ることでもある。

ウ.むすび
したがって、本願補正発明1は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものである。

(4)補正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件補正は特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明についての検討
(1)本願発明
平成16年6月28日付けの手続補正は上記のように却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、平成16年1月23日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 重要情報と前記重要情報以外の送信データとを互いに別系統で供給する供給手段と、
互いに別系統で供給された前記重要情報及び前記重要情報以外の送信データを、1シンボルを3ビット以上のビットを用いて表現する変調方式により変調する変調手段と、を具備し、
前記変調手段は、変調の際に、前記重要情報を構成するビットを、送信信号の1ビット目のみ、2ビット目のみ、又は、1ビット目と2ビット目の両方に配置するとともに、前記1ビット目又は2ビット目に配置するビットを、前記重要情報を構成するビットから前記重要情報以外の情報を構成するビットに変更可能である、ことを特徴とする送信装置。」

(2)引用例に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、該引用例に記載された発明は、上記「2.(3)ア.」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明1は、上記「2.(3)」で検討した本願補正発明1から「誤り制御するための重要情報」の限定事項である「誤り制御するための」との事項を省いたものである。
そうすると、本願発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明1が、上記「2.(3)イ.」に説示したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様の理由により、本願発明1も引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-31 
結審通知日 2006-06-06 
審決日 2006-06-20 
出願番号 特願平11-220827
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04J)
P 1 8・ 121- Z (H04J)
P 1 8・ 561- Z (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高野 洋  
特許庁審判長 廣岡 浩平
特許庁審判官 宮下 誠
浜野 友茂
発明の名称 送受信装置  
代理人 鷲田 公一  

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