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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1141249
審判番号 不服2004-8968  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-09-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-30 
確定日 2006-08-10 
事件の表示 平成 9年特許願第 62337号「電子カメラ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 9月11日出願公開,特開平10-243266〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 経緯
1 手続
本願は,平成9年2月28日の出願である。

2 査定
査定の理由は,概略,下記のとおりである。

記(査定の理由)

本願の請求項1から8までに係る発明は,下記刊行物に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


ア 特開平8-186768号公報
イ 実願平7-8084号(実開平8-324号)のマイクロフィルム
ウ 特開平7-143368号公報
エ 特開平3-139982号公報
オ 特開平3-163965号公報

第2 本願発明
本願の請求項1から8までに係る各発明は,本願明細書及び図面(平成15年10月6日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面)の記載からみて,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1から8までに記載したとおりの「電子カメラ装置」であると認められるところ,そのうち,請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】撮影レンズが組み込まれたカメラ部と本体部とで構成され,該カメラ部が上記本体部の側面に対して回動自在に構成されている電子カメラ装置において,上記カメラ部に,該カメラ部の長手方向にレンズ光軸が位置するように複数のレンズで構成されるズーム式の上記撮影レンズが内蔵されると共に,該カメラ部の長手方向の先端面に被写体光束を上記撮影レンズに導入する撮影用開口が形成され,かつ該カメラ部の側面に上記本体部の側部と連結する連結軸が配設されていることを特徴とする電子カメラ装置。」

第3 当審の判断
1 刊行物の記載
原査定において引用された特開平7-143368号公報(平成7年6月2日,以下「引用例」という。)には,図面とともに,次のとおりの記載がある。

(1)「図において,1は被写体(図示せず)を撮影し,その映像を電気信号に変換するカメラ部,2はカメラ部1にて撮影している映像又は既に記録された信号の再生映像を映すためのビューファインダ部,3はデッキ部であり,このデッキ部3にて後述する回転ドラムが固定され,カセットから引き出されたテープに信号を記録又は再生するようになっている。また,4は記録再生媒体である磁気テープを巻装したリールを内蔵しているカセット5をデッキ部3に装着するためのカセットホルダ,6は電源部であるバッテリであり,このバッテリ6は,本実施例では例えばデッキ部3の右側に配置されており,図1に示されるように手H(右手HR)にてグリップ可能である。更に,7はバッテリ6の上部にて記録操作を行い得るように配置された記録ボタンである。
ここで図3を参照して,8はカメラ部1の内部に設けられており,被写体からの光の像信号を電気信号に変換するためのCCD,9はCCD8上に被写体像を形成するように配置された撮影レンズ群,10はビューファインダ部2の内部に設けられた映像を写し出すための小型の液晶表示板等で成るディスプレイ手段,11はビューファインダ部2に設けられた接眼レンズである。
これらの部材は,図示のようにカメラ部1及びビューファインダ部2の長手方向に沿って列設されているが,カメラ部1及びビューファインダ部2は,装置本体の上部にて図示されてない回転支点のまわりに回動可能に支持されており,手Hによって簡単に回動することができる。」(段落【0012】ないし【0013】)
(2)「更に,12はデッキ部3に内蔵された磁気ヘッドを有する回転ドラム,13は信号処理用IC等が搭載されている回路基板である。また,デッキ部3,即ち装置本体の上部には,図1に示されるようにズームボタン等の複数(この例では3個)の操作ボタン14が配設されているが,これらの操作ボタン14は,カメラ部1及びビューファインダ部2が回動されることにより,露出するように配置されている。更に,装置本体の適所には,図示しない電源スイッチが設けられているが,この電源スイッチは,カメラ部1及びビューファインダ部2の回動作動と連動しており,例えばカメラ部1及びビューファインダ部2が図1に示したように回動すると,オン(ON)するように設定されている。」(段落【0014】)
(3)「この場合,カメラ部1にて撮影レンズ群9を通過してきた被写体の画像は,CCD8によって電気信号に変換され,この電気信号が回路基板13の信号処理用IC等によってデッキ部3に送られて,上記のように磁気テープに信号が記録される。またこの時,CCD8にて受信された映像信号は,同様に回路基板13の作用によってディスプレイ手段10にて表示され,被写体の表示画像が接眼レンズ11を介して眼Eに入ってくる。」(段落【0018】)
(4)「撮影終了後,上記撮影時の場合とは反対にカメラ部1及びビューファインダ部2を回動することにり,そのカメラ部1等は,図5及び図6に示されるように装置本体に対して平行に配置され,両者が一体化して好適には例えば長方形型となる。なお,カメラ部1及びビューファインダ部2の回動により,電源スイッチがオフすると共に,操作ボタン14は,カメラ部1及びビューファインダ部2の下側に隠蔽される。このように不使用時には,カメラ部1及びビューファインダ部2が,装置本体に一体化することにより,装置全体が極めてコンパクトなものとなる。従って,持ち運びの際の携帯性に優れ,また薄型化しているので,バック等に容易且つ的確に収納することができる。」(段落【0019】)

2 対比
本願発明と引用例に記載された発明(以下「引用発明」という。)とを対比する。

ア 引用例の上記記載(1),(3),(4),図1及び図3によれば,カメラ部1の長手方向の先端面に開口が設けられるとともに(図1),カメラ部1の内部には撮影レンズ群9及びCCD8が設けられており(図3),上記開口から入射して撮影レンズ群9を通過した被写体の画像は,CCD8によって電気信号に変換され,この電気信号が回路基板13の信号処理用IC等によってデッキ部3に送られて記録される。カメラ部1及びビューファインダ部2は,装置本体の上部にて回転支点のまわりに回動可能に支持されており,非撮影時には,回動して装置本体に対して平行に配置される。
引用発明は,被写体画像をCCDによって電気信号に変換して記録するものであるから,「電子カメラ装置」ということができ,
上記カメラ部1とビューファインダ部2とを併せた部分は「カメラ部」,上記装置本体は「本体部」ということができるから,
引用発明は,「撮影レンズが組み込まれたカメラ部と本体部とで構成され,該カメラ部が上記本体部の上面に対して回動自在に構成されている電子カメラ装置」ということができる。
そうすると,両者は,
本願発明では,カメラ部が本体部の「側面」に構成されるのに対し,引用発明では,「上面」に構成される点,及び,
本願発明では,「カメラ部の側面に上記本体部の側部と連結する連結軸が配設されている」のに対し,引用発明では,カメラ部と本体部の連結部分の構成が明らかではない点,でそれぞれ相違するものの,
いずれも「撮影レンズが組み込まれたカメラ部と本体部とで構成され,該カメラ部が上記本体部の面(前後面を除く周囲面)に対して回動自在に構成されている電子カメラ装置」である点で一致する。

イ 引用例の上記記載(1),図1及び図3によれば,カメラ部1の撮影レンズ群9はCCD8上に被写体像を形成するように配置されており,カメラ部1の長手方向の先端面に設けられた上記開口から入射した被写体像は,撮影レンズ群9を通過してCCD8に到達するのであるから,上記撮影レンズ群は,本願発明と同様に「カメラ部の長手方向にレンズ光軸が位置するように複数のレンズで構成」されていることが明らかである。
ただし,上記引用例の記載(2)及び図1によれば,装置本体の上部にズームボタンが配設されていることから,ズーム機能を備えていることが認められるものの,上記ズーム機能が,複数のレンズを光学的に調整する光学ズーム式か,CCDで取り込んだ後の画像を補間・間引き処理等によって電子的に拡大・縮小する電子ズーム式か,あるいはこれらの組み合わせによるものかは,上記引用例の記載からは定かではない。
したがって,両者は,
上記撮影レンズが,本願発明では,「ズーム式」であるのに対し,引用発明では,「ズーム式」であるか定かではない点で相違するものの,
いずれも「カメラ部に,該カメラ部の長手方向にレンズ光軸が位置するように複数のレンズで構成される撮影レンズが内蔵されると共に,該カメラ部の長手方向の先端面に被写体光束を上記撮影レンズに導入する撮影用開口が形成され」るものである点で一致する。

上記ア及びイを総合すると,両者は,
「撮影レンズが組み込まれたカメラ部と本体部とで構成され,該カメラ部が上記本体部の面(前後面を除く周囲面)に対して回動自在に構成されている電子カメラ装置において,上記カメラ部に,該カメラ部の長手方向にレンズ光軸が位置するように複数のレンズで構成される上記撮影レンズが内蔵されると共に,該カメラ部の長手方向の先端面に被写体光束を上記撮影レンズに導入する撮影用開口が形成されていることを特徴とする電子カメラ装置。」
である点で一致し,以下の点で相違している。

[相違点1]上記カメラ部が,本願発明では,本体部の「側面」に構成されるのに対し,引用発明では,本体部の「上面」に構成される点。
[相違点2]本願発明では,「カメラ部の側面に上記本体部の側部と連結する連結軸が配設されている」のに対し,引用発明では,カメラ部と本体部の連結部分の構成が明らかではない点。
[相違点3]上記撮影レンズが,本願発明では,「ズーム式」であるのに対し,引用発明では,「ズーム式」であるか定かではない点。

3 判断
上記各相違点について検討する。
(1)相違点1について
カメラ部を本体部の側面に対して回動自在に構成した電子カメラ装置は,例えば,実願平7-8084号(実開平8-324号)のマイクロフィルム(原査定の理由で引用した引用文献2。特に,段落35には,「突起部がなく,携帯しやすい」効果も記載されている。),特開平1-106581号公報,又は,特開平8-186768号公報(原査定の理由で引用した引用文献1)に記載されているように周知であり,引用発明において,カメラ部を本体部の上部に代えて側部に対して構成することに格別の困難はない。
また,これによる効果も予測される範囲を超えるものではない。
(2)相違点2について
カメラ部を本体部の側面に対して回動自在に構成した電子カメラ装置において,カメラ部の側面に上記本体部の側部と連結する連結軸を配設することは周知技術であり(例えば,上記特開平1-106581号公報,又は,上記特開平8-186768号公報(原査定の理由で引用した引用文献1)参照),引用発明のカメラ部と本体部の結合部分に上記周知技術を採用することに格別の困難はない。
また,これによる効果も予測される範囲を超えるものではない。
(3)相違点3について
引用発明はズーム機能を備えていることが認められる(上記2イ参照)ところ,
電子カメラ装置において,ズーム式の撮影レンズを用いることが周知慣用技術(例えば,特開平5-137031号公報(さらに,ズームレンズを使用すると収納性や携帯性が悪いことにかんがみて,ズームレンズ用の鏡胴部を折りたたみ自在に構成することも記載されている。)参照)であることを考慮すれば,
引用発明において,ズーム式の撮影レンズを採用することは当業者が容易に想到し得ることである。
さらに,引用発明の撮影レンズ群9も,「カメラ部の長手方向にレンズ光軸が位置するように複数のレンズで構成」されていることから,上記撮影レンズ群をズーム式の撮影レンズとする場合に空間的な制約(阻害要因)があるとはいえず,他の阻害要因の存在も認められない。
また,相違点3に係る構成による効果も予測される範囲を超えるものではない。

以上判断したとおり,本願発明における上記相違点1ないし3に係る構成はいずれも当業者が容易に想到し得たものであり,また,各相違点を総合しても本願発明は当業者が想到することが困難なものとはいえない。
そして,本願発明の作用効果も,引用例及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって,本願発明は,上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,請求項1に係る発明は,引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,残る請求項(請求項2ないし請求項8まで)について特に検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-13 
結審通知日 2006-06-15 
審決日 2006-06-27 
出願番号 特願平9-62337
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 章裕  
特許庁審判長 乾 雅浩
特許庁審判官 堀井 啓明
北岡 浩
発明の名称 電子カメラ装置  
代理人 真田 修治  

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