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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  H01R
管理番号 1140895
審判番号 無効2005-80046  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-08-21 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-02-15 
確定日 2006-08-17 
事件の表示 上記当事者間の特許第2985851号発明「 多極型モジュラジャック」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2985851号の請求項2、3に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯・本件発明
本件特許第2985851号の発明についての出願は、平成3年6月28日に出願した特願平3-158959号の一部を平成9年10月27日に新たな特許出願としたものであって、平成11年10月1日にその発明について特許の設定登録がなされたものであり、その請求項2、3に係る発明は、明細書又は図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項2、3に記載された次のとおりのものと認める。
(1)請求項2に係る発明(以下、「本件特許発明1」という。)
「モジュラプラグの接触子に接触する多数の接触ばねと外部電線を接続する多数の端子片とを基台に設けてユニット化したモジュラインサートと、
埋込型の配線器具用に規格化された取付枠に取着できる形状に形成するとともに、該取付枠に結合する枠取付手段を備えたカバーと、を有し、
モジュラインサートとカバーとの間を結合する結合手段を設けたととも
に、
各端子片は、端子片の一端縁に臨んで開放されていて被覆電線を圧入したときに絶縁被覆を破って被覆電線の内部導体を端子片に電気的に接続する圧接スリットを備えて成ることを特徴とする多極型モジュラジャック。」
(2)請求項3に係る発明(以下、「本件特許発明2」という。)
「枠取付手段は、カバーの両側縁に突設された結合爪片、または、カバーの両側面に設けられた結合孔である請求項1または請求項2いずれか記載の多極型モジュラジャック。」

2.請求人の主張
これに対して、請求人は、特許第2985851号(本件特許発明1、2についての特許)はこれを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、本件特許発明1、本件特許発明2は共に、甲第1号証及び甲第2号証に開示された発明に基いて、或いは、甲第1号証ないし甲第3号証に開示された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、したがって、本件特許発明1、本件特許発明2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから無効とされるべきものである旨主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出している。
【証拠方法】 甲第1号証:特開昭61-32970号公報
甲第2号証:米国特許第4261633号明細書
甲第3号証:特開平3-112081号公報

3.被請求人の主張
一方、被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判請求の費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、本件特許発明1および本件特許発明2は、請求人が提出した甲第1号証ないし甲第3号証の各々に開示された発明及びそれらの発明の組み合わせに対し、それぞれ進歩性を具備しているから、本件特許発明1、本件特許発明2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない旨主張している。

4.甲第1号証ないし甲第3号証
(1)甲第1号証(以下、「刊行物1」という。)
刊行物1には、次の事項が図面と共に記載されている。
ア)「電話線に接続されたプラグに結合可能であって、複数の配線器具を保持する既製の取付枠への取付寸法を配線器具と等しくして成る電話ジャック。」(特許請求の範囲)
イ)「本発明は…、その主な目的とするところは、複数の配線器具が保持される既製の取付枠に取着されることにより、配線器具を固定するための取付枠や化粧プレートを流用して取り付けられるようにした電話ジャックを提供することにあり、」(1頁右欄12行〜17行)
ウ)「第1図中1は合成樹脂のような絶縁性材料で形成されたケーシングであって、第3図に示すようにボディ11と、ボディ11に結合されるカバー12とから構成される。…ボディ11の左右両側面にはそれぞれ結合突起13が突設される。結合突起13の中央部には嵌合孔14が前後に貫通して設けられる。一方、カバー12の両側縁にはそれぞれ後方に向かって結合脚片15が延設され、各結合脚片15の先端部にはそれぞれ左右方向における外側に向かって突出する嵌合突起16が突設される。…第4図ないし第6図に示すように、カバー12の結合脚片15をボディ11の嵌合孔14に挿入することにより、嵌合突起16の前面が嵌合孔14に係止されボディ11とカバー12とが一体に結合される。」(2頁左上欄10行〜右上欄8行)
エ)「ボディ11の後面には前方に凹没した凹溝18が上下方向に走る形に形成され、凹溝18の左右両側には端子部21が形成される。第7図に示すように、各端子部21はボディ11内に配設されたジャック本体2の各接触ピン22に接続された端子板23をそれぞれ3枚ずつ有し、各端子板23間はそれぞれボディ11に一体に設けられた仕切板24により隔絶されている。各端子板23にはそれぞれ端子ねじ25が螺着されている。…各端子板23に接続する電線の色表示26がなされる…」(2頁右上欄9行〜左下欄4行)
オ)「この絶縁板19はボディ11に対して着脱自在であって、絶縁板19を外すことによりジャック本体2が露出する。ジャック本体2は第10図に示すように、弾性を有した線状の接触ピン22が多数設けられたものであって、後述するプラグ3を挿入することにより、各接触ピン22がプラグ3側の対応する各接触子31と接触して互いに電気的に接続されるようになっている。」(2頁左下欄6行〜14行)
カ)「カバー12には第4図および第9図に示すように、ボディ11に設けたジャック本体2に対応する位置で前方に開放された挿入口28が形成されている。また、カバー12の左右両側面にはそれぞれ後述する取付枠6に連結される上下一対の連結突起53が一体に突設され、また連結突起53よりも前方においてカバー12の左右側面には連結孔57が形成されている。挿入口28は略矩形状で、かつ下辺に切欠部29が形成された形状となっている。この挿入口28を通してケーシング1内にプラグ3が挿入される。」(2頁左下欄15行〜右下欄5行)
キ)「以上のように構成された電話ジャックAは第1図および第2図に示すように、既製の取付枠6に取り付けられる。…左右両縦枠の各一対の保持孔64a、64bに上記ケーシング1から突設された各連結突起53(53a)をそれぞれ嵌合させることによりケーシング1が取付枠6に保持されるのである。」(3頁左下欄15行〜右下欄14行)
ク)第1図、第2図には、既製の取付枠6の保持孔64aにカバー12の両側面に設けられた連結突起53が嵌合することにより取付枠6とカバー12が結合されている電話ジャックが、第3図〜第5図には、カバー12の結合脚片15がボディ11の嵌合孔14に嵌合して、ボディ11とカバー12とが一体に結合される電話ジャックが、第7図には、ボディ11の内部に、弾性を有した線状の接触ピン22が多数設けられたジャック本体2とジャック本体2の各接触ピン22に接続された端子板23とを設け、各端子板23にはそれぞれ端子ねじ25が螺着されている電話ジャックがそれぞれ図示されている。

上記ア)からク)の記載事項からみて、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
「プラグ3の接触子31に接触する多数の弾性を有した線状の接触ピン22を備えたジャック本体2と、端子ねじ25が螺着され、電線が接続される多数の端子板23と、を設けたボディ11と、
既製の取付枠に取着できる形状に形成すると共に、該取付枠に連結される連結突起53が左右両側面に突設されたカバー12と、を有し、
ボディ11の左右両側面には嵌合孔14が設けられ、カバー12の両側縁には結合脚片15が延設され、カバー12の結合脚片15をボディ11の嵌合孔14に挿入することにより、ボディ11とカバー12とを一体に結合した電話ジャック。」

(2)甲第2号証(以下、「刊行物2」という。)
刊行物2には、次の事項が図面と共に記載されている。(請求人訳)
ケ)「本発明は、新規又は既存の電話配線に組み付けられるアウトレットジャック(コンセント接続器具)に関する。」(第1欄5行〜9行)
コ)「図8及び図9は、打ち抜き形成された自己起立式金属端子6を示す。この金属端子6は、最初、金属板から打ち抜かれる。この打ち抜かれた金属板の一部は長手方向シーム(継目)38を備えた円筒状の中空バレル部分36に形成され、シーム38はワイヤ受け入れスロットを構成し、このワイヤ受け入れスロットには、1つ又は2つ以上の絶縁ワイヤが押し入れられる。」(第3欄63行〜4欄1行)
サ)「シーム38はバレル部分36の自由端42に開放されたフレア状拡大入口路40を有し、横方向スロット44がシーム38と交差し、この横方向スロット44はバレル上部分を、第1対の弾性ジョー46A、46Bと、第2対の弾性ジョー48A、48Bとに分ける。」(第4欄1行〜6行)
シ)「図示しない絶縁電線の自由端がバレル部分36の内側で、入口路40に沿って位置される。…この電線は、スロット38に沿って入口路40に押し入れられ、ついには、ジョー46Aとジョー46Bとの間に位置決めされる。これらのジョーは、電線の絶縁体を切り分け、これにより露出された電線の導電体の両側に把持係合する。」(第4欄9行〜23行)
ス)「図3は完成した配線モジュール1を示し、この完成した配線モジュール1では、複数の絶縁電線53が対応する自己起立式端子6のスロット38で電気接続して終端している。」(第4欄57行〜60行)

上記ケ)〜ス)の記載事項からみて、刊行物2には次の発明(以下、「刊行物2記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
「長手方向シーム(スロット)38を備えた多数の円筒状の自己起立式金属端子6を備え、シーム38はバレル部分36の自由端に開放されたフレア状拡大入口路40を有し、絶縁電線は、スロット38に沿って入口路40に押し入れられ、ジョー46Aとジョー46Bとの間に位置決めされ、これらジョーは、電線の絶縁体を切り分け、これにより露出された電線の導電体の両側に把持係合するアウトレットジャック(コンセント接続器具)。」

(3)甲第3号証(以下、「刊行物3」という。)
刊行物3には、次の事項が図面と共に記載されている。
セ)「本発明は、モジュラプラグが着脱自在に挿入されるケース内に、…モジュラブロックと、…多数の端子ブロックとが納装された多極型モジュラジャックに関するものである。」(1頁右欄5行〜10行)
ソ)「ケース1は、JIS規格や日本配線器具工業会規格で規格化されている大角形3個用の取付枠に最大3個まで取り付けることができる寸法に合成樹脂により形成されている。すなわち、規格化された取付枠に取着できる配線器具の単位寸法と同等の取付寸法を有しているのである。」(2頁左下欄3行〜8行)

上記セ)、ソ)の記載事項からみて、刊行物3には次の発明(以下、「刊行物3記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
「多極型モジュラジャックのケース1が取り付けられる規格化された取付枠。」

5.対比
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と刊行物1記載の発明とを比較すると、刊行物1記載の発明の「プラグ3」、「弾性を有した線状の接触ピン22」、「電線」、「取付枠に連結される連結突起53」、「電話ジャック」は、その機能、構造からみて、本件特許発明1の「モジュラプラグ」、「接触ばね」、「外部電線」、「取付枠に結合する枠取付手段」、「多極型モジュラジャック」にそれぞれ相当する。
また、刊行物1記載の発明の「ボディ11」自体は、接触ピン22を備えたジャック本体2と端子板23が設けられる対象物であるから、本件特許発明1の「基台」に相当し、刊行物1記載の発明の「端子板23」と本件特許発明1の「端子片」は、外部電線が接続される部材であるから、端子部材である点で共通する。そして、本件特許発明1の「ユニット化」、「モジュラインサート」は、一般的な用語の意味、発明の詳細な説明の記載からみて、「部品を組み立てて1つの構成単位にすること」、「モジュラプラグが着脱自在に挿入され、挿入されたモジュラプラグを外部電線と電気的に接続する部材」と解されるところ、刊行物1記載の発明の「接触ピン22を備えたジャック本体2と、…端子板23と、を設けたボディ11」は、モジュラプラグが着脱自在に挿入され、挿入されたモジュラプラグを外部電線と電気的に接続する部材であって、1つの構成単位となっているから、本件特許発明1の「ユニット化したモジュラインサート」に相当する。
さらに、刊行物1記載の発明の「ボディ11の左右両側面には嵌合孔14が設けられ、カバー12の両側縁には結合脚片15が延設され、カバー12の結合脚片15をボディ11の嵌合孔14に挿入することにより、ボディ11とカバー12とを一体に結合した」ことは、モジュラインサートとカバーとの間を結合する結合手段を設けたことである。
したがって、本件特許発明1と刊行物1記載の発明は、本件特許発明1の文言を用いて表現すると、
「モジュラプラグの接触子に接触する多数の接触ばねと外部電線を接続する多数の端子部材とを基台に設けてユニット化したモジュラインサートと、
取付枠に取着できる形状に形成するとともに、該取付枠に結合する枠取付手段を備えたカバーと、を有し、
モジュラインサートとカバーとの間を結合する結合手段を設けた多極型モジュラジャック。」で一致し、下記(3)の点で相違す
る。

(2)本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1の枠取付手段を、「カバーの両側縁に突設された結合爪片、または、カバーの両側面に設けられた結合孔である」と限定するものである。
ところで、刊行物1記載の発明の「取付枠に連結される連結突起53が左右両側面に突設されたカバー12」における「連結突起53」は、その機能、構造からみて、本件特許発明2の「カバーの両側縁に突設された結合爪片」に相当するから、結局のところ、本件特許発明2と刊行物1記載の発明は、本件特許発明2の文言を用いて表現すると、
「モジュラプラグの接触子に接触する多数の接触ばねと外部電線を接続する多数の端子部材とを基台に設けてユニット化したモジュラインサートと、
取付枠に取着できる形状に形成するとともに、該取付枠に結合する、カバーの両側縁に突設された結合爪片である枠取付手段を備えたカバーと、を有し、
モジュラインサートとカバーとの間を結合する結合手段を設けた多極型モジュラジャック。」で一致し、下記(3)の点で相違す
る。

(3)本件特許発明1、2と刊行物1記載の発明との相違点
<相違点1>
端子部材が、本件特許発明1、2は、端子片の一端縁に臨んで開放されていて被覆電線を圧入したときに絶縁被覆を破って被覆電線の内部導体を端子片に電気的に接続する圧接スリットを備えて成る端子片であるのに対して、刊行物1記載の発明は、端子ねじ25が螺着され、外部電線が接続される端子板23である点。
<相違点2>
取付枠が、本件特許発明1、2は、埋込型の配線器具用に規格化された取付枠であるのに対して、刊行物1記載の発明は、既製の取付枠である点。

なお、被請求人は、本件特許発明1、2と刊行物1記載の発明は、
(ア)本件特許発明1、2では、接触ばねと端子片とを基台に設けているのに対して、刊行物1記載の発明は、接触ばねを設けた基台(ジャック本体2)はあるが、ねじ端子は、基台(ジャック本体2)とは別体のボディに設けている点、
(イ)刊行物1記載の発明は、モジュラインサートとカバーとの間を結合する結合手段を有していない点、
で相違する旨主張している。(答弁書9頁3行〜11頁11行、口頭審理陳述要領書7頁16行〜9頁2行、10頁21行〜11頁5行参照)
しかしながら、刊行物1記載の発明は、接触ばねは確かにジャック本体2に設けているが、ジャック本体2はボディ11に設けていることから、接触ばねもボディ11に設けていると云える。また、上記5.(1)で述べたように、刊行物1記載の発明の「ボディ11」自体は、本件特許発明1、2の「基台」に相当するから、刊行物1記載の発明も接触ばねと端子片とを基台に設けていると云える。さらに、刊行物1記載の発明は、ボディとカバーとの間を結合する結合手段を有していて、「接触ピン22を備えたジャック本体2と、…端子板23と、を設けたボディ11」は、上記5.(1)で述べたように、本件特許発明1、2の「ユニット化したモジュラインサート」に相当するから、刊行物1記載の発明は、モジュラインサートとカバーとの間を結合する結合手段を有していると云える。
したがって、被請求人が主張している上記(ア)(イ)の点は相違点とはならず、被請求人の主張は採用できない。

6.当審の判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
相違点1に係る本件特許発明1、2の技術的意義は、外部電線として被覆電線を用いて圧接スリットに圧入するだけで外部電線との結線が行えることになり、結果的に結線作業が容易になって結線作業に要する時間が大幅に短縮されるとともに、端子としてねじや鎖状ばねを用いたものに比して全体を小型化できることにある。
ところで、刊行物2記載の発明の「円筒状の自己起立式金属端子6」は、外部電線に接続されるものであるから、本件特許発明1、2の「端子片」に相当し、また、刊行物2記載の発明の「長手方向シーム(スロット)38」は、バレル部分36の自由端に開放されたフレア状拡大入口路40を有していて、絶縁電線が該シーム38に押し入れられた際、該シーム38を構成するジョーが、電線の絶縁体を切り分け、露出された電線の導電体を把持するものであるから、本件特許発明1、2の「端子片の一端縁に臨んで開放されていて被覆電線を圧入したときに絶縁被覆を破って被覆電線の内部導体を端子片に電気的に接続する圧接スリット」に相当する。
したがって、刊行物2記載の発明における「円筒状の自己起立式金属端子6」は、本件特許発明1、2の文言を用いて表現すると、「端子片の一端縁に臨んで開放されていて被覆電線を圧入したときに絶縁被覆を破って被覆電線の内部導体を端子片に電気的に接続する圧接スリットを備えて成る端子片」であると云える。
そして、刊行物2記載の発明の、「アウトレットジャック(コンセント接続器具)」は、本件特許発明1、2でいう「多極型モジュラジャック」であるから、刊行物2記載の発明は、本件特許発明1、2と同じ技術分野に属し、また、刊行物2記載の発明は、圧接スリットの機能、構造からして、上記本件特許発明1、2と同じ技術的意義を有するものである。
よって、端子部材を、刊行物1記載の発明の「端子ねじ25が螺着され、外部電線が接続される端子板23」に代えて、本件特許発明1、2の「端子片の一端縁に臨んで開放されていて被覆電線を圧入したときに絶縁被覆を破って被覆電線の内部導体を端子片に電気的に接続する圧接スリットを備えて成る端子片」とすることは、刊行物2記載の発明から当業者が容易に想到し得たことである。

なお、被請求人は、刊行物2記載の発明は、ナットドライバーなどの標準的な工具を用いて外部電線を端子に接続することを前提にしているため、スペースを大きくとる、スリットと横方向スロットを有する筒状端子を用いているのであるから、本件特許発明1、2とは端子の形態と作用効果が相違する旨主張している。(答弁書11頁19行〜16頁10行、口頭審理陳述要領書9頁3行〜25行参照)
しかしながら、本件の特許請求の範囲には、端子片として「端子片の一端縁に臨んで開放されていて被覆電線を圧入したときに絶縁被覆を破って被覆電線の内部導体を端子片に電気的に接続する圧接スリットを備えて成る」としか記載されておらず、端子の形態(筒状、平板状等)、外部電線を押し込むための工具については特定されていない。
そして、上記で述べたとおり、本件の特許請求の範囲の記載の限りでは、本件特許発明1、2と刊行物2記載の発明は、端子部材に関して同じ構成、同じ技術的意義を有するものである。
よって、被請求人の主張は採用できない。

(2)相違点2について
刊行物3記載の発明は、「多極型モジュラジャックのケース1が取り付けられる規格化された取付枠」であり、規格化された取付枠を埋込型の配線器具用とすることは通常行われていることである。
したがって、取付枠を、刊行物1記載の発明の「既製の取付枠」に代えて、本件特許発明1、2の「埋込型の配線器具用に規格化された取付枠」とすることは、刊行物3記載の発明から当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本件特許発明1、2の作用、効果についてみても、刊行物1〜3記載の発明から当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別顕著なものとは云えない。

7.むすび
以上のとおり、本件特許発明1、2は、刊行物1〜3記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1、2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-08-29 
結審通知日 2005-08-31 
審決日 2005-09-13 
出願番号 特願平9-294323
審決分類 P 1 113・ 121- Z (H01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 川本 真裕
柳 五三
登録日 1999-10-01 
登録番号 特許第2985851号(P2985851)
発明の名称 多極型モジュラジャック  
代理人 川端 さとみ  
代理人 福田 あやこ  
代理人 西澤 利夫  
代理人 松尾 和子  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 井口 喜久治  
代理人 井▲ざき▼ 康孝  
代理人 松下 満  
代理人 小松 陽一郎  
代理人 辻村 和彦  
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