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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1141196 |
審判番号 | 不服2001-11522 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-01-16 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-07-05 |
確定日 | 2006-08-10 |
事件の表示 | 平成11年特許願第186694号「ゲームシステムおよびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月16日出願公開、特開2001- 9152〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成11年6月30日に出願され、平成13年5月30日付で拒絶査定され、これに対して拒絶査定不服の審判が請求されたものであって、 本願発明は、特許請求の範囲に記載された請求項1〜13に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という)は次のとおりである。 「プレイヤーにより操作される入力装置と、 所定の曲に関連付けられた前記入力装置の一連の操作を規定する演奏データを記憶する演奏データ記憶手段と、 前記演奏データに基づいて、前記曲に関連付けられた前記入力装置の一連の操作をプレイヤーに指示する操作案内手段と、を備え、 前記演奏データには、前記入力装置に設けられた少なくとも一つのタイミング操作部材に関する操作のタイミングを指定する情報と、前記入力装置に設けられフレット操作用の複数の選択操作部材から前記タイミング操作部材の操作と関連付けて操作されるべき少なくとも一つの選択操作部材を指定する情報とが含まれたゲームシステムにおいて、 前記入力装置を介して与えられるプレイヤーからの指示に基づいて、前記演奏データの前記操作のタイミングを指定する情報又は前記選択操作部材を指定する情報のいずれか一方の情報を、他方の情報から独立して編集する編集手段が設けられていることを特徴とするゲームシステム。」 第二.刊行物に記載された発明 原査定の拒絶理由に引用された、特開平8-305356号公報、及び周知事項を例示する為の刊行物、特開昭61-58679号公報、「電撃Play Station 第5巻 第10号」には、以下の事項が記載されている。 (A)特開平8-305356号公報(以下「刊行物A」という) (A-1).「【目的】楽譜を読めない初心者でも簡単に且つ楽しんで電子楽器を演奏することができる音楽的アミューズメントシステムを提供する。 【構成】各音符がキャラクタ化されて、横方向に拡げられ、演奏者が弾くべき鍵の垂直上方の位置に音符が配置され、リンゴ化された音符は、画面上、上から下にアニメーションスクロールされて移動され、演奏者が、直線L2で示す「現在の演奏位置」の直線にリンゴの発音許可範囲a1が差し掛かるタイミングを見計らって、弾くべき鍵盤を押鍵すると、矢が発射されてリンゴに刺さり、矢の刺さったリンゴは画面上から消滅する。リンゴが消滅すると得点が加算される一方、演奏者が弾くべきタイミングをはずすと、矢はリンゴに刺さらずにリンゴは消滅せず、表示画面の最後までスクロールされて行く。また、押鍵されて矢の刺さったリンゴの消音許可範囲a2が直線L2に差し掛かったときに演奏者がその押鍵された鍵を離鍵したときも、得点が加算される。」(第1頁左下欄第3〜19行) (A-2).「【0052】以上説明した様に本実施例では、音符情報を読み出して、アニメーションスクロールし、音符に対応するキャラクタが発音許可範囲内に来たときに鍵盤1を押鍵するとそのキャラクタが撃ち落とされて得点が加算されるとともに当該楽音が発音され、消音許可範囲内に来たときに押鍵されている鍵を離鍵すると、得点が加算されるとともに当該楽音が消音されるように構成したので、楽譜を読むことのできない初心者でも、簡単に且つ楽しんで電気楽器を演奏することができる。また、ディスプレイ7に鍵盤を表示するとともに、押鍵すべき鍵の位置でキャラクタがスクロールするようにしたので、演奏者は感覚的にどの鍵盤を弾けばよいかがわかる。さらに、演奏する曲が難曲である場合には、シューティングゲームとして難しくなるために、電子楽器に興味のあるユーザのみならず、ゲームマニアにもユーザの幅を拡大することができる。 【0053】なお、本実施例では、電子楽器として電子、鍵盤楽器を用いて説明したが、これに限る必要はない。」 (A-3).してみると、刊行物Aには以下の発明(以下「引用発明」という) 「各音符がキャラクタ化されて、演奏者が弾くべき鍵の垂直上方の位置に音符が配置されて、画面上、上から下にアニメーションスクロールされて移動され、演奏者が、直線L2で示す「現在の演奏位置」の直線にキャラクタ化された音符が発音許可範囲a1が差し掛かるタイミングを見計らって、弾くべき鍵盤を押鍵すると、得点が加算されて押鍵の音が発音される、操作指示手段を備えた音楽的アミューズメントシステム」 (B)特開昭61-58679号公報(以下「刊行物B」という) (B-1).「しかしながら、これらのゲームはすべて既製品であり、ゲームの仕様が決まっているので、ユーザーの好みによってゲーム仕様を変えることはできない。一般にパーソナルコンピュータのユーザーには創作欲があるから、既製品のゲームを単にプレイするだけでは物足りないが、BASIC言語等により自分でゲームプログラムを組むとなると多大な労力と時間が必要で、きわめて困難であるという問題があった。」(第2頁左下欄第13行〜同頁右下欄第1行) (B-2).「[発明の概要]この発明は、複数のゲーム形式による基本となるゲームアルゴリズムが用意されていて、ゲーム形式とそのゲームに登場するキャラクタ及び背景を設定し、更に得点条件や自分のキャラクタと敵のキャラクタと敵のキャラクタの強弱条件等のストーリーを設定することによって、上記ゲームアルゴリズムを完成させるようにして、ユーザーは種々の条件を入力するだけで、プログラムを組むことなく希望のゲームを作成することのできる電子ゲーム装置のアニメーション制御装置である。」(第2頁右下欄第7〜17行) (B-3).「[発明の実施例]<実施例の構成> 第1図は本発明の全体構成を示すブロック図で、図中1はゲームを作成するためとゲームをプレイするために必要な多数のキーを備えたキー入力装置である。・・・。3は本発明の特徴であるゲーム自動作成を行うゲーム作成装置で、入力制御装置2の動作開始指令により動作を開始し、動作が完了すると完了信号を入力制御装置2へ出力する。このゲーム作成装置3にはメニュー画面の表示を制御するメニュー表示装置4が接続され、ゲーム作成装置3はこのメニュー表示装置4を制御してゲーム作成手順を示すメニュー画面を表示させながら、ゲームの作成処理を行う。」(第2頁右下欄第18行〜第3頁左上欄第16行) (C).「電撃Play Station 第5巻 第10号」、200頁、メディアワークス発行、1999年4月9日発行 (C-1).「アーケード板『〜LINK Ver.』のプレイ条件で「エディットモード」が出現! 自分でダンスのオリジナルステップを作ることができる「エディットモード」。ステップの作り方は、専用コントローラを使って踊りながら作る方法と、標準コントローラを使って細かいステップをじっくり考えて作る方法がある。しかし、出現させるにはアーケード版の条件(詳細はまだ秘密)が必要だ」 第三.対比 (1).発明特定事項の対応関係 (i)引用発明においても、演奏する曲に合わせた、打鍵すべき鍵盤、タイミング等のゲーム進行に関するデータを保持することは明らかであるから、本願発明における「演奏データ」に相当するデータを保持していることも明らかである。 (ii).引用発明における「操作表示手段」は、本願発明における「案内手段」に対応する。 (iii).引用発明における「演奏者が弾くべき鍵」と、本願発明における「タイミング操作部材」とは、指示された時期に操作される「タイミング実行部材」にて共通する。 (iv).引用発明における「鍵盤」と、本願発明における「フレット操作用の複数の選択操作部材」とは、指示された時期に操作されるべき操作部材を選択する範囲である、「操作部材選択範囲」にて共通する。 (v).引用発明において「演奏者が弾くべき鍵の垂直上方の位置に音符が配置」されることと、本願発明において、フレット操作用の複数の選択操作部材から前記タイミング操作部材の操作と関連付けて操作されるべき少なくとも一つの「選択操作部材を指定する情報」とは、「操作部材指定手段」にて共通する (vi).引用発明における「演奏者が、直線L2で示す「現在の演奏位置」の直線」は、操作タイミングを指示するものであるから、本願発明における「操作のタイミングを指定する情報」に対応する。 (2).一致点 ゲームの実行は、データとして記憶されている情報に基づいて制御されることは周知の事項であることを考慮すると、両者は次の点で一致する。 「プレイヤーにより操作される入力装置と、 所定の曲に関連付けられた前記入力装置の一連の操作を規定する演奏データを記憶する演奏データ記憶手段と、 前記演奏データに基づいて、前記曲に関連付けられた前記入力装置の一連の操作をプレイヤーに指示する操作案内手段と、を備え、 前記入力装置に設けられた少なくとも一つのタイミング実行部材に関する操作のタイミングを指示する情報と、前記入力装置に設けられた操作部材選択範囲から前記タイミング実行部材の操作と関連付けて操作されるべき少なくとも一つの操作部材指定手段とが含まれたゲームシステム」 (3)相違点 (i).タイミング実行部材に関して、本願発明は「タイミング操作部材」であるのに対し、引用発明は「押鍵すべき鍵」である点 (ii).操作部材選択範囲に関して、本願発明は「フレット操作用の複数の選択操作部材」であるのに対し、引用発明は「鍵盤」である点 (iii).操作部材指定手段に関して、本願発明は、フレット操作用の複数の選択操作部材の内少なくとも1の選択操作部材を指定するのに対し、引用発明は、演奏者が弾くべき鍵の垂直上方の位置に音符が配置されている点、 (iv)演奏データに関して、本願発明は、タイミングを指定する情報、又は選択操作部材を指定する情報のいずれか一方を他方の情報から独立して編集する編集手段が設けられているのに対し、引用発明は、ゲーム進行に関するデータを各個別々に編集することは記載されていない点 (4).相違点の検討 (ア).相違点(i)、(ii)、(iii)の検討 当該相違点は、要するに、音楽演奏楽器が引用発明においてはピアノであるのに対し、本願発明はフレットを具備した、例えばギター等の弦楽器を対象とすること、すなわち、演奏楽器の相違に起因するものであるから、演奏楽器をピアノに換えてギターを選択することにより、当業者が容易に為し得ることであり、当該選択も、引用発明には演奏楽器として鍵盤楽器に限らない点が示されているから、演奏楽器として周知のギターを選択することは当業者にとっては容易に為し得ること(「GAMEST 第14巻第10号」 株式会社新声社発行、1999年3月15日発行 P105頁参照)である。 すなわち、 引用発明において電子楽器としてギターを採用すると、音の高さを変える場合、鍵盤楽器にあっては鍵盤の選択であるのに対し、ギターにあってはフレットであること、さらに発音操作としては、鍵盤楽器にあっては打鍵であるのに対し、ギターに合っては撥弦であり、操作すべきフレット、撥弦すべきタイミングは演奏の進行に応じて変化すること、及びそれらを順次指定することとなること等は、当業者にとっては自明と言える事項である。 したがって、当該相違点は、対象楽器としてギター等の弦楽器を採用したにすぎず、当該採用に際して行なう変更も当業者にとっては自明と言える程度の事項であるから、格別のものではない。 (イ).相違点(iv)の検討 ゲームにおいては、ゲーム入力手段を利用してゲームをカスタマイズすることは、刊行物B、Cに示される様に周知の事項であり、さらに、音楽においても曲のテンポ、音程等を変化させる編曲は周知の事項であることを勘案すると、引用発明の音楽ゲームにおけるカスタマイズとして、当該音楽のカスタマイズとして前記周知の編曲可能とすることは、当業者が容易に想到できることである。 しかも、例えば音程を半音変化させる編曲に際しては、音程を司るフレットなどの選択操作部材を変更可能、すなわち、単独編集可能とすれば良いことは当業者にとって自明の事項である。 したがって、当該相違点は当業者が容易になし得る程度の事項である。 (5)まとめ 以上の様に、引用発明の鍵盤楽器をギターに代替し、演奏を編曲可能とすることは当業者が刊行物Aに記載された発明、及び周知事項に基づいて容易になし得ることであり、その効果も予測の範囲内の事であるから、前記相違点を総合的に判断しても格別のものではない。 第四.むすび したがって、本願発明は、刊行物Aに記載された発明、及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-06-12 |
結審通知日 | 2006-06-13 |
審決日 | 2006-06-26 |
出願番号 | 特願平11-186694 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 神 悦彦 |
特許庁審判長 |
中村 和夫 |
特許庁審判官 |
塩崎 進 宮本 昭彦 |
発明の名称 | ゲームシステムおよびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体 |
代理人 | 山本 晃司 |
代理人 | 中村 聡延 |
代理人 | 星野 哲郎 |