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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C12G 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12G |
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管理番号 | 1141055 |
審判番号 | 不服2004-4773 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-12-12 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-02-09 |
確定日 | 2006-07-31 |
事件の表示 | 平成11年特許願第192175号「健康飲料」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月12日出願公開、特開2000-342242〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年6月3日の出願であって、平成15年12月25日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年2月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。 2.平成16年2月9日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年2月9日付の手続補正を却下する。 [理由] 上記補正により、特許請求の範囲の請求項1は、「生ウコンのスライスを用いこれを食酢類に漬けてなるウコン酢に水又は、炭酸水を加えることを特徴とする健康飲料。」と補正されたところ、補正の基準となる平成15年6月12日付手続補正に係る特許請求の範囲の請求項1又は2(以下、「補正前の請求項1又は2」という。)は、 「【請求項1】食酢1.8lの中に生ウコンのスライス1kgあるいは乾燥きざみウコンを漬け込み、2〜3カ月冷暗所において漬けこんであることを特徴とするウコン酢の製造方法。 【請求項2】請求項1記載のウコン酢を主成分として、これに水や清涼飲料水等を、更には甘味料を添加してあること特徴とする健康飲料。」であって、使用する食酢と生ウコンのスライスは、各々「1.8l」と「1kg」という数値で限定されたものであるから、上記補正により上記各数値を削除することは、実質上特許請求の範囲を拡張することになり、上記補正は、特許法17条の2,4項に規定する事項のどれにも該当しない。 したがって、本件補正は、特許法17条の2,4項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 なお、本件補正は、上述の理由により却下すべきものであるが、仮に却下されない場合に、本件補正が、特許法17条の2,4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2、5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について念のため以下に検討する。 (独立特許要件について) (1)本願補正発明 本願補正発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】生ウコンのスライスを用いこれを食酢類に漬けてなるウコン酢に水又は、炭酸水を加えることを特徴とする健康飲料。」 (2)引用例の記載内容 原査定の拒絶の理由に引用された、特開平1-309675号公報(以下、「引用例1」という。)には、下記の(a)ないし(g)の事項が記載されている。 (a)「酢に、少なくとも朝鮮人参を含む7種の生薬成分を含有させたことを特徴とする、健康飲用酢。」(特許請求の範囲の項) (b)「この発明は、複数種の生薬成分を含有して、健康の維持増進に極めて優れた効果を持つ健康飲用酢に関するものである。(1頁左下欄9行〜11行) (c)「この発明は、上記した従来の問題点を解決して、健康飲用酢に生薬成分を含有させて、酢による健康増進効果に、生薬による薬効を合わせ持ったものとして、より強力にして積極的な健康促進効果を有する、健康飲用酢を提供することを目的とするものである。」(2頁左上欄1行〜6行) (d)「広口瓶(1)に、リンゴ酢と、米酢と、クエン酢とを適量づつ混合したものに、甘味料としてハチミツ、ステビアおよび糖類を加え、さらに栄養素として、ビタミンC、ビタミンB2、クロレラCGFを少量添加した飲用酢(2)を1.8リットル入れ、5年根の朝鮮人参(3)を1本と、けい皮、またたび、べに花、はぶ草、くちなし、かりん、かんぞう、ばんざくろ、なつめ、くこ、さんざし、みかんの皮からなる12種の乾燥したもの合計120グラムの生薬(4)とを浸漬し、少なくとも2週間冷暗所に貯蔵して、生薬(4)の薬効成分を飲用酢に溶け込ませたものである。」(2頁右上欄5〜16行) (e)「生薬類の成分抽出期間は少なくとも2週間は必要で、熟成には夏期約1カ月、冬期約2カ月を必要とし、熟成後飲用するものである。なお、熟成後3カ月程度追熟期間をおくと、まろやかな味となって一層美味しく飲用できるものである。」(2頁右下欄11〜16行) (f)「飲用方法は、5〜10倍に水で薄め、氷を浮かべてジュース風に、または熱いお場で薄めてホットで、あるいは清酒、焼酎、ウィスキー、ブランデー等で割って飲むなどである。」(2頁右下欄末行〜3頁左上欄3行) (g)「以上説明したこの発明に係る健康飲用酢によれば、生薬類の抽出成分が酢の強烈な刺激臭と酸味とを和らげて飲み易くするとともに、人体に対し、酢による健康増進効果に加えて7種類以上の生薬が相乗作用する薬効を併せ持つこととなり、人体の機能を活性化し、病気に対する抵抗力を備えた健康体を維持増進することができるとともに、従来の薬用酒と異なり、アルコール分を含んでいないため、酒に弱い婦女子でも安全に飲用することができるものである。」(3頁右上欄8〜17行、「発明の効果」の項) 上記(a)ないし(g)の記載からみて、引用例1には、「少なくとも朝鮮人参を含む7種の生薬を用いこれを食酢に浸漬してなる生薬酢に水を加えて製造した健康飲用酢」が記載されているといえる。 同特開平11-113554号公報(以下、「引用例2」という。)には、「複数の薬草類を一括して蒸留酒に浸漬したのち残渣を除去して整えるようにしたことを特徴とする薬草酒製造方法。」(請求項1)、「前記薬草類は、サラカチャ、タラ木、クービ、ユーカリスター、カンゾウ、レイシ、クチナシの実、クコの実、ローズヒップ、オウセイ、ウコン、サルノコシカケ又はニッキを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の薬草酒製造方法。」(請求項4)、「図1は、上記13種類の薬草類を1セットにして一括して蒸留酒に浸漬する場合の各薬草類の量をグラム(g)で示す図表である。同図に示すように、サラカチャを42.14g、タラ木を10.37g、クービを35.84g、ユーカリスターを1.88g、甘草(カンゾウ)を10.28g、レイシを12.52g、クチナシの実を11.74g、クコの実を16.47g、ローズヒップを10.37g、オウセイ21.25g、ウコン千切りを5.69g、サルノコシカケを8.07g、及びニッキを13.74g、全種合計で200.72gを用意する。」(段落【0010】)、及び「図2は、上記の薬草類を夫々単独で浸漬する方法と全種類を一括して浸漬する方法とを比較検討するために、浸漬・ブレンド試験を行うに際して泡盛中に浸漬すべく仕分けされた各薬草類の一括投入量と単独投入量を示す図表である。」(段落【0014】)と記載されている。 (3)対比・判断 本願補正発明と引用例1に記載された発明を対比すると、前者の「生ウコン」は生薬の範疇に入るから、両者は、「生薬を用いこれを食酢類に漬けてなる生薬酢に水を加えることを特徴とする健康飲料」の点で一致し、生薬として、前者は、スライスした生ウコンを用いるのに対して、後者では、少なくとも朝鮮人参を含む7種の生薬を用いる点で、両者は相違する。 上記相違点について検討すると、本願明細書の“従来の技術”の欄にも記載されているようにウコンを生薬として利用することは本願出願前に周知であった(必要なら、例えば木村康一他1名著「薬用植物学各論・改稿版」株式会社廣川書店、昭和53年1月15日発行、63頁の“ウコン”の項参照。)こと、及び生薬を食酢や蒸留酒に浸漬して生薬の有効成分を抽出して薬用酒や健康飲用酢を製造することは本願出願前に当業者が極く普通に行っていた(上記引用例1及び2の他にも、例えば特開平4ー158778号、特開平1ー120275号、特開平7ー252160号、特開平9ー9952号公報参照。)こと、更に薬用酒の原料としてウコンを使用することが引用例2に記載されていることを併せ考慮すると、引用例1の「少なくとも朝鮮人参を含む7種の生薬」に代えてウコンを用いることは、当業者が容易に想到し得ることであり、その際生の状態のウコンを用い、それをスライスして用いることも当業者が適宜なし得る程度のことである。 そして、本願補正発明に係る効果は、引用例1及び2に記載された事項から予測されるところを超えて優れているとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 (4)むすび 以上のとおり、仮に本件補正が、特許法17条の2,4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとしても、本件補正は、同法17条の2、5項で準用する同法126条5項の規定に違反するものであり、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成16年2月9日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成15年6月12日付手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「食酢1.8lの中に生ウコンのスライス1kgあるいは乾燥きざみウコンを漬け込み、2〜3カ月冷暗所において漬けこんであることを特徴とするウコン酢の製造方法。」 (引用例) 原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び2とその記載事項は、前記「(独立特許要件について)の(2)」に記載したとおりであるから、引用例1には、「朝鮮人参等の12種の生薬を用い、これら生薬120グラムを食酢1.8リットルに浸漬し、少なくとも2週間冷暗所に貯蔵して、前記生薬の薬効成分を飲用酢に溶け込ませてなる健康飲用酢の製造方法」が記載されているといえる。 (対比・判断) 本願発明と引用例1に記載された発明を対比すると、前者の「生ウコン」は生薬の範疇に入るから、両者は、「食酢の中に生薬を漬け込み、所定期間冷暗所において漬け込んであることを特徴とする生薬酢の製造方法」の点で一致し、ただ、(i)前者は、生薬としてスライスした生ウコンあるいは乾燥きざみウコンを用いたウコン酢であって、生ウコンのスライスを使用する場合、その使用量を食酢「1.8l」に対し「1kg」に限定しているのに対して、後者は、朝鮮人参等の12種の生薬を用いた健康飲用酢であって、前記生薬の使用量を食酢「1.8l」に対し「120g」に限定している点、及び(ii)漬け込む期間を、前者は、「2〜3カ月」と限定しているのに対して、後者では、「少なくとも2週間」と限定している点で、両者は相違する。 上記相違点について検討する。 相違点(i)について 本願明細書の“従来の技術”の欄にも記載されているようにウコンを生薬として利用することは本願出願前に周知であった(必要なら、例えば木村康一他1名著「薬用植物学各論・改稿版」株式会社廣川書店、昭和53年1月15日発行、63頁の“ウコン”の項参照。)こと、及び生薬を食酢や蒸留酒に浸漬して生薬の有効成分を抽出して薬用酒や健康飲用酢を製造することは本願出願前に当業者が極く普通に行っていた(上記引用例1及び2の他にも、例えば特開平4ー158778号、特開平1ー120275号、特開平7ー252160号、特開平9ー9952号公報参照。)こと、更に薬用酒の原料としてウコンを使用することが引用例2に記載されていることを併せ考慮すると、引用例1の「朝鮮人参等の12種の生薬」に代えてウコンを用いてウコン酢とすることは、当業者が容易に想到し得ることであり、その際生ウコンをスライスして用い、該ウコンの使用量を食酢「1.8l」に対し「1kg」に設定することも、当業者が適宜なし得る程度のことである。 相違点(ii)について 後者の「少なくとも2週間漬け込む」は、その文言からして「2〜3カ月漬け込む」ことを包含していることは明らかである。 ウコン等の生薬を食酢に浸漬することにより生薬の有効成分を食酢中に抽出するとき、食酢中に抽出される有効成分の量は時間の経過と共に増大することを考えると、後者の「少なくとも2週間漬け込む」が「2〜3カ月漬け込む」ことを除外していると解する余地はない。 してみると、上記相違点は両者の実質的な相違点とはいえない。 そして、本願発明に係る効果は、引用例1及び2に記載された事項から予測されるところを超えて優れているとはいえない。 (むすび) 以上のとおり、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本出願に係る他の請求項について検討するまでもなく、本出願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-05-11 |
結審通知日 | 2006-05-16 |
審決日 | 2006-06-02 |
出願番号 | 特願平11-192175 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(C12G)
P 1 8・ 121- Z (C12G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 六笠 紀子 |
特許庁審判長 |
田中 久直 |
特許庁審判官 |
阪野 誠司 河野 直樹 |
発明の名称 | 健康飲料 |