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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1140850
審判番号 不服2004-18686  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-02-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-09 
確定日 2006-08-03 
事件の表示 平成 6年特許願第181602号「胴差ボルト割付装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 2月16日出願公開,特開平 8- 44779〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成6年8月2日の出願であって,平成16年8月3日付けで拒絶査定がされ,これに対して,平成16年9月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年10月12日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年10月12日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年10月12日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本補正により,特許請求の範囲の請求項1は,
「【請求項1】
胴差上の壁線に沿って壁パネルを立てることにより形成される耐力壁を設計するに際し、その設計すべき耐力壁を形成する壁パネルを立てる胴差上に配置されて壁パネルを胴差に緊結する胴差ボルトを割り付ける胴差ボルト割付装置であって、
予め入力された平面図上の壁線および耐力壁を記憶する形状記憶手段と、
この形状記憶手段に記憶された前記平面図上の耐力壁に沿って所定条件の基に前記胴差ボルトを配置するとともに、その配置対象位置を中心とする所定寸法の矩形範囲以内での重複チェックを行う胴差ボルト割付手段と、を具備し、
前記耐力壁が最低の基準長さ単位の整数倍の幅からなり、
前記所定寸法の矩形範囲は、一辺の長さが前記最低の基準長さ単位の長さからなる正方形範囲であって、
前記正方形範囲における正方形の二辺が、前記壁線と平行であることを特徴とする胴差ボルト割付装置。」と補正された。
上記補正は,請求項1に係る発明の構成要件である「耐力壁」及び「所定寸法の矩形範囲」を具体的に限定したものであるから,特許法17条の2第3項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,本補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるか,すなわち,本補正が特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定を満たすものであるかについて以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された,本願出願前に発行された刊行物である"PTOSIV CAE-HOME6説明書(設計編)N5200シリーズ"(日本電気株式会社,1990年12月)の196頁,214頁及び227頁(以下「引用例」という。)には,図面と共に,次の各事項が記載されている。

ア 196頁には,コマンド関連図として,「基礎伏図」,「基礎伏図入力」の下位に「胴差ボルト」があり,さらにその下位に「半自動(ピッチ設定)」,「自動配置」及び「手入力削除,移動」が示されている。

イ 214頁の上部には,「(27)アンカーボルトの入力アンカーボルトの入力を行います。」とあり,その下部には,「(28)アンカーボルトの自動生成アンカーボルトを自動的に生成します。自動配置による入力と半自動による入力があります。」と記載され,PARAMETERとして,入力方法の選択で,「1:自動配置の場合」と「2:半自動の場合」が示されている。
さらに,「☆ピッチ寸法などは,コントロールデータで設定します。」と「☆自動配置の場合,標準ピッチで行うかどうかの指示を行います。」とも記載されている。

ウ 227頁には,「アンカーボルトを自動生成するときの配置情報が設定します。」と記載され,自動配置の例が示されている。

(3)対比
ア 本願出願時点において,胴差しボルトの割付を適正に行うことは,当然の課題として当業者に自明の事項である。
引用例には,基礎伏図のアンカーボルト作成において,自動配置及び半自動配置が示され,半自動配置の場合,自動配置と比べると,配置の不適切な一部について手で修正を加えるモードであると理解できる。
また,本願明細書にも,本願補正発明の前提となる従来技術が記載されており,この従来技術は当業者に自明の事項である。

すなわち,本願明細書には,従来技術として概略次の事項が記載されている。

本願補正発明は,プレハブ住宅を施工する際、耐力壁線に沿って立てる上下階の壁パネルを胴差を介して互いに緊結するための胴差ボルトを、胴差に沿って配置するための胴差ボルト割付装置にに関するものであること。
各種の設計においては,CADシステムが用いられており,プレハブ住宅においても,CADシステムを用いて設計が行われる場合があること。
一般的なCADシステムにおいては,予め,設計要素となる部材の形状データやグラフィックデータやその他のデータをデータベース(D/B)として記憶しておき,設計の際にこれらのデータを呼び出し,ディスプレイの製図上に各部材を配置することにより製図が作成され,設計作業を省力化できるようになっていること。
さらに,パネルを用いたプレハブ住宅の設計の場合、布基礎上に布基礎用アンカーボルトを割り付ける必要があり、この布基礎用アンカーボルトによって、布基礎上に台輪を介して半土台および床パネルを重ね、その上に耐力壁線に沿って立てた壁パネルを布基礎に緊結する。
そして、2階を施工する場合は、耐力壁線に沿って立てた1階壁パネル上に胴差および2階床パネルを重ね、その上に同じく耐力壁線に沿って2階壁パネルを立て、胴差に沿って割り付けた胴差ボルトによって、1階壁パネル上に胴差を介して2階壁パネルを緊結すること。
従来の胴差ボルトの割り付け方法によっては,胴差ボルトが配置されなかったり,重複チェックによっても交点部において余分な胴差ボルトが配置されてしまうため,割り付け操作を行うオペレータが,余分な胴差ボルトの配置を個々に除いていく面倒な作業を伴うといった欠点を有していたこと。

イ 以上の従来技術にかんがみると,アンカーボルトの割付と胴差ボルトの割付とは技術思想を同じくするもので相互に置換可能な技術であることが認められる。
上記の当業者に明らかな技術常識を踏まえ,本願補正発明と引用例記載の発明を対比すると,引用例のアンカーボルトの自動配置及び半自動配置はアンカーボルトの割付を示していることは当業者に明らかであり,これを胴差ボルトの割付に置換することも技術思想の観点から実質的な相違とはいえないから,両者は次の一致点及び相違点が認められる。

【一致点】
胴差上の壁線に沿って壁パネルを立てることにより形成される耐力壁を設計するに際し、その設計すべき耐力壁を形成する壁パネルを立てる胴差上に配置されて壁パネルを胴差に緊結する胴差ボルトを割り付ける胴差ボルト割付装置であって、予め入力された平面図上の壁線及び耐力壁を記憶する形状記憶手段と、この形状記憶手段に記憶された前記平面図上の耐力壁に沿って所定条件の基に前記胴差ボルトを配置することを特徴とする胴差ボルト割付装置。

【相違点】
本願補正発明の胴差ボルト割付手段が,その配置対象位置を中心とする所定寸法の矩形範囲以内での重複チェックを行う胴差ボルト割付手段と,を具備し,耐力壁が最低の基準長さ単位の整数倍の幅からなり,所定寸法の矩形範囲は,一辺の長さが前記最低の基準長さ単位の長さからなる正方形範囲であって,正方形範囲における正方形の二辺が,前記壁線と平行であることを特徴とするのに対し,引用例には本願補正発明が備える割付の具体的手段が明示されていない点。

(4)当審の判断
上記相違点について検討する。
引用例には,所定範囲内で胴差ボルト又はアンカーボルトの重複チェックを行うことに関する記載はない。
しかし,所定の箇所に胴差ボルトが配置されなかったり,余分な胴差ボルトが配置されてしまうことが好ましくないことは明らかであり,このため従来は割付操作を行うオペレータが,余分な胴差ボルトの配置を個々に修正していたことは引用例の半自動配置,及び本願従来技術からも明らかである。
本願補正発明はこの人間であるオペレータが行っていた割付を,明示はないが,コンピュータに行わせたものであり,重複チェックをコンピュータで行わせるに際し,どのようなアルゴリズムで実行させるかは,工夫の必要な所ではあるが,人間の思考過程を単に実行させることはコンピュータ化の初歩的な問題であり,格別の困難を伴うものではない。
本願補正発明での重複チェックは,チェック範囲及びその範囲の形状が具体的に限定されているが,当業者であれば普通に考える創意工夫の範囲の事項であり,特許請求の範囲に記載された限定に格別進歩性は認められない。

したがって,本願補正発明は,引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり,本補正は,特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので,同法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年10月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成16年7月12日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】胴差上の壁線に沿って壁パネルを立てることにより形成される耐力壁を設計するに際し、その設計すべき耐力壁を形成する壁パネルを立てる胴差上に配置されて壁パネルを胴差に緊結する胴差ボルトを割り付ける胴差ボルト割付装置であって、
予め入力された平面図上の壁線および耐力壁を記憶する形状記憶手段と、
この形状記憶手段に記憶された前記平面図上の耐力壁に沿って所定条件の基に前記胴差ボルトを配置するとともに、その配置対象位置を中心とする所定 寸法の矩形範囲以内での重複チェックを行う胴差ボルト割付手段と、
を具備してなることを特徴とする胴差ボルト割付装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例,及びその記載事項は,前記2.(2)に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は,前記2.で検討した本願補正発明の重複チェックにおける,チェック範囲及びその範囲の形状を具体的に限定した部分を省いたものである。

そうすると,本願発明を特定する要素をすべて含み,さらに他の要素を付加したものに相当する本願補正発明が,前記2.(3)及び(4)に記載したとおり,引用例に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用例に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。

(3)むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項記載の発明について論ずるまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-01 
結審通知日 2006-06-06 
審決日 2006-06-19 
出願番号 特願平6-181602
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加舎 理紅子  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 鈴木 明
佐藤敬介
発明の名称 胴差ボルト割付装置  
代理人 荒船 博司  

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