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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01G |
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管理番号 | 1141140 |
審判番号 | 不服2003-2686 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-02-20 |
確定日 | 2006-08-07 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第188744号「屋外敷詰ブロックと屋上緑化方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 3月28日出願公開、特開平 7- 79638号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯・本願発明 本願は、平成5年6月30日の特許出願であって、平成14年12月19日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年2月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。 そして、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成15年2月20日付けの手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。 (本願発明) 「周縁を突き合わせて屋外に敷き詰めて施工される平板なタイル状ブロック(11)において、敷き詰められて隣り合うブロック(11・11)の突き合う周縁に、上下方向に嵌合する形状の複数個の鉤部(12)と溝部(13)が交互に続いており、ブロック(11)の表面には周囲が凸部(14)に縁取られた10個以上の複数個の凹部(15)を有し、裏面には凹部(17)が表面の凹部(15)に対応させて形成されており、それら対応する表裏の各凹部(15)の谷底(18)と凹部の谷底(19)の間に水抜孔(20)が貫通しており、表面の凹部(15)の深さ(d)がブロックの厚み(t)の半分以上であることを特徴とする屋外敷詰ブロック。」 2.引用例 (1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平5-30858号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面の図1〜12とともに、次の記載がある。 (イ)「【産業上の利用分野】本発明は、土木資材,農業・園芸資材,建築資材等に供される保水と透水とを備えた基盤ユニットに関する。」(公報第2頁第1欄の段落【0001】) (ロ)「【従来の技術】土木資材,農業・園芸資材等に供されるブロックで特に透水性の要求される用途においては透水性が良好なこと、目詰まりがしにくく、加工が簡単であること、耐圧性や断熱性にすぐれていること等により発泡ビーズを接着剤で固める等してブロック状に切断したものが用いられている。そして、上記のブロックは、排水効果をもたせるために特別に連続した空孔を形成しているので、その圧縮強度は約0.4kg/cm2以下であり、通常使用される発泡スチロールブロックの1/3以下であり、また、圧縮クリープの限界強度も1/6以下と考えられるので使用個所も限定されるという問題があった。この種発泡樹脂ブロックを建築物の地下室の排水工法に用いたものとして特開昭60-109428号公報があるが、これに使用される防水ユニット30は、図11,図12に示されるように、四角形の平面状をなす板状体で形成され、…(中略)…また、上面には配筋用の溝32,32が形成されている。そして、上記の防水ユニット30を基礎として打設された基礎コンクリート上に隣り合う防水ユニット30のそれぞれの凹部が相互に連通するように並設し、上方よりコンクリートを打設するものである。」(注;下線は当審が付記した。公報第2頁第1欄〜第2欄の段落【0002】〜【0003】) (ハ)「【課題を解決するための手段】本発明に係る基盤ユニットは、前記の目的を達成するために、所定の厚さを有する基盤の表面側に複数の凹陥部を開口して該凹陥部を保水部となすとともに、前記基盤を貫通する複数の透水孔を穿設したものであり、前記の基盤を型内成形によって発泡成形した合成樹脂の発泡体とし、また、その表面側に非発泡樹脂を形成するのがよい。また、前記した基盤の表面側に凹設する凹陥部は溝状であっても、円形であっても方形があってもよく、その形状はどのようなものであっても差支えない。また、複数の凹陥部のそれぞれの面積・体積は同一であっても、異なっていてもよく、凹陥部の数も特に限定されるものでなく要は基盤ユニットの保水量によって任意に設定されるものであり、更に透水部の数・形状等も基盤ユニットの透水量によって設定されるものである。」(注;下線は当審が付記した。公報第2頁第2欄の段落【0006】) (ニ)「本発明の…(中略)…基盤ユニットを屋上等に多数敷並べて、その上面にフィルタを介して盛土をして植栽、園芸用に供するものであるが、雨水,散水等による水は基盤ユニットの透水部より排水されるとともに、その一部は表面側に凹設された凹陥部に保水されて植栽,園芸用として保水され、盛土部に適度な湿り気を与えるものである。」(公報第3頁第3欄の段落【0009】) (ホ)「図7は、本発明の第3実施例で、21は基盤ユニットであり、該基盤ユニットは、例えば発泡ポリスチレン又は他の合成樹脂よりなり所要の厚みを有する四角形の独立気泡の発泡体より構成され、その表面側に複数の所定の深さの円形の凹陥部22,22,……を凹設させてある。…(中略)…25,25,……は、前記凹陥部22と周壁23との間の底部に穿設された裏面側に貫通する透水孔であり、…(中略)…前記した凹陥部22の形状は、円形として説明したが、円形のみならず、四角形であっても楕円状であってもよく、どのような形状であってもよい。」(公報第4頁第6欄の段落【0019】) (ヘ)「本第3実施例は以上のように構成されるので、基盤ユニット21を屋上等に多数敷並べてフィルタ等を介して盛土して植栽等を行ったとき、雨水あるいは散水した水は、基盤ユニット21の表面側に凹設した凹陥部22内に流入し、…(中略)…凹陥部22内に複数設けた裏面側にまで貫通する透水孔25,25,……より透水されるものである。…(中略)…基盤ユニット21の裏面側に幅広の溝26,26,……をその一側方から他側方に至るまで刻設し、前記の透水孔25,25,……を幅広の溝26,26に開口せしめれば、該幅広の溝26,26が排水路として役立つものである。」(公報第4頁第6欄の段落【0020】) (ト)図7には、少なくとも「幅広の溝26」が各「凹陥部22」に対応して形成されるとともに、当該「凹陥部22」に対応する「幅広の溝26」の内底と「凹陥部22」の内底との間に「透水孔25」が貫通するように形成され、「凹陥部22」の周囲がその内底に対して凸部に縁取られ、かつ、凹陥部22の内底の深さを基盤ユニット21の厚みの略半分とした態様が示されている。 これらの記載事項、並びに図面に示された内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 (引用発明) 「屋上等に多数敷並べられるものであって、所要の厚みを有する四角形の発泡体より構成される基盤ユニットにおいて、基盤ユニット21の表面側には周囲がその内底に対して凸部に縁取られた複数個の凹陥部22が凹設され、その裏面側には幅広の溝26が表面側の上記凹陥部22に対応させて形成されており、それら対応する表裏の凹陥部22の内底と幅広の溝26の内底との間に透水孔25が貫通するように形成されている基盤ユニット。」 (2)同じく、実願平2-86326号(実開平4-43947号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、「人工植物栽培床」に関して、図面の第1〜6図とともに、次の記載がある。 (イ)「本考案の要旨とするところは、支持基盤上に周囲を囲む配置に設置した外周囲い壁内に平底容器状の多数の受皿材を並べ、、…(中略)…人工植物栽培床に存する。」(明細書第3頁第11行〜第4頁第1行) (ロ)「1はビルの屋上コンクリート床等のコンクリート製の支持基盤であり、その上面に本考案の人工植物栽培床を設置している。この栽培床は、支持基盤1上に多数並べた受皿材2,2……をもって底部を構成しており、…(中略)…各受皿材2は…(中略)…方形状の底壁4の周囲に側壁5が一体に立ち上げられ、内部には仕切6が一体に形成されている。…(中略)…四辺の側壁5,5……の外側面には、互いに対称配置に蟻溝状の螺合用凹部12と、これに嵌ま合う蟻状の嵌合用凸部13とが一体に成形されている。このように構成された受皿材2,2……をそれぞれ互いに隣り合うもの間の嵌合用凹部12内に嵌合用凸部13を嵌め合わせ、互いに分離不能ならしめた状態で支持基盤1上に並べている。」(当審注:上記記載中の「螺合」は「嵌合」の、同「嵌ま合う」は「嵌り合う」の、それぞれ誤記と認める。明細書第4頁第11行〜第5頁第14行) 3.対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「屋上等に多数敷並べられる」「所要の厚みを有する四角形の発泡体より構成される基盤ユニット」と本願発明の「屋外に敷き詰めて施工される平板なタイル状ブロック」とは、共に「屋外に敷き詰めて施工されるブロック構造体」である点で共通するといえるから、その機能ないし構造から見て、引用発明の(基盤ユニット21の)「表面側には周囲がその内底に対して凸部に縁取られた複数個の凹陥部22が凹設され」た点は、本願発明の(ブロック(11)の)「表面には周囲が凸部(14)に縁取られた」「複数個の凹部(15)を有」する点に相当し、また、引用発明の「その裏面側には幅広の溝26が表面側の上記凹陥部22に対応させて形成されており、それら対応する表裏の凹陥部22の内底と幅広の溝26の内底との間に透水孔25が貫通するように形成されている」点は、本願発明の「裏面には凹部(17)が表面の凹部(15)に対応させて形成されており、それら対応する表裏の各凹部(15)の谷底(18)と凹部の谷底(19)の間に水抜孔(20)が貫通して」いる点に、それぞれ相当するということができる。 してみると、両者は、 「屋外に敷き詰めて施工されるブロック構造体において、ブロック構造体の表面には周囲が凸部に縁取られた複数個の凹部を有し、裏面には凹部が表面の凹部に対応させて形成されており、それら対応する表裏の各凹部の谷底と凹部の谷底の間に水抜孔が貫通している屋外敷詰ブロック構造体。」の点で一致し、次の点で相違するといえる。 (相違点1) 屋外に敷き詰めて施工されるブロック構造体の形態に関して、本願発明では、ブロック構造体が「平板なタイル状ブロック」であるのに対し、引用発明では、そのような平板なタイル状ブロックといえるかが明らかでない点。 (相違点2) 屋外に敷き詰めて施工されるブロック構造体の周縁の構造に関して、本願発明では、敷き詰められて隣り合うブロックの突き合う周縁に、上下方向に嵌合する形状の複数個の鉤部と溝部が交互に続いているものであるのに対し、引用発明では、その敷き詰められて隣り合う周縁がそのような嵌合構造を備えていない点。 (相違点3) 複数個の凹部の数及び深さに関して、本願発明では、それぞれ「10個以上」及び「ブロックの厚みの半分以上」としているのに対し、引用発明では、凹部の数に限定がなく、その深さが基盤ユニットの厚みの略半分である点。 そこで、上記の相違点1〜3につき、以下検討する。 (相違点1について) ところで、上記引用例1にも、土木資材,農業・園芸資材等に供されるブロックの従来技術に関して、建築物の排水工法に使用される防水ユニット30として、四角形の平面状をなす板状体で形成されたもの、すなわち、本願発明の「平板なタイル状ブロック」に相当するものが例示されている(上記「2.(1)」の(ロ)参照)ように、屋外等に多数敷並べられるブロック構造体の形態として、「平板なタイル状ブロック」の形態を備えるものは、従来より周知の形態のものであったということができる。 そうすると、相違点1に係る本願発明の構成は、引用発明のブロック構造体の形態として、当業者が適宜採用し得た設計的事項であるといえる。 (相違点2について) ところで、引用例2には、互いに隣り合う側壁を嵌め合わせて屋上コンクリート床等に並べて設置される栽培床を構成するところの方形状で平底容器状の受皿材(本願発明の「周縁を突き合わせて屋外に敷き詰めて施工される平板なタイル状(屋外敷詰)ブロック」に相当する。)の四辺の側壁の外側面に、互いに対称配置に蟻溝状の嵌合用凹部(本願発明の「溝部」に相当する。)と蟻状の嵌合用凸部(本願発明の「鉤部」に相当する。)とを形成することにより、当該隣り合う受皿材の嵌合用凹部内に嵌合用凸部を嵌め合わせて、互いに分離不能ならしめた状態で並べるように構成したものが開示されている。 そして、多数敷並べられる平板状のブロック構造体に互いに隣り合う周縁を嵌め合わせる構造を設けたものにおいて、それらの互いに隣り合う同士の突き合わせられる周縁に、上下方向に嵌合する形状の複数個の鉤部と溝部を設ける嵌合構造のものとすること(例えば、実願昭62-81675号(実開昭63-190304号)のマイクロフィルムの第3図参照)や、これらの複数個の鉤部と溝部とを交互に続けて設けた構造のものとすること(例えば、特開平1-163308号公報の第1〜2図や第12図参照)も、従来より周知の技術であったといえる。 してみると、相違点2に係る本願発明の構成は、引用発明のブロック構造体の周縁に、上記引用例2に示されたのと同様の嵌合構造を付加するものと変更し、当該変更をするに際して、従来より周知の嵌合構造を採用することにより、当業者が容易に想到し得た設計上の変更であるといわざるを得ない。 (相違点3について) ところで、複数個の凹部の数及び深さに関して、本願発明が、それぞれ「10個以上」及び「ブロックの厚みの半分以上」とした点の技術的意義につき、本願明細書の記載を参酌しても、その段落【0005】に「表面の凹部(15)の深さ(d)がブロックの厚み(t)の半分以上であることを特徴とする」との記載が、また、段落【0010】に「屋外敷詰ブロック11は合成樹脂組成物を射出成形してつくられる。…(中略)…屋外敷詰ブロック11の縦・横の寸法(h)は50〜100cmとし、その厚み(d)は7〜10cmにするとよい。」(注;「その厚み(d)」は「その厚み(t)」の誤記と思われる。)との記載があるに止まり、複数個の凹部の数及び深さにつき上記のように特定した点に、如何なる格別な技術的意義等があるのかが明細書において何ら説示されていないのであるから、同上特定した点に格別な技術的意義ないし臨界的意義があるものと解することができない。 一方、引用発明は、複数の凹陥部の数やその凹陥部22の内底の深さについて何ら限定するものではないとともに、その凹陥部22の内底の深さについては、引用例1の図7(上記「2.(1)」の(ト)参照)に、基盤ユニット21の厚みの略半分とした態様が示されている、いいかえれば、その深さにつき本願発明が含む範囲である「ブロックの厚みの半分」とほぼ同じ程度のものが示されている。 してみると、相違点3に係る本願発明の構成は、引用発明のブロック構造体における複数個の凹部の数及び深さとして、当業者が必要に応じて適宜選択し得た設計的事項であるといわざるを得ない。 そして、本願発明が奏する作用、効果も、引用例1、2並びに従来より周知の技術から当業者が予測し得るものであって、格別なものということができない。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1、2並びに従来より周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-04-24 |
結審通知日 | 2006-05-23 |
審決日 | 2006-06-05 |
出願番号 | 特願平5-188744 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A01G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉田 佳代子 |
特許庁審判長 |
大元 修二 |
特許庁審判官 |
木原 裕 小山 清二 |
発明の名称 | 屋外敷詰ブロックと屋上緑化方法 |
代理人 | 千葉 茂雄 |