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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1141227
審判番号 不服2003-20948  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-29 
確定日 2006-08-10 
事件の表示 平成8年特許願第332391号「配線基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年6月26日出願公開、特開平10-173316〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成8年12月12日の出願であって、平成15年9月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年10月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成15年10月29日付けの手続補正について
[補正却下の決定の結論]
平成15年10月29日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
平成15年10月29日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)は、平成14年10月18日付けの手続補正書により補正された明細書を補正しようとするものであって、本件手続補正により補正しようとする請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】 厚みが10乃至500μmの樹脂フィルムと、該樹脂フィルム表面に設けられた粘着層と、該粘着層上に50g/20mm以上の粘着力(180°ピール強度)で保持され且つ50μm以下の配線ピッチを有する回路パターン状の厚みが1乃至100μmの金属層とから成る転写シートを使用し、
前記シートの金属層側の面に半硬化状態の絶縁性シートを重ね合わせる工程、
前記転写シートと絶縁性シートとを圧着して前記金属層を半硬化状態の絶縁性シート表面に埋め込むと共に、紫外線照射又は熱処理により、粘着層の粘着力(180°ピール強度)を30g/20mm未満に低下させる工程、及び、
前記転写シートの樹脂フィルムを引き剥がすことにより、前記金属層を半硬化状態の絶縁性シート上に転写させる工程、
から成り、前記金属層を半硬化状態の絶縁性シートに転写させた後に、半硬化状態の絶縁性シートを完全硬化させることを特徴とする配線基板の製造方法。」

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「絶縁性シート」について、願書に最初に添付した明細書または図面に記載した技術的事項に基づいて「半硬化状態の絶縁性シート」であるとの限定を付加し、さらに、「金属層を半硬化状態の絶縁性シートに転写させた後に、半硬化状態の絶縁性シートを完全硬化させる」との限定を付加するものであるから、新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、上記の本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成15年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-310832号公報(以下、「引用例」という。)には、「プリント配線板の製造方法」に関して、図1〜3とともに次の事項が記載されている。

ア.「【特許請求の範囲】
【請求項1】 フィルム上に保持された導体パターンと基板とを一体化させた後前記フィルムのみを選択的に除去してプリント配線板を製造する方法において、可視光線を透過し、かつ紫外線照射によって粘着力が低下する接着層を有する支持フィルムに導体パターンを接着する工程、接着剤を用い前記支持フィルムの耐熱温度より低い温度に加熱して前記導体パターンと基体とを接着し前記接着剤を半ば硬化させる工程、前記支持フィルムに紫外線を照射して前記接着層の粘着力を低下させる工程、前記支持フィルムを剥離する工程、および前記接着剤を加熱硬化させる工程を有することを特徴とするプリント配線板の製造方法。」

イ.「【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述の製造方法に供されるコイル(導体)パターンが形成された有機フィルムは工程内の製造条件および通常の取扱いにおいてはコイル(導体)パターンと有機フィルムの界面で剥離せず、コア基板と貼り合わせた後にはコイル(導体)パターンと有機フィルムの界面で容易に剥離できるという性能が要求される。なぜなら、コイル(導体)パターンを有機フィルム上に保持する力が小さすぎると取扱い等においてフィルム上からコイル(導体)パターンが剥がれ落ちてしまい、大きすぎるとフィルムを剥離除去するときにコア基板とコイル導体の界面で剥離を起こし固着不良となってしまうという問題があるからである。」

ウ.「【0010】図1は、導体回路パターン1と支持フィルム3が紫外線照射により粘着力を低下できる粘着剤2により一体化された基板の断面図である。
【0011】導体パターン1はどのような方法によって得られたものでも良く、その材質も導電性であれば特に限定しないが、例えば銅または銅合金などが一般に使用できる。また導体厚みも特に限定しない。また導体パターン1の形状は、目的とするプリント配線板の配線形状にあったものであれば直線状でも、コイル状でも特に限定されない。また、フィルム上に保持される導体は導体パターンの他に転写用の位置決めパターン等回路パターン以外を設置することも可能である。
【0012】粘着剤2としては、紫外線を照射することにより硬化し粘着性を失うUV硬化タイプのものが使用できる。また粘着剤2の粘着力は使用する導体とフィルムのT字剥離試験において、未処理の場合は、60g/10mm以上、好ましくは100g/10mm以上、より好適には150g/10mm以上であり、加熱または紫外線照射等の処理後の場合は、60g/10mm以下、好ましくは30g/10mm以下、より好適には10g/10mm以下である。
【0013】支持フィルム3としては工程内条件に耐えるものであれば特に限定はしないが、可視光線と紫外線を透過する材質のものを使用する必要がある。好適には経済性を加味しポリエチレンテレフタレートフィルムが使用される。」

エ.「【0023】次に、導体パターンを有する基板4と溝部を有する基板5とを位置決めした後、両基板4,5を、導体パターン1が溝内に埋設されるように一体化する。この際、位置決めには導体パターン1と同時形成された位置決めパターンを使用することにより、位置精度良く一体化することができる。本発明に使用される支持フィルムは、透明であるためフィルム側から位置決めパターンを認識できるので、あらかじめパターン側から認識し位置決め用の穴をあけておく必要はない。なお、加圧条件は導体パターン1と基板5の溝部底面が接着剤8を介して相互接触できるように設定される必要がある。そのために、図3(b)に示すように、溝部の平面形状に対応する形状の凸型治具9を使用しても良い。またこの時の硬化は加熱により紫外線照射後の剥離が困難とならない範囲内で、かつフィルムが変形しない程度の温度で行い、接着剤は仮り硬化程度で充分である。加熱温度は硬化時間を短縮するためには高い方が良く、フィルムの熱変形を起こさせないためには低い方が良い。実際には使用する接着剤の硬化特性やフィルムの耐熱特性により決定され、ポリエステルフィルムを使用し一般的なエポキシ系接着剤の場合は室温〜150℃の範囲で仮り硬化できるが、好ましくは室温〜120℃である。
【0024】次に、基板4側から紫外線を照射し、接着剤の粘着力を低下させた後、支持フィルム3を機械的に剥離除去する。その後、仮り硬化で止めている接着剤の硬化を熱処理により完全に硬化させる。このときの温度は使用する接着剤の硬化条件の最適値で行う。一般的なエポキシ系接着剤であれば100℃〜250℃の範囲、好ましくは120℃〜250℃である。以上の方法により導体パターン1が転写されたプリント配線板10を得ることができる。
【0025】ここで、溝部を有する基板5の材質,寸法等は特に限定されるものではないが、例えば厚さ5mm以下、溝深さ2mm以下、溝幅5mm以下のプラスティック板またはセラミック板が好適である。」

オ.「【0026】実施例2
本発明を、ロータリートランスの作製に適用した。導体パターンは電解メッキで形成し、支持体としては厚み0.008mmの無色透明なポリエチレンテレフタレートフィルムに粘着剤が0.004mmの厚みで均一に塗布されているものを使用した。この粘着剤は紫外線を照射することにより硬化し、粘着力が低くなる。紫外線照射前の粘着力は160g/10mmであり、紫外線を1000mj/cm2照射後の粘着力は10g/10mmである(以降ポリエチレンテレフタレートフィルムと接着剤とをセットにして単にUV剥離フィルムという)。
【0027】まず、アルミニウムよりなる100μm厚のメッキ基体上に、形成する導体パターン以外の部分に対応するフォトレジスト(ナガセマイクロレジスト747を使用)を形成した。これを陰極として使用して電解銅メッキを行うことにより、コイルパターンおよび位置決めパターンを同時に形成し、しかる後に前述したフォトレジストをレジスト剥離液(ナガセレジストストリップN530)により溶解除去した。こうして作製した導体厚40μm、線幅130μm、ピッチ170μm、巻き線幅820μmという代表値を持つ径の異なる複数のコイルおよび位置決めパターン面上に、ラミネータを用いて上述のUV剥離フィルムを貼り付けた。
【0028】次に、メッキ基体のアルミニウム板を10%塩酸水溶液で溶解除去することにより、UV剥離フィルム上にコイルパターンおよび位置決めパターンが一体化された基板を得た。
【0029】次いで、前記コイルパターンに対応する溝部を有するフェライト基体(溝深さ150μm、溝幅1.23mm)の溝部にエポキシ樹脂系接着剤(スリーボンドTB2285)を、スクリーン印刷により塗布した後、コイルパターンとフェライトコアの溝部を位置決めパターンをフィルム側から認識して位置合わせした後、110℃、15分間熱処理し貼り合わせた。その後UV剥離フィルム側より紫外線を照射し粘着力を低下した後、UV剥離フィルムのみを機械的に剥離除去した。この時接着剤は半硬化の状態で、完全には硬化していなかった。続いて200℃、20分間再熱処理することにより、図3(c)のようなプリント配線板(ロータリートランス)を得た。以上の方法により作製した100個のプリント配線板はいずれもコイルパターンがフェライト溝部に確実に固定されていた。」

カ.「【0036】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、粘着力を意図的に変化できる粘着フィルム上に保持された導体パターンを基板と一体化させた後、粘着力を低下させ、粘着フィルムのみを機械的に剥離するようにしたので、工程途中でのパターンの脱離や固着不良などをなくし、歩留り良く効率的にプリント配線板を製造することができる。
【0037】また、フィルム剥離時の基板上への導体パターンの保持力が仮り硬化程度の力で良いため、フィルムに高温をかけないので、加熱するとUV剥離性を失ってしまうようなUV剥離フィルムも使用することができ、かつ高価な耐熱性のフィルムを使わなくても良く、また熱硬化タイプの接着剤を一体化工程に使用することが可能となる。」

上記記載事項ア〜カの記載を総合すると、引用例には、
「厚みが8μm(0.008mm)の支持フィルムと、該支持フィルム表面に設けられた粘着剤と、該粘着剤上に150g/10mm以上の粘着力(T字剥離試験)で保持され且つ170μmの配線ピッチを有する回路パターン状の厚みが40μmの導体パターンとから成る基板4を使用し、
前記基板4の導体パターン側の面に接着剤8を塗布した基板5を重ね合わせる工程、
前記基板4と接着剤8を塗布した基板5とを圧着して前記導体パターンを接着剤8表面に埋め込むと共に、紫外線照射により、粘着剤の粘着力(T字剥離試験)を10g/10mm以下に低下させる工程、及び、
前記基板4の支持フィルムを引き剥がすことにより、前記導体パターンを接着剤8を塗布した基板5上に転写させる工程、
から成り、前記導体パターンを接着剤8を塗布した基板5に転写させた後に、半硬化状態の接着剤8を完全硬化させるプリント配線板の製造方法」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3.発明の対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「支持フィルム」、「粘着剤」、「導体パターン」、「基板4」、「プリント配線板の製造方法」、は、それぞれ、本願補正発明の「樹脂フィルム」、「粘着層」、「金属層」、「転写シート」乃至「シート」、「配線基板の製造方法」に相当する。また、引用発明の「接着剤8を塗布した基板5」は、転写シート(基板4)に重ね合わせる「基体」である限りにおいて、本願補正発明の「半硬化状態の絶縁性シート」に対応する。

したがって、両者は、
【一致点】
「樹脂フィルムと、該樹脂フィルム表面に設けられた粘着層と、該粘着層上に保持され且つ回路パターン状の厚みが1乃至100μmの金属層とから成る転写シートを使用し、
前記シートの金属層側の面に基体を重ね合わせる工程、
前記転写シートと基体とを圧着して、紫外線照射により、粘着層の粘着力を低下させる工程、及び、
前記転写シートの樹脂フィルムを引き剥がすことにより、前記金属層を基体上に転写させる工程、
から成る配線基板の製造方法。」
に係る発明である点で一致し、次の4点で相違する。
【相違点1】
樹脂フィルムの厚みに関して、本願補正発明では、「10乃至500μm」と限定しているのに対し、引用発明では、「8μm」としている点。
【相違点2】
粘着層の粘着力に関して、本願補正発明では、紫外線照射前の粘着力を「50g/20mm以上(180°ピール強度)」と限定し、紫外線照射後の粘着力を「30g/20mm未満(180°ピール強度)」と限定しているのに対し、引用発明では、紫外線照射前の粘着力を「150g/10mm以上(T字剥離試験)」とし、紫外線照射後の粘着力を「10g/10mm以下(T字剥離試験)」としている点。
【相違点3】
回路パターンの配線ピッチに関して、本願補正発明では、「50μm以下」と限定しているのに対し、引用発明では、「170μm」としている点。
【相違点4】
転写シートに重ね合わせる基体に関して、本願補正発明では、金属層側の面に「半硬化状態の絶縁性シート」を重ね合わせ、転写シートと「絶縁性シート」とを圧着して金属層を「半硬化状態の絶縁性シート」表面に埋め込んでおり、金属層を「半硬化状態の絶縁性シート」上に転写させ、転写させた後に、「半硬化状態の絶縁性シート」を完全硬化させているのに対し、引用発明では、金属層(導体パターン)側の面に「接着剤8を塗布した基板5」を重ね合わせ、転写シート(基板4)と「接着剤8を塗布した基板5」とを圧着して金属層を「接着剤8」表面に埋め込んでおり、金属層を「接着剤8を塗布した基板5」上に転写させ、転写させた後に、「半硬化状態の接着剤8」を完全硬化させている点。

4.当審の判断
(1)上記相違点1について検討する。
配線基板の製造に使用する転写シートの樹脂フィルムの厚みを10乃至500μmとすることは、従来一般に行われている範囲内のことである(例えば、特開平5-251851号公報の厚みが25〜125μmのプラスチックフィルム、特開平2-228091号公報の厚みが30〜3000μmのプラスチックフィルムを参照)から、上記相違点1に係る本願補正発明の構成は当業者であれば容易に想到し得た事項にすぎない。

(2)上記相違点2について検討する。
引用発明においても、紫外線照射前の転写シート(基板4)の粘着力は、通常の取扱いにおいて金属層(導体パターン)が樹脂フィルム(支持フィルム)から剥離しないように充分大きなものとしているし(T字剥離試験で150g/10mm以上)、配線基板の製造に使用する転写シートの粘着力を、金属層が樹脂フィルムに充分保持される程度の粘着力とするために、180°ピール強度で50g/20mm以上とすることは、従来周知の技術である(例えば、特開平2-228091号公報参照)から、引用発明において、紫外線照射前の粘着力を180°ピール強度で50g/20mm以上とすることが、当業者にとって格別困難なことであるとは認められない。
また、引用発明においても、樹脂フィルム(支持フィルム)を引き剥がす際の転写シート(基板4)の粘着力は、転写不良を防止するために、紫外線を照射することによって充分小さなものとしているし(T字剥離試験で10g/10mm以下)、紫外線照射後の粘着力をどの程度まで低下させるかは、金属層(導体パターン)の表面状態等により当業者であれば適宜選択し得る設計事項であるから、引用発明において、紫外線照射後の粘着力を180°ピール強度で30g/20mm未満とすることが、当業者にとって格別困難なことであるとは認められない。
したがって、上記相違点2に係る本願補正発明の構成は、当業者であれば容易に想到し得た事項にすぎない。

(3)上記相違点3について検討する。
配線ピッチをより微細なものとすることは、当業者であれば当然考慮し得る事項であって、配線ピッチが「50μm以下」であるという限定に格別の臨界的意義があるとも言い難いことから、上記相違点3に係る本願補正発明の構成は、当業者であれば適宜選択し得る設計事項にすぎない。

(4)上記相違点4について検討する。
転写シートを使用した配線基板の製造方法において、転写シートに重ね合わせる基体として半硬化状態の絶縁性シートを用いて、転写シートと半硬化状態の絶縁性シートとを圧着し、金属層をこの半硬化状態の絶縁性シート表面に埋め込ませることは従来周知の技術である(例えば、特開平7-22725号公報、特開昭61-210691号公報参照)から、引用発明において、転写シート(基板4)の金属層(導体パターン)側の面に重ね合わせる基体である「接着剤8を塗布した基板5」に代えて「半硬化状態の絶縁性シート」を用いて、金属層(導体パターン)を半硬化状態の絶縁性シート表面に埋め込むようにすることに、格別の技術的困難性があるとは認められない。
また、引用発明においても、紫外線照射により粘着力が低下する粘着層(粘着剤)を用いたことにより、金属層(導体パターン)を転写させる箇所である接着剤8が、樹脂フィルム(支持フィルム)を引き剥がす時点、すなわち転写させる工程において、半硬化状態であることを可能としており、この接着剤8は転写させた後(樹脂フィルムを引き剥がした後)に完全に硬化させている。そうすると、引用発明において基体として「半硬化状態の絶縁性シート」を用いた際に、樹脂フィルム(支持フィルム)を引き剥がす時点、すなわち転写させる工程において、金属層(導体パターン)を転写させる箇所となる絶縁性シートを半硬化状態のままとし、転写させた後に、半硬化状態の絶縁性シートを完全硬化させることは、当業者であれば容易になし得る事項である。
したがって、上記相違点4に係る本願補正発明の構成は、当業者であれば容易に想到し得た事項にすぎない。

(5)上記相違点1〜4で指摘した構成を併せ備える本願補正発明の作用効果は、引用例の記載事項及び上記周知技術から、当業者であれば予測できる程度以上のものではない。
なお、請求人は審判請求書において「しかるに、補正後の請求項1〜3に係る本願発明によれば、・・・という手段を採用することにより、・・・特に、この方法は、金属層が転写された半硬化状態の絶縁性シートを複数重ね合わせて、一括で完全硬化を行うことにより、微細な回路パターンを有する多層配線基板の製造も容易に行うことが可能となるものである。」(審判請求書第5頁第13行〜第6頁第2行)、「従って、第1引用例の方法では、単層の配線基板を形成することはできても、一括積層による多層の配線基板の製造には適用されない。基板5が完全硬化されているため、導体パターン1が転写された基板5を積層圧着しても、重ね合わされた基板5同士が接着しないからである。これに対して、本願発明では、金属層の転写は、絶縁性シートが半硬化状態で行われるため、転写後の半硬化状態の絶縁性シートを重ね合わせて積層圧着し、最後に完全硬化を行うことにより、多層配線基板を製造することができる。」(同第7頁第11〜17行)と主張しているが、本願補正発明には、半硬化状態の絶縁性シートを重ね合わせて積層圧着し、多層配線基板を製造する点については記載されていないから、上記主張については、根拠を見出すことはできない。

(6)よって、本願補正発明は、上記引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件手続補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成15年10月29日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜3に係る発明は、平成14年10月18日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定されるものと認められるが、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】 厚みが10乃至500μmの樹脂フィルムと、該樹脂フィルム表面に設けられた粘着層と、該粘着層上に50g/20mm以上の粘着力(180°ピール強度)で保持され且つ50μm以下の配線ピッチを有する回路パターン状の厚みが1乃至100μmの金属層とから成る転写シートを使用し、
前記シートの金属層側の面に絶縁性シートを重ね合わせる工程、
前記転写シートと絶縁性シートとを圧着して前記金属層を絶縁性シート表面に埋め込むと共に、紫外線照射又は熱処理により、粘着層の粘着力(180°ピール強度)を30g/20mm未満に低下させる工程、及び、
前記転写シートの樹脂フィルムを引き剥がすことにより、前記金属層を絶縁性シート上に転写させる工程、
から成ることを特徴とする配線基板の製造方法。」

2.引用例とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2.2.引用例とその記載事項」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2.で検討した本願補正発明から、「絶縁性シート」についての限定事項である「半硬化状態の」との構成を省き、さらに、「金属層を半硬化状態の絶縁性シートに転写させた後に、半硬化状態の絶縁性シートを完全硬化させる」との構成を省くものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.4.当審の判断」に記載したとおり、上記引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明の上位概念発明である本願発明も、本願補正発明と同様の理由により、上記引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の請求項2、3に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-12 
結審通知日 2006-06-13 
審決日 2006-06-26 
出願番号 特願平8-332391
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊島 ひろみ新海 岳  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 柴沼 雅樹
永安 真
発明の名称 配線基板の製造方法  
代理人 奥貫 佐知子  
代理人 小野 尚純  
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