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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G09B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09B |
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管理番号 | 1141164 |
審判番号 | 不服2003-17404 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-02-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-09-08 |
確定日 | 2006-08-11 |
事件の表示 | 特願2000-246317「教育支援装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月28日出願公開、特開2002- 62799〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成12年8月15日の出願であって、その出願からの主だった経緯を箇条書きにすると以下のとおりである。 ・平成12年 8月15日 本願出願 ・平成15年 4月30日付け 原審にて拒絶理由の通知 ・平成15年 6月18日付け 意見書・手続補正書の提出 ・平成15年 7月29日付け 原審にて拒絶査定の通知 ・平成15年 9月 8日付け 本件審判請求 ・平成15年10月 6日付け 審判請求書に係る手続補正書及び明細書に係る手続補正(平成14年改正前特許法第17条の2第1項3号の規定に基づく手続補正であり、以下、「本件補正」という。)書の提出 第2 補正の却下の決定 【補正の却下の決定の結論】 平成15年10月6日付けの明細書に係る手続補正を却下する。 【理由】 1.補正事項及び補正目的 本件補正後の【請求項1】乃至【請求項3】は、それぞれ本件補正前の【請求項2】乃至【請求項4】に対応するものであり、これら請求項の補正は次の補正事項からなっている。 補正事項:本件補正前【請求項2】の「選別手段1dは、記憶手段1cに記憶している各学習者2の学力および性格のデータに基づいて、各グループに同等の学力の学習者2が集まる一方で、同一のグループに同じ性格の学習者2が集まらないように各学習者2を選別し、各学習者2を5〜7名のグループに分けること」を「選別手段1dは、記憶手段1cに記憶している各学習者2の学力のデータに基づいて、学習者2を同等の学力の生徒群A・B・Cにそれぞれ分け、分けられた各学習者2をさらに5〜7名のグループに分け、このときに各学習者2の性格のデータに基づいて、同一のグループに同じ性格の学習者2が集まらないように各学習者2を選別すること」と補正する。 そして、本件補正事項は特許請求の範囲の減縮(特許法第17条の2第4項第2号に該当)を目的とするものである。 そこで、本件補正後の【請求項1】に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうか検討する。 2.本件補正後の【請求項1】に係る発明の認定 本件補正後の【請求項1】に係る発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲の【請求項1】に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める(以下、「補正発明」という。)。 補正発明:「複数の学習者2がグループ単位で学習活動を行うための教育支援装置であって、 入力手段1aと、出力手段1bと、記憶手段1cと、選別手段1dとを備えており、 記憶手段1cは、各学習者2に対して行なわれた選別用試験の結果によって得られた各学習者2の学力と、選別用試験としての性格分析テストの結果によって得られた各学習者2の性格とのデータが入力されることで、これらのデータを記憶するようになっており、 選別手段1dは、記憶手段1cに記憶している各学習者2の学力のデータに基づいて、学習者2を同等の学力の生徒群A・B・Cにそれぞれ分け、分けられた各学習者2をさらに5〜7名のグループに分け、このときに各学習者2の性格のデータに基づいて、同一のグループに同じ性格の学習者2が集まらないように各学習者2を選別することを特徴とする教育支援装置。」 3.独立特許要件の欠如(明確性) (1) 【請求項1】には、「各学習者2の性格のデータに基づいて、同一のグループに同じ性格の学習者2が集まらないように各学習者2を選別する」とあるが、ひとくちに「性格」といっても多様な分類の仕方があるから、「性格」なる用語の定義自体が明らかでない。また、「性格」が性格分析テストの結果に基づいて決定されるとしても、性格分析テストは多種多様なものが存在し、各性格分析テスト毎に性格の分け方が異なっている。例えば、本願明細書に記載の「エゴグラム」ではCP(厳しい心),NP(愛性の心),A(大人の心),FC(自由な心),AC(従順する心)の5の心に、エニアグラムでは、タイプ1(完全主義者),タイプ2(献身家),タイプ3(達成者),タイプ4(芸術家),タイプ5(研究者),タイプ6(堅実家),タイプ7(楽天家),タイプ8(統率者),タイプ9(調停者)の9つのタイプに、「YG検査」では平穏型(温順寡黙な人),管理者型(安定積極的な人),異色型(寡黙の人)を含めた複数の型(グループ)に性格を分類している。但し、種々の性格分析テスト間の性格にどのような対応関係があるかは定かでない。 そうすると、ある性格分析テストでは同じ性格との結果が出た学習者2同士であっても、別の性格分析テストでは異なる性格との結果が出る場合もあり得る。つまり、ある性格分析テストの結果では別の性格であることから同一のグループに分けられた学習者2であっても、別の性格分析テストの結果からみれば、同じ性格であるとの結果が得られることを排除し得るものではない。むしろ、別の性格分析テストからみれば、同じ性格であるとの結果が得られる同一グループ内の学習者2が存在する蓋然性の方が高いものと予想される。 前述のように、「性格」といっても多様な分類の仕方があり、さらに、補正発明は種々存在する性格分析テストによってもその分類の仕方が異なる「性格」を指標としているものであるから、同一のグループに同じ性格の学習者2が集まっていないことの保証はない。 (2) また、補正発明では、学力結果から生徒群A・B・Cに分けた後に、5〜7名のグループに分けることを規定したものと想定されるが、この場合に、母群である各生徒群A・B・Cに属する学習者2の数が何人であるかの特定はない。 そうすると、求められるところの属する学習者2が5〜7名のグループを構成する上で、前記各性格分析テストに基づく性格を以て分類したとしても、属する学習者2を如何にして5〜7名に特定し得るかは不明であり、本願明細書を検討しても、その具体的手法は開示されていない。 ここで、前記に挙げる各性格分析テストの結果に基づいて、5〜7名が分けられる性格のみを選択すれば、ひとまず5〜7名を選別することは可能ともいえるが、この場合、残る他のグループに同じ性格の学習者2が集まっていないことの保証はない。 (3) 以上のことから、補正発明が、「各学習者2の性格のデータに基づいて、同一のグループに同じ性格の学習者2が集まらないように各学習者2を選別する」という特定を行っている以上は、選別された学習者2からなるグループには、特定の性格を有する学習者2が集まらないようにする一般化した選別手法が特定されるべきであるけれども、そのような一般化した選別手法が発明を特定する事項として記載されていないし、かつ、客観的に把握できるものとはいえないから、補正発明を特定する事項が不明確といわざるを得ない。 したがって、本件補正後請求項1の記載は特許法第36条第6項2号に規定する要件を満たしていないから、本件補正後請求項1に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができない。 すなわち、本件補正は特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反している。 4.独立特許要件の欠如(技術的意義) 前記「3.独立特許要件の欠如(明確性) (2)」で検討したように、何故に、求められるところの属する学習者2が5〜7名のグループを構成し得るかは不明である。 また、本願明細書においては、「同じ性格の学習者が集まらない」ことによる作用効果として、段落【0012】に「グループ内での同じ性格の学習者2どうしの争いがなくなり、グループ内での学習者2のまとまりがよくなって、グループ単位での学習がスムーズに行なわれる。」とされる。ここにいう、「グループ内での同じ性格の学習者2どうしの争い」が、如何なるものであるのかは本願明細書中にその詳細に係る記載がないので、理解することが不可能であるが、少なくとも、同一のグループに同じ性格の学習者2が集まらないことが、前記で指摘した争いに何らかの影響を及ぼす可能性があることは排除しきれない。 しかしながら、前記「3.独立特許要件の欠如(明確性) (1)」で検討したように、性格分析テスト毎に分類される性格が異なると共に、ある性格分析テストの結果では別の性格であることもあり得るから同一のグループに分けられた学習者2であっても、別の性格分析テストの結果からみれば、同じ性格であるとの結果が得られることを排除し切れるものではなく、ある性格分析テストの結果によると同一のグループであるのに、別の性格分析テストを行えば同一のグループにならない学習者2が出てくる蓋然性が高いもの予想されるのであって、発明の詳細な説明【0012】に記載の「同じ性格の学習者2どうしの争いがなくなり」とは必ずしも言えるものではない。 よって、「同一のグループに同じ性格の学習者2が集まらないように各学習者2を選別する」ことの技術的意義は発明の詳細な説明に記載されていないし、示唆があるものともいえない。 したがって、本件明細書の記載は特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないから、本件補正後請求項1に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができない。 すなわち、本件補正は特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反している。 【補正却下の決定の結び】 以上のとおり、本件補正前の【請求項2】を限定的に減縮した補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は平成15年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反している。したがって、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、本件補正は却下されなければならない。 よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本件審判請求についての当審の判断 1.本願発明の認定 本件補正が却下されたから、本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年6月18日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項2】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 「複数の学習者2がグループ単位で学習活動を行うための教育支援装置であって、 入力手段1aと、出力手段1bと、記憶手段1cと、選別手段1dとを備えており、 記憶手段1cは、各学習者2に対して行なわれた選別用試験の結果によって得られた各学習者2の学力と、選別用試験としての性格分析テストの結果によって得られた各学習者2の性格とのデータが入力されることで、これらのデータを記憶するようになっており、 選別手段1dは、記憶手段1cに記憶している各学習者2の学力および性格のデータに基づいて、各グループに同等の学力の学習者2が集まる一方で、同一のグループに同じ性格の学習者2が集まらないように各学習者2を選別し、各学習者2を5〜7名のグループに分けることを特徴とする教育支援装置。」 2.本願発明の記載不備 「同一のグループに同じ性格の学習者2が集まらないように各学習者2を選別」という記載について検討するに、上記「第2 補正却下の決定 3.独立特許要件の欠如(明確性)」で述べたように、同じ性格であることが規定し得ないのであるから、上記と同様の理由により、この記載は不明確である。 したがって、本願発明は、明確ではないから、特許法第36条第6項第2号の規定により、特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおり、本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-06-08 |
結審通知日 | 2006-06-14 |
審決日 | 2006-06-28 |
出願番号 | 特願2000-246317(P2000-246317) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(G09B)
P 1 8・ 575- Z (G09B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 木村 史郎、櫻井 茂樹、赤木 啓二 |
特許庁審判長 |
酒井 進 |
特許庁審判官 |
藤本 義仁 藤井 勲 |
発明の名称 | 教育支援装置 |
代理人 | 折寄 武士 |
代理人 | 折寄 武士 |