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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1142207
審判番号 不服2004-101  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-04-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-05 
確定日 2006-08-17 
事件の表示 平成7年特許願第264043号「通信属性変換装置の自動捕捉方法及びその装置とそれを有する通信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成9年4月22日出願公開、特開平9-107400〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成7年10月12日の出願であって、平成15年11月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年1月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年2月4日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年2月4日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前(平成15年4月25日付け手続補正書)の特許請求の範囲の請求項20に記載された
「通信属性の異なる端末が異なる通信ノードに収容され、端末相互間で通信を行う通信システムにおいて、
発信端末から着信端末への発信経路において存在する通信ノードが、ある通信属性から他の通信属性への変換機能を有する場合には、その通信属性変換情報を着信端末へ通知する手段と、
前記着信端末は通知された変換可能な通信属性から、端末相互間で通信するための通信属性を決定する手段と、
発信端末から送出される情報の通信属性を、決定された前記通信属性についての変換機能を有する通信ノードで他の通信属性へ変換し、着信端末へ伝送することを特徴とする通信属性変換機能を有する通信システム。」
という発明(以下、「本願発明」という。)を、
「通信属性の異なる端末が異なる通信ノードに収容され、端末相互間で通信を行う通信システムにおいて、
発信端末から着信端末に対する発呼を行った場合における、該発信端末から該着信端末への発信経路内の途中において存在する通信ノードが、ある通信属性から他の通信属性への変換機能を有する場合には、その通信属性変換情報を着信端末側通信ノードへ通知する手段と、
前記着信端末側通信ノードは通知された変換可能な通信属性から、端末相互間で通信するための通信属性を決定する手段と、
発信端末から送出される情報の通信属性を、決定された前記通信属性についての変換機能を有する通信ノードで他の通信属性へ変換し、着信端末へ伝送することを特徴とする通信属性変換機能を有する通信システム。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
上記補正のうち、補正前の「着信端末」を「着信端末側通信ノード」に変更する補正について検討するに、まず、「着信端末側通信ノード」という用語自体は願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載されていないが、上記「通信属性の異なる端末が異なる通信ノードに収容され」という記載や当初明細書等の例えば段落8の記載を参照すると「着信端末収容局」のことであると解されるから、当該補正は当初明細書等の範囲内においてなされたものであり、特許法第17条の2第3項(新規事項)の規定に適合している。
しかしながら、上記補正は、発明を特定するために必要な事項である例えば「通知された変換可能な通信属性から、端末相互間で通信するための通信属性を決定する手段」における「通知」を受ける主体および「通信属性を決定する」主体を「着信端末」から「着信端末側通信ノード」に変更するものであり、発明を特定するために必要な事項を限定するものではないから、当該補正は「特許請求の範囲の減縮」には当たらず、「誤記の訂正」や「明りょうでない記載の釈明」にも当たらないことは明らかである。
したがって、上記補正は、特許法第17条の2第4項(補正の目的)のいずれの規定にも適合していない。

3.結語
以上のとおり、上記補正は、特許法第17条の2第3項(新規事項)の規定には適合しているものの、特許法第17条の2第4項(補正の目的)のいずれの規定にも適合していないから、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成16年2月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は上記「第2.1.本願発明と補正後の発明」の項で認定したとおりである。

2.引用発明および周知技術
(1)これに対して、原審の拒絶理由に引用された特開平2-222356号公報(以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「種類の異なったメディア間で情報通信を行うマルチメディア通信方式に関し、
送信側が受信側のメディアの種類を意識せずにデータ送信できるようにすることを目的とし、センター内にユーザIDテーブルとユーザの持っているメディアの種類とを格納したメディア情報格納ファイルと、アクセスしてきたメディアの種類と入力メディアの判定を行うための情報制御ステータス部とを設けておき、送信側メディアがセンターに対して発呼したら、該センターは情報ステータス部により送信側メディアの種類を認識すると共に、メディア情報格納ファイルを参照してIDを検索し、ID検索の結果が条件に合致していた場合には、送信側メディアに対して受信者IDの入力要求とデータ転送指令を出し、メディア情報格納ファイルの受信者IDより相手先電話番号を呼び出してメディア選択を行わせ、送信側メディアから転送されてくるデータを受信側の希望メディアにメディア変換した後転送するように構成する。」(1頁右下欄8行目〜2頁左上欄7行目)
ロ.「第10図は従来のマルチメディア通信システムの構成ブロック図である。端末1A,1B、電話2A,2B及びファクシミリ(FAX)3A,3Bなる異種のメディアが公衆回線網4A,4Bを介して接続されている。公衆回線網4A,4B間には両方のメデイア間の通信の制御を行うセンター5が設けられている。端末1A,1Bとしては、例えばパーソナルコンピュータ(以下パソコンという)が用いられ、これら端末1A,1Bと公衆回線網4A,4B間にはモデム(MDM)6A,6Bがそれぞれ接続されている。センター5もモデム機能を有している。このように構成されたシステムにおいて、例えば端末1AからFAX3Bへ情報の通信を行うといったような異種メデイア間の通信が可能である。」(2頁右上欄2〜16行目)
ハ.「第2図は本発明方式を実施するマルチメディア通信システムの構成ブロック図である。第10図と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、10はセンターである。該センター内には、情報制御部10a、メディア変換部10b及びソフトウェア処理部10cが含まれる。情報制御部10aはMPUを含み、ソフトウェア処理部10cと共に送信側と受信側のデータ転送制御を行う。前述したメディア情報格納ファイルと情報制御ステータス部も該情報制御部10aに含まれる。メディア変換部10bは送信側メディアからのデータフォーマットを受信側メディアのデータフォーマットに変換するものである。」(3頁左下欄13行目〜右下欄5行目)
ニ.「上述の説明では、メディアとして電話、FAX及びパソコン端末の場合について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、他の種類の端末を用いてもよい。」(5頁右下欄7〜10頁)

上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ニ.の記載によれば上記「メディア」は「電話、FAX及びパソコン端末」等を含む「端末」であり、それゆえ「送信側メディア」、「受信側メディア」はそれぞれ「送信(即ち、発信)端末」、「受信(即ち、着信)端末」を指しており、上記「メディア変換」は「送信側メディアからのデータフォーマットを受信側メディアのデータフォーマットに変換する」ものであり、当該「データフォーマット」は「通信属性」の一つであるから、上記「メディア変換」は「通信属性を変換する」ものである。そして、「異なるメディア」とはデータフォーマット(即ち、通信属性)が異なるメディア(即ち、端末)のことである。
また、上記「受信側メディア」による「メディア選択」は使用する通信属性を「決定」することである。
また、上記「センター」は、発呼を介して接続されるか否かにかかわらず、「送信側メディア(即ち、発信端末)」から「受信側メディア(即ち、着信端末)」への経路中に存在している。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「通信属性の異なる端末相互間で通信を行う通信システムにおいて、
発信端末から着信端末への経路中に存在するセンターが、ある通信属性から他の通信属性への変換機能を有し、その通信属性変換情報を着信端末へ通知する手段と、
前記着信端末は通知された変換可能な通信属性から、端末相互間で通信するための通信属性を決定する手段と、
発信端末から送出される情報の通信属性を、決定された前記通信属性についての変換機能を有するセンタで他の通信属性へ変換し、着信端末へ伝送する通信属性変換機能を有する通信システム。」

(2)例えば特開昭61-171257号公報(以下、「周知例1」という。)には図面とともに以下の事項イ、ロが記載されており、また、例えば特開平6-303315号公報(以下、「周知例2」という。)には図面とともに以下の事項ハ〜ホが記載されている。
イ.「ディジタル統合通信網において、発端末の送信情報を変換して着端末に伝達し得ることを示す変換送信可情報を整合情報に付加する手段を発端末に設け、受信した整合情報に示される発端末の通信種別が自端末の通信種別と異なる場合に自端末の通信種別を含む通信不可信号を返送する手段を着端末に設け、前記発端末が送信した整合情報から変換送信可情報を検出し、且つ該整合情報に対応して前記着端末から通信不可信号を受信した場合に前記発端末からの送信情報をメディア変換装置を経由して前記着端末へ伝達する手段を交換機に設けることを特徴とするメディア変換送信方式。」(周知例1、1頁左下欄、特許請求の範囲)
ロ.「かかる場合に、交換機2にデータ通信とファクシミリ通信との信号変換を司るメディア変換装置4が設置されており、また発端末1が着端末3の通信種別、変換装置4の特性および番号を認識している場合には、発端末1が一旦メディア変換装置4に対して発呼し、着端末3に伝達を希望するデータ通信情報を送信すると、メディア変換装置4は着端末3に対し発呼し、発端末1から受信したデータ通信情報をファクシミリ通信情報に変換して伝達する。」(周知例1、2頁左上欄20行目〜右上欄9行目)

ハ.「【請求項1】 扱うメディアの異なる複数の通信端末(50,30)と、これらの通信端末(50,30)を通信ノード装置(40)を介して接続するとともにメディア変換手段(60)を有する通信網において、
該通信端末(50)と該通信ノード装置(40)との間での呼の確立に関与するメッセージ内に、該通信端末(50)の属性を示す情報要素を組み込むとともに、
該通信ノード装置(40)においては、
発側通信端末(50)から着側通信端末(30)への着メッセージに対する該着側通信端末(30)からの通信端末属性不一致による通信拒否を認識すると、該通信ノード装置(40)は、該着側通信端末(30)が受信可能なメディアを選択し、該発側通信端末(50)からの着メッセージを修正して、この修正着メッセージを該着側通信端末(30)へ再送し、その後、通信が確立すると、該メディア変換手段(60)を使用して、該着側通信端末(30)に該発側通信端末(50)からの着呼があったことを通知するとともに、
該発側通信端末(50)に対しては、メディア変換を行なって通信が確立したことを通知することを特徴とする、異機種通信端末間相互接続サービス方式。」(周知例2、2頁1欄、請求項1)
ニ.「【0014】また、特開平02-222356号公報にて公開されたものでは、発信者側はメディア変換処理を行なうための操作が必要であって、使用者の便宜に欠けている。本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、汎用性を持たせつつ、且つ発信者のメディア変換のための操作を必要としない異機種通信端末間相互接続サービス方式並びにこの異機種通信端末間相互接続サービス方式に使用される通信ノード装置及び通信端末を提供することを目的とする。」(周知例2、4頁5欄、段落14)
ホ.「【0037】これらの電話端末1A,データ端末1B,FAX端末1C及びテレビ電話端末1D,1Eは、異機種の端末であるが、これらの端末1A〜1E間には広帯域ISDN4が介装されて、異機種端末間の相互接続ができるようになっている。また、広帯域ISDN4は、交換機能により電話端末1A,データ端末1B,FAX端末1C,テレビ電話端末1D,電話端末1E間の通信を可能にする交換機2A〜2Cと、各交換機2A〜2Cを接続する網3と、交換機2Aと交換機2Cとの間を中継する中継交換機2Dと、通信を一括管理する通信センタ2Eとから構成されている。」(周知例2、6頁9欄、段落37)

例えば上記周知例1、2に開示されているように「発端末の送信情報を変換して着端末に伝達し得ることを示す変換送信可情報を整合情報に付加する手段を発端末に設け、受信した整合情報に示される発端末の通信種別が自端末の通信種別と異なる場合に自端末の通信種別を含む通信不可信号を返送する手段を着端末に設け、前記発端末が送信した整合情報から変換送信可情報を検出し、且つ該整合情報に対応して前記着端末から通信不可信号を受信した場合に前記発端末からの送信情報をメディア変換装置を経由して前記着端末へ伝達する手段を交換機に設けることにより、メディア変換装置に対する発呼なしに交換機がメディア変換を自動的に行えるようにしたメディア変換送信方式」は周知技術であり、当該周知技術は、従来例としての「発端末が一旦メディア変換装置に対して発呼し、着端末に伝達を希望するデータ通信情報を送信すると、メディア変換装置は着端末に対し発呼し、発端末から受信したデータ通信情報をファクシミリ通信情報に変換して伝達するメディア変換送信方式」に代えて用いられるものである。
また、例えば上記周知例2の摘記事項ホ及び図2、図13、図14に開示されているように、「通信属性の異なる端末が異なる通信ノードに収容され、端末相互間で通信を行う通信システム」は周知である。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「経路中に存在するセンター」と本願発明の「発信経路において存在する通信ノード」はいずれも「経路中の介在部」であるという点で一致している。また、引用発明の「変換機能を有し」という構成と本願発明の「変換機能を有する場合には」という構成の間に実質的な差異はない。
したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。
<一致点>
「通信属性の異なる端末相互間で通信を行う通信システムにおいて、
発信端末から着信端末への経路中の介在部が、ある通信属性から他の通信属性への変換機能を有する場合には、その通信属性変換情報を着信端末へ通知する手段と、
前記着信端末は通知された変換可能な通信属性から、端末相互間で通信するための通信属性を決定する手段と、
発信端末から送出される情報の通信属性を、決定された前記通信属性についての変換機能を有する前記介在部で他の通信属性へ変換し、着信端末へ伝送する通信属性変換機能を有する通信システム。」

<相違点>
(1)「通信システム」に関し、本願発明の通信システムは「通信属性の異なる端末が異なる通信ノードに収容され、端末相互間で通信を行う通信システム」る構成であるのに対し、引用発明は「通信属性の異なる端末相互間で通信を行う通信システム」である点。
(2)「経路中の介在部」に関し、本願発明は「発信経路において存在する通信ノード」であるのに対し、引用発明は「経路中に存在するセンター」である点。

4.判断
そこで、まず、上記相違点(1)の「通信属性の異なる端末」について検討するに、例えば上記周知例2に開示されているように、「通信属性の異なる端末が異なる通信ノードに収容され、端末相互間で通信を行う通信システム」は周知であり、当該周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、当該周知技術に基づいて引用発明の通信システムにおける通信属性の異なる端末(即ち、発信端末と着信端末)を、本願発明のように、「異なる通信ノードに収容する」ように構成する程度のことは当業者であれば適宜成し得ることである。
ついで、上記相違点(2)の「経路中の介在部」について検討するに、例えば上記周知例1、2に開示されているように「発端末の送信情報を変換して着端末に伝達し得ることを示す変換送信可情報を整合情報に付加する手段を発端末に設け、受信した整合情報に示される発端末の通信種別が自端末の通信種別と異なる場合に自端末の通信種別を含む通信不可信号を返送する手段を着端末に設け、前記発端末が送信した整合情報から変換送信可情報を検出し、且つ該整合情報に対応して前記着端末から通信不可信号を受信した場合に前記発端末からの送信情報をメディア変換装置を経由して前記着端末へ伝達する手段を交換機に設けることにより、メディア変換装置に対する発呼なしに交換機がメディア変換を自動的に行えるようにしたメディア変換送信方式」は周知技術であるところ、当該周知技術は、従来例としての「発端末が一旦メディア変換装置に対して発呼し、着端末に伝達を希望するデータ通信情報を送信すると、メディア変換装置は着端末に対し発呼し、発端末から受信したデータ通信情報をファクシミリ通信情報に変換して伝達するメディア変換送信方式」に代えて用いられるものであり、また当該従来例でいう「メディア変換装置」は引用発明でいう「センター」に相当する装置であるから、当該周知技術に基づいて、引用発明の「センター」を「メディア変換装置を内蔵した交換機(即ち、通信ノード)」に変更すること(即ち、引用発明の「経路中に存在するセンター」を本願発明のような「発信経路において存在する通信ノード」に変更すること)も当業者であれば適宜成し得ることである。
また、上記周知技術は「発端末が一旦メディア変換装置に対して発呼し」たり、「メディア変換装置は着端末に対し発呼し」たりすることが省略されるのであるから、簡便な操作により通信属性の変換が実現されるという本願発明の作用効果は自明である。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-16 
結審通知日 2006-06-20 
審決日 2006-07-03 
出願番号 特願平7-264043
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04M)
P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 良平  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 宮下 誠
浜野 友茂
発明の名称 通信属性変換装置の自動捕捉方法及びその装置とそれを有する通信システム  
代理人 西山 雅也  
代理人 石田 敬  
代理人 土屋 繁  

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