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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A63F
管理番号 1142041
審判番号 無効2005-80185  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-03-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-06-20 
確定日 2006-06-12 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3599651号発明「遊技用回路基板ケースの固定構造」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3599651号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 結 論
訂正を認める。
特許第3599651号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理 由
【1】手続の経緯
本件特許第3599651号発明は、平成5年5月11日に出願された特願平5-108969号の一部を分割し、新たに平成12年8月28日に特願2000-257414号として出願され、平成16年9月24日に特許権の設定登録がなされ、これに対して平成17年6月17日に請求人黒田博道より特許無効審判の請求がなされ、平成17年7月4日付けで被請求人に対して答弁が指令され、被請求人からその指定期間内である平成17年9月2日付けで答弁書及び訂正請求書が提出され、平成17年9月8日付けで請求人に対して弁駁が指令されたが、請求人から指定期間内に何らの応答がなされなかったものである。

【2】訂正の適否についての判断
1.訂正の内容(下線部訂正個所)
平成17年9月2日付けの訂正請求の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項a
明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載を、
「【請求項1】 遊技装置(5)を内装している箱体(6)に、遊技用回路基板(13)を内装する基板ケース(14)が、脱着可能に固定されているとともに、前記基板ケース(14)には、遊技用回路基板(13)の装脱用開口を開閉する蓋体(20)が設けられている遊技用回路基板ケースの固定構造であって、前記装脱用開口を閉止する状態にある基板ケース(14)の蓋体(20)と箱体(6)とを固定するための係止爪(35)が一体成形されている取り外し阻止部材(31)の前記係止爪(35)を破壊しない限り、前記基板ケース(14)が箱体(6)から取り外し不能に構成されている遊技用回路基板ケースの固定構造。」と訂正する。

(2)訂正事項b
明細書の段落【0004】の記載を、
「【課題を解決するための手段】上記目的を達成する為の本発明の特徴構成は、遊技装置を内装している箱体に、遊技用回路基板を内装する基板ケースが、脱着可能に固定されているとともに、前記基板ケースには、遊技用回路基板の装脱用開口を開閉する蓋体が設けられている遊技用回路基板ケースの固定構造であって、前記装脱用開口を閉止する状態にある基板ケースの蓋体と箱体とを固定するための係止爪が一体成形されている取り外し阻止部材の前記係止爪を破壊しない限り、前記基板ケースが箱体から取り外し不能に構成されている点にある。」と訂正する。

(3)訂正事項c
明細書の段落【0010】の記載
「・・・軸芯X方向に向けて弾性変形可能な爪35がその先端部分をピン軸34外周面よりも外方に突出させる状態で一体成形され、固定ピン31を爪35側から貫通孔29,30に挿入するにともなって、その爪35が軸芯X方向に向けて弾性変形し、爪35の先端部分が板材27に形成した貫通孔30から抜けると復帰変形して、爪35先端部が板材27に係止することで、・・・」を、
「・・・軸芯X方向に向けて弾性変形可能な係止爪35がその先端部分をピン軸34外周面よりも外方に突出させる状態で一体成形され、固定ピン31を係止爪35側から貫通孔29,30に挿入するにともなって、その係止爪35が軸芯X方向に向けて弾性変形し、係止爪35の先端部分が板材27に形成した貫通孔30から抜けると復帰変形して、係止爪35先端部が板材27に係止することで、・・・」と訂正し、
同明細書の段落【0011】の記載
「・・・キャビネット6内側から手を差し入れて固定ピン31の爪35を軸芯方向に向けて無理に弾性変形させ、・・・」を、
「・・・キャビネット6内側から手を差し入れて固定ピン31の係止爪35を軸芯方向に向けて無理に弾性変形させ、・・・」と訂正し、
同じく、
「・・・固定ピン31の軸芯Xに沿ってドリル等で孔を明けて、爪35の基部を壊してしまうことで爪35先端部の板材27に対する係止を解除して・・・」を、
「・・・固定ピン31の軸芯Xに沿ってドリル等で孔を明けて、係止爪35の基部を壊してしまうことで係止爪35先端部の板材27に対する係止を解除して・・・」と訂正し、
同明細書の段落【0012】の記載
「・・・固定ピン31をその先端側の爪35が基板ケース14内に入り込む状態で、・・・」を、
「・・・固定ピン31をその先端側の係止爪35が基板ケース14内に入り込む状態で、・・・」と訂正し、
同明細書の段落【0013】の記載
「・・・8.第1実施例において、板材27に係止している固定ピン31の爪35先端部を覆うカバーを当該板材27に設けて、・・・」を、
「・・・8.第1実施例において、板材27に係止している固定ピン31の係止爪35先端部を覆うカバーを当該板材27に設けて、・・・」と訂正し、
同じく、
「・・・9.固定ピン31を構成しているピン軸34の軸芯Xに直交する方向の断面形状は円形であっても角形であっても良いが、周り止めされる状態で装着されている場合、爪35の基部を壊す為に固定ピン31の軸芯Xに沿ってドリル等で孔を明ける際に明け易い。・・・」を、
「・・・9.固定ピン31を構成しているピン軸34の軸芯Xに直交する方向の断面形状は円形であっても角形であっても良いが、周り止めされる状態で装着されている場合、係止爪35の基部を壊す為に固定ピン31の軸芯Xに沿ってドリル等で孔を明ける際に明け易い。・・・」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張変更の存否
(1)訂正事項aについて
訂正事項aは、本件特許明細書の特許請求の範囲の「請求項1」に記載されていた「取り外し阻止部材(31)」について、その構成をより明確化しようとしたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、その訂正は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内において構成を特定するものであるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(2)訂正事項bについて
訂正事項bは、本件特許明細書の特許請求の範囲の「請求項1」の訂正に伴い、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との整合を図るため、「請求項1」で訂正した事項と同じ内容を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当し、本件特許明細書に記載された事項の範囲内において訂正するものであるから新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(3)訂正事項cについて
訂正事項cは、本件特許明細書の特許請求の範囲の「請求項1」の訂正に伴い、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との整合を図るため、「爪35」を「係止爪35」に訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当し、本件特許明細書に記載された事項の範囲内において訂正するものであるから新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

3.むすび
よって、本件訂正はその訂正事項a乃至cのいずれにおいても、平成6年改正法による改正前の特許法第134条第2項ただし書き、及び特許法第134条第5項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第2項の規定に適合するもので、当該訂正を認める。

【3】本件発明
本件特許第3599651号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、訂正が認められるから、本件の訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(前記【2】1.(1)訂正事項a参照)により特定されるものである。

【4】当事者の求めた審判
1.請求人の主張
請求人は、審判請求書において、特許第3599651号の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めることを請求の趣旨とし、本件発明の特許を無効とすべき理由として以下の(1)及び(2)の2点により、本件発明は無効とされるべきものであると主張する。

(1)本件発明は、特許請求の範囲の記載が明確でなく、その特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第123条第1項第4号の規定により、無効とされるべきである。

(2)本件発明は、甲第1号証乃至甲第11号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、その特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきである。

甲第1号証:特開平4-246387号公報
甲第2号証:特開平2-102687号公報
甲第3号証:特開平4-38980号公報
甲第4号証:実願昭61-198257号(実開昭63-102484号 )のマイクロフィルム
甲第5号証:特開平5-103856号公報
甲第6号証:実願昭62-177720号(実開昭63-96882号) のマイクロフイルム
甲第7号証:特開平5-42249号公報
甲第8号証:実願昭56-143247号(実開昭58-46496号) のマイクロフイルム
甲第9号証:実願昭53-91825号(実開昭55-9550号)のマ イクロフィルム
甲第10号証:実公平4-3333号公報
甲第11号証:実公平2-10547号公報

2.被請求人の主張
被請求人は、答弁書において、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、無効審判の請求人が主張する無効の理由について、本件発明の記載に不明瞭な点はなく、また、請求人の提出した証拠刊行物に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項に該当しないから、無効とされるものではない旨反論している。

【5】当審の判断
1.刊行物に記載の発明
(1)甲第2号証(特開平2-102687号公報)に記載の発明
(ア)「駆動部収納ボックス74は、前方を開放した箱状に形成され、その前方上下には、前記駆動部取付枠部材69と固定するための取付穴90a〜90dが穿設され、その内部に回転ドラム76a〜76cが収容されるようになっている。回転ドラム76a〜76cは、それぞれ個々に回転ドラム機構75a〜75cとしてユニット化され、簡単に駆動部収納ボックス74に収納されるようになっている。すなわち、第6図に示すように回転ドラム機構75a〜75c(他の2つの回転ドラム機構75b、75cも全く同じ構成である)は、その外周表面に複数の識別情報が描かれた回転ドラム76a〜76cと、該回転ドラム76a〜76cを回転せしめるステッピングモータ77a〜77cと、該ステッピングモータ77a〜77cを固定するためのモータ固定板78a〜78cとから構成される。」(第6頁左上欄第4〜20行)
(イ)「更に、駆動部収納ボックス74の後面側には、開口部93a〜93dが開設され、駆動部収納ボックス74の後面に密着して取り付けられる駆動制御基板96の表面に設けられる抵抗、あるいはコンデンサ等の電気部品が開口部93a〜93dから前方に突出できるようにしている。・・・また、駆動部収納ボックス74の後面には、第9図に示すように通過穴94a〜94cが穿設され、この通過穴94a〜94cに駆動制御基板96に設けられるホトトランジスタ98a〜98cが臨むようになっている」(第7頁左下欄第2〜14行)
(ウ)「・・・なお、駆動制御基板96は、その-側上下に形成された係合穴部97a、97bを駆動部収納ボックス74の後面側に突設された取付ボス95a〜95d(ただし、95dは図示省略)の一部の取付ボス95a、95dに貫通して支持し、他側をビスで締着することにより駆動部収納ボックス74の後面に密着固定されている。」(第7頁右下欄第14行〜第8頁左上欄第1行)

記載事項(ア)乃至(ウ)の記載、及び第5図の記載からみて、甲第2号証には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明>
「駆動部収納ボックス74は、前方を開放した箱状に形成され、その内部に回転ドラム機構75a〜75cが収納されて構成されるものであって、駆動制御基板96が、ビスで締着することにより駆動部収納ボックス74の後面に密着固定されている、駆動部収納ボックス74。」

(2)甲第4号証(実願昭61-198257号(実開昭63-102484号)のマイクロフィルム)に記載の発明
(エ)「本考案に係る制御基盤ボックス1は、第1図に示すように、絶縁性基板2の一方の面に・・・電子部品3…を取付けるとともに、・・・絶縁性基板2の隅角部等に止着孔5…を開設した制御基盤6と、該制御基盤6の電子部品3…側に被せるカバー枠7と、上記制御基盤6の下面を覆うアース板8と、該アース板8の下面を覆う下蓋9とから成る。・・・カバー枠7は、制御基盤6に被せる面に開口部11が大きく開口した・・・箱状であり、・・・」(第4頁第14行〜第5頁第8行)
(オ)「上記アース板8の下面を覆う下蓋9は、周縁を僅かに起立させたプラスチック製の浅い箱状であり、アース板8よりも僅かに大きく、開口縁にはカバー枠7の鍔部12を嵌合する断面L字状の嵌合部22を形成し、開口縁の内側にはアース板8の段状止着片19が載る支持段部23…を形成するとともに、各支持段部23の上面にアース板8の止着孔20に対応させて止着孔24を開設し、側面部から外方に延設した舌片状の取付部25には係止部材26を取付けてなる。」(第6頁第10〜19行)
(カ)「上記した構成からなる制御基盤ボックス1を組立てるには、第1図に示すように、アース板8・・・を下蓋9・・・に載せて収納し、・・・制御基板6をアース板8の上面に載せて、この状態で制御基盤6の上面にカバー枠7を被せ、・・・金属製ネジ等の止着部材27を挿通し、カバー枠7と制御基盤6とアース板8と下蓋9とを一体化する。この様にして制御基盤ボックス1を組立てる・・・」(第6頁第20行〜第7頁第11行)
(キ)「上記した制御基盤ボックス1をパチンコ機に取付けるには、例えば第3図に示すように、裏機構盤28の一部を構成する賞球排出樋29の後面に取付ベース30を設け、該取付ベース30に突出状に形成した係止孔31…内に制御基盤ボックス1の各係止部材26を係止する。・・・」(第7頁第20行〜第8頁第5行)
(ク)「・・・第4図に示す係止部材26の実施例は弾性を有するプラスチック製であり、先端に大径部32を有する操作ノブ33を、縦断面がく字状の脚部34…を複数有する略筒状の外側部材35内に前後動自在に挿通してなる。・・・なお、制御基盤ボックス1を取り外すには、第4図鎖線で示すように、操作ノブ33を引き出す。・・・これら脚部34…の間隔が弾性により縮小し、係止孔31から外すことができる。」(第8頁第5行〜第9頁第4行)

(3)甲第8号証(;実願昭56-143247号(実開昭58-46496号)のマイクロフイルムに記載の発明
(ケ)「回転ドラム機構16の下方位置の機構板12には、後述の第2図ないし第4図を参照して詳細に説明する回路基板収納装置(以下収納装置と称す)20が装着される。(第8頁第11〜15行)
(コ)「なお、収納装置20に収納された回路基板は、賞品玉放出機構15を駆動制御する他に図示していないが遊技盤に装着された各種部品、例えば可変入賞球装置および可変表示装置等を制御する電子回路を含む。」(第8頁第17行〜第9頁第1行)
(サ)「この実施例の収納装置20は第2図に示すように筺体21、回路基板22、取付部材の一例の蓋23、およびカバー24から構成される。筺体21は第3図に示すように回路基板22を収納できる大きさの箱状で開口部211が形成され、・・・」(第9頁第11〜16行)
(シ)「筺体21内に設けられた回路基板22は蓋23によって固定される。蓋23は板状部231,取付片233,および突出板235から構成される。板状部231は開口部211を蓋すために背面214側に嵌合できるように開口部211の内側の大きさに形成される。この板状部231には回路基板22を筺体21に取付けるねじ孔を設けた突出棒232が開口部211側に突出して形成される。・・・」(第12頁第2〜10行)
(ス)「このように形成された蓋23は突出棒232にねじ41を挿入して回路基板22を筺体21内に固定するとともに第4図に示すように蓋23が容易に取外しできないように取付片233のねじ孔234にねじ42が挿入され機構板12に固定される。」(第13頁第6〜11行)
(セ)「この実施例が第4図と異なる点は、取付片233のねじ孔234に挿入されるねじ42の頭部分を囲むように中空円筒部51を形成し、この中空円筒部51の中空部分に充填剤52を充填したことである。
このように、中空円筒部51の中空部分に充填剤52を充填することにより、収納装置20を機構板12から容易に取外しができず、・・・回路基板22を変換したりまたは回路基板22を一部変更して・・・弾球遊技機に改造するのを防止できる等の利点がある。」(第15頁第4〜15行)

3.本件発明と引用発明との対比検討
(1)本件発明と引用発明との対比
本件発明と引用発明とを対比すると、引用例に記載の発明の「回転ドラム機構75a〜75c」、「駆動部収納ボックス74」、「駆動制御基板96」が、本件発明における、「遊技装置(5)」、「箱体(6)」、「遊技用回路基板(13)」にそれぞれ相当する。
また、引用発明は、記載事項(ウ)の「・・・なお、駆動制御基板96は、その-側上下に形成された係合穴部97a、97bを駆動部収納ボックス74の後面側に突設された取付ボス95a〜95d(ただし、95dは図示省略)の一部の取付ボス95a、95dに貫通して支持し、他側をビスで締着することにより駆動部収納ボックス74の後面に密着固定されている。」なる記載、及び、第5図の記載からみて、「駆動制御基板96」は、「駆動部収納ボックス」にビスで締結して固定されるから、明らかに「駆動部収納ボックス」に対し脱着可能に配置されているものであり、一方、本件発明の「遊技用回路基板(13)」は、基板ケース(14)に内装され、基板ケース(14)を介して箱体(6)に対し脱着可能に配置されるから、引用発明の「駆動制御基板96」と、本件発明の「遊技用回路基板(13)」は、ともに「箱体(6)に対し、遊技用回路基板(13)が脱着可能に配置されている」構成を備えた点で共通する。
そして、引用発明は、記載事項(ウ)の「駆動制御基板96」、「係合穴部97a、97b」、「取付ボス95a〜95d」、「ビス」により、本件発明と同様に、「固定構造」を構成するものといえる。

してみると、引用発明と本件発明とは、

「遊技装置を内装している箱体に対し、遊技用回路基板が脱着可能に配置されている固定構造。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
遊技用回路基板が、本件発明は、基板ケースに内装され、基板ケースが箱体に脱着可能に固定されており、該基板ケースに遊技用回路基板の装脱用開口を開閉する蓋体を設けたのに対し、引用発明は、遊技用回路基板が内装されている基板ケース自体を備えていない点。

<相違点2>
本件発明は、取り外し阻止部材により、基板ケースの装脱用開口を閉止した状態の蓋体を箱体に固定し、該取り外し阻止部材は、係止爪が一体成形され係止爪を破壊しない限り、基板ケースが箱体から取り外し不能であるのに対し、引用発明は、ビスにより、遊技用回路基板を箱体に脱着可能に固定した点。

(2)相違点の検討
<相違点1>について
遊技用回路基板が基板ケースに内装され、基板ケースが脱着可能に固定されており、該基板ケースに遊技用回路基板の装脱用開口を開閉する蓋体を設けた点は、当該技術分野において従来周知の技術(例えば、甲第4号証に記載の発明;記載事項(エ)乃至(キ)、甲第8号証に記載の発明;記載事項(サ)乃至(ス)参照)である。
そして、引用発明と上記周知技術は、ともにパチンコ等遊技機の遊技用回路基板を固定する点で技術分野が共通するから、引用発明の遊技用回路基板に、上記周知技術である遊技用回路基板を内装し、装脱用開口を開閉する蓋体を設けた基板ケースを採用し該基板ケースを箱体に脱着可能に固定させ、本件発明の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できるものであり、また、その適用に何ら阻害要因が認められるものでもない。

<相違点2>について
基板ケースの装脱用開口を閉止した状態の蓋体を箱体に固定する「取り外し阻止部材」を備えた点に関して、甲第8号証に記載の発明は、記載事項(サ)「この実施例の収納装置20は・・・筺体21・・・蓋23、・・・から構成される。筺体21は第3図に示すように回路基板22を収納できる大きさの箱状で開口部211が形成され、・・・」、同じく、(シ)「・・・蓋23は板状部231,取付片233・・・から構成される。板状部231は開口部211を蓋すために背面214側に嵌合できるように開口部211の内側の大きさに形成される。・・・」、同じく、(ス)「このように形成された蓋23は・・・回路基板22を筺体21内に固定するとともに・・・取付片233のねじ孔234にねじ42が挿入され機構板12に固定される。」、同じく、(セ)の「・・・取付片23中空円筒部51を3のねじ孔234に挿入されるねじ42の頭部分を囲むように形成し、この中空円筒部51の中空部分に充填剤52を充填したことである。・・・中空円筒部51に中空部分に充填剤52を充填することにより、収納装置20を機構板12から容易に取外しができず・・・」なる記載から、筺体21(基板ケース)の開口部211(装脱用開口)を閉止した状態の蓋23(蓋体)を取り外し不能に固定した点が記載されており、「ねじ42」、「中空円筒部51」、及び「充填剤52」が、本件発明の「取り外し阻止部材」と同じ機能を備えているといえる。
但し、甲第8号証に記載の発明のものは固定する部材が「ねじ42」で、本件発明のように一体成形された係止爪で固定されておらず、且つ、係止爪を破壊しない限り、基板ケースが取り外し不能な構成を備えていないが、パチンコ技術分野において、基板ケースの固定に、係止爪で固定する部材を用いた点は、周知技術(例えば、甲第4号証に記載の発明の「外側部材35の脚部34」、特開平4-269983号公報の「止着装置117の先端止着部」、特開平4-303483号公報の「止着装置160の先端止着部」参照)である。
また、一体成形された係止爪で固定後に、固定する部材の係止爪を破壊しない限り、取り外しを不能とした点は、例えば、特開昭48-10450号公報(「円錐ヘッド34」参照)、実願平3-81629号(実開平5-32814号)のCD-ROM(「先端部5a」参照)、実願平3-61655号(実開平5-4915号)のCD-ROM(「係止部4」参照)に示されるように、取り外しを不能とする一般的な固定手段として広く採用される周知・慣用の技術である。
そして、甲第8号証に記載の発明と上記周知技術は、固定する手段において技術分野が共通するから、甲第8号証に記載の発明における取り外し不能のねじを用いた部材の構成に代えて、前記周知技術を採用し、係止爪が一体成形され係止爪を破壊しない限り、取り外しを不能にした部材を用いることは、当業者にとって容易なことといえる。
そうすると、引用発明の遊技用回路基板を箱体に固定する手段として、甲第8号証及び上記周知技術を適用し、本件発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できるものである。

(3)作用効果・判断
そして、本件発明における作用効果は、引用発明及び甲第8号証に記載の発明並びに周知技術に基づいて当業者が当然予測できるものである。
したがって、本件発明は、引用発明及び甲第8号証に記載の発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

【6】.むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、引用発明及び甲第8号証に記載の発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、その余の無効理由について判断するまでもなく、本件発明の特許は、同法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
遊技用回路基板ケースの固定構造
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】遊技装置(5)を内装している箱体(6)に、遊技用回路基板(13)を内装する基板ケース(14)が、脱着可能に固定されているとともに、前記基板ケース(14)には、遊技用回路基板(13)の装脱用開口を開閉する蓋体(20)が設けられている遊技用回路基板ケースの固定構造であって、前記装脱用開口を閉止する状態にある基板ケース(14)の蓋体(20)と箱体(6)とを固定するための係止爪(35)が一体成形されている取り外し阻止部材(31)の前記係止爪(35)を破壊しない限り、前記基板ケース(14)が箱体(6)から取り外し不能に構成されている遊技用回路基板ケースの固定構造。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、スロットマシンやパチンコ機等の遊技装置を内装している箱体に、遊技用回路基板を内装する基板ケースが、脱着可能に固定されているとともに、前記基板ケースには、遊技用回路基板の装脱用開口を開閉する蓋体が設けられている遊技用回路基板ケースの固定構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
冒記遊技用回路基板ケースの固定構造は、基板ケース内の回路基板を簡便に取替えたり修理できるよう、回路基板の装脱用開口を開閉する蓋体が基板ケースに設けられているが、この蓋体を開き操作して、正規に内装されている回路基板が遊技内容を違法に改変した不正な回路基板に取替えられるおそれがあり、従来、蓋体を不正に開き操作すると破損してしまう封緘シール等を基板ケースに張り付けている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、封緘シール等を基板ケースに張り付けてあるだけでは、基板ケースを箱体から外して、その封緘シール等を基板ケースから丁寧に剥がしさえすれば、蓋体を不正に開き操作することは可能であり、回路基板の不正取替えに対する効果的な防御手段にはなり得ない欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、基板ケースの蓋体と箱体との固定構造を工夫することにより、基板ケースに内装される回路基板の取替えや修理等の作業をコスト面及び構造面で有利に行うことができるものでありながら、回路基板の不正取替えに対して効果的に防御し得る遊技用回路基板ケースの固定構造を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する為の本発明の特徴構成は、遊技装置を内装している箱体に、遊技用回路基板を内装する基板ケースが、脱着可能に固定されているとともに、前記基板ケースには、遊技用回路基板の装脱用開口を開閉する蓋体が設けられている遊技用回路基板ケースの固定構造であって、前記装脱用開口を閉止する状態にある基板ケースの蓋体と箱体とを固定するための係止爪が一体成形されている取り外し阻止部材の前記係止爪を破壊しない限り、前記基板ケースが箱体から取り外し不能に構成されている点にある。
【0005】
【作用】
装脱用開口を閉止する状態で基板ケースに設けられた蓋体と箱体とを取り外し阻止部材で固定することにより、基板ケース自体も箱体に対して取り外し不能に固定することができるから、基板ケース並びに箱体の双方を壊すことなく、基板ケースを箱体から取り外す為には、取り外し阻止部材を壊す必要がある。
そして、取り外し阻止部材が壊されているか否かをもって、回路基板の不正取替えが行われたか否かを判別することができるとともに、基板ケースに内装されている回路基板の取替えや修理等を行う場合でも、取り外し阻止部材のみを壊すだけで良いから、基板ケース及び蓋体をそのまま再利用することができる。
【0006】
【発明の効果】
従って、基板ケース並びに箱体の双方を壊すことなく、基板ケースを箱体から取り外す為には、取り外し阻止部材を壊す必要があるので、回路基板の不正取替えに対して効果的に防御し得るとともに、基板ケースの開口を閉止する蓋体を利用して箱体に固定するから、例えば、基板ケースと箱体とを上述のような取り外し阻止部材を用いて直接固定する場合のように、基板ケースと蓋体とを破壊しない限り固定解除できない別の固定手段で強固に固定する必要が無く、また、基板ケースに内装されている回路基板の取替えや修理等を行う際、取り外し阻止部材の破壊時に誤って蓋体を損傷しても、この蓋体を取替えるだけで済み、回路基板の取替えや修理等の作業もコスト面及び構造面で有利に行うことができる。
【0007】
【実施例】
〔第1実施例〕
図5は遊技機の一例としてのスロットマシンを示し、投入メダルを貯留するとともに賞メダルを払い出すホッパーユニット1,電源ユニット2等が組み付けられている木製枠体3に、前面扉体4が縦軸芯周りで揺動開閉可能に取り付けられ、前面扉体4には、遊技装置を構成する図柄回動装置5が箱体としての鋼製キャビネット6に内装されている図柄回動ユニット7,遊技操作ユニット8,メダル受け皿9等が組付けられ、図柄回動ユニット7のキャビネット6前面側には図柄表示パネル10が固定されている。
そして、図1乃至図4に示すように、キャビネット6背面を構成している鋼製背板11に窓孔12を形成し、この窓孔12をキャビネット6内側から塞ぐように、遊技用回路基板13を内装している透明樹脂製の基板ケース14が固定されている。
【0008】
前記基板ケース14は、キャビネット6に対する固定用の左右取付け片15と、回路基板13の周縁をその板面に沿う方向にスライド移動自在に係止保持する係止溝16と、信号線の接続端子17を回路基板13に接続する為の開口部18とが設けられている透明樹脂製ケース本体19に、回路基板13の装脱用開口を開閉するための蓋体である透明樹脂製蓋板20を着脱自在に嵌め込んで構成されている。
前記蓋板20は、当該蓋板20に形成してある係止爪21をケース本体19に形成してある係止孔22に係止させて固定してあり、蓋板20の長手方向端部を指で掴んで蓋板厚み方向に無理に押し引きして係止爪21を係止孔22に対して係脱させることで、回路基板13を装脱可能な状態に開閉する開閉手段36が構成され、蓋板20をケース本体19から外して基板ケース14を開放し、係止溝16に沿ってのスライド移動で回路基板13を装脱できるよう構成してある。
【0009】
次に、基板ケース14のキャビネット6に対する固定構造を説明する。
前記キャビネット6の背板11には、窓孔12の上端側と下端側との各々に沿って板金製の枠板材23,24をスポット溶接して、基板ケース14の上端側をキャビネット6内側から差し込み可能な上側凹入部25と、基板ケース14の下端側を嵌め込み可能な下側凹入部26とが設けられ、基板ケース14の蓋板20には、該蓋板20が装脱用開口を閉止しているときに背板11に対して重ね合わせる状態で固定される板材27が透明樹脂で鍔状に一体成形されている。
そして、図2に示すように、基板ケース14の上端側を上側凹入部25に差し込むことで基板ケース14の下端側を下側枠板材24の上縁を越えさせてから、その基板ケース14の下端側を下側凹入部26に嵌め込み、取付け片15を背板11の外面側からビス28で当該背板11に固定して、背板11に形成した貫通孔29と板材27に形成した貫通孔30とに亘って、基板ケース14のキャビネット6からの取り外しを阻止する取り外し阻止部材としての透明樹脂製の固定ピン31を挿入する。
【0010】
前記固定ピン31は、図1に示すように、当該固定ピン31の出所を証明する刻印32を付してある頭33付きのピン軸34の挿入端側に、軸芯X方向に向けて弾性変形可能な係止爪35がその先端部分をピン軸34外周面よりも外方に突出させる状態で一体成形され、固定ピン31を係止爪35側から貫通孔29,30に挿入するにともなって、その係止爪35が軸芯X方向に向けて弾性変形し、係止爪35の先端部分が板材27に形成した貫通孔30から抜けると復帰変形して、係止爪35先端部が板材27に係止することで、固定ピン31を破壊しない限り基板ケース14及びキャビネット6から取り外し不能に装着される。
尚、刻印32は、固定ピン31を金型で成形する際に同時に成形される。
【0011】
従って、基板ケース14とキャビネット6とに亘って固定ピン31が一旦挿入されると、キャビネット6内側から手を差し入れて固定ピン31の係止爪35を軸芯方向に向けて無理に弾性変形させ、固定ピン31を背板11の外面側に抜き出そうとしても、そのような操作が基板ケース14の上部外周側を覆っている上側枠板材23で阻止され、又、ビス28を外してから、固定ピン31で背板11に固定されている蓋板20をそのままにしてケース本体19だけを下向きに押し下げ、ケース本体19を蓋板20から外そうとしても、そのような押し下げ動作が基板ケース14の下部外周側を覆っている下側枠板材24との接当で阻止され、もって、基板ケース14がキャビネット6に対して、開閉手段36を開閉操作不能な状態で固定されている。
そして、基板ケース14内の回路基板13を不正目的でなく取替えたり修理する際には、固定ピン31の軸芯Xに沿ってドリル等で孔を明けて、係止爪35の基部を壊してしまうことで係止爪35先端部の板材27に対する係止を解除して、基板ケース14をその固定手順とは逆の手順でキャビネット6から取り外し、所定の作業を終えてから、出所を証明する所定の刻印32が付されている別の固定ピン31を使用して再固定する。
【0012】
〔第2実施例〕
図6は固定ピン31の装着構造の別実施例を示し、蓋板20に、これが装脱用開口を閉止する状態にあるとき基板ケース14内に入り込む板材27を一体形成し、固定ピン31をその先端側の係止爪35が基板ケース14内に入り込む状態で、背板11,ケース本体19及び板材27とに亘って挿入してある。
固定ピン31をこのように装着することで、第1実施例で示したような基板ケース14の上下部外周側を覆っている枠板材23,24を設けることなく、基板ケース14をキャビネット6に対して、蓋板20の開閉操作が不能な状態で固定できるとともに、固定ピン31をそれを破壊しない限り基板ケース14及びキャビネット6から取り外し不能に装着できる。
その他の構成は第1実施例と同様である。
【0013】
〔その他の実施例〕
1.遊技装置の種類は限定されず、例えばパチンコ用の遊技装置であっても良い。
2.遊技装置を内装している箱体は、遊技装置の一部又は全部を内装しているものであっても良い。
3.遊技装置を内装している箱体の材質は限定されず、木製,樹脂製等であっても良い。
4.基板ケースの材質は限定されず、木製,金属製等であっても良い。
5.回路基板を装脱可能な状態に開閉する開閉手段の構造は限定されず、例えば揺動開閉可能な蓋体或いはスライド開閉可能な蓋体を設けて構成されるものであっても良い。
6.取り外し阻止部材に付される刻印は、取り外し阻止部材を製作してから別途付されるものであっても良い。
7.本発明による遊技用回路基板ケースの固定構造は、開閉機構を不正に操作すると破損してしまう封緘シール等を併用するものであっても良い。
8.第1実施例において、板材27に係止している固定ピン31の係止爪35先端部を覆うカバーを当該板材27に設けて、固定ピン31を蓋板20から抜き出す操作を阻止できるよう構成しても良い。
9.固定ピン31を構成しているピン軸34の軸芯Xに直交する方向の断面形状は円形であっても角形であっても良いが、周り止めされる状態で装着されている場合、係止爪35の基部を壊す為に固定ピン31の軸芯Xに沿ってドリル等で孔を明ける際に明け易い。
【0014】
尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】
要部の拡大断面図
【図2】
要部の断面図
【図3】
図柄回動ユニットを背面側から見た斜視図
【図4】
図柄回動ユニットを正面側から見た要部斜視図
【図5】
スロットマシンの側面断面図
【図6】
別実施例を示す要部の拡大断面図
【符号の説明】
5 遊技装置
6 箱体
13 回路基板
14 基板ケース
20 蓋体
31 取り外し阻止部材
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-04-12 
結審通知日 2006-04-17 
審決日 2006-04-28 
出願番号 特願2000-257414(P2000-257414)
審決分類 P 1 113・ 121- Z (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山崎 仁之  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 辻野 安人
渡部 葉子
登録日 2004-09-24 
登録番号 特許第3599651号(P3599651)
発明の名称 遊技用回路基板ケースの固定構造  
代理人 北村 修一郎  
代理人 北村 修一郎  

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