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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1141288
審判番号 不服2001-23719  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-11-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-12-10 
確定日 2006-08-09 
事件の表示 平成 9年特許願第511652号「データ管理用コンピュータシステムおよびこのシステムを動作させる方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 3月20日国際公開,WO97/10559,平成10年11月10日国内公表,特表平10-511793〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,1996年(平成8年)9月10日(パリ条約による優先権主張1995年(平成7年)9月14日,EPO)を国際出願日とする出願であって,平成13年8月29日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年12月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,平成14年1月9日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成14年1月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年1月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本願補正発明
平成14年1月9日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により,特許請求の範囲の請求項1は,
「少なくとも,ワラントの取引に関するデータの管理を含むデータ管理のためのコンピュータシステムであって,
入力ユニット(2)及び表示ユニット(3)を備える外部デバイス(7)と,少なくともワラントレートを受け付けるデータ入力(5)と,データインタフェースデバイス(10)及びデータ管理デバイス(9)を備えるデータ処理システム(1)とを有し,
前記表示ユニット(3)は前記入力ユニット(2)による,少なくともワラントレートを含む特定のデータに対する要求の入力が可能なフォーマットを有する第1のマスクを表示し,
前記データ入力(5)は,前記要求が前記入力ユニット(2)により入力されたとき読み込まれ,
前記外部デバイス(7)は前記特定のデータに対するクオート要求をデータ管理デバイス(9)へ送信し,該要求が入力ユニット(2)により入力されたものであれば,データ管理デバイス(9)が該クオート要求を受け取って,レート要求をデータインタフェースデバイス(10)へ送信し,データインタフェースデバイス(10)がレートを取得して該レートをデータ管理デバイス(9)へ返送し,データ管理デバイス(9)がデータベースにクオーテーションを挿入し,該クオーテーションに参照番号を割り当て,表示ユニット(3)に表示するために,要求されたデータを含む前記クオーテーションを外部デバイス(7)に送信し,
前記外部デバイス(7)は,要求されたデータを含む第2のマスクを用いて前記クオーテーションを表示ユニット(3)に表示し,
前記データ処理システム(1)は前記要求されたデータを予め定めた時間Tsetの間だけ保持し,予め定めた時間Tsetの間に前記入力ユニット(2)によりトランザクション要求が入力された場合に前記特定のデータに関するトランザクションを実行し,
前記外部デバイス(7)は,前記特定のデータに関連する前記トランザクションを実行するために,参照番号によって該トランザクションを指定して,データ管理デバイス(9)へ実行要求を送信することを特徴とするコンピュータシステム。」
と補正された。
上記補正は,本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「クオート要求」について「前記特定のデータに対する」との限定を付加し,同様に,「データ管理デバイス(9)へ実行要求を送信する」のが「前記特定のデータに関連する前記トランザクションを実行するために」であるとの限定を付加する補正事項を含むものであって,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

2 引用例
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭63-196976号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに下記の事項が記載されている。
(ア)「複数国相互の貨幣の組合せを操作指示する指示手段(11)と,
該指示手段(11)による操作指示に基いて上位装置(2)へ交換比率を照会する照会手段(12)と,
該照会手段(12)による照会に対して該上位装置(2)から応答される交換比率を表示する表示手段(14)と,
該交換比率が表示された時に起動し,所定時間を計数する時間計数手段(19)とを備え,
該時間計数手段(19)により所定時間が計数された時に該表示手段(14)に表示された交換比率を消滅させることを特徴とする為替レート照会装置。」(特許請求の範囲)
(イ)「(産業上の利用分野)
本発明は,為替レートを照会して表示する為替レート照会装置に係り,特に照会時と取引時がずれた場合の為替レートの変動によるリスクを防止できる為替レート照会装置に関するものである。
近来,外国為替相場による取引が活発化し,また国際化社会の進展により旅行者等による通貨の交換が増加しており,金融機関の為替業務の合理化のために,為替レートの照会を自動的に行える装置が試みられているが,為替レートの変動に対応できる方法が望まれている。」(1頁右下欄10行〜2頁左上欄1行)
(ウ)「ホスト2aは図示省略した為替レートファイルを備え,記憶された為替レートは相場変動に伴って更新され,為替レート照会装置1aからの照会電文を判別して,該当する為替レートを応答する機能を有する。」(2頁左下欄2〜6行)
(エ)「(発明が解決しようとする問題点)
上記従来方法によると,照会されてCRTに表示された為替レートが,表示されてから取引操作までにかなりの時間が経過した場合,例えば画面表示のまま放置した時等に,時々刻々と変動する相場では,表示の為替レートで取引されると損害を生じることがあるという問題点がある。」(2頁右下欄13〜末行)
(オ)「第2図において,為替レート照会装置1bのタイマー19aは,時間設定部19bを備え,為替レートがCRT14aに表示された時に起動し,時間設定部19bに設定された設定時間Tを読み出して,設定時間Tまで計数するとタイムアウト信号aを発信する機能を有する。
操作パネル10aは従来例で説明した操作パネル10aの機能に加えて,時間設定部19bの設定時間Tの設定を指示する時間設定指示釦11dを備えている。設定時間Tは為替レートが変動の状況によって,安定している時は比較的長く,変動の激しい時は適宜短く設定される。
主制御部18aは,従来例で説明した主制御部18の機能に加えてタイマー19aからタイムアウト信号aが発信された時に,CRT14aの為替レートRの表示を消滅させると共に,為替レートメモリ13に記憶されている為替レートRをクリアする機能を有する。」(3頁右上欄10行〜左下欄8行)
(カ)「このような構成及び機能を有するので,第3図のフローチャートにより作用を説明すると,
〔1〕予め操作パネル10aの時間設定指示釦11dを押下してからテンキー11cを操作して時間設定部19bに設定時間Tを設定しておく。
〔2〕そこで為替レートの照会をする時は,操作パネル1の照会指示釦11aにより為替レートの照会指示を行う。
〔3〕照会電文編集部12aで編集された照会電文がホスト2aへ送信され,ホスト2aから為替レートRが応答されて為替レートメモリ13に記憶される。
〔4〕為替レートRは直ちに出力してCRT14aに表示される。
〔5〕するとタイマー19aが起動し,時間設定部19bより設定時間Tを読み出して時間計数を開始する。
〔6〕CRT14aに表示された為替レートRにより,随時取引が行われる。
〔7〕かくてタイマー19aが設定時間Tを計数するとタイムアウト信号aが発信される。
〔8〕するとCRT14aに表示されている為替レートRが消滅し,為替レートメモリ13に記憶されていた為替レートRがクリアされる。」(3頁左下欄9行〜右下欄10行)
(キ)「このようにして,為替レートRが表示されてから所定時間Tを経過すると表示を消滅させることにより,為替相場が変動しているのを知らずに,長い時間表示されている為替レートRによって取引されることがない。従って損害が生じることを防止することができる。
また表示を消滅させると共に取引入力を無効とする方法としてもよい。」(3頁右下欄11〜18行)
なお,引用例1中の丸数字は,〔〕で囲まれた数字に置き換えた。
(2) 引用例記載発明
上記(1)の記載事項を検討するに,引用例1の為替レート照会装置と上位装置であるホストとでコンピュータシステムを構成し,このコンピュータシステムは,外国為替相場による通貨の取引に関するデータの管理をしているということができる。
そして,引用例1のホストが,為替レートファイルの制御を含む制御を行う制御手段を備えることは自明の事項である。
してみると,上記(1)の記載事項を総合すると,引用例1には,
「外国為替相場による取引に関するデータの管理をするコンピュータシステムであって,
指示手段,照会手段,為替レートメモリ,表示手段及び時間計数手段を備える為替レート照会装置と,為替レートファイルを備え,記憶された為替レートを相場変動に伴って更新し,為替レート照会装置からの照会電文を判別して,該当する為替レートを応答する制御手段を備えるホストとを有し,
前記指示手段は,複数国相互の貨幣の組合せを操作指示し,
前記指示手段による操作指示に基いて,前記照会手段が前記ホストへ為替レートを照会し,
前記為替レート照会装置は,前記照会手段による照会に対して前記ホストから応答される為替レートを前記為替レートメモリに記憶すると共に,前記表示手段に表示し,
前記時間計数手段は,前記為替レートが表示された時に起動し,所定時間を計数し,
前記時間計数手段により前記所定時間が計数された時に前記表示手段に表示された前記為替レートを消滅させると共に,前記為替レートメモリに記憶されていた前記為替レートをクリアし,取引入力を無効とすることを特徴とするコンピュータシステム。」
の発明が記載されているものと認められる。

3 対比
(1) そこで,本願補正発明(以下「前者」という。)と引用例1に記載された発明(以下「後者」という。)とを対比するに,後者の「指示手段」,「表示手段」,「為替レート照会装置」,「ホスト」が,それらの機能・作用からみて,前者の「入力ユニット」,「表示ユニット」,「外部デバイス」,「データ処理システム」にそれぞれ相当する。
また,後者の「為替」と前者の「ワラント」は,共に,市場で取引され,価格が時々刻々変動する金融商品であるという点で共通する。
また,後者の「操作指示」された「複数国相互の貨幣の組合せ」,「為替レートを照会」,「応答される為替レート」,「取引入力」は,金融商品の違いを除き,前者の「特定のデータ」,「クオート要求」,「クオーテーション」,「トランザクション要求」の「入力」にそれぞれ相当する。
また,前者の「データインターフェースデバイス」及び「データ管理デバイス」は,実施態様として,それぞれ,ワラントレートサーバ及びワラントトランザクションサーバを包含し,「データインターフェースデバイス」は,ワラントレートをデータ入力から受け取り,「データ管理デバイス」に渡すものであるところ,後者の為替レートファイルは,外部からの為替レートを記憶し,制御手段により取り出されるのであるから,前者の「データインターフェースデバイス」と後者の為替レートファイル及び前者の「データ管理デバイス」と後者の制御手段は,レートデータの保持,管理の観点からみて,それらの機能・作用において共通する(以下,共通する概念として,それぞれ,「データ保持手段」,「データ管理手段」という。なお,取引の管理の観点からの相違は,「相違点6」,「相違点8」及び「相違点9」として抽出する。)
また,後者の「所定時間」と前者の「予め定めた時間Tset」は,それを用いる装置が,後者は為替レート照会装置であり,前者は,データ処理システムである点で相違するが,金融商品の価格変動のリスクを軽減するために設定される時間であり,該時間の間だけデータを保持し,該時間の間で取引を実行するものであるという点で共通する。
(2) したがって,両者は,
「少なくとも,金融商品の取引に関するデータの管理を含むデータ管理のためのコンピュータシステムであって,
入力ユニット及び表示ユニットを備える外部デバイスと,レート保持手段とデータ管理手段を備えるデータ処理システムとを有し,
前記外部デバイスは前記特定のデータに対するクオート要求をデータ管理デバイスへ送信し,該要求が入力ユニットにより入力されたものであれば,該クオート要求を受け取って,レート要求をデータ保持手段へ送信し,レート保持手段が該レートをデータ管理手段へ返送し,データ管理デバイスが表示ユニットに表示するために,要求されたデータを含むクオーテーションを外部デバイスに送信し,
前記外部デバイスは,前記クオーテーションを表示ユニットに表示し,
要求されたデータを予め定めた時間Tsetの間だけ保持し,予め定めた時間Tsetの間に前記入力ユニットによりトランザクション要求が入力された場合に前記特定のデータに関するトランザクションを実行し,
前記外部デバイスは,前記特定のデータに関連する前記トランザクションを実行するために,実行要求をすることを特徴とするコンピュータシステム。」
である点で一致し,以下の点で違する。
[相違点1]金融商品が,前者は「ワラント」であるのに対し,後者は「為替」である点。
[相違点2]前者は「少なくともワラントレートを受け付けるデータ入力」を有するのに対し,後者はそうでない点。
[相違点3]前者のレート保持手段とデータ管理手段は,「データインタフェースデバイス及びデータ管理デバイス」であるの対し,後者のレート保持手段とデータ管理手段は,為替レートファイルと制御手段である点。
[相違点4]前者の表示ユニットは,「前記入力ユニットによる,少なくともワラントレートを含む特定のデータに対する要求の入力が可能なフォーマットを有する第1のマスクを表示」するのに対し,後者の表示ユニットは,入力ユニットによる特定のデータに対する要求の入力の際,何を表示するか特定されていない点。
[相違点5]前者は,「前記データ入力は,前記要求が前記入力ユニットにより入力されたとき読み込まれ」るのに対し,後者は,為替レートファイルに記憶された為替レートが相場変動に伴って更新される点。
[相違点6]前者は,「データインタフェースデバイスがレートを取得して」,「データ管理デバイスがデータベースにクオーテーションを挿入し,該クオーテーションに参照番号を割り当て」るのに対し,後者はそうでない点。
[相違点7]前者の外部デバイスは,「要求されたデータを含む第2のマスクを用いて」クオーテーションを表示ユニットに表示するのに対し,後者はそうでない点。
[相違点8]前者は,「データ処理システム」が「要求されたデータを予め定めた時間Tsetの間だけ保持し,予め定めた時間Tsetの間に前記入力ユニットによりトランザクション要求が入力された場合に前記特定のデータに関するトランザクションを実行」するのに対し,後者は,「外部デバイス」が要求されたデータを予め定めた時間Tsetの間だけ保持し,また,トランザクションの実行をする主体が特定されていない点。
[相違点9]トランザクションを実行するため,前者は「参照番号によって該トランザクションを指定して,データ管理デバイスへ実行要求を送信する」のに対し,後者はそうでない点。

4 判断
上記相違点について検討する。
(1) 相違点1について
引用例1には,為替取引において,照会時と取引時がずれた場合のレートの変動によるリスクを防止するために,照会時に記憶されたレートでの取引が有効である時間を設定し,該時間が経過した後は,記憶されたレートのデータを消去すると共に,取引を受け付けないようにすることが記載されている。
そして,ワラントが為替と同様に,そのレートが時々刻々変動するものであり,照会時と取引時がずれた場合にレートの変動によるリスクがあることは,当業者には周知の事項である。
そして,引用例1記載の上記為替取引に係る技術を,ワラント取引に適用することを妨げる要因もない。
してみると,引用例1記載の上記為替取引に係る技術を,周知のワラント取引システムに適用し,ワラント取引における照会時と取引時がずれた場合のレートの変動によるリスクを防止することは,当業者が容易に想到し得ることである。
したがって,後者において,金融商品を為替からワラントに変更し,ワラントの取引に関するデータの管理を含むデータ管理のためのコンピュータシステムを得ることは,当業者が容易になし得ることである。
(2) 相違点2について
後者のホストに備えられる為替レートファイルは,時々刻々変動する為替レートを記憶し,相場が変動すれば,記憶された為替レートが更新されるのであるから,何らかの手段により最新の為替レートが市場等の外部情報機関からホストに入力されることは明らかである。
したがって,後者において,金融商品のレートを受け付けるデータ入力を設けることは,当業者が容易になし得ることである。
そして,後者の金融商品をワラントとすることは,相違点1について検討したとおり,当業者にとって容易であるから,後者において,「少なくとも,ワラントレートを受け付けるデータ入力」を設けることも,また,容易である。
(3) 相違点3について
前者の「データインタフェースデバイス」及び「データ管理デバイス」は,それぞれ,ワラントレートサーバ及びワラントトランザクションサーバとして実現される実施態様を包含するものである。
そして,情報を記憶する手段とこれを管理・制御する手段とを,それぞれ,独立したサーバとし,複数のサーバを接続してコンピュータシステムを構成することは,一般に周知の事項であるから,後者において,為替レートファイル及び制御手段を,それぞれ,独立したサーバとして構成することは,当業者が容易に想到し得ることである。
してみると,後者のレート保持手段とデータ管理手段を,「データインタフェース」及び「データ管理デバイス」とすることは,当業者が容易になし得ることである。
(4) 相違点4,7について
前者の「マスク」は,図6の顧客取引画面(13)や図8のクオーテーション画面(14)を実施の態様としており,所定のフォーマットの画面構成を有するデータ入力画面やデータ出力画面を包含するものであると解される。
そして,コンピュータシステムにおいて,ユーザのデータ入力を容易にするため,表示画面に所定のフォーマットの入力画面を表示し,該入力画面でデータの入力を可能とし,また,入力データに対応する出力データをユーザが容易に理解できるように,表示画面に入力データと出力データを所定のフォーマットの出力画面を用いて表示することは,一般に周知の事項であり,金融商品の取引システムにおいても,周知の事項である(例えば,原審で引用された,特開平5-35742号公報参照)。
そして,後者の金融商品をワラントとすることは,相違点1について検討したとおり,当業者にとって容易であるから,後者において,表示ユニットが「前記入力ユニットによる,少なくともワラントレートを含む特定のデータに対する要求の入力が可能なフォーマットを有する第1のマスクを表示」するように構成するとともに,「要求されたデータを含む第2のマスクを用いて」クオーテーションを表示ユニットに表示する構成とすることは,当業者が容易に想到し得ることである。
(5) 相違点5について
金融商品の取引では,市場における最新のレートが重要であるから,金融商品の取引システムにおいては,取引の際に市場における最新のレートを取得することは,当然の事項である。
その際,市場におけるレートを常時取得しておくか,必要とされる時に取得するかは,通信路の速度やシステム側の容量等を考慮して,当業者が適宜選定する事項である。
してみると,後者において,市場におけるレートが変更された際,常に為替レートファイルに記憶された為替レートが更新される構成に代えて,必要とされる時に外部からレートを取得し,為替レートファイルに記憶する構成とすることは,当業者が容易に想到し得ることである。
そして,相違点2について検討したとおり,データ入力を設けることは,当業者にとって容易であるから,後者において,「前記データ入力は,前記要求が前記入力ユニットにより入力されたとき読み込まれ」るようにすることも,当業者が容易になし得ることである。
(6) 相違点6について
(i) まず,「データインタフェースデバイスがレートを取得」する点について検討する。
後者において,為替レートファイルは,外部からホストに入力されたレートを記憶するものであるが,この為替レートファイルを独立したサーバとして構成すれば,サーバがレートを取得する構成となることは明らかである。
そして,為替レートファイルを独立したサーバとすることは,相違点3について検討したとおり,当業者にとって容易であるから,後者において,「データインタフェースデバイスがレートを取得」する構成とすることも,また,容易である。
(ii) 次に,「データ管理デバイスがデータベースにクオーテーションを挿入し,該クオーテーションに参照番号を割り当て」る点について検討する。
オンラインの取引システムにおいて,ホスト側で取引の管理を行うことは,一般に周知の事項であり,金融商品の取引システムにおいても,周知の事項である(例えば,原審で引用された,特開昭61-86867号公報,特開昭61-86868号公報の外,特開昭63-177255号公報も参照)。
そして,オンラインの取引システムにおいて,ホスト側でユーザが選択した商品の取引に所定の番号を割り当ててデータファイルに記憶し,この番号を利用して取引を実行することも,周知の事項である(例えば,原審で引用された特開平2-306369号公報,特開昭60-176172号公報,特開昭60-178576号公報参照)。
してみると,後者において,データ処理システム側で取引の管理・実行を行い,データ管理手段が取引に所定の番号を割り当ててデータファイルに記憶し,この番号を利用して取引を実行するように構成することは,当業者が容易に想到し得ることである。
そして,後者のデータ管理手段を「データ管理デバイス」とすることは,相違点3について検討したとおり,当業者にとって容易であり,また,データファイルとして,データベースを用いることは,周知の事項であるから,後者において,「データ管理デバイスがデータベースにクオーテーションを挿入し,該クオーテーションに参照番号を割り当て」る構成を採用することは,当業者が容易になし得ることである。
(7) 相違点8について
「予め定めた時間Tset」を外部デバイス側で管理するか,データ処理システム側で管理するかは,タイムアウト信号の利用場所等を考慮して,当業者が適宜選定し得る事項である。
そして,データ処理システム側で取引の管理・実行を行うことは,相違点6について検討したとおり,当業者にとって容易であるから,後者において,「データ処理システム」が「要求されたデータを予め定めた時間Tsetの間だけ保持し,予め定めた時間Tsetの間に前記入力ユニットによりトランザクション要求が入力された場合に前記特定のデータに関するトランザクションを実行」する構成とすることは,当業者が容易に想到し得ることである。
(8) 相違点9について
データ処理システム側で取引の管理・実行を行い,データ管理手段が取引に所定の番号を割り当て,この番号を利用して取引を実行するのであれば,取引を実行するには,外部デバイスから番号によって取引を指定して,データシステム側に実行要求を送信する構成となることは,直ちに導出される事項である。
そして,データ処理システム側で取引の管理・実行を行い,データ管理手段が取引に所定の番号を割り当て,この番号を利用して取引を実行すること,並びに,データ管理手段をデータ管理デバイスとすることは,それぞれ,相違点6,相違点3について検討したとおり,当業者にとって容易であるから,後者において,外部デバイスが「参照番号によって該トランザクションを指定して,データ管理デバイスへ実行要求を送信する」構成とすることも,また,容易である。
(9) 作用効果について
本願補正発明の作用効果についてみても,引用例1及び上記周知事項から当業者が容易に予測し得る程度のものであり,格別のものとはいえない。
(10) 判断のまとめ
したがって,本願補正発明は,引用例1に記載された発明及び周知事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 むすび
したがって,本件補正は,平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので,特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成14年1月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,同項記載の発明を「本願発明」という。)は,平成13年2月15日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「少なくとも,ワラントの取引に関するデータの管理を含むデータ管理のためのコンピュータシステムであって,
入力ユニット(2)及び表示ユニット(3)を備える外部デバイス(7)と,少なくともワラントレートを受け付けるデータ入力(5)と,データインタフェースデバイス(10)及びデータ管理デバイス(9)を備えるデータ処理システム(1)とを有し,
前記表示ユニット(3)は前記入力ユニット(2)による,少なくともワラントレートを含む特定のデータに対する要求の入力が可能なフォーマットを有する第1のマスクを表示し,
前記データ入力(5)は,前記要求が前記入力ユニット(2)により入力されたとき読み込まれ,
前記外部デバイス(7)はクオート要求をデータ管理デバイス(9)へ送信し,該要求が入力ユニット(2)により入力されたものであれば,データ管理デバイス(9)が該クオート要求を受け取って,レート要求をデータインタフェースデバイス(10)へ送信し,データインタフェースデバイス(10)がレートを取得して該レートをデータ管理デバイス(9)へ返送し,データ管理デバイス(9)がデータベースにクオーテーションを挿入し,該クオーテーションに参照番号を割り当て,表示ユニット(3)に表示するために,要求されたデータを外部デバイス(7)に送信し,
前記表示ユニット(3)は要求されたデータを含む第2のマスクを表示し,
前記データ処理システム(1)は前記要求されたデータを予め定めた時間Tsetの間だけ保持し,予め定めた時間Tsetの間に前記入力ユニット(2)によりトランザクション要求が入力された場合に前記特定のデータに関するトランザクションを実行し,
前記外部デバイス(7)は,参照番号によって前記トランザクションを参照し,データ管理デバイス(9)へ実行要求を送信することを特徴とするコンピュータシステム。」

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例,および,その記載事項は,前記第2の2に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,前記第2で検討した本願補正発明から「クオート要求」の限定事項である「前記特定のデータに対する」との構成を省き,同様に,「データ管理デバイス(9)へ実行要求を送信する」の限定事項である「前記特定のデータに関連する前記トランザクションを実行するために」との構成を省くとともに,「要求されたデータを含む前記クオーテーション」を「要求されたデータ」とし,「前記外部デバイス(7)は,要求されたデータを含む第2のマスクを用いて前記クオーテーションを表示ユニット(3)に表示し」を「前記表示ユニット(3)は要求されたデータを含む第2のマスクを表示し」とするものである。
そして,「要求されたデータを含む前記クオーテーション」を外部デバイスに送信すれば,「要求されたデータ」が外部デバイスに送信されることは自明の事項であり,「前記表示ユニット(3)は要求されたデータを含む第2のマスクを表示し」は,明細書の記載全体からみて,「前記外部デバイス(7)は,要求されたデータを含む第2のマスクを用いて前記クオーテーションを表示ユニット(3)に表示し」の誤記であると認められる。
そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記第2の3及び4に記載したとおり,引用例1及び周知事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用例1及び周知事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
したがって,本願発明は,引用例1に記載された発明及び周知事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-08 
結審通知日 2006-03-14 
審決日 2006-03-28 
出願番号 特願平9-511652
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 丹治 彰関 博文篠原 功一伊藤 健太郎  
特許庁審判長 小林 信雄
特許庁審判官 佐藤 智康
久保田 健
発明の名称 データ管理用コンピュータシステムおよびこのシステムを動作させる方法  
代理人 三品 岩男  

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