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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1141110
審判番号 不服2003-23035  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-12-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-27 
確定日 2006-08-22 
事件の表示 平成9年特許願第125323号「電子部品接着用ボンドの塗布方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月4日出願公開、特開平10-322004、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成9年5月15日の出願であって、その請求項1に係る発明は、明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものであると認める。
「内部に貯溜されたボンドを空気圧で加圧することによりノズルから吐出して基板に塗布するシリンジと、シリンジの下方に設けられた基板の位置決め部と、シリンジを基板に対して相対的に水平方向へ移動させる移動テーブルと、塗布されたボンドを光学的に認識してボンドの塗布量を求める認識手段とを備えたボンドの塗布装置による電子部品接着用ボンドの塗布方法であって、使用するボンドの種類やノズルの種類が変わるごとに予め設定された塗布パターンに従ってボンドの試し塗布を行う工程と、試し塗布された各塗布点のボンドを認識手段で光学的に認識してボンドの塗布量を求める工程と、この求められた塗布量のデータと各塗布点の位置データから、シリンジに吐出動作を行わせるための空気圧の加圧を開始するタイミングからシリンジが水平移動してノズルの下端部に吐出されたボンドを基板に塗布するまでの間の吐出遡及時間のパラメータと基板に塗布されるボンドの塗布量との関係を示す塗布条件調整データを作成し、塗布条件調整データ記憶部に記憶させる工程と、各ボンドの塗布点の位置データにより求められる前記吐出遡及時間のパラメータと前記塗布条件調整データに基づいて前記空気圧の加圧時間を調整する工程と、を含むことを特徴とする電子部品接着用ボンドの塗布方法。」(以下、「本願発明」という。)

2.原査定の理由の概要
これに対して、原査定の拒絶の理由の概要は、「本願発明は、本願出願前に頒布された特開平1-253295号公報(以下、「引用例1」という。)及び特開平4-246886号公報(以下、「引用例2」という。)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。

3.引用例の記載事項
(1)上記引用例1には、「配線基板上への接着剤塗布方法」に関して、図面第1図〜第6図とともに第3頁左上欄第6行〜左下欄第4行に、
「接着剤塗布ヘッド1が下降する以前にXYテーブル5が動作し、プリント基板4上の第1の接着剤塗布点がノズル2の直下に来るようにプリント基板4を位置決めするとともに、接着剤を小径ノズル2内部に圧送して小径ノズル2先端部に微少量吐出させる。この後、接着剤塗布ヘッド1が下降してノズル2の先端をプリント基板4に接触又は極く近接させることにより、プリント基板4上の第1の塗布点に接着剤を塗布し、接着剤塗布ヘッド1は再び上昇する。
次にプリント基板4上の第2の接着剤塗布点がノズル2の直下に来るようにXY子テーブル5の動作によりプリント基板4を位置決めする。この場合、該第2の接着剤塗布点と前記第1の接着剤塗布点との間の距離が長い場合はXYテーブル5によるプリント基板4の位置決め時間が長くなるので、その間、接着剤の圧送を一時停止して接着剤吐出量過多を防止し、該第2の接着剤塗布点に到達する少し前に接着剤の圧送を再開するが、前記第1および第2の接着剤塗布点間の距離が短かく、XYテーブル5によるプリント基板4の位置決め時間が短かくてすむ場合は、接着剤を連続的に圧送吐出させる。そして、該第2の接着剤塗布点をノズル2の直下に持ち来たす上記位置決め動作が完了したとき、塗布ヘッド1を下降させて、該第2の接着剤塗布点に接着剤を塗布する。このようにして第4図(a)又は第5図(a)のように各電子部品6を仮固定するための複数の点状の接着剤3がプリント基板4上の夫々の電子部品固定部位に塗布される。
また、一個の電子部品6を仮固定するのに前述のように複数点に接着剤を塗布する代りに、接着剤塗布ヘッド1を下降させたまま接着剤を圧送しつづけながら、同時にXYテーブル5によりプリント基板4を移動させることにより、第6図(a)の如く直線または曲線状に接着剤3を塗布してもよい(その動作タイミングを第1図中の右側の部分に示す)。」
と記載されている。
(2)また、上記引用例2には、「塗布装置」に関して、図1〜14とともに第5頁第7欄第21行〜第8欄第15行に、
「【0035】各ステップに基づき本塗布動作が行なわれて、今度使用するノズル(16)がNOZZLE1のノズル(16)である場合、図7に示す認識データ(DISPENSE RECOGNITION DATA)のモード(MODE)が「1」(即ち、設定塗布回数に達したら塗布量認識を行なう。)であるから、塗布回数カウンタ(44)が該データ(DISPENSE RECOGNITION DATA)に設定された塗布回数(DISPENSE)の1000回に達していたら、次の1001回目(但し、1000回に達したらカウンタ(44)の内容はクリアされて1回となる。)の本塗布動作前に塗布量補正式算出用試し打ちが行なわれる。このとき、図6に示すロット管理&認識データ(MANEGEMENT DISPENSE & DISPENSE RECOGNITION DATA)内の基板内認識データ(R)宣言に基づいて、基板内試し打ちステップカウンタ(40)で示されるステップ(M-NO)12に設定されたプリント基板(1)上の余白部(1D)のX,Y座標位置にシリンジ(17)に所定加圧時間TA(ここでは50[mSEC]である。)をかけてノズル(16)より吐出させた接着剤が試し打ちされる。そして、その位置への試し打ちが行なわれたら、X軸駆動モータ(2)及びY軸駆動モータ(3)によりXYテーブル(4)を移動させて、プリント基板(1)の試し打ちされた接着剤の位置を認識装置の撮像領域に移動させて、該接着剤の塗布量を認識させる。そして、CPU(30)内の図示しない計算装置で該接着剤の塗布量(塗布面積)を計算する。この計算結果はRAM(28)内に記憶されると共に回数カウンタ(38)の内容を1減算する。該NOZZLE1のノズル(16)は図7に示す回数(COUNT)に3回と設定されているため。再び所定加圧時間TAで吐出された接着剤の試し打ちが行なわれる。即ち、ステップ(M-NO)13で示されるプリント基板(1)上のX,Y座標位置に接着剤が試し打ちされる。次に、その試し打ちされた接着剤の塗布量が認識装置で認識される。その接着剤の塗布面積を前述したようにして計算しRAM(28)に記憶すると共に回数カウンタ(38)の内容を1減算する。更に、同様にしてステップ(M-NO)14に設定された試し打ち位置に試し打ちが行なわれ、計算装置で塗布面積が計算され、その計算結果がRAM(28)に記憶されると共に回数カウンタ(38)の内容が0回となる。そして、前述のRAM(28)に記憶された塗布面積の3回の平均塗布面積SAを計算し、RAM(28)に記憶する。」
と記載されている。

4.当審の判断
(1)上記引用例1には、本願発明の「内部に貯溜されたボンドを空気圧で加圧することによりノズルから吐出して基板に塗布するシリンジと、シリンジの下方に設けられた基板の位置決め部と、シリンジを基板に対して相対的に水平方向へ移動させる移動テーブルとを備えたボンドの塗布装置による電子部品接着用ボンドの塗布方法」という発明特定事項に実質的に相当する事項が記載されているものと認められる。
(2)また、上記引用例2には、本願発明の「塗布されたボンドを光学的に認識してボンドの塗布量を求める認識手段を備え、使用するボンドの種類やノズルの種類が変わるごとにボンドの試し塗布を行う工程と、試し塗布された各塗布点のボンドを認識手段で光学的に認識してボンドの塗布量を求める工程とを含むこと」という発明特定事項に実質的に相当する事項が記載されているものと認められる。
(3)しかしながら、引用例1及び2のいずれにも、本願発明の「この求められた塗布量のデータと各塗布点の位置データから、シリンジに吐出動作を行わせるための空気圧の加圧を開始するタイミングからシリンジが水平移動してノズルの下端部に吐出されたボンドを基板に塗布するまでの間の吐出遡及時間のパラメータと基板に塗布されるボンドの塗布量との関係を示す塗布条件調整データを作成し、塗布条件調整データ記憶部に記憶させる工程と、各ボンドの塗布点の位置データにより求められる前記吐出遡及時間のパラメータと前記塗布条件調整データに基づいて前記空気圧の加圧時間を調整する工程とを含むこと」という発明特定事項は、記載あるいは示唆されているとはいえない。
(4)そして、本願発明は、上記発明特定事項としたことによって、明細書に記載された「ボンドやノズルの種類を変更しながらボンドの塗布を行う場合でも、塗布タイミングでノズル下端部に付着しているボンドの付着量を一定に保つことができ、加圧バルブの駆動時間を調整するという簡単な方法で塗布量が安定したボンドの塗布が行える。さらに、ノズルからボンドを吐出させた後のボンドの付着量が安定していないボンドの戻り時間中にノズルを基板に着地させてボンドの塗布を行えるため、吐出遡及時間を短縮することができ、したがって各塗布点での塗布動作の時間間隔が短縮され、トータルのタクトタイムを著しく短縮することができる」という格別な作用効果を奏するものと認められる。
(5)したがって、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願については、原査定の拒絶の理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2006-08-01 
出願番号 特願平9-125323
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 豊島 ひろみ  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 柴沼 雅樹
平瀬 知明
発明の名称 電子部品接着用ボンドの塗布方法  
代理人 永野 大介  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  

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