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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1141241
審判番号 不服2004-1603  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-04-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-23 
確定日 2006-08-10 
事件の表示 特願2000-306167「分析装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月19日出願公開、特開2002-116211〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年10月5日の出願であって、平成15年12月24日付け(送付日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年1月23日に審判請求がなされるとともに、平成16年2月23日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年2月23日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成16年2月23日付けの手続補正(以下「本件補正」」という)を却下する。

[理由]
(1)補正内容
本件補正は、次の補正事項を含むものである。
補正前の平成15年3月28日付けの手続補正書に、請求項1について、
「【請求項1】 試料を試料室内に載置しながら前記試料を自動的に分析する分析装置であって、装置本体と、前記装置本体とデータ通信可能に接続された周辺装置を有しており、
前記装置本体は、試料を自動的に分析するために分析手段を所定のシーケンスで実行するための制御部を備え、そして、
前記周辺装置は、少なくとも所定の演算処理を実行する中央演算部と、データを記憶するための記憶手段と、さらに、表示装置とを備えており、
前記装置本体の制御部は、前記所定のシーケンスを実行する際に当該シーケンスの進捗状況を前記周辺装置側へ送信し、かつ、前記所定のシーケンスを実行する際に前記分析手段に発生するハードウェアエラーを検知して前記周辺装置側へ通知してエラー解析情報を前記周辺装置側へ転送する機能を備えており、
前記周辺装置の中央演算部は、前記装置本体の制御部が検出した前記分析手段に発生したハードウェアエラーを前記表示装置上に表示すると共に、前記記憶手段に記憶し、前記検出したハードウェアエラーに対応したエラー解析情報を前記表示装置上に選択的に表示する機能を備えていることを特徴とする分析装置。」
と記載していたのを、
「【請求項1】 試料を試料室内に載置しながら前記試料を自動的に分析する分析装置であって、装置本体と、前記装置本体とデータ通信可能に接続された周辺装置を有しており、
前記装置本体は、試料を自動的に分析するために分析手段を所定のシーケンスで実行するための制御部を備え、そして、
前記周辺装置は、少なくとも所定の演算処理を実行する中央演算部と、データを記憶するための記憶手段と、さらに、表示装置とを備えており、
前記装置本体の制御部は、前記所定のシーケンスを実行する際に当該シーケンスの進捗状況を前記周辺装置側へ送信し、かつ、前記所定のシーケンスを実行する際に前記分析手段において発生したハードウェアエラーを検知し、当該検知したハードウェアエラーに関する情報をエラー解析情報として前記周辺装置側へ転送する機能を備えており、
前記周辺装置の中央演算部は、前記装置本体の制御部が検出した転送した、前記分析手段に発生したハードウェアエラーに関する情報を入力すると共に、前記記憶手段に記憶し、前記検出して転送されたハードウェアエラーに関する情報に対応したエラー解析情報を前記表示装置上に、操作者の指示によって選択的に表示する機能を備えていることを特徴とする分析装置。」
と補正する(下線部が、補正個所である)。

そして上記補正事項は次の補正内容による。
イ)補正前の請求項1で、装置本体の制御部が「前記所定のシーケンスを実行する際に前記分析手段に発生するハードウェアエラーを検知して前記周辺装置側へ通知してエラー解析情報を前記周辺装置側へ転送する機能を備えており、」とされていた箇所を、「前記所定のシーケンスを実行する際に前記分析手段において発生したハードウェアエラーを検知し、当該検知したハードウェアエラーに関する情報をエラー解析情報として前記周辺装置側へ転送する機能を備えており、」と補正するものである。
ロ)補正前の請求項1で、周辺装置の中央演算部が「装置本体の制御部が検出した前記分析手段に発生したハードウェアエラーを前記表示装置上に表示すると共に、前記記憶手段に記憶し、前記検出したハードウェアエラーに対応したエラー解析情報を前記表示装置上に選択的に表示する機能を備えている」とされていた箇所を、「装置本体の制御部が検出した転送した、前記分析手段に発生したハードウェアエラーに関する情報を入力すると共に、前記記憶手段に記憶し、前記検出して転送されたハードウェアエラーに関する情報に対応したエラー解析情報を前記表示装置上に、操作者の指示によって選択的に表示する機能を備えている」と補正するものである。

前記補正内容イ),ロ)はいずれも、出願時の明細書または図面に実質的に記載されている内容に基づいており、イ)は、ハードウェアエラーを検知した際に周辺装置に転送する「エラー解析情報」に、「検知したハードウェアエラーに関する情報をエラー解析情報として」と限定を加えたものであるので、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の縮減を目的とするものに該当すると認める。
またロ)も、イ)に合わせて、「ハードウェアエラー」を「ハードウェアエラーに関する情報」とし、さらにハードウェアエラーに関する情報を「検出」から「検出して転送された」(なお、「検出した転送した」とする箇所は節全体の記述から見て「検出して転送された」の誤記であると判断し、当該誤記の箇所は「検出して転送された」であると判断した)に変更し、また表示装置上に表示する際に「操作者の指示によって」という限定を加えたものであり、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の縮減を目的とするものに該当すると認める。
そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する平成15年改正前の特許法第126条第4項の規定に適合するか)について検討する。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に記載された、本願出願日前に頒布された刊行物である特開2000-193617号公報(以下、「引用刊行物1」という)には、「通信機能を備えた蛍光X線分析装置」の発明が記載されており、図面とともに次の記載がある。
a.「蛍光X線分析装置の作動状態や分析の進捗状況を含む装置情報と分析結果の少なくとも一方を、当該分析装置に付属したコンピュータから自動的に、指定した宛先に送信する送信手段を備えた蛍光X線分析装置。」(【請求項1】)
b.「【従来の技術】 蛍光X線分析装置は、X線を照射した試料から発生する蛍光X線の強度を測定して、試料を分析するものであり、自動試料交換機を付属させることで、複数の試料を、オペレータの手を介さずに、連続的に分析することができる。」(明細書【0002】段)
c.「最近では、蛍光X線分析装置に接続されているネットワークコンピュータに分析データ(分析結果)を送信し、ネットワークコンピュータによって分析データを入手することも行われている。」(明細書【0004】段)
d.「【発明が解決しようとする課題】 しかし、従来の装置においては、分析データのみの送信であり、蛍光X線分析装置の停止、故障などの作動状態や分析の進捗状況を示す情報は送信されなかった。また、分析データの入手は、蛍光X線分析装置、またはこれに接続されたネットワークコンピュータの前へ行って初めて可能であった。」(明細書【0005】段)
e.「【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る通信機能を備えた蛍光X線分析装置の構成図を示す。本装置は、X線を照射した試料から発生する蛍光X線の強度を測定して、試料を分析する蛍光X線分析装置1と、この蛍光X線分析装置1の制御およびデータ処理を行う装置に付属したコンピュータ2とを備えている。装置側のコンピュータ2は、電話回線のような通信回線3を介して、複数のパソコンのような担当者側のコンピュータ5に接続されている。このコンピュータ5は、例えば、分析装置1を配置した場所から離れた社内の別の場所、社外の出張先、または担当者の自宅などに配置される。上記装置側および担当者側のコンピュータ2,5と通信回線3とで通信システムを構成する。本装置は、上記装置側のコンピュータ2と複数の担当者側のコンピュータ5間で、通信回線3を介して、電子メールにより、装置情報と分析結果の少なくとも一方を指定した宛先に送信するものである。この装置情報は、蛍光X線分析装置1または分析データの異常や分析の終了のような作動状態を示す情報のほか、分析の進捗状況を示す情報等、予め定められたものである。前記分析結果には、分析装置から得られる分析データが含まれる。図2は、上記装置の要部を示す構成図である。上記装置側のコンピュータ2は、蛍光X線分析装置1を制御する制御部21と、蛍光X線分析装置1から測定データを受け取って分析する分析処理部22に加えて、制御部21と分析処理部22から予め定めた種々の装置情報および分析結果を自動的に受け取る情報受取手段23と、予めオペレータの指示により送信する装置情報または分析結果を選択する送信情報選択手段24と、・・・装置情報または分析結果を指定した宛先に電子メールにより送信する送信手段26とを備えている。・・・上記電子メールは、分析装置1から装置情報または分析結果が発生すると、装置側のコンピュータ2から自動的に、予め送信情報選択手段24によって選択された装置情報または分析結果が、・・・指定された宛先のコンピュータ5に送信される。・・・したがって、、オペレータは、分析装置1から離間した任意の場所で、・・・装置情報・・・を、文字、画像、音声等の形態で・・・入手できる。」(明細書【0009】〜【0012】段)
f.「・・・。また、通信回線3としては、電話回線のほかに、社内の宛先についてはLANを使用することもできる。さらに、装置側のコンピュータ2から担当者側のコンピュータ5への一方向通信だけでなく、双方向に通信するようにしてもよい。」(明細書【0013】段)

また、原査定の拒絶の理由に記載された、本願出願日前に頒布された刊行物である特開2000-227403号公報(以下、「引用刊行物2」という)には、「音声出力機能を備えたX線分析装置」の発明が記載されており、図面とともに次の記載がある。
g.「【発明の実施の形態】・・・図1に、本発明の一実施形態にかかる蛍光X線分析装置を示す。蛍光X線分析装置は、コンピュータ2および分析装置本体3を備える。分析装置本体3は、分析試料50を設置する試料台51、分析試料50に1次X線B1を照射するX線管52、分析試料50から発生する蛍光X線B2を分光する分光器53、分光された蛍光X線を検出する検出器54、検出器54の出力を計数する計数回路55等からなり、制御装置30および図示しない制御機構によって、蛍光X線分析は自動的に行われる。蛍光X線分析装置は、コンピュータ2に接続され、・・・。コンピュータ2は、また、例えばハードディスクのような記憶手段8を備える。・・・この蛍光X線分析装置の異常を検出する装置異常検出手段11と、・・・を備える。コンピュータ2は、さらに、蛍光X線分析による測定値をデータ処理するデータ処理手段13を備える。データ処理手段13は、計数回路55の出力である蛍光X線分析による測定値に所定の計算を施すなどして、データ処理を行い、処理結果を出力するものである。・・・コンピュータ2の装置異常検出手段11は、分析装置本体3における機器、およびその制御機構が誤動作して、例えば、動作指令に対して所定時間内に機器の動作が完了しない時や、異常検出センサーが作動した時に、制御装置30から異常信号と異常内容とを受信し、異常を検出する。コンピュータ2は、また、分析の終了を検知する分析終了検知手段14を備える。・・・コンピュータ2の分析シーケンス管理手段15が、測定すべき試料の指定や測定内容の指示等の分析指令の内容に従って、試料搬入、測定、データ処理、データ出力および試料排出の一連のシーケンスを制御する。1個の分析試料のシーケンスが完了すれば、次の分析指令によって同様にシーケンスを制御する・・・コンピュータ2は、さらに、キーボードおよびマウスからなる入力手段20と、CRTまたは液晶ディスプレーなどからなる画面出力手段21と、プリンタのような印字手段22とを備える。この画面出力手段21と印字手段22には、データ処理手段13からのデータ処理結果が出力される。・・・なお、コンピュータ2は、蛍光X線分析のための操作用装置も兼ねており、オペレータが入力手段20を操作して、蛍光X線分析の開始の指令を与える目的、または分析結果を出力する画面出力手段21および印字手段22の制御の目的等に用いられる。・・・」(明細書【0015】〜【0025】段)

また、原査定の拒絶の理由に記載された、本願出願日前に頒布された刊行物である特開平6-160400号公報(以下、「引用刊行物3」という)には、「自動分析装置」の発明が記載されており、図面とともに次の記載がある。
h.「この発明は、・・・、その目的とするところは、地域病院や中小病院のニーズに適合する小型で、しかも、操作及び構成も極めて簡易であることは勿論、自動分析装置に必須の膨大な各データを十分記憶し保存することができると共に、測定データや反応タイムコースデータ及びトラブルデータ等をリアルタイムで外部コンピュータへと転送できるように構成することで、データの集中管理や精度管理用データファイルの作成及び検査報告書の作成を迅速に行うことができ、さらには、故障原因をリアルタイムで判読して解明できるので装置を長時間停止させる心配もなく、加えて、別体の独立したRAMCPUボードを備えることによって、自動分析装置が分析作業をしている間であっても、該自動分析装置を停止させることなく保守サービス管理を行なうことができ、ユーザに対する信頼性を大幅に高めることができる自動分析装置を提供しようとするものである。」(明細書【0008】段)
i.「前記制御部CPUは、自動分析装置Aの動作を制御する作動制御回路と測定信号の演算及び判定を行う演算処理回路21と、を有して構成されている。RAMCPUボード20は、測定データや反応タイムコースデータ及びトラブルデータを記憶・保存するもので、・・・、上記測定データを外部出力端子22から外部コンピュータへと出力させることで、リアルタイムで迅速に検査報告書を作成することができる。・・・さらに、トラブルデータを、上記RAMCPUボード20に保存し、かつ、これを外部出力端子22から外部コンピュータへと出力させることで、該自動分析装置Aを停止させることなく、故障原因をリアルタイムで判読して解明でき、その結果、設置された自動分析装置を長時間停止させる心配もなく、ユーザに対する信頼性を大幅に高めることができる。」(明細書【0026】〜【0030】段)

また、原査定の拒絶の理由に記載された、本願出願日前に頒布された刊行物である特開昭62-163967号公報(以下、「引用刊行物4」という)には、「自動分析装置の運転状況記録装置」の発明が記載されており、図面とともに次の記載がある。
j.「生化学等の分析を自動的におこなう自動分析装置の運転状況記録装置であって、該運転状況記録装置は、操作者の登録番号などの情報が読み出し可能に入力されたメモリー部を有するオペレーターカードと、該オペレーターカードに入力された情報を読み出す読み取り装置と、上記オペレーターカードが上記読み取り装置にセットされている状態にあるときにのみ自動分析装置の測定項目スイッチ等をオン状態に保持する測定項目スイッチ等の制御手段と、測定項目スイッチがオン状態にセットされている間に操作者が操作した自動分析装置に配設された各種スイッチの操作手順及び自動分析装置の内部動作監視装置からの情報を記憶し保持する記憶手段と、該記憶手段に保持された操作手順等をCRTに表示する表示手段と、から構成されていることを特徴とする自動分析装置の運転状況記録装置。」(特許請求の範囲)
k.「生化学等の分析を自動的におこなう自動分析装置の運転状況記録装置を、・・・、オペレータ別の自動分析装置の運転状況や、オペレータの操作ミスを自動的に記録し、同ミス等による自動分析装置の故障が生じた場合には、この記録によって操作ミス等を点検することで、容易に故障状態を発見することができるようにしたものである。」(第2頁右上欄第6行〜同頁左下欄第5行)

上記引用刊行物1に記載されている蛍光X線分析装置の発明では、「試料を試料室内に載置しながら前記試料を自動的に分析する分析装置である」点、および「試料の自動的な分析を所定のシーケンスで実行する」点が明記されていないが、引用刊行物1の発明も「オペレータの手を介さずに複数の試料を連続的に分析」するように構成されているものであり、そのような自動的に動作する装置においてシーケンス制御を行うことは周知な事項であるから、上記引用刊行物1に記載の発明においても、「試料の自動的な分析を所定のシーケンスで実行している」ことは明らかである。また「試料を載置するための試料室を有している」ことも、蛍光X線分析装置では試料を真空中で測定することが多いことを考えれば、試料室は蛍光X線分析装置において普通に設けられている構成に過ぎない。
よって引用刊行物1に記載の発明は、
「試料を試料室内に載置しながら前記試料を自動的に分析する蛍光X線分析装置であって、蛍光X線分析装置と、該蛍光X線分析装置と通信可能に接続された担当者側のコンピュータ5を有しており、
前記蛍光X線分析装置1は、試料を自動的に分析するために分析を所定のシーケンスで実行するための、該蛍光X線分析装置1の制御及びデータ処理を行う該蛍光X線分析装置に付属したコンピュータ2とを備え、そして、
該蛍光X線分析装置1の制御及びデータ処理を行う該蛍光X線分析装置1に付属したコンピュータ2の制御部21は、該蛍光X線分析装置1の前記所定のシーケンスを実行する際に当該シーケンスの進捗状況を前記担当者側のコンピュータ5へ電子メールにより送信し、かつ、前記所定のシーケンスを実行する際に蛍光X線分析装置の故障等の異常を検知し電子メールにより担当者側のコンピュータ5へ電子メールにより転送する機能を備えており、
前記担当者側のコンピュータ5は、前記蛍光X線分析装置1の制御及びデータ処理を行う該蛍光X線分析装置に付属したコンピュータ2からの故障等の異常を示す作動状態の情報を文字、画像、音声等の形態で表示する機能を備えている
ことを特徴とする蛍光X線分析装置。」
が記載されていると認められる。

(3)対比
本件補正発明と上記引用刊行物1に記載の発明とを対比すると、引用刊行物1に記載の「蛍光X線分析装置1」「蛍光X線分析装置1の制御及びデータ処理を行う該蛍光X線分析装置に付属したコンピュータ2」「担当者側のコンピュータ5」は、それぞれ本件補正発明の「分析装置」「制御部」「周辺装置」に相当するものであり、また引用刊行物1における「電子メール」も本件補正発明における「通信」の一形態であることは明らかである。さらに、引用刊行物1における「蛍光X線分析装置の故障等の異常」とは本件補正発明における「ハードウェアエラー」であると認められるから、したがって両者は、
「試料を試料室内に載置しながら前記試料を自動的に分析する分析装置であって、装置本体と、前記装置本体とデータ通信可能に接続された周辺装置を有しており、
前記装置本体は、試料を自動的に分析するために分析手段を所定のシーケンスで実行するための制御部を備え、そして、
前記装置本体の制御部は、前記所定のシーケンスを実行する際に当該シーケンスの進捗状況を前記周辺装置側へ送信し、かつ、前記所定のシーケンスを実行する際に前記分析手段において発生したハードウェアエラーを検知し前記周辺装置側へ転送する機能を備えており、
前記周辺装置は、検出して転送されたハードウェアエラーを文字、画像、音声等の形態で表示する機能を備えている、
ことを特徴とする分析装置。」
である点で一致するが、以下の点において相違しているものである。
(相違点1)本件補正発明では、周辺装置が、「少なくとも所定の演算処理を実行する中央演算部と、データを記憶するための記憶装置と、さらに表示装置とを備えている」のに対し、引用刊行物1に記載の発明では、これらの構成が記載されていない点。
(相違点2)本件補正発明では、「検知したハードウェアエラーに関する情報をエラー解析情報として」周辺装置に転送しているのに対して、引用刊行物1に記載の発明では、この点について記載されていない点。
(相違点3)本件補正発明では、周辺装置が「周辺装置の中央演算部は、装置本体の制御部が検出して転送された分析手段に発生したハードウェアエラーに関する情報を入力すると共に、記憶手段に記憶し、検出して転送されたハードウェアエラーに関する情報に対応したエラー解析情報を表示装置上に、操作者の指示によって選択的に表示する機能を備えている」とされているのに対し、引用刊行物1に記載の発明では単に「検出して転送されたハードウェアエラーを文字、画像、音声等の形態で表示する機能を備えている」のみである点。

(4)判断
そこで上記相違点について検討する。
・相違点1について
引用刊行物1に記載の発明では、本件補正発明の周辺装置に該当する構成要素は、「担当者のコンピュータ5」であるが、引用刊行物1では、このコンピュータ5は「パソコンのような」(【0009】段を参照)とされている。一般的なパソコンの概念に従う限りでは、パソコンはCPU、ハードディスクやRAM、ディスプレイ等を備えるものであり(上記記載e.も参照のこと)、また、他のパソコン等と通信可能なように構成されている。すると、本件補正発明の「周辺装置」に該当する引用刊行物1に記載の「担当者のコンピュータ5」は、本件補正発明の中央演算部に相当するCPU、記憶装置に相当するハードディスクやRAM、および表示装置に相当するディスプレイ等を備えているものと認められる。
・相違点2について
例えば引用刊行物4の上記のj.k.に記載された事項から、ハードウェアエラーが生じた際に必要とされる情報を予め記録し、この記録された情報を「ハードウェアエラーに関する情報」として用いるように為すことは当業者にとって公知な事項であり、この「ハードウェアエラーに関する情報」を更に「エラー解析情報」として転送するように為すことに格別の困難性は認められない。
・相違点3について
上記「相違点1について」で検討したように、本件補正発明における周辺装置は中央演算部、記憶装置、および表示装置を有しているものであるから、その中央演算部に対して転送された「ハードウェアエラーに関する情報を入力する」と共に、その記憶手段に「記憶」することは当然な事項であり、さらに、「検出して転送されたハードウェアエラーに関する情報に対応したエラー解析情報を」表示装置上に表示することも自明な事項に過ぎない。また、該エラー解析情報を「操作者の指示によって選択的に表示する機能を備える」点も、引用刊行物2、3の上記g、h、iに記載されている事項から見て、当業者ならば容易に想到できる程度の事項に過ぎない。

そして、本件補正発明の作用効果も、引用刊行物記載の発明及び上記周知技術から当業者であれば予測できる範囲のものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正発明は、引用刊行物1〜4記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は特許法第17条の2第5項において準用する平成15年改正前の特許法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明について
平成16年2月23日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成15年3月28日付けの手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 試料を試料室内に載置しながら前記試料を自動的に分析する分析装置であって、装置本体と、前記装置本体とデータ通信可能に接続された周辺装置を有しており、
前記装置本体は、試料を自動的に分析するために分析手段を所定のシーケンスで実行するための制御部を備え、そして、
前記周辺装置は、少なくとも所定の演算処理を実行する中央演算部と、データを記憶するための記憶手段と、さらに、表示装置とを備えており、
前記装置本体の制御部は、前記所定のシーケンスを実行する際に当該シーケンスの進捗状況を前記周辺装置側へ送信し、かつ、前記所定のシーケンスを実行する際に前記分析手段に発生するハードウェアエラーを検知して前記周辺装置側へ通知してエラー解析情報を前記周辺装置側へ転送する機能を備えており、
前記周辺装置の中央演算部は、前記装置本体の制御部が検出した前記分析手段に発生したハードウェアエラーを前記表示装置上に表示すると共に、前記記憶手段に記憶し、前記検出したハードウェアエラーに対応したエラー解析情報を前記表示装置上に選択的に表示する機能を備えていることを特徴とする分析装置。」


4.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用した引用刊行物、及びその記載事項は上記「2(2)引用刊行物」に記載したとおりである。


5.対比・判断
本願発明は、上記2で検討した本件補正発明からエラー解析情報の限定事項である、「検知したハードウェアエラーに関する情報を」との構成を省き、またハードウェアエラーの限定事項である「検知して転送された」から「転送された」との構成を省き、さらに選択する機能の限定事項である「操作者の指示によって」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「2(3)対比、(4)判断」に記載したとおり、引用刊行物に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用刊行物記載の発明及び上記の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


6.結言
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-09 
結審通知日 2006-06-13 
審決日 2006-06-26 
出願番号 特願2000-306167(P2000-306167)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01N)
P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼見 重雄野田 洋平  
特許庁審判長 高橋 泰史
特許庁審判官 櫻井 仁
菊井 広行
発明の名称 分析装置  
代理人 小川 勝男  

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