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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1141159
審判番号 不服2002-19311  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-12-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-03 
確定日 2006-08-11 
事件の表示 平成11年特許願第152477号「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成11年12月21日出願公開、特開平11-347240〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯、本願発明
この出願は、平成2年6月8日に出願された特許出願(特願平2-150854号)の一部が特許法第44条の規定により新たな特許出願(特願平9-166613号)とされ、この新たな特許出願の一部が同規定により新たな特許出願(特願平11-152477号)とされたものであって、平成14年8月22日付で拒絶査定され、同年10月3日に審判請求され、同年同月10日に補正され、当審による平成18年2月7日付拒絶理由通知に対して応答する平成18年4月7日付手続補正書により明細書全文が補正されたものであって、その請求項1にかかる発明は、平成18年4月7日付手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。

請求項1(以下本願発明1という。)
「【請求項1】
入賞口への入賞球に基づく賞球および球貸スイッチの操作に基づく貸出球の排出装置を作動させる本体制御装置と、残金が記憶されたカードの読み取り書き込みを行うカードリードライター及び前記球貸スイッチが電気的に接続されるリードライター制御装置との間で互いに交信し、背面に設けられた前記排出装置から貸出球の排出を行うように電気的に接続したパチンコ機において、
前記本体制御装置は、前記球貸スイッチをオンとすることで記憶されている球貸記憶数情報、前記カードリードライターにより読み取られた前記カードの残金及び貸出球の排出中でないことを確認後、球貸要求信号の送信を行った後、前記球貸記憶数情報及びカードの残金の数値が減算されるリードライター制御装置から送信される球貸要求信号を受信することにより、前記排出装置を作動させて前記貸出球の排出を行い、排出終了後に前記リードライター制御装置へ貸出球の排出が終了したことを送信することを特徴とするパチンコ機。」

2.引用刊行物
第1引用例:
特開昭63-102783号公報(当審における平成18年2月7日付拒絶理由(29条2項)における第1引用例)

第2引用例:
実願昭62-140047号(実開昭64-46087号)のマイクロフィルム(同上第2引用例)

第3引用例:
実願昭62-154146号(実開平1-59183号)のマイクロフィルム(同上第3引用例)

第4引用例:
特開昭61-85974号公報(同上第4引用例)

第5引用例:
特開平1-221187号公報(同上第5引用例)

第6引用例:
特開平1-280489号公報(同上第6引用例)

第7引用例:
特開昭63-309287号公報(同上第7引用例)

第8引用例:
特開昭63-192477号公報(同上第8引用例)

(2-1)「第1引用例」
当審における拒絶理由で引用した引用例1(特開昭63-102783号公報、以下、「第1引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(記載00.)「カード挿排口とカード読取装置と金額表示器を少なくとも有する球貸機能部をパチンコ機或いはその近傍に配設し、該球貸機能部の少なくともカード読取装置と金額表示器を電気的制御装置に接続するとともに、該電気的制御装置を当該パチンコ機の球排出装置の制御装置に接続し、上記球貸機能部のカード挿排口にカードが挿入され、或いは遊技中における入賞にもとづいて上記球排出装置を作動して球を当該パチンコ機前面の受皿に排出するようにしたことを特徴とするパチンコ機のカード式球貸機構。」(第1頁左下欄「特許請求の範囲」)

(記載01.)「<従来の技術> 周知のように、従来の球貸機は、硬貨投入口と球排出装置を少なくとも有し、パチンコ機とパチンコ機との間に設置したり、或いはパチンコ機とは全く別個に設置されている。また、賞品球として遊技者にパチンコ球を払い出すための球排出装置はパチンコ機の裏側に設置されており、球貸機として遊技者にパチンコ球を貸し出すための球排出装置は球貸機の裏側に設置されており、この様に2つの球排出装置が必要であった。」(第1頁右下欄第4-13行)

(記載1.)「本発明は上記に鑑み提案されたもので、カード挿排口とカード読取装置と金額表示装置を少なくとも有する球貸機能部をパチンコ機或いはその近傍に配設し、該球貸機能部の少なくともカード読取装置と金額表示器を電気的制御装置に接続するとともに、該電気的制御装置を当該パチンコ機の球排出装置の制御装置に接続したものである」(第2頁左上欄第1-7行)

(記載2.)「各球貸機能部2の電気的制御装置(図示せず)を対応するパチンコ機の球排出装置4の制御装置(図示せず)に電気的に接続するとともに、伝送路5を介して管理室内に設置してある中央管理装置(図示せず)に電気的に接続する。 球貸機能部2は、前面に上から球貸出中表示器6、カード挿排口7、金額表示器8、アラーム表示器9、金額選択操作部10を設け、内部にはカード読取装置11と上記電気的制御装置を設け、該電気的制御装置にカード読取装置1及び上記した球貸出中表示器6,金額表示器8,アラーム表示器9,金額選択操作部10等を電気的に接続してある。」(第2頁右上欄第1-14行)

(記載3.)遊技者がカード発行機に投入した貨幣の金額は、本実施例ではカードに書き込んだカード識別情報に対応させて中央管理装置の記憶部内に記憶されるように構成してある。したがって、遊技者がカード発行機に貨幣を投入し、所望する金額を選択釦等により選択すると、中央管理装置の記憶装置内に当該選択した金額がカード識別情報とともに記憶され、カード発行機からは上記カード識別情報が書き込まれたカード21が排出される。遊技者はこのカード21を取得して自分の好みのパチンコ機1を選択し、当該パチンコ機1の球貸機能部2のカード挿排口7にカード21を挿入する。」(第2頁左下欄第17行-右下欄第10行)

(記載4.)「電気的制御装置は、中央管理装置からのデータ要求信号が当該パチンコ機1の自局アドレスと一致すると、自局アドレスにカード21のカード識別情報を付加して中央管理装置に送る。中央管理装置は、当該パチンコ機1からの信号を受信すると、記憶装置内のカード識別情報を検索し、一致した場合にはそのカード識別情報に対応した記憶内容、即ちそのカード21の残高を読み出して上記パチンコ機1に送る。中央管理装置からそのカード21の残高を受信すると、電気的制御装置が金額表示器8にその金額を表示する。遊技者が金額表示器8の表示を確認し、金額選択操作部10を操作することにより所望する金額を選択すると、電気的制御装置が当該パチンコ機1の球排出装置4を作動して、遊技者が選択した金額に対応した数量の球を該パチンコ機1前面の受皿25に排出させる。」(第3頁左上欄第11行-右上欄第7行)

(記載5.)「この様にして遊技者の所望する金額分の球が受け皿25に排出されると、これに伴って電気的制御装置の演算手段が作動し、排出した球に相当する金額を減算し、残高を金額表示器8に表示する。また、この残高は、中央管理装置に送られ、当該カード21のカード識別情報と共に記憶装置内に記憶される。」(第3頁右上欄第18-左下欄第4行)

(記載5.5.)「また、上記した球排出装置4は、遊戯中に打球が入賞口に入る等して入賞態様が形成されると、電気的制御装置からの信号を受けて作動し、入賞態様に対応する数、例えば13個の球を流下し、受け皿25に賞球として排出する。このように、本発明においては、球貸出排出と賞球排出とを1つの排出装置4で行うようにした。」(第3ページ右下欄第7-14行)

(記載6.)「また、カード挿排口7に挿入したカード21の残額がゼロになった場合、パンチ装置16によりカード21の情報書込部22にパンチ穴を明け、情報書込部22の解読を不能にして不正行為の防止を図ることが望ましい。」(第4頁左上欄第1-5行)

(記載7.)「遊技者がカード挿排口7にカード21を挿入すると、金額表示器8に当該カード21の残高が表示され、この金額の範囲内で金額選択操作部10を操作すると、パチンコ機1の球排出装置4が作動して、選択した金額に対応する数の球が受皿25に排出される。」(第4頁左上欄第15-20行)

(記載8.)「なお、上記した実施例では、カード21に金額情報を記憶させないで中央管理装置にカード識別情報とともに記憶させることにより不正行為の発生の防止を図ったが、本発明は、これに限定されるものではなく、カード21の情報書き込み部22に、発行時に投入された金額、又は投入された金額と等価値の玉数とを書き込み記憶するようにしてもよい。」(第4頁右上欄第18行-左下欄第5行)

(記載9.)「本発明は、パチンコ機が有する球排出装置を作動して遊技球を受皿に排出するようにしたので、球貸用の球排出装置を別個に設ける必要がなくなり設備の合理化を図ることができるし、また借り出した球をその都度球貸機から受皿に移し替える煩雑さを解消することができる。」(第4頁左下欄第16行-右下 欄第1行)

以上の記載及び図面によれば、「第1引用例」には、次の発明(以下「引用発明」という)が開示されていると認めることが出来る。
「球貸中表示器とカード挿排口と金額表示器とアラーム表示器と金額選択操作部とを有し、内部にはカード読み取り装置と電気的制御装置を設けた、パチンコ機の近傍に配設した球貸機能部を有し、電気的制御装置にはカード読み取り装置、玉貸出中表示器、金額表示装置アラーム表示器及び金額選択操作部が電気的に接続されており、電気的制御装置はパチンコ機の背面に設けられた排出装置の制御装置に接続され、カードの残高が金額表示装置に表示され、カードの残額がゼロになった場合、情報書き込み部の解読を不能にして不正行為の防止を図るものであって、表示された残高金額の範囲内で金額選択操作部を操作することにより所望する金額を選択すると、電気的制御装置がパチンコ機の球排出装置を作動して、選択した金額に対応した数量の球をパチンコ機前面の受け皿に排出させる球貸装置であって、金額分の球が受け皿に排出されると、これに伴って電気的制御装置の演算手段が作動し、排出した球に相当する金額を減算し残高を金額表示器8に表示し、また中央管理装置の記憶装置内に記憶する球貸装置であって、遊戯中に打球が入賞口に入る等して入賞態様が形成されると排球装置4が賞球を排出する、球貸出排出と賞球排出とを1つの排出装置で行うようにしたものであり、球貸用の球排出装置を別個に設ける必要がなくなり設備の合理化を図ることができるようにしたパチンコ機。」

(2-2)「第2引用例」
また、当審における拒絶理由において引用した実願昭62-140047号(実開昭64-46087号)のマイクロフィルム(以下「第2引用例」という)には、図面と共に、次の事項が記載されている。

(記載10.)「本考案は遊技物体貸出装置における遊技物体排出装置に関するもので、特にパチンコカードシステムに用いられるものである。」(第2頁第15-17行)

(記載11.)「所望の遊技物体個数に対応する回転位置に達したときは前記排出部材の回転を阻止する回転阻止手段と、貨幣あるいはこれに相当する金額情報を有する媒体を受入れて金額情報を取出す金額情報収集手段と、この金額情報収集手段により得られた金額情報に応じた排出遊技物体の数に相当する回転阻止部材の阻止解除度数を記憶するとともに、実際に排出された遊技物体の数に相当する阻止解除度数を減算して記憶し、未排出度数として出力する記憶手段と、この記憶手段から取出された未排出度数にしたがって回転阻止手段の解除動作を未排出度数が0になるまで行わせる制御手段とを備えたことを特徴としている。」(第5頁第8-20行)

(記載12.)「貨幣あるいはカードの挿入により排出度数が記憶装置内に加算され、この記憶内容は阻止部材により阻止されている排出部材の阻止が解除されて回転することにより減算される。排出部材の回転が詰まりなどで停止されても記憶装置内の度数は残っているため、この度数が0になるまで阻止部材の阻止解除は行われ、所望の数だけの遊技物体が排出される。」(第6頁第2-9行)

(記載13.)「ここでカードの残度数をチェックして(ステップS110)、残度数が0ならば直ちにカードを返却する(ステップS120)。これに対し、残度数が2以上であるときはカウンタに「2」を加算した(ステップS112)後、カードの残度数を「2」だけ減少させた値をカード読取書込部27により玉貸カードに磁気記録して内容を更新するとともに玉貸カードの残金領域6の該当数字の下に黒い四角のマークをプリンタ部によりプリントし(ステップS114)、200円分の玉の排出動作を並行して行う(ステップS116)。玉の排出動作の際、カウンタの内容は減少するが、タイムアップの4秒後にはこのカウンタ内容を表示した(ステップS118)後、カードを返却する(ステップS120。」(第17頁第10行-第18頁第4行)

(記載14.)「上述した例のようにカード挿入によりカウンタの内容が2となっている場合、ソレノイド51が駆動されるとロックレバー48が引かれる。同時に前述した表示制御用のタイマとは別のタイマがオンとされる(ステップS206)。ロックレバー48が外れたことにより玉の自重で10枚ギア41および制御ギア43が回転して玉が排出されると、検出板46がセンサ47から抜けた時短でセンサ47の出力は「L」となるのでこれを確認し(ステップS208)、センサ出力が「L]となった場合にはソレノイド51をオフとし(ステップS210)、カウンタから1を減算する。」(第18頁第20行-第19頁第12行)

(記載15.)「このとき、カウンタの内容はまだ1であるため、ステップS202にもどって残りの100円分の排出が行われることとなる。そして、200円分の玉の排出によりロックレバー48の突起49と突起部45とが係合し、センサ出力が「H]となるが、このときはカウンタの内容は0となっているため排出動作は終了する。
このようにカウンタの値は玉の未排出度数を示しており、カウンタの値が0になるまで玉が排出されて貯留部25に貯留される。」(第19頁第18行-第20頁第7行)

(記載16.)「カードを挿入する度に200円分の度数2が記憶されることから、カードの挿入を3回繰り返せば600円分の度数6がカウンタに記録され、ソレノイド51が駆動されるごとに玉は貯留部25に移動するが、」(第20頁第10-15行)

(記載17.)「以上実施例にもとづいて詳細に説明したように本考案によれば、未排出度数を記憶する記憶装置を有し、これに基づいて排出部材の制御を行っているので、」(第26頁第11〜14行)、

(2-3)「第3引用例」
また、当審における拒絶理由において引用した、実願昭62-154146号(実開平1-59183号)のマイクロフィルム(以下「第3引用例」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(記載18.)「本考案は、プリペイドカードを媒体としてパチンコ玉の貸出しを行うカード式球貸し機に関する。」(第2頁第1、2行)

(記載19.)「カードリーダCPUは、磁気ヘッド29を作動させ、移動中のプリペイドカード50の磁気ストライプ部52より該カード発行時に発券機6を用いて予め磁気記憶させておいた発行年月日、店番号、発券番号データを読み込み(ステップS7)、これらの磁気データが正常であるか否かをデコーダ等を介して確認し(ステップS8)、異常が認められれば後に述べる返却処理(ステップS15)を実行してこのプリペイドカード50を返却する。又、磁気データに異常が認められなければ、次に、発行年月日、店番号、発券番号データをサンド制御CPUに送信する(ステップS9)。 ・・・ ・・・サンド制御CPUは、受信した発行年月日、店番号を、ステップ53で記憶した正規の年月日、店番号と比較し(ステップS57)、このプリペイドカード50が有効期限内のものであり、かつ、当該パチンコ店で発行された物であるか否かを判別して該カード50の有効性を確認する。・・・ ・・・正常なものであれば・・・ ・・・該島コンピュータ2に送信する(ステップS59)。・・・ ・・・島コンピュータ2は、ホストコンピュータ3のポーリングシーケンスに基づいてこの発券番号をホストコンピュータ3に送信する(ステップS106)。ステップS153で発券番号を受信したホストコンピュータ3は・・・ ・・・事故のメモリを検索して、該発券番号に対応する残度数データを読み出して記憶し(ステップS156)、先ほどの島コンピュータ2にこの残度数を送信し(ステップS157)、ポーリングを再開する。ステップS107で残度数を受信した島コンピュータ2は、先ほどのサンド制御CPUにこの残度数を送信し(ステップS108)、サンド制御CPUのポーリングを再開する。・・・サンド制御CPUは、残土数表示窓44に確認された残土数を表示して(ステップS61)、カード利用者に残度数を明示し、度数選択スイッチ45〜47によって利用者がパチンコ玉貸出し度数を入力するのを待機する。」(第20頁第14行-第23頁第9行)

(記載20.)「指定された貸出し度数が残度数を超えていなければ、度数選択スイッチによって指定された貸出度数を玉貸し回数記憶レジスタR1に記憶し(ステップS66、ステップS68、ステップS70)、又、指定された玉貸し度数が残度数を超えていれば、全残度数を玉貸回数記憶レジスタR1に記憶してこれらの値を玉貸し回数とするので(ステップS71)、残度数が5未満であれば、度数選択スイッチ47(度数5)を押下することにより、全残度数を玉貸し回数とすることができる。」(第24頁第1-11行)

(記載21.)「第8図に示される玉払出処理において、サンド制御CPUはまず、玉計測部39に設けられた玉貸出しソレノイドを作動させ(ステップS201)、パチンコ玉の貸出しを開始し、玉計測部39に設けられた玉貸出し確認スイッチがONとなるまで玉貸出しソレノイドの作動状態を保持する(ステップS202)。そして、玉貸出し確認スイッチがONとなると、1度数に対応するパチンコ玉の貸出しが終了するので、玉貸出しソレノイドをOFFとして(ステップS203)、玉貸し回数記憶レジスタR1から1を減じ(ステップS204)、次にレジスタR1の値が0であるか否かを判別し(ステップS205)、0でなければ再びステップS201に復帰して1度数に対応するパチンコ玉の貸出しを実行し、ステップS205でレジスタR1の値が0となり、玉貸し回数が設定値に達するまでステップS201-ステップS202-ステップS203-ステップS204-ステップS205-ステップS201の処理を繰り返し、一連の動作として玉の貸出しを実行する。」(第26頁第13行-第27頁第13行)

(2-4)「第4引用例」
また、当審における拒絶理由において引用した特開昭61-85974号公報(以下「第4引用例」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(記載22.)「本発明は、パチンコ玉の貸出しに磁気カードなどのカードを利用するようにしたパチンコ玉貸出しシステムに関するものである。」(第1ページ左下欄第10-12行)

(記載23.)「使用者がパチンコ玉をほしい時には、カードを玉貸出し機2のカード投入返却口17へ投入すると共に、玉数指定キー19の操作によりほしい玉数を指定する。玉貸出し機2のカード投入返却口17にカードが投入されると、カードセンサ22がカードに記録された選別コード及び貸出可能玉数を読み取り、マイクロプロセッサ23は選別コードから投入カードが適正なものかどうかを判別する。不適正であれば、カード返却手段26を動作させ、投入カードをカード投入返却口17から戻す。適正なカードであれば、カードセンサ22が読み取った記録玉数を貸出可能玉数表示器18に表示させる。記録玉数が0の場合には、表示をクリアして動作を終了する。記録玉数が0でない場合には、マイクロプロセッサ23は使用者により指定された玉数を読み取り、その玉数とカードに記録された玉数とを比較する。指定玉数が記録玉数以下であれば、即ち指定玉数が貸し出せる場合には、玉貸出し手段24を動作させ、玉貸し皿21に指定された数の玉を搬出する。指定玉数が記録玉数より多い場合には、玉数指定キー19を点滅表示させるなどによって使用者に玉数の指定をやりなおしてもらう。」(第2頁左下欄第15行-右下欄第17行)

(記載24.)「残り玉数が0でない場合には、カード書込手段25が動作して、カードに記録された玉数を残り玉数に書き直す。」(第3ページ左上欄第1-3行)

(2-5)「第5引用例」
また、当審における拒絶理由(29条2項)において引用した特開平1-221187号公報(以下「第5引用例」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(記載25.)「本発明は、所定の遊技用情報が記憶された遊技券を利用して遊技を行うようにしたパチンコ台を管理するためのパチンコ台管理システム、特には上記のようなパチンコ台の打止状態の管理を行なうためのパチンコ台管理システムに関する。」(第1頁右下欄第11-15行)

(記載26.)「第3図には前記発券機6の正面外観が示されている。この第3図において、22は紙幣を挿入するための挿入口、23は硬貨を投入するための投入口、24は金額表示部で、この金額表示部24は、挿入口22及び投入口23を介した投入金額の合計をデジタル表示するように構成されている。25,26,27.28は後述する遊技券29に記憶させる金額情報MDを入力するための選択ボタンで、これらには夫々例えば「500(円)」、「1000(円)」、「2000(円)」、「3000(円)」の各表示が施されている。」(第4頁左下欄第20行-右下欄第10行)

(記載27.)「第5図には、遊技制御装置5を構成する各要素及びパチンコ台1並びに球貸機35の配置関係が示されており、以下これについて説明する。
即ち、球貸機35は、2台ずつのパチンコ台1の各間に夫々と隣接するように配置された所謂台間球貸機として構成されたもので、隣接するパチンコ台1に夫々対応した遊技制御装置5によって制御されるようになっている。斯かる球貸機35には、その前面にパチンコ玉放出口36、例えば赤色LEDより成る異常表示灯・・・・・・遊技制御装置5により後述のように指令された数のパチンコ玉をパチンコ玉放出口36から放出するように構成されている。」(第7頁左上欄第13行-右上欄第11行)

(記載28.)「遊技制御装置5は、パチンコ台1の上方位置に一列状に配置されたカード挿入口39、カード返却スイッチ40a、例えば3個のセレクトスイッチ40b〜40d及び残高表示部41を有すると共に、内部には第6図に示すような回路要素が設けられている。尚、上記セレクトスイッチ40a、40b、40cには、夫々に対応して例えば「100円」「200円」「400円」の各表示が施されている。」(第7頁右上欄第12-20行)

(記載29.)「さて、第6図において、42は打ち止め解除手段としても機能する玉貸制御回路であり、これはマイクロコンピュータを含んで構成されている。・・・ ・・・そして、玉貸制御装置42は、カードリーダ44による読み込み情報、前記カード返却スイッチ40a及びセレクトスイッチ40b〜40dからのオン信号、前記集中管理装置7から与えられる選択信号Sk、打止保持信号Sd及び予め記憶したプログラムに基づいて、玉貸機35、残高表示部41、カード出し入れ装置43、カードライタ45、信号発生回路46等を制御するものであり、これにより遊技制御装置5は大略第7図に示すように機能する。
以下においては第7図に示された遊技制御装置5の機能の大略について説明する。即ち、まずカード挿入口39に遊技券29が挿入された否かを判断し(ステップB1)、遊技券29が挿入されるまで待機する。・・・ ・・・遊技券29が挿入されたときには、遊技券29を挿入状態に保持すると共に、その遊技券29に記憶された情報を読み取る(ステップB2、B3)。・・・その遊技券を返却し(ステップB5)・・・ ・・・「NO」と判断した場合には遊技券29を返却する前記ステップB5を経てステップB1へ戻る。・・・ ・・・ステップB7で「NO」と判断した場合、つまりパチンコ台1が遊技可能な状態にある場合には、前記ステップB3で読み取った遊技券29の金額情報MDに基づいて、その情報MDに対応した残高金額を残高表示部41に表示させる(ステップB8)。次いで、上記残高金額があるか否かを判断し(ステップB9)、残高金額つまり金額情報MDが零であった場合には、前記ステップB5を経てステップB1へ戻る。」(第7頁右下欄第1行-第8頁左上欄第17行)

(記載30.)「また、カード返却スイッチ40aがオンされることなくセレクトスイッチ40b〜40dの何れかがオン操作されたときには、遊技券29に記憶された金額情報MDを所定金額分減額するように書換え(ステップB12)、球貸機35内の図示しないパチンコ玉供給機構に対して上記減額金額に相当した数のパチンコ玉を放出するように指令を与える(ステップB13)。」(第8頁右上欄第4-11行)

(記載31.)「尚、2台の遊技制御装置5に対応した設けられた玉貸機35は、一方の遊技制御装置5からの指令によってパチンコ玉の放出を行なっているときには、他方の遊技制御装置5に対してビジー信号Sb(第6図参照)を出力するようになっており、遊技制御装置5にあっては上記ビジー信号Sbが消失するまでパチンコ玉放出指令の出力を待機するようになっている。」(第9頁左上欄第2-10行)

(2-6)「第6引用例」
また、当審における拒絶理由において引用した特開平1-280489号公報(以下「第6引用例」という)には、以下の記載がある。

(記載32.)「本発明はパチンコ遊戯装置に関し、更に詳しくはカードに付されたカード情報を基にしてパチンコ遊戯を実行するパチンコ遊戯装置に関するものである。」(第1頁右下欄第15-18行)

(記載33.)「[本発明の構成](前記問題を解決するための手段)本発明の装置は、遊戯情報を取込んでパチンコ玉による遊戯を実行するとともに、遊戯状態に応じた遊戯状態情報を送出するパチンコ機本体を備えたパチンコ遊戯装置であって、カードに付されたカード情報を基にパチンコ機本体に送る遊戯情報を得るとともにパチンコ機本体からの遊戯状態情報を得て前記カード情報の書替えを行うカード取扱部と、前記カードから得られる遊戯情報及びパチンコ機本体からの遊戯状態情報を伝達可能な遊戯情報伝達部と、前記カード取扱部、遊戯情報伝達部及びパチンコ機本体間の情報伝達を行う制御部とを有するものである。」(第2頁右上欄第13行-左下欄第6行)

(記載34.)「(作用) 以下に上記構成の装置の作用を説明する。 この装置にカード情報が付されたカードが投入されると、カード取扱部はこのカードのカード情報を基に遊戯情報を得る。この遊戯情報は制御部によりパチンコ機本体に送られ、これにより、パチンコ機本体はパチンコ玉の貸出をはじめとする各動作を実行するとともに遊戯状態に応じた遊戯状態情報を送出する。 制御部は、パチンコ機本体からの遊戯状態情報及び前記遊戯情報を遊戯情報伝達部に送る。これにより、遊戯情報伝達部から遊戯状態情報及び遊戯情報が遊戯者等に伝達される。 また、制御部はパチンコ機本体からの遊戯状態情報をカード取扱部に送る。カード取扱部は、上記遊戯状態情報を基にカード情報を書替え、以降の使用に供する。」(第2頁左下欄第7行-右下欄第3行)

(記載35.)「第1図及び第2図(a),(b)は本発明の第1の実施例装置を示すものである。同図に示すパチンコ遊戯装置1は、パチンコ機本体2と、このパチンコ機本体2の下側部に一体的に組込まれたパチンコ機操作部3とを具備している。 前記パチンコ機本体2は、第2図(a)に示すように透明ガラス板4の内部に遊戯面5を設けるとともにこの透明ガラス板4の下方にパチンコ玉収容部6を設け、このパチンコ玉収容部6にパチンコ玉を後述する動作により自動的に貸出すようになっている。 前記パチンコ機操作部3の表面は、添付した図面の第2図(b)に示すように下側に至るほど張り出す傾斜配置に形成されている。そして、このパチンコ機操作部3に操作ハンドル7、後述するカード取扱部11を構成するカード挿脱孔8及び遊戯情報伝達部12を構成する表示部9、音声発生部であるスピーカ10を配置している。」(第2頁右下欄第7行-第3ページ左上欄第5行)

(記載36.)「第2図はパチンコ遊戯装置1の全体構成を示すものである。即ち、前記したパチンコ機本体2には、パチンコ機操作部3から玉数データ等の遊戯情報を取込みこのパチンコ機本体2によるパチンコ玉の自動貸出を始めとするパチンコ遊戯を実行するとともに、パチンコ機本体2の遊戯状態に応じて故障情報、打ち止め情報、使用玉数データ等の遊戯状態情報をパチンコ機操作部3に送出する本体駆動制御部13が設けられている。
また、前記パチンコ機操作部3は、予めパチンコ機本体2の動作制御やこのパチンコ機操作部3の各部の動作制御を行うためのプログラムを格納したプログラムメモリ14と、このプログラムメモリ14から前記プログラムを取込みこのプログラムに従って該パチンコ機操作部3の各部の制御を実行するとともに、本体駆動制御部13との間の情報伝達をも行うCPU15とから成る制御部16を有し、この制御部16に前記カード取扱部11、遊戯情報伝達部12及び操作ハンドル7を接続している。
カード取扱部11は、パチンコ遊戯のための玉数データ等の情報が予め書込まれているカードCを前記カード挿脱孔8から取込むとともに必要に応じてこのカードCをカード挿脱孔8に返却するカード駆動部17と、カード駆動部17により駆動されるカードCに対してカード情報の読取りを行い遊戯情報(玉数データ等)を得ると共に、遊戯終了時点で本体駆動部13からの遊戯状態情報を基にカードCの情報を書替えるカード読取書込部18とを具備している。」(第3ページ左上欄第6行-右上欄第15行)

(記載37.)「パチンコ遊戯を行う遊戯者が予め購入したカードCをカード挿脱孔8に挿入すると、この装置は動作を開始し、カード駆動部17はCPU15による制御の基にカードCを装置内に取込む。そして、カード読取り部18はCPU15による制御の基にカードCに付された情報を読取り、玉数データ等の遊戯情報を得る。 この遊戯情報はCPU15を経て本体駆動制御部13に送られ、これにより、本体駆動制御部13によるパチンコ玉収容部6への自動的な玉貸出を始めとするパチンコ遊戯が開始される。 そして、遊戯者が操作ハンドル7を操作することによりこの装置におけるパチンコ遊戯が進行する。 パチンコ機本体2の本体駆動制御装部13は、パチンコ遊戯の進行に伴う遊戯状態情報、例えば玉数データ、パチンコ機本体2の故障情報、打止情報等をCPU15へ送る。」(第3ページ左下欄第5行右下欄第2行)

(記載38.)「次に、本発明の第2の実施例を第3図を参照して説明する。なお、同図に示す装置1Aにおいて第2図(a)に示す装置1と同一の機能を有するものには同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。 第3図に示す装置1Aが第2図(a)に示す装置1と異なる点は、パチンコ機操作部3Aをパチンコ機本体2とは別体のユニットとしたことである。 即ち、第2図(a)に示す装置1の操作ハンドル7を除くカード挿脱孔8,スピーカ9及び表示部10を表面に設け、且つ、第1図に示す構成を有するパチンコ機操作部3Aをパチンコ機本体2の上部に別体として配置したものである。 このような構成の装置1Aによっても既述したパチンコ遊戯装置1と同様な機能を発揮させることができる。」

以上の記載によれば、第6引用例には、つぎの発明(以下「引用発明6」という)が記載されている。ここにおいて、第6引用例の図面は、発明の詳細な説明の記載と対応していないが、図面がむしろ全体として誤って添付されていると解しうることは当業者には明白であるから、発明の詳細な説明のみによって以下の認定は可能であり、図面の存在はこの認定を否定するものではない。

「引用発明6」
「カード情報が付されたカードが投入されるとカード情報を基に遊技情報を得るカード取扱部と、この遊技情報が制御部によりパチンコ機本体に送られるとパチンコ機本体が玉貸しを始めとする各動作を実行し、パチンコ機本体は制御部に遊技状態情報を伝達し、制御部はカード取扱部に遊技情報を送りカード取り扱い部は送られた遊技情報を基にカード情報を書き替え以降の使用に供するという動作をするパチンコ遊戯装置であって、
パチンコ機本体2及びパチンコ機本体とは別体のユニットとしたパチンコ機操作部3Aとからなり、
パチンコ機本体2には、本体駆動制御部13が設けられており、CPU15を経て遊戯情報を送られることにより、本体駆動制御部13によるパチンコ玉収容部6への自動的な玉貸出を始めとするパチンコ遊戯が開始され、本体駆動制御部13は遊戯状態に応じて使用玉数データ等の遊戯状態情報をパチンコ機操作部3に送出し本体駆動制御部13は玉数データ等をCPU15に送り、
パチンコ機操作部3は、パチンコ機本体2の制御やパチンコ機操作部3の各部の動作制御を行うためのプログラムを格納したプログラムメモリ14と、プログラムにしたがってパチンコ機操作部3の各部の制御を実行するとともに本体駆動制御部13との情報伝達をも行うCPU15とからなる制御部16を有し、この制御部16にカード取扱部11、遊戯情報伝達部12及び操作ハンドル7が接続され、カード取扱部11が得た玉数データ等の遊戯情報はCPU15を経て本体駆動制御部13に送られ、これにより、玉収容部6への自動的な玉貸出を始めとするパチンコ遊戯が開始される、パチンコ遊戯装置における制御部16。」

(2-7)「第7引用例」
また、当審における拒絶理由において引用した、特開昭63-309287号公報(以下「第7引用例」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(記載39.)「本発明はパチンコ機あるいはアレンジボール、スロットマシン等の遊技機を用いた遊技システムに関し、特に金銭と交換されたカードによって遊技が可能と成るようにされた遊技システムに利用して有効な技術に関する。」(第1ページ右下欄第9-13行)

(記載40.)「従来提案されているカード式パチンコ遊技システムには、大きく分けると次の2つの方式がある。 第1の方式は、カードの発行に際して購入金額に対応した持玉数データをカードに記憶し、この持ち玉数データの範囲内でパチンコ遊技を行ない、遊技過程において増減した持玉数データをカードに記憶するというものである(特公昭47-42227号参照)。 カード方式の第2の方式は、持ち玉購入の際にコード番号だけを記録したカードを発行し、持玉数は集中管理装置のメモリにテーブルの形で記憶し、カードをパチンコ機のカード読取装置に挿入するか、あるいはパチンコ機に設けられたテンキーを使って遊技客がコード番号を入力することによって記憶された持ち玉数を呼び出して遊技を行なえるようにするものである(実公昭61-32709号、特開昭55-16608号参照)(第1頁右下欄末行-第2頁左上欄第17行)

(2-8)「第8引用例」
また、当審における拒絶理由において引用した特開昭63-192477号公報(以下「第8引用例」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(記載41.)「ところで、最近のパチンコホールでは、パチンコ機が並べられた島台上に、通常2台のパチンコ機に対して1台の割合で薄型の玉貸機が並設されており、遊技者は自分が遊技を使用とするパチンコ機の前に座った状態で玉貸機から玉を借りることができるようになっている。 しかしながら、かかる場合においても、薄型の玉貸機に硬貨を投入し、それに応じて貸し出されるパチンコ玉を片手または両手で受止め、それをパチンコ機の打球待機樋へ移さなければならない。このような玉を借りるための作業は不便であり、できれば、玉貸機への硬貨の投入に応じて、貸し出されるパチンコ玉が自動的に打球待機樋へ流れ出るようにすれば便利であろう。 それゆえに、この発明は、上記の問題点を解消するようなパチンコ機その他の弾球遊技機の景品玉払出装置を提供することを目的としている。」(第2頁左上欄第15行-右上欄第11行)

(記載42.)「第8図を参照して、景品玉払出装置42の駆動制御回路は、たとえばマイクロコンピュータを中心に構成された中央処理装置108を備える。なお中央処理装置108は、ディスクリートな論理回路によって構成してもよい。 中央処理装置108には、制御判定部109と記憶部110とが含まれている。中央処理装置108には、上述した各入賞口に個別に設けられた入賞玉検出器82,84,86,88,90,98または共通的に入賞玉検出器104からの入賞玉検出信号および各始動入賞玉検出器92,94,96からの始動入賞玉検出信号が与えられる。また、景品玉払出装置42の景品玉検出器74の検出出力が与えられる。」(第5頁右上欄第2-15行)

(記載43.)「第9図は、この発明の一実施例が適用された他のパチンコ機130の正面図である。ここに示すパチンコ機130の特徴は、通常のパチンコ機に、玉貸機の機能を付加したことである。」(第6頁右上欄第15-18行)

(記載44.)「このパチンコ機130における景品玉払出装置42の駆動制御回路が、第11図に示されている。第11図の駆動回路も、第8図で説明したパチンコ機10の駆動制御回路とほぼ同様である。ただ、次の点が異なっている。 すなわち、第11図の駆動制御回路は、景品玉払出装置42が、景品玉払出動作の他に、玉貸し時における貸出玉の払出動作も兼用するように制御する。 詳しく言うと、硬貨判別機150および紙幣判別機152の出力が中央処理装置108へ与えられると、中央処理装置108は駆動モータ68の駆動を開始する。よって、景品玉貯留タンク40内に貯留されたパチンコ玉の払出しが開始する。」(第6頁右下欄第5-17行)


3.対比・判断
3-1.対比
「本願発明1」と「引用発明」とを対比すると、後者の「パチンコ機の球排出装置」は「遊戯中に打球が入賞口に入る等して入賞態様が形成されると排球装置4が賞球を排出する、球貸出排出と賞球排出とを1つの排出装置で行うようにしたものであり、球貸用の球排出装置を別個に設ける必要がなくなり」というものであり、図面からもわかるようにパチンコ機背面に設けられているから、前者の、パチンコ機の「背面に設けられた」、「賞球および貸出球の排出装置」に相当する。
また、後者の「金額選択操作部」は前者の「球貸スイッチ」に相当し、後者の「カード読み取り装置」は、カードに記録された情報の読み取りができる点において前者の「カードリードライター」に対応する。
また、後者の「排出装置の制御装置」は、球排出装置を制御するものであるのだから、前者における球排出装置を制御するものである「本体制御装置」と、「球排出装置を制御する制御装置」すなわち「球排出制御装置」である点において対応する。
さらに、後者における「電気的制御装置」は、カード読み取り装置及び金額選択操作部が電気的に接続されていて、パチンコ機の球排出装置の制御装置に接続され、パチンコ機の球排出装置を作動させるものであるのだから、前者の「リードライター制御装置」に対応するものである。
また、後者における「電気的制御装置」は、「球排出装置を制御する制御装置」すなわち「球排出制御装置」に接続されていて、球排出装置を作動させて貸球を排出させているのであるから、「球排出制御装置」に「球貸要求信号」を送信しているといえる。

よって、両者は、
「入賞口への入賞球に基づく賞球および球貸スイッチの操作に基づく貸出球の排出装置を作動させる球排出制御装置とリードライター制御装置とを、該両装置間で信号が送られ、パチンコ機背面に設けられた前記排出装置から貸出球の排出を行うように電気的に接続したパチンコ機であって、リードライター制御装置にはカードリードライタ及び球貸スイッチが接続され、球貸スイッチを操作するとリードライター制御装置がカードの残額に応じて球貸要求信号を球排出制御装置に送信して球排出装置が貸出球を排出するようにしたパチンコ機」
である点において一致し、

(相違点1)「カードの残額」及び「カードリードライタ」に関し、
「本願発明1」においては、「残金が記憶されたカード」であるのだから、カード残額はカードに記憶され、「カードリードライター」は読み取り及び書き込みを行うものであるのに対し、
「引用発明」においては、カードに記憶されるのは「識別情報」及び「カード発行時」のカード残額であって、球貸し後の「カードの残額」は「カード識別情報」に対応した中央管理装置の記憶装置内に記録され、カードリードライタは「カード読み取り」を行うものの書き込みをおこなうかどうかは不明である点、

(相違点2)「リードライタ制御装置」の「球貸し要求信号」の送信に関し、
「本願発明1」では
「球貸スイッチをオンとすることで記憶されている球貸記憶数情報、前記カードリードライターにより読み取られた前記カードの残金及び貸出球の排出中でないことを確認後、球貸要求信号の送信を行った後、前記球貸記憶数情報及びカードの残金の数値が減算されるリードライター制御装置から送信される球貸要求信号」を「本体制御装置」が「受信することにより、前記排出装置を作動させて前記貸出球の排出を行い」
であるのに対し、
「引用発明」では球貸スイッチに相当する「金額選択操作部」を操作することにより「カードの残高金額の範囲内で」所望の金額を選択すると、リードライター制御装置に相当する「電気的制御装置」が球貸要求信号を「球排出制御装置」に送信して球排出装置が貸し出し球を排出し、「排出した球に相当する金額を減算」するものの、カードの残金確認、貸出球の排出中でないことの確認、「球貸記憶数」の確認及び減算については不明な点、

(相違点3)「球排出制御装置」が「本願発明1」では「本体制御装置」であるのに対し、「引用発明」では「パチンコ機の球排出装置の制御装置」である点、

(相違点4)「リードライター制御装置」と「球排出制御装置」とが、
「本願発明1」においては、
「交信可能に接続」され、「本体制御装置は、」「排出終了後に前記リードライター制御装置へ貸出球の排出が終了したことを送信する」のに対し、
「引用発明」においては、
「リードライター制御装置」に相当する「電気的制御装置」は、「球排出制御装置」に相当する「パチンコ機の球排出装置の制御装置」と「電気的に接続」し、「金額分の球が受け皿に排出されると、これに伴って電気的制御装置の演算手段が作動し、排出した球に相当する金額を減算し残高を金額表示器8に表示」する、
とされているにすぎない点、

において相違する。

3-2.判断
(相違点1について)
カード式の球貸装置であって、カードに記録された残額データを読み出しまたカードに変更後の残額データを書込む、従ってカードにデータを書込む機能を有するものは、上記第2引用例(実願昭62-140047号(実開昭64-46087号)のマイクロフィルム)記載13、第4引用例(特開昭61-85974号公報)記載23、24、第5引用例(特開平1-221187号公報)記載29、30、第7引例(特開昭63-309287号公報)記載40にみられるように周知である。
「引用発明」が記載された第1引用例(特開昭63-102783号公報)においても、上記記載4には、球貸後の残額データを中央管理装置に記憶することが記載され、上記記載8には「カード残額」をカード自体に記録することは記載されていないものの、「発行時に投入された金額、又は投入された金額と等価値の玉数」という「金額情報」を中央管理装置に記録することに替えてカード自体に記録する、という点は記載されている。
「引用発明」におけるこの「金額情報」は、球貸しによりカードの残額が減少した結果である「残額データ」ではなく、カードの発行当初の「残額データ」に相当するものであるが、「残額データ」をカード自体に記録するということが、上記のように周知なのであり、カードに記録するか集中管理装置に記録するかは適宜利害得失を勘案して選択できるものであることは上記第7引用例記載40にも示されるようによく知られていることであるから、第1引用例において、発行当初のみでなく残額が減少した結果の「残額データ」の記憶をも、中央管理装置に記憶することに替えてカード自体に記憶するようにすることは、第1引用例に対して同じ技術分野であるカード式球貸し装置における周知技術を単に適用したにすぎず、適宜なしうることである。
よって、相違点1は当業者が適宜なし得る程度の事項に過ぎない。

(相違点2について)
「本願発明1」における「球貸記憶数」とは、「球貸スイッチをオンとすることで記憶されている」(請求項1の記載)ものである。
そして、「球貸記憶数」は、当初は0であって、球貸スイッチが作動している場合に、1加算されるものである(段落番号0021の記載:「・・・次のステップ6に進み球貸スイッチ41が作動しているかを判定する。そして、ステップ6の判定がイエスであればステップ7に進み枠開放検出スイッチ25が作動しているかどうかを判定する。ガラス枠18等が閉じた状態(ノウ)であれば球貸出しの条件が整うので、球貸記憶の記憶数(球貸記憶の数値、すなわち球貸記憶数、当初は0)を加算するステップ8を通ってステップA1(図7)へ進む。」)。

「本願発明1」の「カードリードライターにより読み取られた前記カードの残金を確認後、球貸要求信号の送信を行った後」なる事項は、段落番号0022に「次に、本体制御装置37からの信号の有無と残金の有無をチェックしてBBコールを送信する手順を述べる。図7に示すステップA1ではビジー信号の受信の有無を判定する。受信していない場合(ノウ)であれば、ステップA2において球貸記憶減算要求信号の受信の有無を判定しステップA3では残金減算要求信号の受信の有無を判定する。ここで両信号が受信されていなければステップA4でカードの金額データの残高の有無を判定する。そして、残高があればステップA5において球貸記憶の有無のチェックをする。球貸記憶が有ればステップA6において再度ビジー信号を受信しているかどうかを確認し、受信していない(ノウ)のであればステップA7においてBBコールを発生させる。なお、ステップA2において球貸記憶減算要求信号が受信されていればステップA8に進み球貸記憶の数値(前記球貸記憶数)を1減算してステップA3に合流する。」と記載されている。
しかしながら、ビジー信号についての要件は「本願発明1」に含まれておらず、図6をみても球貸スイッチがONであると記憶数に1を加えていることからみて、要するにカード残金があることを、球貸要求信号のことである「BBコール」の発生条件とする、ということを意味している。

これに対して、球貸用の残額があることを条件に球貸動作を行わせる、という程度の事項は、「引用発明」においても「カードの残額がゼロになった場合、情報書き込み部の解読を不能にして不正行為の防止を図るものであって、表示された残高金額の範囲内で金額選択操作部を操作することにより所望する金額を選択すると、電気的制御装置がパチンコ機の球排出装置を作動して、選択した金額に対応した数量の球をパチンコ機前面の受け皿に排出させる」のであって、カード残額がゼロであると球排出はおこなわれず、残高の範囲内で球排出がおこなわれるのであり、「本願発明1」は「確認」なる限定が付されているのみであるから構成上の特徴は格別存在せず、球排出装置を作動させるものである球貸要求信号の発生条件としてカード残額があること、という程度の限定であるから、この点に格別の想到困難性は認められない。

「球貸記憶数情報」については、「球貸記憶数」が、上記段落番号0022の記載によって裏付けられるものであるのだから、このような数を用いた球排出制御は、すなわち、カード式の球貸装置において、貸球排出を一定単位の排出度数の増減で制御することは、上記第2引用例、第3引用例にみられるように周知の手法である。

即ち、第2引用例記載のものは、「カードの挿入により排出度数が記憶装置内に加算され、この記憶内容は阻止部材により阻止されている排出部材の阻止が解除されて回転することにより減算される。」(上記記載12)そして、「実際に排出された遊技物体の数に相当する阻止解除度数を減算して記憶し、未排出度数として出力する記憶手段と、この記憶手段から取出された未排出度数にしたがって回転阻止手段の解除動作を未排出度数が0になるまで行わせる」(上記記載11)ことによる「遊技物体の貸出装置」であり、上記記載16が示すように、「カードの挿入」は所望の金額分の貸出を求める操作であるから、「本願発明1」における球貸スイッチの操作に相当し、第2引用例記載の発明の「カウンタの値」が「本願発明」の「球貸記憶数」に相当する。
また、第3引用例記載のものは、カード利用者が度数選択スイッチによって貸出度数を入力し、その度数が回数記憶レジスタに記憶され、レジスタの値を球貸ソレノイドの作動により1度数に対応する貸出が終了すると1減じ、レジスタの値が0であるか否かを判別し、0となるまで1度数に対応するパチンコ玉の貸出を繰り返すのであるから、第3引用例記載の発明の「度数選択スイッチ」は「本願発明1」の「球貸スイッチ」に、また「球貸し回数記憶レジスタ」の記憶値が「球貸記憶数」に相当する。

すなわち、第2、3引用例記載のものは、ともに貸出を求める操作の回数を記憶し記憶値に基づいて排出動作を行うのであり、排出動作を行うということは、排出装置に何らかの信号を与えている筈であるから、「引用発明」における「球貸要求信号」を排出装置に送信することに対応することは当業者には明らかなことである。
また、これらのものは、排出動作をおこなうと記憶値を減算している。
よって、「本願発明1」の「球貸スイッチをオンとすることで記憶されている球貸記憶数情報」が存在すること、「球貸記憶数情報を確認後」に「球貸要求信号の送信を行う」こと、「球排出を制御する制御装置」が「球貸要求信号」を受信すること、及び「球貸要求信号の送信を行った後、球貸記憶数情報を減算」することは上記第2、第3引用例にみられるような周知技術を「引用発明」に適用し、周知技術の有する作用効果を奏させようとしたにすぎない。

「貸出球の排出中でないことを確認後、球貸要求信号の送信」を行うとしている点は、一般に動作要求をその動作中の装置に送信しても意味がないから、動作要求を一旦記憶したり、要求の送信を禁じたりする等の手法が技術常識であり、「本願発明1」は、ビジー信号についての要件が含まれておらず、下記の(相違点4)についての判断でも論じるように、この技術常識と異なる格別の構成を有していないのだから、想到するに格別困難はない。

よって、当業者であれば、これら周知手法の適用に格別の困難はないから、相違点2も格別のものではない。

(相違点3について)
「本願発明1」における「本体制御装置」は、「球排出装置を制御する」ものであると請求項1には記載されている。
この「本体制御装置」が「パチンコ機本体の制御をおこなう制御装置」という意味を有するとしても、「引用発明」における「パチンコ機の球排出装置の制御装置」と「球排出を制御する」ものである点において変わりはなく、玉排出制御以外の「本体」についての制御に関して、「本体制御装置」であることによる構成上の特徴は格別限定されていないから、「引用発明」との相違は格別のものではない。
また、周知例としての第8引用例には、「通常のパチンコ機に、玉貸機の機能を付加した」(記載43)ものであって、「景品玉払出装置42が、景品玉払出動作の他に、玉貸し時における貸出玉の払出動作も兼用するように制御する」(記載44)ものが開示されている。第8引用例のものは、カード式玉貸機機能ではないが「硬貨判別機150および紙幣判別機152の出力が中央処理装置108へ与えられると、中央処理装置108は駆動モータ68の駆動を開始する。よって景品玉貯留タンク40内に貯留されたパチンコ玉の払出が開始する。」(記載44)ものであり、プリペイドカードが玉貸しにおいては硬貨または紙幣に相当するものであることは技術常識であるから、通常のパチンコ機の制御装置である「本体制御装置」に玉貸機機能であるカード読み取り結果の玉貸し要求信号を送信する、という程度の事項は、通常のパチンコ機に玉貸機の機能を付加する、という周知事項の付加程度の事項である。

よって、相違点3に格別の想到困難性は認められない。

(相違点4について)
「本願発明1」における「交信可能」は、「リードライター制御装置」から「本体制御装置」に「球貸要求信号」が「送信」され、「本体制御装置」から「リードライター制御装置」に「排出終了後」に「貸出球の排出が終了したことを送信する」、ということを意味している。

これに対して、第3引用例記載のものは、「サンド制御CPUが球貸出しソレノイドの作動を球貸出し確認スイッチがONとなるまで継続させ、ON信号を受けたら球貸回数記憶レジスタから1を減じている」(上記記載21.)のであるから、「球貸記憶数レジスタ」は、球貸出確認スイッチからのON信号を受けている。
即ち、リードライター制御装置に相当するサンド制御CPUが、球排出装置からの信号を受けて球貸回数記憶レジスタから1を減ずる動作を行うことは、排出装置に指令を発し、排出装置から信号を受けるのであるから信号のやりとりを排出装置との間で行っており、「本願発明」における「交信」と格別異ならない。

一般に、動作を要求する装置からの要求に基づいて動作する装置に、要求信号を送信し、その要求に基づく動作をおこなった装置が要求した装置に動作完了の信号を返信することは、広く行われている事項であり、パチンコ機分野における上記第3引用例のものもその一例である。

「本願発明」において、「リードライター制御装置」は、「貸出球の排出中でないことを確認後」球貸要求信号を送信するとしているが、「本体制御装置」からは、「排出が終了したことを送信する」のみであって、「球貸中でないことを確認」するための構成は格別限定されていない。
そして、「本願発明1」における「交信」は「球貸要求信号」および「貸出球の排出が終了したことの送信」以外に格別内容を特定していないのであるから、この一般的技術と格別異なることなることはなく、相違点4は、当業者であれば適宜に採用しうる程度の構成である。

よってカード式の球貸装置の、球排出装置がパチンコ機に設けられているものである「引用発明」において、カードリードライターを制御する制御装置と球排出装置を制御する制御装置とを「交信可能に接続」することは、当業者の適宜になし得た程度の事項である。

さらに、上記「引用発明6」においても、玉払出動作を制御している本体制御装置2と、カードの読み取り書き込みを制御している制御部16とは、上記記載37が示すように制御部16のCPU15から本体駆動制御部13に「遊戯情報」が送られ、本体駆動制御部13は制御部16のCPU15に「遊技の進行に伴う遊技状態情報」を送っているから、制御部16と本体駆動制御部13とは「交信可能に」接続されているといえるものであり、上記記載38に示すようにパチンコ機本体2と別体のユニットとしたものも、パチンコ機操作部3Aとの関係は図面からは把握できないにしても、カード式の玉貸機機能を有するパチンコ機において、カードの取扱を制御する制御部と本体制御部とが、別体のユニットとされて互いに交信可能に接続されている点は明らかである。

効果についても、上記相違点1〜4によりもたらされる効果は、上記各引用例から予想される範囲内のものである。

4.「本願発明1」についての判断
以上のとおりであるから、「本願発明1」は、上記「第1〜8引用例」に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおりであるから、「本願発明1」は、特許法第29条第2項の規定により、特許をうけることができないものである。
よって、結論のとおりに審決する。
 
審理終結日 2006-06-09 
結審通知日 2006-06-14 
審決日 2006-06-27 
出願番号 特願平11-152477
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 渡部 葉子
塩崎 進
発明の名称 パチンコ機  
代理人 小野塚 薫  
代理人 中村 壽夫  
代理人 宮崎 嘉夫  
代理人 萼 経夫  

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