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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B60J
管理番号 1141401
異議申立番号 異議2003-72297  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-12-04 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-09-17 
確定日 2006-05-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3386447号「自動車用窓ガラスおよびその製造方法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3386447号の請求項1、3に係る特許を取り消す。 同請求項2に係る特許を維持する。 
理由 【1】手続の経緯
(1)本件特許第3386447号(以下、「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る発明についての出願は、平成12年10月11日(優先権主張、平成12年3月24日)に特許出願され、平成15年1月10日にその発明について特許権の設定登録がなされた。
(2)その後、特許異議申立人・大湯佳子より特許異議の申立てがあったので、当審により特許取消理由が通知され、その通知書で指定した期間内に特許異議意見書が提出されたところ、平成16年6月23日に「特許第3386447号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。」とする異議の決定がなされた。
(3)上記異議の決定(特許取消決定)の取消を求める訴え(平成16年(行ケ)第355号、後に、平成17年(行ケ)第10316号に変更)がなされ、知的財産高等裁判所において平成17年9月22日に「特許庁が異議2003-72297号事件について、平成16年6月23日にした決定を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決の言渡があり、その後確定した。
(4)これを受けて、当審において更に審理を行い、平成17年12月7日付けで新たな特許取消理由が通知され、その通知書で指定した期間内である平成18年2月20日に、特許異議意見書の提出と共に訂正請求がなされたものである。

【2】訂正の適否について
1.訂正の要旨
上記平成18年2月20日付けの訂正請求は、特許第3386447号の明細書を請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであるが、その要旨は、次の訂正事項a及びbのとおりのもの(下線部の加入又は訂正)と認める。

(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】自動車用窓ガラスと、前記自動車用窓ガラスを挿入して挟持する溝部を有するとともにポリブチレンテレフタレート樹脂もしくはポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードまたは当該ポリブチレンテレフタレート樹脂もしくはポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードにガラス繊維を含有する樹脂素材からなるガラスホルダーと、前記ガラスホルダーの溝部の自動車用窓ガラスとガラスホルダーとの間に形成され、シランカップリング剤を含有する1液タイプのウレタン接着剤層とを有する自動車用窓ガラス。」を、
「【請求項1】自動車用窓ガラスと、前記自動車用窓ガラスを挿入して挟持する溝部を有するとともにポリブチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードまたは当該ポリブチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードにガラス繊維を含有する樹脂素材からなるガラスホルダーと、前記ガラスホルダーの溝部の自動車用窓ガラスとガラスホルダーとの間に形成され、シランカップリング剤を含有する1液タイプのウレタン接着剤層とを有し、
前記自動車用窓ガラスの表面にて、当該自動車用窓ガラスの表面に吸着した水分の水酸基と前記シランカップリング剤のアルコキシ基とが脱水縮合反応されて前記自動車用窓ガラスと前記ウレタン接着剤とが接着し、
前記ガラスホルダーの表面にて、当該ガラスホルダーを構成する樹脂素材の極性基であるCOO基と前記ウレタン接着剤のウレタン結合とが反応して前記ガラスホルダーと前記ウレタン接着剤とが接着している自動車用窓ガラス。」と訂正するとともに、新たな【請求項2】として、
「【請求項2】自動車用窓ガラスと、前記自動車用窓ガラスを挿入して挟持する溝部を有するとともにポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードまたは当該ポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードにガラス繊維を含有する樹脂素材からなるガラスホルダーと、前記ガラスホルダーの溝部の自動車用窓ガラスとガラスホルダーとの間に形成され、シランカップリング剤を含有する1液タイプのウレタン接着剤層とを有する自動車用窓ガラス。」を追加する。

(2)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2の記載
「【請求項2】自動車用窓ガラスと、当該自動車用窓ガラスを挟持する溝部を有すると共にポリブチレンテレフタレート樹脂もしくはポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードまたは当該ポリブチレンテレフタレート樹脂もしくはポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードにガラス繊維を含有する樹脂素材で成形されたガラスホルダーとを、シランカップリング剤を含有する1液タイプのウレタン接着剤で接着する自動車用窓ガラスの製造方法。」を、【請求項3】として、
「【請求項3】自動車用窓ガラスと、当該自動車用窓ガラスを挟持する溝部を有すると共にポリブチレンテレフタレート樹脂もしくはポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードまたは当該ポリブチレンテレフタレート樹脂もしくはポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードにガラス繊維を含有する樹脂素材で成形されたガラスホルダーとを、シランカップリング剤を含有する1液タイプのウレタン接着剤で接着する自動車用窓ガラスの製造方法であって、
前記自動車用窓ガラスの表面にて、当該自動車用窓ガラスの表面に吸着した水分の水酸基と前記シランカップリング剤のアルコキシ基とを脱水縮合反応させて前記自動車用窓ガラスと前記ウレタン接着剤とを接着し、
前記ガラスホルダーの表面にて、当該ガラスホルダーを構成する樹脂素材の極性基であるCOO基と前記ウレタン接着剤のウレタン結合とを反応させて前記ガラスホルダーと前記ウレタン接着剤とを接着させる自動車用窓ガラスの製造方法。」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項aについて
上記訂正事項aは、訂正前の請求項1に記載された発明のうち、ガラスホルダーの素材の選択事項である「ポリブチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードまたは当該ポリブチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードにガラス繊維を含有する樹脂素材」からなるガラスホルダーに係る発明に、「自動車用窓ガラスの表面にて、当該自動車用窓ガラスの表面に吸着した水分の水酸基と前記シランカップリング剤のアルコキシ基とが脱水縮合反応されて前記自動車用窓ガラスと前記ウレタン接着剤とが接着し」という発明特定事項と、「ガラスホルダーの表面にて、当該ガラスホルダーを構成する樹脂素材の極性基であるCOO基と前記ウレタン接着剤のウレタン結合とが反応して前記ガラスホルダーと前記ウレタン接着剤とが接着している」という発明特定事項を追加して限定するとともに、上記各発明特定事項を追加して限定するものではない、ガラスホルダーの素材の選択事項である「ポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードまたは当該ポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードにガラス繊維を含有する樹脂素材」からなるガラスホルダーに係る発明を、ひとつの請求項に記載すると不明瞭となることから請求項数を増やして新たな請求項2として表現したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。
また、前者の発明特定事項である「自動車用窓ガラスの表面にて、当該自動車用窓ガラスの表面に吸着した水分の水酸基と前記シランカップリング剤のアルコキシ基とが脱水縮合反応されて前記自動車用窓ガラスと前記ウレタン接着剤とが接着し」は、明細書の段落【0010】及び【0021】に記載されており、後者の発明特定事項である「ガラスホルダーの表面にて、当該ガラスホルダーを構成する樹脂素材の極性基であるCOO基と前記ウレタン接着剤のウレタン結合とが反応して前記ガラスホルダーと前記ウレタン接着剤とが接着している」は、明細書の段落【0011】及び【0018】に記載されているから、上記訂正事項aは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、更に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項bについて
上記訂正事項bは、訂正前の請求項2に係る発明に、「自動車用窓ガラスの表面にて、当該自動車用窓ガラスの表面に吸着した水分の水酸基と前記シランカップリング剤のアルコキシ基とを脱水縮合反応させて前記自動車用窓ガラスと前記ウレタン接着剤とを接着し」という発明特定事項と、「ガラスホルダーの表面にて、当該ガラスホルダーを構成する樹脂素材の極性基であるCOO基と前記ウレタン接着剤のウレタン結合とを反応させて前記ガラスホルダーと前記ウレタン接着剤とを接着させる」という発明特定事項を追加して限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。
また、前者の発明特定事項である「自動車用窓ガラスの表面にて、当該自動車用窓ガラスの表面に吸着した水分の水酸基と前記シランカップリング剤のアルコキシ基とを脱水縮合反応させて前記自動車用窓ガラスと前記ウレタン接着剤とを接着し」は、明細書の段落【0010】及び【0021】に記載されており、後者の発明特定事項である「ガラスホルダーの表面にて、当該ガラスホルダーを構成する樹脂素材の極性基であるCOO基と前記ウレタン接着剤のウレタン結合とを反応させて前記ガラスホルダーと前記ウレタン接着剤とを接着させる」は、明細書の段落【0011】及び【0018】に記載されているから、上記訂正事項bは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、更に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、平成15年改正前特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

【3】特許異議の申立ての概要
特許異議申立人・大湯佳子は、甲第1号証(登録実用新案第3036497号公報)、甲第2号証(特開平5-25456号公報)及び甲第3号証(特開平10-114813号公報)を証拠として提出して、本件請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項1及び2に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである旨主張している。

【4】本件発明
上記【2】で示したように上記訂正が認められるから、本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)は、上記平成18年2月20日付けの訂正請求書に添付した訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「【請求項1】自動車用窓ガラスと、前記自動車用窓ガラスを挿入して挟持する溝部を有するとともにポリブチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードまたは当該ポリブチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードにガラス繊維を含有する樹脂素材からなるガラスホルダーと、前記ガラスホルダーの溝部の自動車用窓ガラスとガラスホルダーとの間に形成され、シランカップリング剤を含有する1液タイプのウレタン接着剤層とを有し、
前記自動車用窓ガラスの表面にて、当該自動車用窓ガラスの表面に吸着した水分の水酸基と前記シランカップリング剤のアルコキシ基とが脱水縮合反応されて前記自動車用窓ガラスと前記ウレタン接着剤とが接着し、
前記ガラスホルダーの表面にて、当該ガラスホルダーを構成する樹脂素材の極性基であるCOO基と前記ウレタン接着剤のウレタン結合とが反応して前記ガラスホルダーと前記ウレタン接着剤とが接着している自動車用窓ガラス。
【請求項2】自動車用窓ガラスと、前記自動車用窓ガラスを挿入して挟持する溝部を有するとともにポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードまたは当該ポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードにガラス繊維を含有する樹脂素材からなるガラスホルダーと、前記ガラスホルダーの溝部の自動車用窓ガラスとガラスホルダーとの間に形成され、シランカップリング剤を含有する1液タイプのウレタン接着剤層とを有する自動車用窓ガラス。
【請求項3】自動車用窓ガラスと、当該自動車用窓ガラスを挟持する溝部を有すると共にポリブチレンテレフタレート樹脂もしくはポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードまたは当該ポリブチレンテレフタレート樹脂もしくはポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードにガラス繊維を含有する樹脂素材で成形されたガラスホルダーとを、シランカップリング剤を含有する1液タイプのウレタン接着剤で接着する自動車用窓ガラスの製造方法であって、
前記自動車用窓ガラスの表面にて、当該自動車用窓ガラスの表面に吸着した水分の水酸基と前記シランカップリング剤のアルコキシ基とを脱水縮合反応させて前記自動車用窓ガラスと前記ウレタン接着剤とを接着し、
前記ガラスホルダーの表面にて、当該ガラスホルダーを構成する樹脂素材の極性基であるCOO基と前記ウレタン接着剤のウレタン結合とを反応させて前記ガラスホルダーと前記ウレタン接着剤とを接着させる自動車用窓ガラスの製造方法。」

【5】引用例・周知例とその記載事項
当審が平成17年12月7日付けで通知した特許取消理由において引用した引用例・周知例とその記載事項は、次のとおりである。

引用例:特開平8-177307号公報
周知例1:登録実用新案第3036497号公報(甲第1号証)
周知例2:特開平10-114813号公報(甲第3号証)
周知例3:特開平2-279784号公報
周知例4:特開平2-84482号公報

(1)引用例(特開平8-177307号公報)の記載事項
引用例には、「車両用窓ガラスホルダー」に関して、図とともに次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、窓ガラスを上下動させる駆動手段に取り付けるための車両用窓ガラスホルダーに関する。」
(イ)「【0015】……ホルダー1は、ガラス板を嵌入する断面が略U字状の凹部2を有する本体部10と、ガラス板を上下動させる駆動手段(図示せず)に取り付けられる脚部11とからなる。ホルダー1は、この凹部2に備えられるウレタン系……の接着剤を介して、ガラス板に取り付けられる。」
(ウ)「【0033】ホルダーの材質としては、例えば……ポリブチレンテレフタレート等の硬質プラスチックや、これらにガラス繊維を20〜30%程度含有したものを好ましく用いうる。……」

上記記載事項(ア)〜(ウ)及び図の記載を総合すると、引用例には、
「ガラス板と、前記ガラス板を嵌入する凹部2を有するとともにポリブチレンテレフタレートまたは当該ポリブチレンテレフタレートにガラス繊維を含有したものからなるホルダー1と、前記ホルダー1の凹部2のガラス板とホルダー1との間に備えられるウレタン系の接着剤とを有する車両用窓ガラス」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)周知例1(登録実用新案第3036497号公報)の記載事項
周知例1には、「自動車用窓硝子ホルダー」に関して、図1とともに次の事項が記載されている。
(エ)「【0002】
【従来の技術】
従来の、自動車の窓硝子を保持する硝子ホルダーは、硝子繊維25パーセント含有するポリアセタール樹脂を用いて製造したものであり、この硝子繊維25パーセント含有するポリアセタール樹脂を用いて製造した硝子ホルダーと1液タイプのシリコン系接着剤との結合の手を補助する効果を狙い、接着の事前にプライマーという液状の前処理剤を窓硝子挿入用の溝の内壁全面に塗布処理していた。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
従来の、自動車の窓硝子を保持する硝子ホルダーは、硝子繊維25パーセント含有するポリアセタール樹脂を用いて製造したものであるから、硝子ホルダーと1液タイプのシリコン系接着剤との結合の手を補助する効果を狙い、接着の事前にプライマーという液状の前処理剤を窓硝子挿入用の溝の内壁全面に塗布処理しなければならないことから製造コストが高くなり、接着効果にむらがあるといった欠点があった。そこで、この欠点を除いてコストを下げ、更に、接着効果の高い自動車用窓硝子ホルダーを得ることが課題となっていた。」

(3)周知例2(特開平10-114813号公報)の記載事項
周知例2には、「一液型ウレタン樹脂組成物」に関して、次の事項が記載されている。
(オ)「【0003】しかし、従来ポリウレタン樹脂組成物では、金属、ガラス、モルタルに対して一般に充分な接着力が得られない。そこで、接着力を向上させるため、従来行われている方法のひとつに被着体のプライマー処理がある。しかし、この方法では作業の手間と工事費用が増える欠点がある。」
(カ)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】ポリウレタン樹脂組成物に接着力を付与するため使用されるシランカップリング剤として、アミノシラン化合物が優れた接着力を示すが、その反面アミノ基がポリウレタン樹脂のイソシアネート基と反応するため、一液型組成物の処方確立が困難であった。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題点を克服して充分な接着力を得るため、鋭意研究した結果、シランカップリング剤のアミノ基およびメルカプト基とイソシアネート基とを反応させ末端イソシアネート変性した付加物及びエポキシシラン化合物の併用により、貯蔵安定性を悪化せず、接着性を向上させうることを見出し、本発明を完成させた。」

(4)周知例3(特開平2-279784号公報)の記載事項
周知例3には、「ウレタン系接着剤組成物」に関して、次の事項が記載されている。
(キ)「〔従来の技術〕
ガラス、FRP、金属、プラスチック等をウレタン系接着剤組成物を用いて、接着する場合においては、より高い接着力を得るために、接着前処理として、プライマーを被着材料の表面に塗布することが、一般に行われている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、この方法では、接着剤を使用する前に、プライマーを塗布する工程が必要であり、工程合理化のためにプライマーを塗布しなくても、十分な接着力を持った接着剤が求められていた。」(第1頁右下欄第11行〜第2頁左上欄第1行)
(ク)「又、従来より接着性を上げるために、接着剤に各種シランカップリング剤……が添加されているが、ウレタン系接着剤においては、……結果として被着材料との接着性が向上しないという問題点があった。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者らは、かかる問題点を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明はウレタン系接着剤組成物において、イソシアネートアルコキシシランを含有することを特徴とするウレタン系接着剤組成物に関するものである。」(第2頁左上欄第2行〜右上欄第1行)
(ケ)「本発明で用いられるウレタン系接着剤としては、従来公知のウレタン系接着剤ならば、一液型でも二液型でも使用することができる。」(第2頁左下欄第4〜6行)

(5)周知例4(特開平2-84482号公報)の記載事項
周知例4には、「ポリウレタン接着剤用組成物」に関して、次の事項が記載されている。
(コ)「本発明のポリウレタン接着剤用組成物は、……更に性能を上げるため、必要によりシランカップリング剤を添加してもよい。」(第5頁左上欄第1〜7行)
(サ)「このようにして得られた接着剤は目的に応じて一液型あるいは二液型として使用することができる。」(第5頁右上欄第11〜13行)

【6】本件発明1について
1.発明の対比
本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「ガラス板」は本件発明1の「自動車用窓ガラス」に相当し、以下同様に、「前記ガラス板を嵌入する凹部2」は「前記自動車用窓ガラスを挿入して挟持する溝部」に、「ポリブチレンテレフタレートまたは当該ポリブチレンテレフタレートにガラス繊維を含有したもの」は「ポリブチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードまたは当該ポリブチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードにガラス繊維を含有する樹脂素材」に、「ホルダー1」は「ガラスホルダー」に、「前記ホルダー1の凹部2のガラス板とホルダー1との間に備えられるウレタン系の接着剤」は「前記ガラスホルダーの溝部の自動車用窓ガラスとガラスホルダーとの間に形成されるウレタン接着剤層」に、「車両用窓ガラス」は「自動車用窓ガラス」に、それぞれ相当する。
よって、本件発明1と引用発明とは、
《一致点》
「自動車用窓ガラスと、前記自動車用窓ガラスを挿入して挟持する溝部を有するとともにポリブチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードまたは当該ポリブチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードにガラス繊維を含有する樹脂素材からなるガラスホルダーと、前記ガラスホルダーの溝部の自動車用窓ガラスとガラスホルダーとの間に形成されるウレタン接着剤層とを有する自動車用窓ガラス」
である点で一致し、次の2点で相違している。
《相違点1》
「ウレタン接着剤層」に関して、本件発明1では、「シランカップリング剤を含有する1液タイプの」ウレタン接着剤層と限定されているのに対して、引用発明では、そのような限定がないウレタン系の接着剤である点。
《相違点2》
ガラス界面及びガラスホルダー界面の接着に関して、本件発明1では、
「前記自動車用窓ガラスの表面にて、当該自動車用窓ガラスの表面に吸着した水分の水酸基と前記シランカップリング剤のアルコキシ基とが脱水縮合反応されて前記自動車用窓ガラスと前記ウレタン接着剤とが接着し、
前記ガラスホルダーの表面にて、当該ガラスホルダーを構成する樹脂素材の極性基であるCOO基と前記ウレタン接着剤のウレタン結合とが反応して前記ガラスホルダーと前記ウレタン接着剤とが接着している」
と限定されているのに対して、引用発明では、そのような限定がない点。

2.当審の判断
そこで、上記各相違点について以下で検討する。

(1)相違点1について
周知例1の記載事項(エ)、周知例2の記載事項(オ)及び周知例3の記載事項(キ)にみられるように、プライマーの使用による工程数の増加やコストアップを避けるため、プライマーを使用しないようにすることは、従来から周知の課題である。
また、周知例2の記載事項(カ)、周知例3の記載事項(ク)(ケ)及び周知例4の記載事項(コ)(サ)にみられるように、ウレタン接着剤にシランカップリング剤を添加すると接着性が向上するとともに、当該シランカップリング剤を添加したウレタン接着剤が一液型で使用できることは、従来周知の技術である。
そして、引用例には、プライマーを使用するか否かについての明示的な記載はないが、一般的に、プライマーを使用しないと十分な接着力が得られない場合があることは技術常識(周知例2の記載事項(オ)及び周知例3の記載事項(キ)、参照)であるから、プライマーの使用に関する上記周知の課題を解決するために、引用発明に上記周知の技術を適用することによって、引用発明のウレタン系の接着剤をシランカップリング剤を含有する1液タイプのものとして十分な接着力を付与することは、当業者であれば容易に推考できた事項である。

(2)相違点2について
上記相違点2に係る本件発明1の限定事項は、ガラス界面及びガラスホルダー界面における接着のメカニズムに関して、自動車用窓ガラスとポリブチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードまたは当該ポリブチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードにガラス繊維を含有する樹脂素材からなるガラスホルダーとを、シランカップリング剤を含有する1液タイプのウレタン接着剤で接着した場合における接着の態様を限定したものにすぎず、引用発明においても、ウレタン系の接着剤をシランカップリング剤を含有する1液タイプのものとした場合には、上記相違点2に係る本件発明1の限定事項と同様な接着の態様となることは明らかである。

また、本件発明1が奏する作用効果は、引用発明及び周知例1ないし4の記載事項から予測される程度以上のものでもない。

よって、本件発明1は、引用発明及び周知例1ないし4の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.判決の拘束力について
判決は、刊行物1(登録実用新案第3036497号公報(甲第1号証)、本決定の周知例1)記載の発明の1液タイプのシリコン系接着剤に替えて、刊行物2(特開平5-25456号公報(甲第2号証))又は3(特開平10-114813号公報(甲第3号証)、本決定の周知例2)に記載のウレタン接着剤を採用する動機付けとなるものはないとするとともに、自動車用窓ガラスとガラスホルダーとの接着部に用いられる接着剤は、「耐熱性を必要とする用途」であると考えるのが自然であるから、刊行物2に記載のシランカップリング剤を含有する1液タイプのウレタン接着剤を採用することに格別の技術的障害があるとしている。
これに対して、本決定では、刊行物1とは異なる引用例を主引用例として、「引用発明に上記周知の技術を適用することによって、引用発明のウレタン系の接着剤をシランカップリング剤を含有する1液タイプのものとして十分な接着力を付与することは、当業者であれば容易に推考できた事項である。」と判断するとともに、周知例2ないし4には、シランカップリング剤を添加した一液型のウレタン接着剤が「耐熱性を必要とする用途」に適用できない旨の記載はみあたらないから、判決の拘束力は及ばないと考えられる。

【7】本件発明2について
1.発明の対比
本件発明2と引用発明とを対比すると、上記「【6】本件発明1について」に記載した相違点1に加えて、本件発明2と引用発明とは、次の点で相違している。
《相違点3》
ガラスホルダーが、本件発明2では、「ポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードまたは当該ポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードにガラス繊維を含有する樹脂素材」からなるのに対して、引用発明では、「ポリブチレンテレフタレートまたは当該ポリブチレンテレフタレートにガラス繊維を含有したもの」からなる点。

2.当審の判断
そこで、上記相違点3について検討すると、ガラスホルダーを、「ポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードまたは当該ポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードにガラス繊維を含有する樹脂素材」からなるものすることは、上記周知例1ないし4や異議申立人が提出した甲第2号証には、記載も示唆もされていないし、また、上記事項を開示する他の証拠も見あたらない。

よって、本件発明2は、引用発明及び周知例1ないし4や異議申立人が提出した甲第2号証の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

【8】本件発明3について
本件発明3は、ガラスホルダーが「ポリブチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードまたは当該ポリブチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードにガラス繊維を含有する樹脂素材」で成形されたものであることを選択事項としており、上記樹脂素材をガラスホルダーの選択事項とする本件発明3は、
「自動車用窓ガラスと、当該自動車用窓ガラスを挟持する溝部を有すると共にポリブチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードまたは当該ポリブチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードにガラス繊維を含有する樹脂素材で成形されたガラスホルダーとを、シランカップリング剤を含有する1液タイプのウレタン接着剤で接着する自動車用窓ガラスの製造方法であって、
前記自動車用窓ガラスの表面にて、当該自動車用窓ガラスの表面に吸着した水分の水酸基と前記シランカップリング剤のアルコキシ基とを脱水縮合反応させて前記自動車用窓ガラスと前記ウレタン接着剤とを接着し、
前記ガラスホルダーの表面にて、当該ガラスホルダーを構成する樹脂素材の極性基であるCOO基と前記ウレタン接着剤のウレタン結合とを反応させて前記ガラスホルダーと前記ウレタン接着剤とを接着させる自動車用窓ガラスの製造方法。」
と特定されるとおりのものである。
そして、上記のとおり特定される本件発明3は、本件発明1が「自動車用窓ガラス」に関するものであるのに対して、その発明特定事項を「自動車用窓ガラスの製造方法」に関するものにしたものであって、本件発明1と発明のカテゴリーの相違に基づく以上の実質的な差異はないので、上記「【6】本件発明1について」で説示したのと同様な理由により、引用発明及び周知例1ないし4の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

【9】むすび
以上のとおりであるから、本件発明1及び3についての特許は、特許法第29条第2号の規定に違反してされたものであり、平成15年改正前特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件発明2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
自動車用窓ガラスおよびその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】自動車用窓ガラスと、前記自動車用窓ガラスを挿入して挟持する溝部を有するとともにポリブチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードまたは当該ポリブチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードにガラス繊維を含有する樹脂素材からなるガラスホルダーと、前記ガラスホルダーの溝部の自動車用窓ガラスとガラスホルダーとの間に形成され、シランカップリング剤を含有する1液タイプのウレタン接着剤層とを有し、
前記自動車用窓ガラスの表面にて、当該自動車用窓ガラスの表面に吸着した水分の水酸基と前記シランカップリング剤のアルコキシ基とが脱水縮合反応されて前記自動車用窓ガラスと前記ウレタン接着剤とが接着し、
前記ガラスホルダーの表面にて、当該ガラスホルダーを構成する樹脂素材の極性基であるCOO基と前記ウレタン接着剤のウレタン結合とが反応して前記ガラスホルダーと前記ウレタン接着剤とが接着している自動車用窓ガラス。
【請求項2】自動車用窓ガラスと、前記自動車用窓ガラスを挿入して挟持する溝部を有するとともにポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードまたは当該ポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードにガラス繊維を含有する樹脂素材からなるガラスホルダーと、前記ガラスホルダーの溝部の自動車用窓ガラスとガラスホルダーとの間に形成され、シランカップリング剤を含有する1液タイプのウレタン接着剤層とを有する自動車用窓ガラス。
【請求項3】自動車用窓ガラスと、当該自動車用窓ガラスを挟持する溝部を有すると共にポリブチレンテレフタレート樹脂もしくはポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードまたは当該ポリブチレンテレフタレート樹脂もしくはポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードにガラス繊維を含有する樹脂素材で成形されたガラスホルダーとを、シランカップリング剤を含有する1液タイプのウレタン接着剤で接着する自動車用窓ガラスの製造方法であって、
前記自動車用窓ガラスの表面にて、当該自動車用窓ガラスの表面に吸着した水分の水酸基と前記シランカップリング剤のアルコキシ基とを脱水縮合反応させて前記自動車用窓ガラスと前記ウレタン接着剤とを接着し、
前記ガラスホルダーの表面にて、当該ガラスホルダーを構成する樹脂素材の極性基であるCOO基と前記ウレタン接着剤のウレタン結合とを反応させて前記ガラスホルダーと前記ウレタン接着剤とを接着させる自動車用窓ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、昇降装置等に組みつけられる自動車用窓ガラスおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用窓ガラスを組み立てる一手段として接着剤を用いたガラスホルダー構造が知られている。
【0003】
この種のガラスホルダー構造では、自動車のガラスを保持するガラスホルダーには、ガラス繊維を含有するポリアセタール樹脂または、ポリブチレンテレフタレート樹脂が用いられ、ガラス側およびガラスホルダー側にプライマーを塗布後、シランカップリング剤を含有しない1液ウレタン接着剤または1液シリコン接着剤および2液混合シリコンを用いて接着し、組み立てられていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ガラスホルダー構造は、ガラスとガラスホルダーとを接着するものであるが、ガラスは一般に接着しにくい素材だといわれている。
【0005】
自動車用窓ガラスを組み立てる際、ガラスホルダー構造の接着力を確保するために、プライマーの使用が必須であった。しかしながら、プライマーの使用は、プライマー塗布工程、乾燥工程、検査工程が必要となるほか、プライマー設備、プライマー管理も必要とし、またプライマーを使っての接着力の向上を図る手段は、接着剤の固化時間が長く、ブラケットの位置決め作業に手間がかかってコストアップの要因ともなっていた。
【0006】
さらに、プライマーの塗布作業は、気化したガスの臭気の為、作業環境が悪く作業効率の低下要因ともなっていた。
【0007】
本発明は、製造コストが安価で、接着効果が非常に高く、取り付け各部品の小型化が可能な自動車用窓ガラスおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、自動車用窓ガラスとガラスホルダーとの接着に際し、ガラスプライマー及び樹脂プライマーを一切必要とせずに、強力な接着力を得られるようにしたものである。
【0009】
即ち、自動車用窓ガラスと、自動車用窓ガラスを挟持する溝部を有すると共にポリブチレンテレフタレート樹脂もしくはポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードまたはポリブチレンテレフタレート樹脂もしくはポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードにガラス繊維を含有する樹脂素材で成形されたガラスホルダーとを、シランカップリング剤を含有する1液タイプのウレタン接着剤で一体に接着するものである。
【0010】
【作用】
一方の被着体である自動車用窓ガラスの表面は、空気中の水分を吸着しており、水分中のOH基とシランカップリング剤のアルコキシ基が脱水縮合反応を経て結合する。
【0011】
他方の被着体であるガラスホルダーを成形するポリブチレンテレフタレート樹脂またはポリエチレンテレフタレート樹脂の化学構造は、極性基であるCOO基を有する為、ウレタンシーラント中のウレタン結合と結ばれる。
【0012】
1液ウレタンシーラントは、末端にイソシアネート(NCO)基を持つ。このイソシアネート基が空気中の水分と結合した後、尿素結合を生成し、硬化する。
【0013】
よって自動車用窓ガラスとガラスホルダーとは、シランカップリング剤が添加されたウレタンシーラントにより速やかに克つ強固に接着される。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る自動車用窓ガラスとガラスホルダーとの接着状態を説明するための要部斜視図である。
【0015】
自動車用窓ガラス1は、ガラスホルダー3に成形されたコ字状の溝部2に挟持されると共に接着剤4により強固に接着されている。
【0016】
ガラスホルダー3は、極性基であるCOO基を有する樹脂素材ポリブチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードまたはポリブチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードにガラス繊維を含有する複合樹脂で成形されている。または、これに代えて、極性基であるCOO基を有する樹脂素材ポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードまたはポリエチレンテレフタレート樹脂のナチュラルグレードにガラス繊維を含有する複合樹脂で成形することもできる。
【0017】
接着剤4には、シランカップリング剤を含有する1液タイプのウレタン接着剤が用いられている。
【0018】
ガラスホルダー3を構成するポリブチレンテレフタレートと、接着剤4を構成するウレタンシーラントとは、下記化学式
【化1】

で表されるように、極性基であるCOO基とウレタンシーラント中のウレタン結合とが結ばれ、ガラスホルダー3の溝部2内面に対し、接着剤4が強固に被着される。
【0019】
次に、シランカップリング剤添加ウレタンシーラントの自動車用窓ガラス1への被着につき説明する。
【0020】
1液タイプのウレタンシーラントに5重量パーセント以下の割合で添加されるシランカップリング剤は、下記化学式
【化2】

に示されるように、末端に有機官能基(X)と珪素原子(Si)から伸びるアルコキシ基(OR)から成り立っている。
【0021】
被着体である自動車用窓ガラス1と、シランカップリング剤との結合は、下記化学式
【化3】

に示されるように、自動車用窓ガラス1の表面には、微少ながら空気中の水分が吸着しており、吸着した水分中のOH基と、1液ウレタンシーラントに添加されているシランカップリング剤のアルコキシ基とが脱水縮合反応を経て、シロキサン化し、結合する。
【0022】
従って、自動車用窓ガラス1の表面に1液ウレタンシーラントがシランカップリング剤を介して強固に被着される。
【0023】
以上のように、シランカップリング剤が添加された1液ウレタンシーラントは、自動車用窓ガラス1の表面及び自動車用窓ガラス1を挟持するガラスホルダー3の溝部2と双方に強固に被着されることになる。
【0024】
さらに、1液ウレタンシーラントは末端にイソシアネート(NCO)基を持っていることから、空気中の水分と結合アミン基を有するカルバミン酸を生成する。当該アミン基は、まだ水分と結合していないウレタンシーラントと尿素結合し硬化する。
【0025】
【発明の効果】
以上、本発明の自動車用窓ガラスおよびその製造方法によれば、ガラスプライマー及び樹脂プライマーを一切用いることなく、自動車用窓ガラスとガラスホルダーとの間をさらに強固に接合できる。
また、プライマーを使用することにより長くかかっていた接着剤の硬化時間を短縮できる。従って、(1)ガラス側、樹脂側のプライマーの廃止、(2)プライマー塗布工程、乾燥工程、検査工程、設備の廃止、(3)プライマー管理の廃止、(4)強度アップによる市場信頼性向上、(5)接着強度アップ(特にクリープ力)、接着強度ばらつきの縮小による品質の安定化、不良率の低下、(6)接着強度アップによる部品の小型化が可能、(7)接着力アップによる接着面積の削減が可能、(8)プライマー塗布工程廃止による無臭化で作業環境が向上するなど、経済的効果も大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自動車用窓ガラスとガラスホルダーとの接着状態を説明するための要部斜視図である。
【符号の説明】
1…自動車用窓ガラス
2…溝部
3…ガラスホルダー
4…接着剤
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2006-03-31 
出願番号 特願2000-310560(P2000-310560)
審決分類 P 1 651・ 121- ZD (B60J)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 島田 信一  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 永安 真
平瀬 知明
ぬで島 慎二
大野 覚美
登録日 2003-01-10 
登録番号 特許第3386447号(P3386447)
権利者 堀硝子株式会社
発明の名称 自動車用窓ガラスおよびその製造方法  
代理人 大滝 均  
代理人 大倉 宏一郎  
代理人 西出 眞吾  
代理人 前田 均  
代理人 前田 均  
代理人 大倉 宏一郎  
代理人 西出 眞吾  

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