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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23L |
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管理番号 | 1142065 |
審判番号 | 不服2004-2405 |
総通号数 | 82 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-10-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-02-05 |
確定日 | 2006-08-18 |
事件の表示 | 平成11年特許願第113074号「ミネラル組成物及びミネラル強化飲食品」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月31日出願公開、特開2000-300213〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年4月21日の出願であって、平成15年12月4日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年2月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。 2.平成16年2月5日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年2月5日付の手続補正を却下する。 [理由] 上記補正により、特許請求の範囲の請求項1は、「クエン酸第一鉄ナトリウムを除く鉄含有化合物、銅含有化合物、亜鉛含有化合物及びセレン含有化合物より選ばれる少なくとも1種及びトレハロースを含有することを特徴とする金属味の低減したミネラル組成物。」から、「クエン酸第1鉄ナトリウムを除く鉄含有化合物、銅含有化合物、亜鉛含有化合物及びセレン含有化合物より選ばれる少なくとも1種の金属とトレハロースを含有する金属味の改善されたミネラル組成物。」に補正された。 しかるに、上記補正に係る「金属味の改善」は、「金属味の低減」以外の方法によって金属味を改善する態様(例えば、金属味を別の味に変更することなど)を包含するといえるから、「金属味の低減」という事項を「金属味の改善」に補正することは、実質上特許請求の範囲を拡張することになり、上記補正は、特許法17条の2,4項各号に規定する事項のどれにも該当しない。 したがって、本件補正は、平成15年改正前特許法17条の2,4項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 なお、本件補正は、上述の理由により却下すべきものであるが、仮に却下されない場合に、本件補正が、特許法17条の2、4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の請求項1を引用する請求項2に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2、5項において準用する同法126条4項の規定に適合するか)について念のため以下に検討する。 (独立特許要件について) (1)本願補正発明 本願補正発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項2】請求項1記載のミネラル組成物を含有する飲食品。」 また、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、以下の事項により特定されるものである。 「【請求項1】クエン酸第1鉄ナトリウムを除く鉄含有化合物、銅含有化合物、亜鉛含有化合物及びセレン含有化合物より選ばれる少なくとも1種の金属とトレハロースを含有する金属味の改善されたミネラル組成物。」 (2)引用例の記載内容 原査定の拒絶の理由に引用された「特開平11-89547号公報」(以下、「引用例1」という。)には、下記(a)ないし(d)の事項が記載されている。 (a)「ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムから選ばれた少なくとも1種のミネラル成分と、該ミネラル成分1重量部に対して5〜100重量部のトレハロースとを含有することを特徴とするミネラル含有飲料又はゼリー。」(特許請求の範囲の請求項1) (b)「しかしながら、これらの飲料やゼリーにミネラル塩を多量に添加すると、ミネラル塩の種類によって塩味又は苦味といった独特の後味が残りやすく、嫌われる傾向があった。」(段落【0003】) (c)「したがって、本発明の目的は、ミネラル塩を比較的多量含有しても塩味や苦味が軽減されたミネラル含有飲料又はゼリーを提供することにある。 本発明者は、上記の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、飲料又はゼリーの糖質の一部としてトレハロースを使用することにより、塩味や苦味が効果的に緩和されることを見出し、本発明を完成するに至った。」(段落【0007】乃至【0008】) (d)「以上説明したように、本発明によれば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムから選ばれた少なくとも1種のミネラル成分1重量部に対して、5〜100重量部のトレハロースを含有させたことにより、ミネラルによる塩味や苦味が著しく改善され、風味の良好なミネラル含有飲料又はゼリーを提供することができる。」(段落【0032】) 上記(a)ないし(d)の記載からみて、引用例1には、「ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムから選ばれた少なくとも1種のミネラル成分と、トレハロースとを含有する、ミネラルによる塩味や苦味が著しく改善され、風味の良好なミネラル含有飲料又はゼリー」という発明が記載されているといえる。 同「食品と開発」(25巻2号26〜29頁)(以下、「引用例2」という。)は、「新・ミネラル栄養学」に係り、「すなわち、亜鉛(Zn),銅(Cu)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、セレン(Se)など、必須の微量ミネラル類の健康度のそった適正摂取が、病気の予防・治療にぜひ必要なことを研究者が強い警告として表明したのである。」(26頁右欄15〜20行)、及び 「アメリカの1943年「第4回のRDA」では、微量ミネラルは「鉄(Fe)」だけであった。1968年の「第7回」に「ヨウ素(I)」、1974年の「第8回」に「亜鉛(Zn)」が加わり、「第9回」の1980年に、はじめて「マンガン(Mn)、銅(Cu)、フッ素(F)、クロム(Cr)、セレン(Se)、モリブデン(Mo)が追加された。ミネラルの栄養学がいかに最近の進歩であるかをよく示している。このときのRDAは次のとおり。 Fe-10mg(男)、18mg(女);ヨウ素-0.15mg;Zn-15mg、そしてCu-2.0〜3.0mg;Mn-2.5〜5.0mg;F-1.5〜4.0mg;Cr-0.05〜0.2mg;Se-0.05〜0.2mg;Mo-0.15〜0.5mg」(27頁中欄37行〜同右欄3行)が記載されている。 (3)対比 本願補正発明と引用例1に記載された発明を対比すると、両者は、「ミネラルとトレハロースを含有する味の改善されたミネラル組成物を含有する飲食品」である点で一致し、ただ、(i)ミネラルが、前者では「クエン酸第1鉄ナトリウムを除く鉄含有化合物、銅含有化合物、亜鉛含有化合物及びセレン含有化合物より選ばれる金属」であるのに対し、後者では「ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムから選ばれたもの」である点、及び、(ii)味の改善が、前者では「金属味の改善」であるのに対して、後者では「ミネラルによる塩味や苦味の改善」である点で相違する。 (4)判断 相違点(i)について 引用例2には、鉄、亜鉛,銅、セレンなどが、ヒトに対する必須の微量ミネラル成分であることが記載されている。そうすると、ミネラル類として、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムに代えて、同じミネラル類の範疇に入る鉄、亜鉛,銅、セレンを添加してミネラル強化飲食品とすることは、当業者にとって格別困難なことではない。 相違点(ii)について 鉄、亜鉛,銅、セレン等の金属を含む化合物を飲食品に添加してミネラル(金属)強化食品を製造すること、及び得られた該強化食品が金属味等の不快な味を呈することは、いずれも本願出願前に当業者において周知であった(例えば、特開平8-266249号、特開平9-157296号、特開平10ー262570号公報参照。)ところ、上記「金属味」と引用例1に係る「塩味や苦味」とは、共にミネラルに起因する不快な味である点で共通しているから、引用例1において、トレハロースを用いてナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムから選ばれたミネラルの不快な味を改善することが知られている以上、鉄、亜鉛,銅、セレン等の金属を含む化合物に起因する不快な味である金属味をトレハロースを用いて改善することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。 また、本願補正発明に係る効果は、引用例1及び2に記載された事項から予測されるところを超えて優れているとはいえない、すなわち、当初明細書には、鉄含有化合物と亜鉛含有化合物についてだけ具体的な実施例があるだけで、銅含有化合物及びセレン含有化合物については実施例としての記載がなく、しかも、鉄含有化合物と亜鉛含有化合物において奏される効果も格別なものであるとはいえない。 なお、請求人は、平成16年1月27日付「実験報告書」を提出し、審判請求書において、「すなわちカリウム塩である塩化カリウムの苦味を低減する効果が認められていた「ソーマチン」は、同じミネラルである硫酸鉄の味の低減にはあまり効果を有さないことを明らかと致しました。・・(略)・・このように「トレハロース」によるカリウムの苦味低減技術が、引用例において記載されていたとしても、それに基づいて、「トレハロース」の鉄味低減を予測することは当業者においても困難であったものと思慮されるものであります。」(6頁16行〜7頁5行と主張している。 しかし、ソーマチンは、ある果実の種子に由来する蛋白質系甘味物質であるのに対し、トレハロースは糖類であって、両者は、物質として全く別異の範疇に入るものである。そうすると、ソーマチンとトレハロースとでは、ミネラルに対する挙動(作用機作)は相違する可能性が高く、ソーマチンで得られた実験結果を根拠に、トレハロースのミネラルに対する挙動(作用機作)を推測することは適当ではない。したがって、上記実験報告書において、ソーマチンが硫酸鉄の味の低減に効果を奏さないとしても、このことが、引用例1に記載の事項を本願補正発明の進歩性の判断に採用することの阻害要因になるとまではいえない。 したがって、本願補正発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 (5)むすび 以上のとおり、仮に本件補正が、特許法17条の2、4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとしても、本件補正は、同法17条の2、5項で準用する同法126条4項の規定に違反するものであり、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成16年2月5日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年10月9日付手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項2】請求項1記載のミネラル組成物を含有する飲食品。」 また、本願の請求項1に係る発明は、以下の事項により特定されるものである。 「【請求項1】クエン酸第一鉄ナトリウムを除く鉄含有化合物、銅含有化合物、亜鉛含有化合物及びセレン含有化合物より選ばれる少なくとも1種及びトレハロースを含有することを特徴とする金属味の低減したミネラル組成物。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.なお書きの(2)」に記載したとおりであるから、上記(a)ないし(d)の記載からみて、引用例1には、「ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムから選ばれた少なくとも1種のミネラル成分と、トレハロースとを含有する、ミネラルによる塩味や苦味が低減されたことを特徴とするミネラル含有飲料又はゼリー」という発明が記載されているといえる。 (2)対比・判断 本願発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、後者の「ミネラルによる塩味や苦味」と前者の「金属味」とは、ともに「不快味」といえるから、両者は、「ミネラルとトレハロースを含有する不快味の低減されたミネラル組成物を含有する飲食品」である点で一致し、ただ、(イ)ミネラルが、前者では「クエン酸第1鉄ナトリウムを除く鉄含有化合物、銅含有化合物、亜鉛含有化合物及びセレン含有化合物より選ばれる」ものであるのに対し、後者では「ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムから選ばれた」ものである点、及び、(ロ)不快味が、後者では「金属味」であるのに対して、後者では「ミネラルによる塩味や苦味」である点で相違する。 相違点(イ)について 引用例2には、鉄、亜鉛,銅、セレンなどが、ヒトに対する必須の微量ミネラル成分であることが記載されている。そうすると、ミネラル類として、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムに代えて、同じミネラル類の範疇に入る鉄、亜鉛,銅、セレンを添加してミネラル強化飲食品とすることは、当業者にとって格別困難なことではない。 相違点(ロ)について 鉄、亜鉛,銅、セレン等の金属を含む化合物を飲食品に添加してミネラル(金属)強化食品を製造すること、及び得られた該強化食品が金属味等の不快な味を呈することは、いずれも本願出願前に当業者において周知であったところ、上記「金属味」と引用例1に係る「塩味や苦味」とは、共にミネラルに起因する不快な味である点で共通しているから、引用例1において、トレハロースを用いてナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムから選ばれたミネラルの不快な味を低減することが知られている以上、鉄、亜鉛,銅、セレン等の金属を含む化合物に起因する不快な味である金属味をトレハロースを用いて低減することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。 また、本願発明に係る効果は、上記「2.」の「なお書きの(4)」に記載したとおりの理由により、引用例1及び2に記載された事項から予測されるところを超えて優れているとはいえない。 したがって、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本出願に係る他の請求項について検討するまでもなく、本出願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-05-01 |
結審通知日 | 2006-05-30 |
審決日 | 2006-06-13 |
出願番号 | 特願平11-113074 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A23L)
P 1 8・ 121- Z (A23L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 恵理子 |
特許庁審判長 |
田中 久直 |
特許庁審判官 |
長井 啓子 河野 直樹 |
発明の名称 | ミネラル組成物及びミネラル強化飲食品 |