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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1141154 |
審判番号 | 不服2001-12591 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-02-06 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-07-19 |
確定日 | 2006-08-11 |
事件の表示 | 平成11年特許願第209897号「ゲーム装置、ゲームシステム、記録媒体、及び、画像表示方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月 6日出願公開、特開2001- 29657〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第一.手続の経緯 本願は、平成11年7月23日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成13年4月25日に手続補正書が提出され、その後、平成13年6月11日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月24日付で手続補正がなされたものである。 第二.平成13年7月24日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成13年7月24日付の手続補正を却下する。 [理由] [1]補正後の本願発明 本件補正にて、特許請求の範囲の請求項について為された補正は、請求項1、12、21,24であるところ、請求項1は以下のように補正された。 「入力信号を入力できる入力手段を備え、予め定められたプログラムにしたがってゲームを実行するゲーム装置であって、当該ゲーム装置個々に、固有の識別データが割り当てられているゲーム装置において、 前記固有の識別データを保持するIDメモリを内蔵しており、特定の入力信号が前記入力手段を用いて入力された場合、内蔵された当該固有の識別データを用いて、前記入力信号と前記固有の識別データとの間の関係を判定し、 判定結果によって定まるイベント及びアイテムの少なくとも一方を発生させる入力信号処理手段を備えている ことを特徴とするゲーム装置。」 (なお、下線部は補正箇所を示す。) [2].補正要件の検討 請求項1についてなされる本件補正は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「識別データの保持手段」として「IDメモリ」との限定を付加するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)特許法第36条、第29条第2項について以下に検討する。 <1>.独立特許要件(特許法第36条)の検討 本願補正発明に「入力信号を入力できる入力手段を備え、・・・、特定の入力信号が前記入力手段を用いて入力された場合、」と記載されているが、特定の入力信号と、ゲーム進行に際して行われる操作による操作入力信号とは相違するのか否か、相違するとした場合に如何に相違するのか不明瞭であり、さらに、特定の入力信号は如何なる場合に入力されるのか不明瞭であるから、本願補正発明は特許を受けようとする発明が明確ではない。 したがって、本願補正発明は、特許法第36条第6項第2号の規定に反するものであるから、出願の際独立して特許を受けることができないものである。 <2>.独立特許要件(特許法第29条第2項)の検討 (1).引用刊行物記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、特開平10-314454号公報、及び周知事項を例示する刊行物には、以下の事項が記載されている。 (A).特開平10-314454号公報、 (A-1).「【請求項8】 下記の要件を備えてなることを特徴とする請求項1乃至6に記載の電子機器装置。 (イ)前記操作部は、仮想生命体又は生物の育成に係る処置を入力する入力手段を有すること。 (ロ)前記仮想生命体又は生物の育成に係る制御データを記憶した記憶部を有すること。 (ハ)前記入力手段から育成に係る処置を入力したときに、これと対応する制御データを前記記憶部から読み取り当該読み取った制御データに基づいて仮想生命体又は生物の育成に係る制御処理を行う制御部を有すること。 (ニ)前記制御部は、仮想生命体又は生物が成長するに応じて1又は2以上の成長段階を設定する設定手段を有すること。 (ホ)前記記憶部は、前記成長段階毎に容姿及び性格の異なる複数種類の仮想生命体又は生物を記憶していること。 (ヘ)前記制御部は、前記仮想生命体又は生物が成長する過程で当該仮想生命体又は生物から呼出を行う呼出手段を有すること。 (ト)前記呼出は、仮想生命体又は生物の成長に必要な内容と、緊急を要しない内容とを含むこと。 (チ)前記入力手段は、仮想生命体又は生物の成長に必要な内容の呼出に対して世話を行う手段と、緊急を要しない内容の呼出に対して躾を行う手段とを有すること。 (リ)前記制御部は、前記仮想生命体又は生物が前記成長段階に達したときに、それまでの成長過程における、前記呼出に対する世話の程度及び躾の程度を判定する判定手段を有すること。 (ヌ)前記制御部は、前記判定手段が判定した世話の程度及び躾の程度に基づいて前記記憶された複数種類の仮想生命体又は生物の中から一の仮想生命体又は生物を選択する選択手段を有すること。 (ル)前記制御部は、前記成長段階に達した仮想生命体又は生物を前記選択された仮想生命体又は生物に変化させる変化手段を有すること。」 (A-2).「【0046】次に、作用を説明する。まず、図3乃至図8を参照して仮想生命体の育成シミュレーションに係る作用を説明する。図3は、育成シミュレーションのメインのフロー制御を示したフローチャートである。」 (A-3).「【0050】続いて、ステップSP19からステップSP20へ進む。ステップSP20では隠れキャラクターの表示処理を行う。第3世代のキャラクター画像から第4世代のキャラクター画像KT7〜KT12のいずれかの仮想生命体に変化したあとでは、ある条件及び確率に合致した場合だけ第4の成長段階へ移行して第5世代のキャラクター画像KT13の仮想生命体に変化する。すなわち、キャラクター画像KT13は、いわゆる隠れキャラクターであり、必ず表示されるとは限らない。また、第3世代のキャラクター画像から第4世代のキャラクター画像KT7〜KT12のいずれかの仮想生命体に変化したあとでは、前記隠れキャラクターとは異なる特別の条件で、基地局限定のキャラクターが表示される。すなわち、特定の基地局を経由して通話した通話時間が所定以上に達した場合、又は特定の基地局へ呼出情報を所定回数以上送信した場合、又は特定の基地局から呼出情報を所定回数以上受信した場合、又は前記呼出情報の送受信回数が所定以上に達した場合は、その基地局固有の仮想生命体画像がROM3から読み出されて表示される。」 (A-4).してみると、刊行物Aには以下の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。 「操作部入力手段の操作により仮想生命体を育成し、仮想生命体の成長に応じて次の成長段階のキャラクターに移行する育成ゲームにおいて、特定の基地局を経由して通話した通話時間が所定以上に達した場合、特定の基地局へ呼出情報を所定回数以上送信した場合、特定の基地局から呼出情報を1回を含む所定回数以上受信した場合、又は前記呼出情報の送受信回数が所定回数以上に達した場合等の特定条件を充足したか否かを判断し、充足した場合に基地局固有のキャラクターを表示する、育成ゲームを行う電子機器装置」 (B).特開平11-151357号公報(以下「周知例1」という) (B-1).「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、遊技の実行過程において遊技価値(例えば、大当り)を付加するか否かに係わる乱数を生成する際に、例えば遊技機に関連した情報(例えば、遊技用演算処理装置に格納される識別用の固有ID)を乱数生成の際における種値として利用する遊技機に関する。」 (B-2).「【0051】乱数生成回路205では、上記のようにして設定された値(遊技用演算処理装置200毎に異なる固有ID)を乱数生成の際の(初期時の)種値として利用する。・・・。例えば、固有ID=15803とした場合、固有ID=15803を200で除した余りは”3”となるので、初期値として”3”を採用する。・・・、容易に実現することができる。」 (C).「電撃PlayStation」 第5巻 第13号 メディアワークス発行 (1999.5.21発行 P71 右下欄)(以下「周知例2」という)、 (C-1).「ポケステでレアアイテムをゲット!! ポケステで入手できるアイテムにはA〜Dのランクがある。そして各ランクのアイテムをどれくらいの比率で入手できるかは、ポケステのID(シリアルナンバーの下3ケタ)によって決まる(*4)。IDのレベルは1〜7まであって、最高のレベル7だとじつに25%の比率でAのアイテムが入手できる。ただしBランクでも、たいがいのレアアイテムは入手できるので、Bが入手できれば問題はない。(「チョコボの森とポケステ」欄) (D).「サガ フロンティア2 アルティマニア 初版 SaGa Frontier II ULTIMANIA」 株式会社デジキューブ発行 (1999.6.18発行 第322頁左上欄)(以下「周知例3」という)、 (D-1).「右の表は、発掘の成果がどんな要素の影響を受けるかを、おおまかに表したものだ。簡単に結論をまとめると、マルA ディーガを入れ替えずに発掘回数を増やすと発掘品の種類や耐久度が向上していく、マルB 早送りをするとディーガが逃げやすくなる、マルC ID(ポケットステーションごとに決められた製造番号)によって発掘の成果は大きく変わってしまう、というところだ。」 (2).引用発明と本願補正発明との対比 (ア).発明特定事項の対応関係 (i) 引用発明における「育成ゲームを行なう電子機器装置」は、本願発明における「予め定められたプログラムにしたがってゲームを実行するゲーム装置」に対応する。 (ii)引用発明における「基地局限定のキャラクター」と、本願発明における「イベント及びアイテム」とは、ある条件が成就した場合に現れる「特定ゲーム要素」で共通する。 (iii)引用発明における、「特定条件を充足したか否かを判断」と「入力信号と前記固有の識別データとの間の関係を判定」とは、前記「特定ゲーム要素」を発現させるか否かの「設定条件判断手段」で共通する。 (iv)引用発明における、「特定の基地局からの呼出し情報」と、本願発明の「特定の入力信号」とは、前記「特定ゲーム要素」を発現するか否かを判定する判定用データとしての「判定実行信号」で共通する。 (v)引用発明における「操作部入力手段」と、本願発明における「入力信号を入力できる入力手段」とは、「信号入力手段」で共通する。 (イ).一致点 「信号入力手段を備え、予め定められたプログラムにしたがってゲームを実行するゲーム装置であって、 判定実行信号が前記信号入力手段に入力された場合、設定条件判断手段の判定結果によって定まる、特定ゲーム要素を発生させる入力信号処理手段を備えている ゲーム装置」 (ウ).相違点 α.信号入力手段に関して、本願発明は「特定の入力信号を入力できる」のに対し、引用発明は「特定の入力信号」の入力については不明の点 β.本願発明はゲーム装置にゲーム装置固有の識別データが記憶保持されているのに対し、引用発明は、ゲーム装置固有の識別データ、及びその記憶保持については記載されていない点。 γ.「判定実行信号」に関して、本願発明は、「特定の入力信号」であるのに対し、引用発明は、「基地局からの呼出情報」の点 δ.「設定条件判断手段」に関して、本願発明は、「入力信号と前記「内蔵された固有の識別データ」との間の関係を判定するものであるのに対し、引用発明は「特定の基地局からの呼出し情報を1回を含む所定回数以上の受信」である点 κ.特定ゲーム要素に関して、本願発明は「イベント及びアイテムの少なくとも一方」であるのに対し、引用発明は「キャラクタ」である点 (3).相違点の検討 (A)相違点、β、δについて、 前記周知例1〜3に示される様に格納された遊技機のIDを遊技ゲームの要素として利用することは周知の事項であるから、条件成就の判定に当該記憶されているIDを利用することは、当業者が容易になし得る程度の事項である。 したがって、当該相違点は格別のものではない。 (B).相違点γ、αについて、 本願補正発明は、何時、如何なる条件の下に当該特定の入力信号が入力されるのか、また、ゲーム進行に際して行われる操作による操作入力信号とは相違するのか否か特定されていないので、ゲーム進行に応じて適時、特定入力信号が入力されて、イベント、及びアイテム発生の判断データとして入力されるものと認められから、当該時期は当業者が適宜設定可能な単なる設計的事項である。 また、判断対象データとして入力手段により入力されたデータとすることは、例えば、数字選択式宝くじ(ナンバーズ)に見られる様に周知の判断対象データであるから、イベント、及びアイテム発生の条件として、前記周知の判断対象データとすることは当業者が容易になし得たものである。 したがって、当該相違点は格別のものではない。 (C)相違点κについて、 イベント、アイテム等は、引用発明におけるキャラクタと同様ゲームを構成する構成要素であるから、発生させる特定ゲーム要素として、前記構成要素の内如何なる構成要素とするかは適宜設定できるものであり、特にイベント、アイテムを設定した事による格別の作用効果は認められないから、当該相違点は単なる設計的事項である。 (D).まとめ 引用発明における、特定条件が成就したときに、特別なキャラクタを表示する場合に、特定条件の成就として、入力された判定データとゲーム装置固有の識別データとの一致性とすることは、前記周知事項から当業者が容易に想到できるものであり、当該成就に起因する事項として、イベント、アイテムとすることは、ゲーム内容に応じて適宜設定しうる単なる設計的事項であり、その効果も予測の範囲内のものであるから、本願補正発明は、刊行物Aに記載された発明、及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたもので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4).むすび 以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 なお、 請求人は、審判請求書において、 無線技術を開示している刊行物A(原審の引用文献3)から、無線技術を利用しない、即ち、基地局を使用しない技術を類推することは出来ないし、基地局を用いないシステムに対する適用可能性を論じることは出来ない旨主張する。 しかしながら、 刊行物Aにおいて引用する事項は、入力信号がある特定条件を満たした場合に、ゲームに関する特定事項を発現させる点であり、入力信号が無線である場合には当該事項を引用できない理由は認められないから、請求人の主張は採用できない。 第三.本願発明について [1].本願発明 平成13年7月24日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成13年4月25日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「入力信号を入力できる入力手段を備え、予め定められたプログラムにしたがってゲームを実行するゲーム装置であって、当該ゲーム装置個々に、固有の識別データが割り当てられているゲーム装置において、 前記固有の識別データを保持する手段を内蔵しており、特定の入力信号が前記入力手段を用いて入力された場合、内蔵された当該固有の識別データを用いて、前記入力信号と前記固有の識別データとの間の関係によって定まるイベント及びアイテムの少なくとも一方を発生させる入力信号処理手段を備えている ことを特徴とするゲーム装置」 [2].引用刊行物記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物、周知事項を例示する刊行物、および、その記載事項は、前記「第二.[2].<2>.(1)」に記載したとおりである。 [3].引用発明と本願発明との対比 本願発明は、前記「第二」で検討した本願補正発明から、識別データの保持手段である「IDメモリ」との構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.[2].(4)」に記載したとおり、刊行物Aに記載された発明、及び、周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物Aに記載された発明、及び、周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 [4].むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物Aに記載された発明、及び、周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-06-09 |
結審通知日 | 2006-06-14 |
審決日 | 2006-06-28 |
出願番号 | 特願平11-209897 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 神 悦彦 |
特許庁審判長 |
中村 和夫 |
特許庁審判官 |
宮本 昭彦 塩崎 進 |
発明の名称 | ゲーム装置、ゲームシステム、記録媒体、及び、画像表示方法 |
代理人 | 池田 憲保 |
代理人 | 福田 修一 |
代理人 | 山本 格介 |
代理人 | 佐々木 敬 |