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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09B
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09B
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09B
管理番号 1140868
審判番号 不服2003-4744  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-03-24 
確定日 2006-08-04 
事件の表示 平成10年特許願第 98812号「学習評価および指導要録作成サポートシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月29日出願公開、特開平11-296061〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成10年4月10日の出願であって、平成15年2月17日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年3月24日付けで本件審判請求がされるとともに、同年4月21日付けで明細書についての手続補正がされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成18年2月20日付けで平成15年4月21日付け手続補正を却下するとともに、同日付けで拒絶の理由を通知したところ、請求人は同年4月21日付けで意見書を提出するとともに同日付けで手続補正(その後同年5月11日付けで方式補正されたものであり、以下「本件補正」という。)をした。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成18年5月11日付けで方式補正された同年4月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正事項及び補正目的
本件補正は、補正前(平成15年4月21日付け手続補正は却下されたから、平成15年1月20日付け手続補正後である。)請求項1記載の「前記ペーパーテストの集計結果とペーパーテスト以外の日常学習による集計結果との両方または一方に任意の重みをつける手段と、重みをつけて集計する手段と、双方の合算合計を集計する手段」を「前記ペーパーテストの集計結果とペーパーテスト以外の日常学習による集計結果に任意の重みをつけて合算する手段」と補正するものである。
上記補正事項が、請求項の削除(特許法17条の2第4項1号)又は特許請求の範囲の減縮(同項2号)を目的とするものでないことは明らかである。
請求人は、「本書と同時に手続補正書を提出し、御指摘の記載不備を明瞭にする目的をもって」(平成18年4月21日付け意見書1頁末行〜2頁1行)と述べているから、明りようでない記載の釈明(特許法17条の2第4項4号)を目的とする旨主張しているものと解する。
しかし、明りようでない記載の釈明とは、明りようでない補正前の記載を、記載内容を変更せずに明りような記載に改めることであって、補正前後の記載内容に相違がないことが前提である。
ところで、本件補正前の請求項1の記載(上記記載を含む)によると、「集計」又は「集計結果」との用語は、ペーパーテストの得点の集計及び集計結果、日常学習評価の集計及び集計結果、並びにペーパーテストの集計結果と日常学習評価の集計結果の合算集計及び集計結果の意味で用いられている。本件補正前の上記記載では、「前記ペーパーテストの集計結果とペーパーテスト以外の日常学習による集計結果との両方または一方に任意の重みをつける手段」、「重みをつけて集計する手段」及び「双方の合算合計を集計する手段」がこの順に記載されている。「双方の合算合計を集計する手段」が、ペーパーテストの集計結果と日常学習評価の集計結果の合算合計を集計する手段の意味であることは明らかであるから、「重みをつけて集計する手段」をそれと同趣旨に解することはできない。したがって、「重みをつけて集計する手段」とは、ペーパーテストの得点の集計や日常学習評価の集計に際し、集計の元となる得点に重みをつけるとの趣旨に解さなければならない。
ところが、本件補正後の請求項1では、「重みをつけて集計する手段」が削除されているから、ペーパーテストの得点の集計や日常学習評価の集計に際し、集計の元となる得点に重みをつける旨の限定がされていないことになる。
そうすると、本件補正前後の請求項1の記載内容が相違することは明らかであるから、本件補正が明りようでない記載の釈明を目的とするものと認めることはできない。
また、本願明細書には「教科毎に観点のウエイトに差異があり・・・本発明のシステムでは、各観点のウエイトを任意に変更できるよう考慮して合算」(段落【0016】)との記載があり、【図3】の「観点別得点集計表」及び【図4】の「単元別得点集計表」には配点欄があるところ、単元や観点に配点をすることは、集計の元となる得点に重みをつけることにほかならないから、補正前の記載が誤記であると解さねばならない理由はない。
したがって、本件補正は、誤記の訂正又は明りようでない記載の釈明を目的とするとも認めることができない。
すなわち、本件補正は特許法17条の2第4項の規定に違反している。

2.新規事項追加
願書に最初に添付した明細書(以下、添付図面を含めて「当初明細書」という。)には、上記段落【0016】と同文の記載が段落【0028】にあり、「ウエイト」と「重み」が同義であることは認める。
しかし、「ペーパーテストの集計結果」及び「ペーパーテスト以外の日常学習による集計結果」を観点と同視することはできないから、上記記載は「前記ペーパーテストの集計結果とペーパーテスト以外の日常学習による集計結果に任意の重みをつけて合算する手段」の根拠にはならない。
当初明細書(特に添付図面)においては、「ペーパーテストの集計結果」及び「ペーパーテスト以外の日常学習による集計結果」を意味する用語として、「テスト」(又はその評価)及び「チェックリスト」(又はその評価)との用語が用いられており、【図19】には「テストとチェックリストの評価の合算の設定変更」と題する図が示されている。同図の説明としては「教師は、図18に示す「テストの成績総合評価の設定画面」70を呼び出して、選択欄71で、集計に使うテストを選択するとともに、設定欄72で、到達度何%以上を「A」「B」と評価するかを設定し、図19の「テストとチェックリストの評価の合算の設定変更画面」73を呼び出して、設定欄74で、要録サポートの教科別観点の評価を算出するときのテストの評価とチェックリストの評価を合算する方法を設定し」(段落【0060】)とあるだけである。同図には、テスト及びリスト(チェックリストと同義と解する)をA,B,Cの3段階評価した上で、両者の組み合わせに対応して、合算した評価(A,B,Cの3段階評価と解される。)を設定する様子が図示されているが、2種類の3段階評価に基づき、1つの3段階評価を得ることが「任意の重みをつけて合算」に該当するとは到底認めることができない。
当初明細書の【図21】には「年間評定の設定」と題する図が示されており、同図には「関意態」、「科学的思考」、「観察・実験」及び「知識・理解」との4つの観点毎に、評価(A,B,Cの3段階評価と認める。)及び換算点が示され、各換算点に「重み(%)」(その総和が100%)を乗じたものを合計して平均換算点を算出することが図示されている。同図における評価は、テストとチェックリストの評価の合算評価と解される(「また図21の「年間評定の設定画面」77では、観点別「A」「B」「C」評価の換算値を加重平均して合計を出し、評価基準に基づいて評定を出す。」との記載が上記段落【0060】の記載に続けて同段落中にある。)から、同図は「前記ペーパーテストの集計結果とペーパーテスト以外の日常学習による集計結果に任意の重みをつけて合算する手段」ではなく、観点毎の評価の合算について示した図であるが、「任意の重みをつけて合算」とは同図のように、合算前の集計結果又は評価を数値化した上で、重みをつけるものでなければならないが、「ペーパーテストの集計結果」及び「ペーパーテスト以外の日常学習による集計結果」の合算に当たり、合算前の2つの集計結果を数値化した上で重みをつけることなど、当初明細書には一切記載されていないし、自明の事項でもない。
請求人は、当初明細書の段落【0025】〜【0028】の記載を根拠に、「要録作成サポート機能が「得点」でなく「評価」を機能の対象としていることは上記各記載より明確である。そしてまた、この要録作成サポート機能はその機能を発揮するうえで「各観点のウエイト(重み)を任意に変更できるよう考慮して合算(第0028段落第4〜5行)」するので、任意の重みを付けられるのは「得点」でなく「評価」であり、合算されるのも「得点」でなく「評価」である。」(平成18年4月21日付け意見書1頁31〜35行)と主張している。なるほど、「要録作成サポート機能が「得点」でなく「評価」を機能の対象としている」ことは当審も認めるところであるが、重みつけされるのは「観点」であって、「ペーパーテストの集計結果」及び「ペーパーテスト以外の日常学習による集計結果」を観点と同視することはできないこと、及び評価を数値化した上で重みをつけることが当初明細書に記載されていないことは、前述のとおりであるから、請求人の上記主張を採用することはできない。
したがって、本件補正は当初明細書に記載した事項の範囲内においてされたものではないから、特許法17条の2第3項の規定に違反している。

[補正の却下の決定のむすび]
以上のとおり、本件補正は特許法17条の2第3項及び4項の規定に違反しているから、特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.特許請求の範囲の記載
平成15年4月21日付け及び平成18年4月21日付けの手続補正は何れも却下されたから、平成15年1月20日付けで補正された明細書に基づいて審理する。
当審において通知した拒絶の理由は、請求項1の記載が明確でなく(特許法36条6項2号に規定する要件を満たさない。)、請求項1の記載には新規事項があるというものである。
請求項1の記載は次のとおりである。
「学習者のペーパーテストの得点と、ペーパーテストでは評価することのできない日常の発言、技能、作品、学習態度等の日常学習評価の得点とを集計して、その双方を合算して総合評価し、通知表または指導要録記入のための資料を出力する学習評価および指導要録作成サポートシステムであって、
ペーパーテストの得点の入力手段と、ペーパーテストの得点を集計して、その集計結果の段階評価を判定する手段と、ペーパーテストの集計結果を記憶する手段と、ペーパーテストの集計結果を表示する手段と、
ペーパーテスト以外の日常学習評価の得点の入力手段と、日常学習評価の得点を集計して、その集計結果の段階評価を判定する手段と、日常学習評価の集計結果を記憶する手段と、日常学習評価の集計結果を表示する手段とを備え、
前記ペーパーテストの集計結果とペーパーテスト以外の日常学習による集計結果との両方または一方に任意の重みをつける手段と、重みをつけて集計する手段と、双方の合算合計を集計する手段と、その集計結果の段階評価を判定する手段と、その判定結果を通知表または指導要録に記入しやすく形式を整えて表示する手段とを備える
ことを特徴とする学習評価および指導要録作成サポートシステム。」

2.記載不備についての判断
「第2 1」で述べたとおり、「集計」又は「集計結果」との用語は、ペーパーテストの得点の集計及び集計結果、日常学習評価の集計及び集計結果、並びにペーパーテストの集計結果と日常学習評価の集計結果の合算集計及び集計結果の意味で用いられているが、「重みをつけて集計する手段」の集計対象が何であるのか明記されていない。「第2 1」で述べたとおり、「双方の合算合計を集計する手段」が、ペーパーテストの集計結果と日常学習評価の集計結果の合算し集計する手段の意味であることは明らかであるから、「重みをつけて集計する手段」をそれと同趣旨に解することはできず、ペーパーテストの得点の集計や日常学習評価の集計に際し、集計の元となる得点に重みをつけるとの趣旨に解さなければならない。ところが、集計対象が明記されていないことに加え、集計順序に沿って各手段が記載されていないことから、「重みをつけて集計する手段」の解釈には相当な構文解釈を必要とし、到底明確な記載とはいえない。
したがって、本願明細書の記載は特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。

3.新規事項についての判断
「第2 2」で述べたとおり、「ペーパーテストの集計結果」及び「ペーパーテスト以外の日常学習による集計結果」の合算に当たり、合算前の2つの集計結果を数値化した上で重みをつけることなど、当初明細書には一切記載されていないから、上記請求項1記載の「前記ペーパーテストの集計結果とペーパーテスト以外の日常学習による集計結果との両方または一方に任意の重みをつける手段」は当初明細書に記載されていないし、自明の事項でもない。
したがって、本願については、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たさない補正がされている。

4.進歩性
(1)補正発明の認定
以上の理由により、本願は拒絶されるべきであるが、進歩性についても検討を加えておく。本件補正は却下されたから、本件補正後の発明については検討する必要がないのであるが、本件補正後の特許請求の範囲は不明確であるため、便宜上、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)の進歩性についてまず検討する。
補正発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「学習者のペーパーテストの得点と、ペーパーテストでは評価することのできない日常の発言、技能、作品、学習態度等の日常学習評価の得点とを集計して、その双方を合算して総合評価し、通知表または指導要録記入のための資料を出力する学習評価および指導要録作成サポートシステムであって、
ペーパーテストの得点の入力手段と、ペーパーテストの得点を集計して、その集計結果の段階評価を判定する手段と、ペーパーテストの集計結果を記憶する手段と、ペーパーテストの集計結果を表示する手段と、
ペーパーテスト以外の日常学習評価の得点の入力手段と、日常学習評価の得点を集計して、その集計結果の段階評価を判定する手段と、日常学習評価の集計結果を記憶する手段と、日常学習評価の集計結果を表示する手段とを備え、
前記ペーパーテストの集計結果とペーパーテスト以外の日常学習による集計結果に任意の重みをつけて合算する手段と、その集計結果の段階評価を判定する手段と、その判定結果を通知表または指導要録に記入しやすく形式を整えて表示する手段とを備える
ことを特徴とする学習評価および指導要録作成サポートシステム。」

(2)引用刊行物記載の発明の認定
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-332882号公報(以下「引用例」という。)には、
「【請求項1】任意の学習科目についてその学習進度に応じた複数の単元に段階分けするとともにそれぞれの単元について当該学習科目の理解度や表現能力等の観点の別に設問した問題を学習者に解かせ、その回答を採点して各学習者の学習状況を評価する問題集に対応して用意されて、それら採点された各学習者の得点を自動集計する学習状況評価のための得点集計システムであって、
前記採点された各学習者の得点を入力するための入力手段と、
該入力された得点をはじめとする学習状況評価のための各種情報を表示するための表示手段と、
前記採点された各学習者の得点の入力画面として、各学習者の名前の一覧及び前記観点の一覧を表示してこれら学習者の名前と観点との各対応する欄への得点入力を促す画面を、前記単元の別に前記表示手段に表示する第1の表示制御手段と、
前記観点別の得点集計表画面として、各学習者の名前の一覧、及び前記単元の一覧、及びこれら学習者の名前と単元との各対応する欄への前記入力された得点の一覧、及びこれら一覧された単元毎の得点について各学習者毎に合計演算した値の一覧を、前記観点の別に前記表示手段に表示する第2の表示制御手段と、
を具えることを特徴とする学習状況評価のための得点集計システム。
【請求項2】前記第2の表示制御手段は更に、
前記各学習者毎に合計演算した値に対してそれら演算値の分布に基づくランク付け演算を実行し、それら演算したランク値の一覧をも前記観点別の得点集計表画面として前記表示手段に併せ表示する請求項1に記載の学習状況評価のための得点集計システム。」(1欄特許請求の範囲)との記載があり、請求項2に係る発明を以下では「引用発明」という。

(3)補正発明と引用発明との一致点及び相違点の認定
引用発明における「学習者の得点」が補正発明でいう「学習者のペーパーテストの得点」に相当することは明らかである。引用発明が「ペーパーテストの得点の入力手段と、ペーパーテストの得点を集計して、その集計結果の段階評価を判定する手段と、ペーパーテストの集計結果を記憶する手段と、ペーパーテストの集計結果を表示する手段」を備える(引用例【請求項2】記載の「ランク付け演算」が「集計結果の段階評価を判定」に当たる。)ことは明らかである。
補正発明は「学習評価および指導要録作成サポートシステム」であり、引用発明は「学習状況評価のための得点集計システム」であるが、これらは「学習評価サポートシステム」である点では一致する。
したがって、補正発明と引用発明とは、
「学習者のペーパーテストの得点を集計する学習評価サポートシステムであって、
ペーパーテストの得点の入力手段と、ペーパーテストの得点を集計して、その集計結果の段階評価を判定する手段と、ペーパーテストの集計結果を記憶する手段と、ペーパーテストの集計結果を表示する手段とを備える学習評価サポートシステム。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点〉補正発明が「ペーパーテスト以外の日常学習評価の得点の入力手段と、日常学習評価の得点を集計して、その集計結果の段階評価を判定する手段と、日常学習評価の集計結果を記憶する手段と、日常学習評価の集計結果を表示する手段」及び「前記ペーパーテストの集計結果とペーパーテスト以外の日常学習による集計結果に任意の重みをつけて合算する手段と、その集計結果の段階評価を判定する手段と、その判定結果を通知表または指導要録に記入しやすく形式を整えて表示する手段」を備えるのに対し、引用発明はこれら手段を備えない点。
なお、補正発明が「学習者のペーパーテストの得点と、ペーパーテストでは評価することのできない日常の発言、技能、作品、学習態度等の日常学習評価の得点とを集計して、その双方を合算して総合評価し、通知表または指導要録記入のための資料を出力する学習評価および指導要録作成サポートシステム」であることは、上記相違点に係る構成を備えた結果にすぎないから、別途独立した相違点とはしない。

(4)相違点についての判断及び補正発明の進歩性の判断
従来から、学習者の評価を行うに当たり、ペーパーテストの成績に「ペーパーテストでは評価することのできない日常の発言、技能、作品、学習態度等の日常学習評価」(以下「日常学習評価」という。)を加え総合判断することが、学校等教育現場において行われていたことはいうまでもない。そして、学校等教育現場では、上記総合判断をした上で、通知表又は指導要録を作成していた。
また、入学試験又は就職試験等においては、ペーパーテストを実施するとともに、これにペーパーテスト以外の評価を加えて採否判断を行うことも従来から行われている。具体的には、入学試験であれば出身校から提出される調査書が評価項目になっているし、入学試験,就職試験に共通して面接結果が評価項目になっている。
そして、引用発明を通知表又は指導要録の作成に供することができることは当然であるが、通知表又は指導要録の作成に当たっては、ペーパーテストの成績に加えて日常学習評価が必要であるから、同評価ができ、さらに同評価とペーパーテストの成績を総合できるシステムに引用発明を変更することは当業者が容易に想到できることといわなければならない。
ところで、「ペーパーテストの得点の入力手段と、ペーパーテストの得点を集計して、その集計結果の段階評価を判定する手段と、ペーパーテストの集計結果を記憶する手段と、ペーパーテストの集計結果を表示する手段」と「ペーパーテスト以外の日常学習評価の得点の入力手段と、日常学習評価の得点を集計して、その集計結果の段階評価を判定する手段と、日常学習評価の集計結果を記憶する手段と、日常学習評価の集計結果を表示する手段」(相違点に係る構成)を比較すると、入力される得点が「ペーパーテストの得点」であるのか「ペーパーテスト以外の日常学習評価の得点」であるのかの相違しかない。
日常学習評価のように、採点者等の主観が介在し、直接的には数値で表現しにくいものであっても、定量的に取り扱うために数値化することは周知である。そのことは、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-93403号公報(以下「周知例」という。)に「従来、多数の特性パラメータを有する複数の評価対象者相互間の特性の人事考課比較評価作業を行う際には、予め人事考課評価作業に必要な全ての特性パラメータを人事考課評価項目として抽出した評価表を各評価対象者の数だけ作成した後、各人事考課評価項目毎に独立して複数の評価者による評価結果データを総合して決定された評価記号を全人事考課評価項目に亙り記入し、各人事考課評価項目に記入された各評価記号を対応する評価配点に逐一換算し、もってこれらの評価配点を基に合計・加重・平均計算等を行うことにより、各評価対象者毎に総合評価を算出する査定方法が一般的に用いられていた。」(段落【0002】。下線は当審で加入。)と記載されているとおりである。そのほか、例えば、体操、フィギュアスケート、シンクロナイズドスイミング等のスポーツ種目では、採点者が演技に対して数値で評価し、それを総合して評価を下すことが普通に行われている。
上記周知技術を考慮すれば、日常学習評価を数値化することは設計事項というべきであり、数値化すれば、その取り扱いについては「ペーパーテストの得点」と同様の取り扱いができることはいうまでもない。
また、評価項目が複数ある場合の総合評価の手法として、各評価項目につき数値化した上で集計することが周知である以上、ペーパーテストの成績(もともと数値化されている)とペーパーテスト以外の評価(数値化に困難性はない)を、ともに数値として表現した上で合計することに困難性がないことは明らかである。
そうである以上、引用発明を日常学習評価ができ、さらに同評価とペーパーテストの成績を総合できるシステムに変更するに当たり、日常学習評価の得点の入力手段、日常学習評価の得点を集計する手段、日常学習評価の集計結果を記憶する手段及び日常学習評価の集計結果を表示する手段を備えることは設計事項というべきである。
さらに、数値化した日常学習評価とペーパーテストの成績を総合するに当たり、それぞれの集計結果に任意の重みをつけて合算することは、日常学習評価とペーパーテストの成績に任意の配点をすることに等しく設計事項というべきである。そのことは、例えば、入学試験において、ペーパーテストの成績と調査書の評価に配点を加えること、スキーのジャンプ競技において、飛距離点と飛型点に配点を加えること、及びフィギュアスケートにおいて規定演技の得点とフリー演技の得点に配点を加えることが従来行われていることからも頷ける。
最後に、日常学習評価の集計結果の段階評価を判定する手段、ペーパーテストと日常学習評価の集計結果の段階評価を判定する手段及び判定結果を通知表または指導要録に記入しやすく形式を整えて表示する手段について検討する。
引用発明がペーパーテストの集計結果の段階評価を判定する手段を備えることは(3)で述べたとおりである。引用発明を出発点として、日常学習評価とペーパーテストの成績を総合できるシステムを構築するに当たり、ペーパーテストの集計結果だけでなく、日常学習評価の集計結果の段階評価及び日常学習評価の集計結果の段階評価を判定できるようにする設計事項というべきである。また、通知表又は指導要録作成に用いるのであれば、最終的に表示されるものを通知表又は指導要録に記入するものと同一にすることが、記入手続を簡略化する上で有用であることは明らかであるから、「判定結果を通知表または指導要録に記入しやすく形式を整えて表示する手段」を採用することも設計事項というべきである。
以上のとおり、相違点に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
すなわち、補正発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本願発明の進歩性の判断
本願発明は、平成15年1月20日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定されるものであり、その記載は1.のとおりである。
本願発明と補正発明の相違は、「前記ペーパーテストの集計結果とペーパーテスト以外の日常学習による集計結果との両方または一方に任意の重みをつける手段と、重みをつけて集計する手段と、双方の合算合計を集計する手段と、その集計結果の段階評価を判定する手段と、その判定結果を通知表または指導要録に記入しやすく形式を整えて表示する手段」(本願発明)と「前記ペーパーテストの集計結果とペーパーテスト以外の日常学習による集計結果に任意の重みをつけて合算する手段と、その集計結果の段階評価を判定する手段と、その判定結果を通知表または指導要録に記入しやすく形式を整えて表示する手段」(補正発明)の点のみであり、本願発明の上記構成は明確ではないので、2.で述べたとおりに解釈する。
本願発明における「両方または一方に」との修飾語は、実質的に何らの限定をするものでないから、ペーパーテスト及びペーパーテスト以外の日常学習による集計結果を得るに当たり、「重みをつけて集計する手段」が発明特定事項とされているかどうかだけが異なる(補正発明ではされておらず、本願発明ではされている。)。
そこで検討するに、ペーパーテストであれば、出題項目も軽重や、テスト時期の軽重等に応じて重み付けすることは設計事項であるし、日常学習評価であれば細部評価項目(観点といってもよい)に応じて重み付けすることは設計事項である(日常学習評価ではないものの、周知例には「評価配点を基に合計・加重・平均計算等を行う」と記載されており、重み付けがされている。)から、結局のところ、本願発明と補正発明の相違は本願発明の進歩性を肯定しなければならないほどの相違にはならない。
したがって、本願発明も引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願の明細書は特許法36条6項2号に規定する要件を満たしておらず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たさない補正がされており、かつ本願発明が特許法29条2項の規定により特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明の進歩性等を検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-01 
結審通知日 2006-06-07 
審決日 2006-06-20 
出願番号 特願平10-98812
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G09B)
P 1 8・ 561- WZ (G09B)
P 1 8・ 55- WZ (G09B)
P 1 8・ 57- WZ (G09B)
P 1 8・ 121- WZ (G09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平井 聡子木村 史郎  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 長島 和子
酒井 進
発明の名称 学習評価および指導要録作成サポートシステム  
代理人 野本 陽一  

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