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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1141309
審判番号 不服2003-19983  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-10-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-10 
確定日 2006-08-09 
事件の表示 特願2000-512341「小企業とクライアント間の自動ネットワーク接続のための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月25日国際公開、WO99/14930、平成13年10月 2日国内公表、特表2001-517033〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、1998年9月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1997年9月12日、米国)を国際出願日とする出願であって、 平成15年7月7日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

第2.本願発明
1.本願発明について
本願の請求項7に係る発明は、平成15年2月17日付の手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項7に記載されたとおりの次のものと認める(以下、「本願発明」という。)。
「 【請求項7】 加入者からインターネット上でブラウジングパーソンに対してコールバックサービスを提供する方法において、
(a)個々の加入者のウェブページにおいて、ブラウジングパーソンによりハイパーリンクを起動し、それによりブラウジングパーソンとコールバックサーバとの間に通信を確立するステップと、
(b)ブラウジングパーソンが少なくとも単一のコールバック番号を入力するための入力メカニズムをコールバックサーバにより提供するステップと、
(c)入力を特定の加入者に関連づけるステップと、
(d)電話中継回線とインターネット可能なポートとを有する電話スイッチに接続されたCTIサーバ(Tサーバ)をコールバックサーバから起動して、ブラウジングパーソンと加入者との間に電話接続およびインターネット電話接続の一方または両方を確立するステップとを含む方法。」

2.引用例及び周知例
原審の拒絶の理由に引用された、国際公開第97/13352号パンフレット(以下、「引用例」という。)には、概ね次の事項が記載されている。

イ.「以上の方法の応用例の1つとして、データ・サービス・ノードがワールド・ワイド・ウェブ上に広告サービスを行い、インターネットを介して広告サービスにアクセスする潜在的な客によりデータ端末が操作されることも可能である。第1の音声端末は、潜在的な客の電話であり、第2の音声端末は広告サービスを用いて広告を出している会社の電話である。潜在的な客は、データ端末上のコマンドを実行することによって、その会社との音声接続を要求する。潜在的な客にとって、広告サービスはワールド・ワイド・ウェブ上でアクセスできる電話帳または「イエローページ」の役割を果たすことになる。」(5ページ31行〜6ページ5行)、

ロ.「図1は、本発明の一実施の形態による相互接続された電気通信ネットワークの概要を示すブロック図である。
第1のワークステーション100であるデータ端末は、プロセッサ101、プロセッサ101による実行命令を保存するメモリ102、プロセッサ101への手動入力を可能にするキーボード103、およびワークステーション100のオペレータにデータを表示するディスプレイ104を備えている。ワークステーション100はさらに、公衆交換電話網(PSTN)200に送信するデータをフォーマットするモデム106を有している。
電話機110である音声端末は、ワークステーションの近くに配置され、ワークステーション100のオペレータが使うようになっている。電話機110もPSTN200に接続されている。
例えば、ワークステーション100および電話機110は、オペレータの家庭に配置する。オペレータはワークステーション100を用いて、インターネット300であるデータ網にPSTN200を介してアクセスする。モデム・プール302は、この目的でPSTN200とインターネット300を接続する。ワークステーション100のメモリ102は「ブラウザ・ソフトウエア」(例えば、ネットスケープTM)を有しており、オペレータはこのソフトウエアを用いて、インターネットを介して提供される種々のデータ・サービスにおける「ナビゲーション」を行う。」(10ページ2行〜28行)、

ハ.「データ・サービス・ノード(SN)500は、データ・サービス提供のためにインターネット300に接続されている。データ・サービス・ノード500は、インターネット・インタフェース502、プロセッサ504およびメモリ506を備えている。メモリ506は、プロセッサ504が実行する命令と、プロセッサ504がこれらの命令を実行するのに用いるデータを保存している。特に、メモリ506はハイパー・テキスト・トランスファ・プロトコル(HTTP)サーバ・ソフトウエアを有しており、このソフトウエアを用いて、データ・サービス・ノード500は、特定のホームページを要求するメッセージをワークステーションから受信したとき、ワールド・ワイド・ウェブのホームページをワークステーション100および400にインターネット上で送ることができる。
従来、ワールド・ワード・ウェブの操作においては、データ・サービス・ノードはワークステーション100にHTML命令をホームページ表示に必要なデータと共に送信していた。HTML命令は、メモリ102に保存され、ワークステーションのオペレータが、データ・サービス・ノードにメッセージを送信するためにホームページ上のコマンド・アイコンを選択したとき、ワークステーション100はメモリ102に保存された命令を実行し、データ・サービス・ノード500は、アイコンに対応したコマンドを実行するメッセージに応答する。コマンド・アイコンのいくつかは、データ入力フィールドやテキスト命令を含んでおり、ワークステーション100のオペレータがデータ入力フィールドを記入するようになっているものもある。ワークステーションにおいてそのようなコマンド・アイコンが選択された場合、ダウンロードされたHTML命令がワークステーションで実行され、データ入力フィールド内容を有するメッセージをデータ・サービス・ノードに送信する。
データ・サービス・ノード500のメモリ506に保存されたHTTP命令によって、データ・サービス・ノード500はワークステーション100からメッセージを受信し、メッセージに対応したコマンドを実行する。メモリ506は、HTTP以外の言語で書かれた他のソフトウエア・アプリケーションを保存してもよい。HTTPソフトウエアが特定のメッセージを受信すると、これらのアプリケーションが実行される。
本発明の一実施の形態によれば、データ・サービス・ノード500中のメモリ506は、HTTP命令を有しており、これによってプロセッサ504は、データ・サービス・ノード500からワークステーション100へ送信される音声呼要求アイコンをホームページ上に表示する。音声呼要求アイコンは、データ入力フィールドおよびテキストを含んでおり、そのアイコンを含むホームページを表示するワークステーション100のオペレータに、音声呼受信をしたい音声端末(例えば、電話110)の電話番号をデータ入力フィールドに入力するように、また、音声呼を要求するアイコンを選択するように促す。メモリ506は、さらに、データ・サービス・ノード500がワークステーション100からの音声呼要求コマンドに対応してメッセージを受信するHTTP命令、および音声呼要求コマンドに対応するメッセージを受信したとき、データ・サービス・ノード500によって実行される呼処理アプリケーション(後に詳細に説明する)を含む。
本発明の実施の形態によれば、データ・サービス・ノード500はさらに、プロセッサ504とPBX510を接続するPBXインタフェース508を有している。PBXインタフェース508は、標準高度知的情報網(AIN)プロトコルを用いてプロセッサ504とPBX510の通信を可能にし、PBX510による呼処理を制御し、PBX510から呼状態情報を入手する。PBX510は、電話機520および530である第2の音声端末をPSTN200に接続し、自動呼分配(ACD)ソフトウエアを有し、電話機520および530の状態をモニタし、着信呼を電話機520および530に分配する。」(11ページ19行〜13ページ15行)、

ニ.「以上に説明した相互接続されたネットワークの応用法の1つでは、ワークステーション100のオペレータは、従来のインターネット・アセクス手順を用いて、ワークステーション100をPSTN200を介してインターネット300に接続する。ワークステーション100に保存されているブラウザ・ソフトウエアを用いて、オペレータは従来のブラウズ手順を行い、ワールド・ワイド・ウェブ上のホームページを見つけ、そのホームページをワークステーション100に表示する。
この応用例では、オペレータはデータ・サービス・ノード500が提供するホームページを見つけ表示する。ホームページには、特定の会社が販売している商品やサービスの広告がされている。表示されたホームページには、以上に説明したように、音声呼要求アイコンが含まれており、音声呼要求アイコンに対応するHTML命令がホームページに表示されるデータと共に、データ・サービス・ノード500からワークステーション100にダウンロードされる。
ワークステーション100のオペレータは、ホームページに表示された情報以外の情報がさらに欲しく、所望の情報を得るために音声呼要求コマンドを実行する。オペレータは、音声呼要求アイコンのテキストに指示される通りに、データ入力フィールドに電話機110の電話番号を入力し、音声呼要求アイコンを選択する。ワークステーション100は、音声呼要求アイコンに対応したHTML命令を実行し、入力された電話番号を含んだ呼要求メッセージをデータ・サービス・ノードに送信する。
データ・サービス・ノード500は、HTTPソフトウエアを用いてメッセージを受信そして解釈し、それによってアプリケーション・ソフトウエアは、PBXに接続されている電話機520または530のどちらかに対する内線番号である第2の音声端末識別子を選択する。電話番号および選択された内線番号は呼処理アプリケーションに送信され、そこで、電話番号および内線番号を含んだ発呼要求が生成され、生成された発呼要求はPBXインタフェース508を介してPBX510へ送信される。
PBX510は発呼要求を処理し、PBX510からデータ・サービス・ノード500と関連する電話機520へ第1の音声呼を発呼する。電話機520において第1の音声呼に対して応答があれば、PBX510は第2の音声呼をPBX510からワークステーション100と関連する電話機110に発呼する。電話機110において第2の音声呼に対して応答があったとき、PBX510はそれら2つの呼を接続し、電話機110と電話機520を接続する。
呼はPSTNを介して接続され、選択された内線番号の電話機520を使用している広告主のエージェントは、特定の電話番号における電話機110を利用しているワークステーション100のオペレータと直接話すことができる。広告主側から発呼されているため、広告主はその音声呼に対する料金をPSTNプロバイダから請求される。
音声呼を処理するのに必要な情報の流れが図2に要約される。」(13ページ26行〜15ページ14行)、

ホ.「データ・サービス・ノード500に保存されたHTPP命令は、それぞれ異なった種類の情報に対応する複数の音声呼要求アイコンをホームページに載せるようにしてもよい。この場合、発呼要求を生成するために実行されるアプリケーション・ソフトウエア命令は、ワークステーションのオペレータが選んだ音声呼要求アイコンに基づいて、複数の内線番号から1つを選択する。例えば、ワークステーション100のオペレータが、第1の製品に関する情報ページに表示された音声呼要求アイコンを選択した場合、データ・サービス・ノード500は、第1の製品に関する情報を有しているエージェント指定の電話機520に対応する内線番号を含む発呼要求を生成する。ワークステーション100のオペレータが、第2の製品に関する情報ページに表示された音声呼要求アイコンを選択した場合、データ・サービス・ノード500は、第2の製品に関する情報を有する他のエージェント指定の電話機530に対応する内線番号を含む発呼要求を生成する。
データ・サービス・ノード500における呼処理アプリケーションは、PBXインタフェース508の標準AINプロトコルを用い、PBXインタフェース508を介してPBX510に接続されている電話機520および530のビジー/アイドル状態を検出してもよい。この場合、データ・サービス・ノード500における呼処理アプリケーションは、電話がビジーの場合、各電話機520および530に対する発呼要求の待ち行列を生成する。データ・サービス・ノード500は、ビジーの電話がアイドル状態になる度に、次の発呼要求をPBX510に送信する。データ・サービス・ノード500は、待ち行列中における発呼要求の位置を、発呼要求をしたワークステーションに表示し、要求に対していつ頃音声呼を発呼できるかをオペレータに知らせるようにしてもよい。」(15ページ26行〜16ページ25行)

ヘ.「PBXインタフェース508は、AIN以外のプロトコルを用いてもPBX510と通信することができる。例えば、コンピュータ電話インタフェース(CTI)、または小型コンピュータ・アプリケーション・インタフェース(SCAI)などの標準化されたプロトコルや、ノーザン・テレコムTMのメリディアン・リンクTMなどの所有権を有するプロトコルを用いてもよい。データ・サービス・ノード500およびPBX510を1つのコンピュータ台にまとめてもよいし、標準AINプロトコルを利用して、データ・サービス・ノード500がPSTN200の電気通信交換機と通信してもよい。音声呼は、PBX510から、PSTN200を介して、例えば、在宅で仕事をするエージェントの自宅や、広告主の他の支店などの遠隔地の音声端末に回すこともできる。」(20ページ7行〜20行)、

ト.「図5は、本発明の他の実施の形態の相互接続された電気通信ネットワークの概要を示すブロック図である。このアーキテクチャは、例えば、インターネット版の「イエローページ」を作成するのに用いる。
図5のように相互接続されたネットワークは、本質的に図1に示されたものと同じであるが、データ・サービス・ノード500が電気通信交換機540に接続されている点で異なっており、電気通信交換機540はPBXでなくても構わない。電気通信交換機540はPSTN200に接続され、データ・サービス・ノードと一体化してもよい。
図5のように相互接続されたネットワークを応用した例の1つでは、ワークステーション100のオペレータは、データ・サービス・ノード500が提供するワールド・ワイド・ウェブ「イエローページ」を見つけ、表示させる。ワークステーション100のオペレータは、関心のあるリストを見つけ、そのリストに関連する音声呼要求コマンドを実行する。ワークステーション100は、その音声呼要求コマンドに対応するHTML命令を実行し、オペレータの電話機110の電話番号を含んだ呼要求メッセージをデータ・サービス・ノード500に送信する。
データ・サービス・ノード500のHTTPソフトウエアは、メッセージを受信すると解釈し、データ・サービス・ノード500上で動作しているアプリケーション・ソフトウエアに、ワークステーション100のオペレータが選択したリストに関する音声呼コマンドに対応する電話番号を選択させる。選択された電話番号は呼処理ソフトウエアに送信され、そこで、電話機110の電話番号と選択されたリストに関連する電話番号を含む呼発呼メッセージを生成し電気通信交換機540に送出する。
電気通信交換機540は発呼要求を処理し、PSTN200を介して電気通信交換機540から、選択されたリストの電話番号に対応する電話機120へ発呼する。また、電気通信交換機540は電気通信交換機540からその呼を要求した人の電話機110にも発呼する。電気通信交換機540は、2つの呼を接続し、PSTN200および交換機540を介して電話機110と電話機120を繋ぐ。呼を要求している人は、情報スクリーンに表示されているリストを選択するので、ダイヤル間違いを避けることができる。さらに、電気通信交換機540は、「イエローページ」に名を載せている会社の電話120にPSTNを介して接続されており、データ・サービス・ノード500は地理的に離れた場所にある会社に、呼終了サービスを行うことができる。」(20ページ25行〜22ページ4行)。

前記記載事項、図面並びに技術常識からみて、引用例には、
「広告を出している会社からインターネット上でオペレータに対してコールバックサービスを提供する方法において、
(a)オペレータとデータ・サービス・ノードとの間に通信を確立するステップと、
(b)オペレータが少なくとも電話番号を入力するための音声呼要求アイコンをデータ・サービス・ノードにより提供するステップと、
(c)選択された音声呼要求アイコンに基づいて、入力を特定の広告を出している会社に関連づけるステップと、
(d)電話中継回線を有する電話スイッチをデータ・サービス・ノードが制御して、オペレータと広告を出している会社との間に電話接続を確立するステップとを含む方法。」(以下、「引用発明」という。)が開示されている。


例えば、「川崎慎介,”コンピュータ・テレフォニの新潮流”,日経コミュニケーション 第246号,第246号,1997年5月19日,p.88-109」(以下、「周知例1」という。)には、以下の事項が記載されている。

チ.「全社的に大規模なCTIシステムを導入するなら, PBXとCTIサーバー間をCTIリンクで結び,CTIサーバーがPBXを制御する形態のほうが向いている。」(102ページ右欄10行〜14行)

リ.「顧客と電話回線を使って通話するインターネット・コール・センターの仕組みは次のようになる。まず,顧客側に電話回線が2本ある場合について見てみよう (図3-3)。
顧客がインターネットにアクセスし,ホームページ上の商品情報や技術情報について詳細な説明を求めたい場合は,電話のアイコンをクリックしてオペレータとの通話を要求する。その際に,自分の名前や顧客ID,連絡先の電話番号などの情報と,必要に応じて問い合わせたい内容などをWWWブラウザ上のフォーマットに入力しておく。
通話要求を受けたWWWサーバーは,顧客が入力した電話番号情報などをCTIサーバーに送る。CTIサーバーはC丁Iアプリケーションにこれらの情報を転送すると同時に,PBXにも電話番号情報を送り,顧客との通話を開設するように要求する。
CTIアプリケーションは電話番号や顧客IDなどからデータベースを検索し,オペレータのパソコン上に顧客データや問い合わせ内容を表示する。同時にPBXは受け取った電話番号から顧客宅ヘ電話をかけ,オペレータとの通話を可能にする。
顧客側に電話回線が1本しかない場合は,あらかじめコールバック時間を指定しておき,通話を要求する。その後,いったんインターネットへのアクセスを中断し,電話がかかってくるのを待つ。」(107ページ右欄4行〜108ページ左欄16行)、

ヌ.「インターネット電話なら回線は1本
顧客との通話にインターネット電話を使うタイプの製品は,コール・センター側にインターネット電話を受けるためのゲートウエイを設置する必要があるが,インターネット・アクセスと通話が電話回線1本で可能という点は魅力的だ。
さらに,多くのインターネット電話ソフトは,通話機能だけではなく,パソコン上の画面共有機能(ホワイトボード)やアプリケーシヨン共有機能を備えている。この機能を活用すれば,顧客のパソコン上の画面をコール・センター側に取り込み,オペレータが顧客の画面を見ながら具体的な操作を指示することもできる。
インターネット電話を使ったイン夕ーネット・コール・センターの仕組みは図3-4のようになる。
まず,顧客は自分のパソコンにインターネット電話ソフトをインストールし,起動しておく(写真3-2,写真3-3)。その上でホームページ上の電話アイコンをクリックして,コール・センター側に通話要求を送る。その後の処理は,基本的には通話に通常の電話を使うタイプのインターネット・コール・センターの仕組みと変わらない。
WWWサーバーがCTIサーバーに顧客が入力した電話番号などの情報を送り,CTIサーバーがPBXとCTIアプリケーシヨンにこれらの情報を伝える。CTIアプリケーションはデータベースを検索してオペレータのパソコン上に顧客データを表示する。最後にPBXが顧客との通話を開設する際に,オペレータの電話とインターネット電話用ゲートウエイを接続し,通話を可能にする。」(108ページ中央欄9行〜109ページ左欄17行)

上記記載において、PBXは電話スイッチであるから、前記記載事項、図面ならびに技術常識からみて、該周知例1には、
「WWWサーバがCTIサーバを起動することで、電話スイッチの制御を行う」ことが記載されている。
さらに、上記ヌの記載において、PBXはゲートウエイを介してインターネットへ接続されるものであるから、該ゲートウエイへ接続されるPBXのポートは、インターネット可能なポートであるといえ、上記記載事項、図面ならびに技術常識からみて、該周知例1には、
「電話スイッチがインターネット可能なポートを備え、インターネット電話接続を行う」ことが記載されている。


例えば、「有馬勲,”インターネットとコンピュータテレフォニ”,情報処理 第38巻 第6号,社団法人情報処理学会,1997年6月15日,p.451-456」(以下、「周知例2」という。)には、以下の事項が記載されている。
ル.「図-5にインターネットテレフォニを取り込んだCTIシステムの典型的な構成例を示す.
コールセンタアプリケーションにおいては,インターネットテレフォニを導入することにより企業と顧客間の新しいコミュニケーションチャネルが構成できる.たとえばWWW上の製品情報を閲覧していてもっと詳しい情報が知りたい場合には,インターネット経由でそのメーカの顧客サポートの担当者と通話することができる.この際インターネットテレフォニゲートウェイを介することにより,顧客サポートのオペレータはインターネットからの間合せも電話からの問合せと同じようにオペレータの電話機で受けることができる.」(455ページ右欄下から12行〜456ページ左欄1行)

上記記載において、PBX(電話スイッチ)はインターネットテレフォニゲートウェイを介してインターネットへ接続されるものであるから、該ゲートウエイへ接続されるPBXのポートは、インターネット可能なポートであるといえ、上記記載事項、図面ならびに技術常識からみて、該周知例2には、
「電話スイッチがインターネット可能なポートを備え、インターネット電話接続を行う」ことが記載されている。


3.対比・判断
引用発明の「広告を出している会社」、「オペレータ」、「電話番号」、「音声呼要求アイコン」は、それぞれ本願発明の「加入者」、「ブラウジングパーソン」、「コールバック番号」、「入力メカニズム」に相当する。
引用発明の「データ・サービス・ノード」は、コールバックサービスを提供するハイパー・テキスト・トランスファ・プロトコル(HTTP)サーバ・ソフトウエアが実行されていることから、本願発明の「コールバックサーバ」に相当する。
また、引用発明の「電話中継回線を有する電話スイッチをデータ・サービス・ノードが制御して、オペレータと広告を出している会社との間に電話接続を確立するステップ」と、本願発明の「電話中継回線とインターネット可能なポートとを有する電話スイッチに接続されたCTIサーバ(Tサーバ)をコールバックサーバから起動して、ブラウジングパーソンと加入者との間に電話接続およびインターネット電話接続の一方または両方を確立するステップ」は、いずれも、電話スイッチを制御することにより、ブラウジングパーソンと加入者との間の接続を確立するのであるから、「電話中継回線を有する電話スイッチを制御して、ブラウジングパーソンと加入者との間に電話接続を確立するステップ」である点で、一致する。

そうしてみると、本願発明と引用発明は、
「加入者からインターネット上でブラウジングパーソンに対してコールバックサービスを提供する方法において、
(a)ブラウジングパーソンとコールバックサーバとの間に通信を確立するステップと、
(b)ブラウジングパーソンが少なくとも単一のコールバック番号を入力するための入力メカニズムをコールバックサーバにより提供するステップと、
(c)入力を特定の加入者に関連づけるステップと、
(d)電話中継回線とを有する電話スイッチを制御して、ブラウジングパーソンと加入者との間に電話接続を確立するステップとを含む方法。」
である点で一致し、以下の(1)、(2)の点で相違する。

(1)(a)のステップについて、本願発明は、「個々の加入者のウェブページにおいて、ブラウジングパーソンによりハイパーリンクを起動し、それにより」ブラウジングパーソンとコールバックサーバとの間に通信を確立するのに対して、引用発明は、この点について、特に記載されてない点。
(2)本願発明は、電話スイッチが「インターネット可能なポートと」を有し、電話スイッチに「接続されたCTIサーバ(Tサーバ)をコールバックサーバから起動して、」ブラウジングパーソンとの間に「電話接続およびインターネット電話接続の一方または両方」を確立するのに対して、引用発明は、コールバックサーバ(データ・サービス・ノード)が電話スイッチを制御することで、ブラウジングパーソンと加入者との間に電話接続を確立することが、開示されるに止まる点。

上記相違点について、検討する。
相違点(1)について、
インターネットにおいては、ウェブページを作成し維持することは、本願出願前、個人、企業を問わず行っていることであり、また、ウェブページにおけるハイパーリンクにより、異なるウェブページへリンクすることは、例示するまでもなく周知な事項であるから、引用発明において、個々の広告を出している会社がデータ・サービス・ノードへのハイパーリンクを備えたウェブページを作成し維持することは、適宜なし得る事項にすぎず、データ・サービス・ノードとの間の通信の確立を、個々の広告を出している会社のウェブページにおいて、オペレータによりハイパーリンクの起動することにより行うことに、格別な創意工夫は認められない。

相違点(2)について、
「電話スイッチがインターネット可能なポートを備え、インターネット電話接続を行う」ことは、例えば、周知例1または2に記載されるように、本願出願前周知な事項であるから、引用発明において、該周知な事項を付加して、インターネット電話接続を行うように構成することは、当業者が適宜なし得る事項にすぎず、電話接続とインターネット電話接続は、適宜選択しうるものであるから、ブラウジングパーソンと加入者との間に電話接続およびインターネット電話接続の一方または両方を確立するように構成することに、格別困難な点は認められない。
また、「WWWサーバがCTIサーバを起動することで、電話スイッチの制御を行う」ことは、周知例1に記載されるように、本願出願前周知な技術であり、引用発明において、電話スイッチを制御するCTIサーバを設け、データ・サービス・ノードからCTIサーバを起動することで、電話スイッチを制御するように構成することは、当業者が適宜なし得る事項と認められる。
したがって、引用発明において、電話スイッチが「インターネット可能なポートと」を有し、電話スイッチに「接続されたCTIサーバ(Tサーバ)をコールバックサーバから起動して、」該電話スイッチを制御するように構成し、ブラウジングパーソンと加入者との間に「電話接続およびインターネット電話接続の一方または両方」を確立するように構成することは、当業者が容易になし得ることと認められる。

そして、本願発明の作用・効果も、引用例及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

第3.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は引用例に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2006-02-15 
結審通知日 2006-02-21 
審決日 2006-03-27 
出願番号 特願2000-512341(P2000-512341)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲葉 和生  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 衣鳩 文彦
宮下 誠
発明の名称 小企業とクライアント間の自動ネットワーク接続のための方法および装置  
代理人 小野 誠  
代理人 一入 章夫  
代理人 川口 義雄  
代理人 大崎 勝真  

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