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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1142067
審判番号 不服2004-8504  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-01-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-26 
確定日 2006-08-18 
事件の表示 特願2000-183931「ディジタル放送受信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 1月11日出願公開、特開2002- 10161〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年6月20日の出願であって、平成16年3月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年4月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年4月26日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項5は、
「ディジタル放送に含まれるサービス情報に基づきオンスクリーンディスプレイ回路を利用して画面上に番組情報を表示する電子番組ガイド表示手段と、受信映像を縮小処理して前記番組情報とともに映像表示する受信映像表示手段と、選択されたチャンネルについて、チャンネルが視聴年齢制限に該当するかを示す情報を取得する情報取得手段と、取得した情報が年齢視聴制限に該当する場合には、番組を見ることができないことを意味するメッセージを生成し、このメッセージを前記受信映像が縮小表示される箇所に表示するメッセージ表示手段と、を備えたことを特徴とするディジタル放送受信装置。」と補正された。
上記補正は、実質的に、請求項5に記載した発明を特定するために必要な事項である「取得した情報に対応したメッセージを生成し」を「取得した情報が年齢視聴制限に該当する場合には、番組を見ることができないことを意味するメッセージを生成し」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項5に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)刊行物
ア 原審拒絶理由で引用された、本願の出願日前である平成11年3月9日に頒布された「特開平11-69254号公報」(以下、「刊行物1」という)は、「情報処理装置および方法、並びに伝送媒体」に関するものであって、その公報には次の事項が記載されている。
(ア) 「図1は、本発明を適用したAVシステムおよび通信ネットワークを説明する図である。この例においては、セットトップボックスとして構成される受信装置1には、モニタ5が接続されている。番組放送会社61から送信される番組およびEPGは、衛星62、放送アンテナ63、またはインターネット64等を介して受信装置1により受信される。EPGは、番組放送会社61から配信されるもの以外に、図示せぬテレビガイドサービス会社等からも配信される。受信装置1は、ユーザがリモートコントローラ7を操作することにより出力される赤外線信号を受信し、受信した信号に対応する処理を行い、所定の番組またはEPGの画像をモニタ5に表示するようになされている。」(3頁段落【0013】、図1)
(イ) 「図10のEPGの番組ガイドの表示例においては、画面の左側に、5つの番組が番組ロゴで表示されており、この5つの番組に対応するジャンル名が画面の上方に表示されている。ジャンル名の右側には、その番組の放送日時が表示される。さらに、この表示例においては、番組の画像の右側に、その番組の内容を示すテキストが表示される。そして、番組の画像の下側には、番組の内容を示すテキストまたは広告が表示される。また、画面の下方には、各種のメッセージが表示される。
ユーザが、所定の番組を選択するとき、リモートコントローラ7のボタン103Cまたは103Dを操作すると、5つの番組ロゴのいずれかの上に位置するカーソルが上下に移動する。そして、カーソルが位置する番組の縮小画像が画面の中央に表示される。この状態において、ユーザがボタン103Eを操作すると、例えば、図11に示すように、選択された番組の画像が表示される。」(4頁段落【0034】ないし5頁段落【0035】、図10)

イ また、原審拒絶理由で引用された、本願の出願日前である平成11年6月18日に頒布された「特開平11-164220号公報」(以下、「刊行物2」という)は、「テレビ放送受信機」に関するものであって、その公報には、次の事項が記載されている。
(ア) 「この発明による第2のテレビ放送受信機は、視聴年齢制限情報が重畳された放送電波を受信し、視聴年齢制限がある番組については通常は正常に視聴ができないようにしておき、予め定められたパスワードがユーザによって入力されたときのみ、視聴年齢制限がある番組を正常に視聴ができるように放映する機能を備えたテレビ放送受信機において、視聴年齢制限がある特定の番組に対してユーザによるパスワード入力により視聴制限が解除されたときには、当該番組に対して視聴制限が解除されたことを記憶するための不揮発性の記憶手段、電源が所定時間以下だけ切断されたことを検出する瞬停検出手段、瞬停検出手段によって電源が所定時間以下だけ切断されたことが検出された際には、現在選局されている番組が視聴年齢制限がある番組であるか否かを判別する手段、現在選局されている番組が視聴年齢制限がある番組である場合には、上記記憶手段の内容に基づいて、当該番組について視聴制限が既に解除されているか否かを判別する判別手段、および当該番組について視聴制限が既に解除されている場合には、当該番組を正常に視聴できるように放映させる手段を備えていることを特徴とする。」(3頁段落【0009】)
(イ) 「図1は、ディジタル衛星放送受信機の構成を示している。
通信衛星からの電波はアンテナ1で受信され。アンテナ1で受信された信号は、チューナ2に送られて高周波処理および復調が行われる。チューナ2からの出力はDEMAX回路3に送られ、パケットの復号が行われる。DEMAX回路3において、パケットは、MPEGデータと番組情報とに分別される。
MPEGデータはAVデコーダ4に送られて復調され、映像信号と音声信号とが出力される。映像信号は、映像処理回路5、合成回路6および映像出力回路7を介して表示器に出力される。音声信号は、音声処理回路8および音声出力回路9を介してスピーカに出力される。
一方、DEMAX回路3によって分別された番組情報は、システムコントローラ13に入力される。番組情報には各番組について視聴年齢制限の有無を示す情報が含まれている。
システムコントローラ13は、選局された番組が視聴年齢制限のある番組である場合には、AV信号をミュートさせるためのAV制御信号をAVデコーダ4に出力する。AVデコーダ4はこの制御信号に基づいてAV信号をミュートする。」(3頁段落【0011】ないし【0015】、図1)
(ウ) 「選局された番組が視聴年齢制限のある番組である場合には、システムコントローラ13は、選局された番組は視聴年齢制限がかかっている旨を示す画面と、パスワードを入力させるための画面とを表示器に表示させるためのOSD制御信号をOSD表示回路14に送出する。OSD表示回路14は、上記各画面に対応する表示データを生成して、OSD信号として、合成回路6に送出する。OSD信号は、映像処理回路5からの映像信号にスーパーインポーズ処理され、映像出力回路7を介して表示器に出力される。
これにより、選局された番組は視聴年齢制限がかかっている旨を示す画面と、パスワードを入力させるための画面とがオンスクリーン表示される。」(3頁段落【0016】ないし【0017】、図1)

(3)対比・判断
ア 本願補正発明と刊行物2に記載された発明(以下、「刊行物発明」という)との対比
本願補正発明と刊行物発明を対比すると、
(ア)上記2(2)イ(ア)ないし(ウ)によれば、
刊行物発明は、ディジタル衛星放送受信機において、受信したディジタル衛星放送信号からDEMAX回路3によって分別されたMPEGデータはAVデコーダに送られて復調され映像信号と音声信号が出力され、映像信号は、映像出力回路等を介して表示器に出力されるものであるので、刊行物発明と本願補正発明とは、「映像表示する受信映像表示手段」を備えた点で一致している。もっとも、本願補正発明は、「受信映像を縮小処理して前記番組情報とともに映像表示する」ものであるのに対し、刊行物発明は、受信映像を縮小処理して番組情報とともに映像表示するものではない。
また、刊行物発明は、ディジタル衛星放送受信機において、受信したディジタル衛星放送信号からDEMAX回路3によって分別された番組情報が、システムコントローラ13に入力され、番組情報の視聴年齢制限の有無を示す情報により、現在選局されている番組が視聴年齢制限がある番組であるか否かを判別し、視聴年齢制限がある番組である場合には、選局された番組は視聴年齢制限がかかっている旨を示す画面等を表示器に表示させるためのOSD制御信号をOSD表示回路14に送出し、OSD表示回路14は、上記各画面に対応する表示データを生成して、OSD信号として合成回路6に送出し、OSD信号は、映像処理回路5からの映像信号にスーパーインポーズ処理され、映像出力回路7を介して表示器に出力されるものである。そして、上記「番組情報」は本願発明の「サービス情報」に相当し、上記「OSD回路」は本願発明の「オンスクリーンディスプレイ回路」に相当するので、刊行物発明と本願補正発明とは、「ディジタル放送に含まれるサービス情報に基づきオンスクリーンディスプレイ回路を利用して画面上に番組情報を表示する表示手段」を備えた点及び、「選択されたチャンネルについて、チャンネルが視聴年齢制限に該当するかを示す情報を取得する情報取得手段と、取得した情報が年齢視聴制限に該当する場合には、番組を見ることができないことを意味するメッセージを生成し、このメッセージを前記受信映像が表示される箇所に表示するメッセージ表示手段」を備える点で一致している。もっとも、刊行物発明は、「電子番組ガイド表示手段」を備えているかは明確ではなく、また、刊行物発明は、縮小表示されるものではない。
そして、刊行物発明の「ディジタル衛星放送受信機」は、本願補正発明の「ディジタル放送受信装置」に相当する。
(イ)したがって、両者は「ディジタル放送に含まれるサービス情報に基づきオンスクリーンディスプレイ回路を利用して画面上に情報を表示する表示手段と、映像表示する受信映像表示手段と、選択されたチャンネルについて、チャンネルが視聴年齢制限に該当するかを示す情報を取得する情報取得手段と、取得した情報が年齢視聴制限に該当する場合には、番組を見ることができないことを意味するメッセージを生成し、このメッセージを前記受信映像が表示される箇所に表示するメッセージ表示手段と、を備えたことを特徴とするディジタル放送受信装置。」である点で一致し、次の点で相違しているものと認められる。
a 本願補正発明は、「電子番組ガイド表示手段」を備えたものであるのに対し、刊行物発明は、「電子番組ガイド表示手段」を備えているか明確でない点
b 本願補正発明は、「受信映像を縮小処理して前記番組情報とともに映像表示する受信映像表示手段」を備え「受信映像が縮小表示される箇所に表示」するものであるのに対し、刊行物発明は、受信映像が表示される箇所に番組情報(メッセージ)を表示する手段を備えるものである点

イ 相違点についての検討
相違点aについて
上記2(2)ア(ア)によれば、刊行物1には、番組放送会社から送信される番組及びEPG(電子番組ガイド)を受信し、所定の番組またはEPGの画像をモニタに表示するものが開示されているから、番組情報として電子番組ガイドを受信しモニタに表示するように「電子番組ガイド表示手段」を備えるものとすることは当業者が容易に推考できる程度のものといえる。
相違点bについて
上記2(2)ア(イ)によれば、さらに刊行物1には、番組ガイドは番組の縮小画像(番組のTV子画面)が画面の中央に表示される点が開示されているところ、縮小画面内にOSD機能により文字等を表示することは、例えば、特開2000-83201号公報(段落【0019】参照)にあるように周知技術にすぎないものであり、一方上記2(2)イ(ウ)によれば、刊行物発明の視聴年齢制限がかかっている旨を示す画面(番組を見ることができないことを意味するメッセージ)は、そもそも映像表示に重ねて表示されるものであるから、刊行物1記載の電子番組ガイドを採用して、「受信映像を縮小処理して前記番組情報とともに映像表示する受信映像表示手段」を備え「受信映像が縮小表示される箇所に表示」するものとすることは、当業者が容易に推考できたものといえる。

そして、これら相違点を総合的に考慮しても当業者が推考し難い格別のものであるとすることはできず、また本願補正発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるともいえない。
したがって、本願補正発明は、刊行物1ないし2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成16年4月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1、5に係る発明(このうち請求項5に係る発明を、以下「本願発明」という)は、出願当初の願書に添付された明細書の特許請求の範囲請求項1、5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 ディジタル放送に含まれるサービス情報に基づきオンスクリーンディスプレイ回路を利用して画面上に番組情報を表示する電子番組ガイド表示手段と、受信映像を縮小処理して前記番組情報とともに映像表示する受信映像表示手段と、選択されたチャンネルについての情報を取得する情報取得手段と、取得した情報に対応したメッセージを生成し、このメッセージを前記受信映像が縮小表示される箇所に表示するメッセージ表示手段と、を備えたことを特徴とするディジタル放送受信装置。
【請求項5】 請求項1に記載のディジタル放送受信装置において、前記情報取得手段は選択されたチャンネルが視聴年齢制限に該当するかを示す情報を取得することを特徴とするディジタル放送受信装置。」

(1)刊行物
原審拒絶理由に引用された刊行物、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明(請求項5に係るもの)は、実質的に、前記2.で検討した本願補正発明から「取得した情報が年齢視聴制限に該当する場合には、番組を見ることができないことを意味するメッセージを生成し」をその上位概念である「取得した情報に対応したメッセージを生成し」(以下、「特定事項A」という)としたものである。
そうすると、本願発明の特定事項(上記特定事項Aについてはその下位概念)を全て含むものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、刊行物1ないし2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1ないし2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
したがって、本願発明は、刊行物1ないし2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-31 
結審通知日 2006-06-13 
審決日 2006-06-27 
出願番号 特願2000-183931(P2000-183931)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西谷 憲人  
特許庁審判長 原 光明
特許庁審判官 北岡 浩
堀井 啓明
発明の名称 ディジタル放送受信装置  
代理人 神保 泰三  

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