ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C07K 審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C07K |
---|---|
管理番号 | 1140939 |
審判番号 | 不服2000-12815 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1992-09-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-08-14 |
確定日 | 2006-08-11 |
事件の表示 | 平成 3年特許願第501864号「人体化抗体」拒絶査定不服審判事件〔平成 3年 7月11日国際公開、WO91/09967、平成 4年 9月24日国内公表、特表平 4-505398〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
〔1〕 本件請求項1乃至20に係る発明は、平成13年9月27日付で手続補正された特許請求の範囲の請求項1乃至20の記載により特定されており、そのうち請求項1に記載された発明は下記の通りである(以下、本件発明ともいう。)。 「複合重鎖と相補性軽鎖とを含む、あらかじめ決められた抗原に対して親和性を有する抗体分子であって、 該複合重鎖は、アクセプター抗体重鎖フレームワーク残基とドナー抗体重鎖抗原結合残基とを含む可変領域を有し、 該ドナー抗体は上記あらかじめ決められた抗原に対して親和性を有し、 該複合重鎖において、Kabat の番号付け系による位置23、24、31〜35、49、50〜65、71、73、78及び95〜102のアミノ酸残基は少なくともドナー残基である、 上記抗体分子。」 ここで、Kabat の番号付け系による位置31〜35、50〜65及び95〜102のアミノ酸残基は、抗体重鎖におけるCDR位置に相当するから、本件発明に係る抗体分子は、アクセプター抗体重鎖中の可変領域中のアミノ酸残基を、各CDRに加えてフレームワーク内の23、24、49、71、73及び78位をドナー抗体由来残基に変更したことを特徴とするものであるといえる。 〔2〕一方、本件明細書中には、当該特定の位置のアミノ酸残基だけをドナー残基とした複合重鎖と任意の軽鎖からなる抗体分子を製造したことは記載されておらず、当該抗体分子がCD3抗原等の「あらかじめ決められた抗原」に対する結合親和性を保持することを裏付けるような具体的な記載はない。 本件実施例1には、CD3抗原に対するマウス抗体OKT3(CD3モノクローナル抗体)とヒト枠組み抗体REIとの「CDR接木抗体(以下、「ヒト化抗体」という。)」の重鎖について以下のように記載されている。 本件明細書の15.3.(特表平4-505398号公報、第16頁右上欄8-10行、以下当該公報における該当頁を示す。)において、「マウス抗体の場合と類似の抗体親和性を維持するためには、6,23および24の変化の存在が重要である(同第16頁右上欄)」ことを前提とし、これら3残基と共にさらに8残基のマウス残基への変更(表2)を検討して、「位置6,23,24,48,49,71,73および78の少なくとも1部はより重要であることを示している。(同第17頁左上欄)」とし、さらに「これらの結果および他の結果から、本発明者らは、gH341A(JA185)構築体に用いられた11個のマウス枠組み残基中、6,23,24,48および49のすべて、および最大の結合親和性のためには多分、71,73および78で、マウス残基を維持することが重要であるとの結論を導いている。(同第17頁右上欄)」と結論づけている。 そうしてみると、少なくともヒト化CD3抗体重鎖を製造するためには、ヒト枠組み抗体重鎖としてREIを選択した場合に、CDR以外に、6,23,24,48及び49の全て、最大の結合親和性のためにはさらに71,73及び78がマウス由来残基である抗体重鎖分子とする必要があり、少なくとも6位及び48位をドナー残基とすることが必須である点で本件請求項1の記載と一致しない。 また、本件実施例として記載されている他のヒト化抗体重鎖においては、抗原の種類ごとに、そして同時に用いたヒトの枠組み抗体の種類ごとに、ドナーとなるマウス残基に変換すべき残基の位置が異なっている。例えば、CD4T細胞受容体抗体重鎖の場合は、KOL枠組み抗体の位置24,35,57,58,60,88及び91でヒトからマウスへの変更があり、上記ヒト化CD3抗体重鎖の場合とも一致していない。 このように、明細書中の各実施例からみて、「あらかじめ決められた抗原」に対するヒト化抗体重鎖をコードするDNAを設計するに際して、CDR以外にこの位置さえドナー残基に変更すれば確実に結合親和性が得られる、というような規則性は見いだすことはできず、むしろ、対象となる抗原の種類ごとに、またその際枠組み抗体として選択されるヒト抗体重鎖ごとに、CDR位置と共にドナー残基に変更すべき位置が異なっていると解する方が自然である。 そうであるから、本件優先日前の技術常識を勘案しても、本件明細書の記載からでは、アクセプター抗体重鎖中の可変領域中のアミノ酸残基のうちで各CDRと共に、さらにどの位置の残基をドナー残基に変更すれば、任意の「あらかじめ決められた抗原」に対する結合親和性を有するヒト化抗体重鎖を構築できるのかについては不明であり、請求項1に記載の如く、アクセプター抗体重鎖中の各CDR(31〜35、50〜65、及び95〜102位)以外の特定アミノ酸残基、すなわち23、24、49、71、73及び78位をドナー残基に変更したとしても、確実に「あらかじめ決められた抗原」に対する結合親和性を有することになるといえないことは明らかである。 したがって、本件明細書は請求項1に係る発明を当業者が容易に実施できるように記載されておらず、本件明細書中には請求項1に係る発明についての開示が実質的になされていない。当該請求項1を直接的もしくは間接的に引用する請求項2乃至20に係る発明についても同様である。 〔3〕付記: 当審では、平成17年3月24日付で、請求人に対してファクシミリによる審尋を行い、上記の本件明細書中の記載不備について指摘すると共に、「ただし、本件実施例として具体的に記載されている、特定の位置のアミノ酸残基をドナー残基とする、特定の抗原に対して親和性を有するヒト化抗体分子のみに限定されれば上記拒絶理由は解消する。」旨の上記拒絶理由が解消する可能性がある場合についても示唆した。 しかしながら、これに対して請求人が平成17年4月14日付で提示してきた補正案は、当該示唆を満たすものではなく、その理由についての説明も不十分である。 したがって、再度の拒絶理由は通知しない。 〔4〕以上述べたとおりであるから、この出願は、特許法第36条第4項又は第5項及び第6項に規定する要件を満たしていない。 よって、結論の通り審決する。 |
審理終結日 | 2005-04-28 |
結審通知日 | 2005-05-06 |
審決日 | 2005-05-18 |
出願番号 | 特願平3-501864 |
審決分類 |
P
1
8・
531-
Z
(C07K)
P 1 8・ 534- Z (C07K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 新見 浩一、高堀 栄二 |
特許庁審判長 |
佐伯 裕子 |
特許庁審判官 |
種村 慈樹 河野 直樹 |
発明の名称 | 人体化抗体 |
代理人 | 歌門 章二 |
代理人 | 長沼 暉夫 |
代理人 | 浅村 皓 |
代理人 | 浅村 肇 |