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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B42D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B42D
管理番号 1142220
審判番号 不服2004-8041  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-07-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-20 
確定日 2006-08-17 
事件の表示 平成 7年特許願第 2495号「メールフォーム」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 7月23日出願公開、特開平 8-187977〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成7年1月11日の出願であって、平成16年3月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月17日付けの手続補正がなされたものである。
第2 平成16年5月17日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年5月17日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の概要
上記手続補正は、特許請求の範囲の請求項1を以下のとおりとする補正事項を含むものである。
「【請求項1】
連接する第1の帳票片及び第2の帳票片の所定面上に粘着層を形成し、前記粘着層上の所定領域に情報を記録し、連接部を折り返して、前記粘着層を介して前記第1の帳票片と前記第2の帳票片とを剥離可能に粘着し、前記情報を一時的に隠蔽するメールフォームであって、
前記第1の帳票片及び前記第2の帳票片の前記連接部に平行な辺の近傍に設けられ、前記連接部が折り返されたときに重なる位置に配置され、密着されることにより前記第1の帳票片と前記第2の帳票片とを剥離不能に接着する接着層と、
前記第1の帳票片又は前記第2の帳票片のいずれか一方の帳票片に形成され、前記連接部と略平行に配置された第1のミシン目と、
前記第1のミシン目と所定間隔を隔てて前記第1のミシン目と略平行に配置された第2のミシン目と、
前記第1のミシン目と前記第2のミシン目との間の領域に形成された粘着層上には、密着時の粘着力を弱める印刷層が設けられていることを特徴とするメールフォーム。」
2 補正の適否の判断
上記補正事項は、前記「密着時の粘着力を弱める印刷層」を設ける位置について、補正前の請求項1においては前記印刷層を「前記第1のミシン目と前記第2のミシン目との間の領域であって前記粘着層上、又はその領域と前記連接部を折り返したときに重なる領域であって前記粘着層上のうちの少なくとも一方」に設けると記載されていたのに対し、補正後は、前記位置を「前記第1のミシン目と前記第2のミシン目との間の領域に形成された粘着層上」に特定する限定を付加するものであって、平成6年法改正前特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。
そこで、上記補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかについて、以下に検討する。
3 引用刊行物に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物1(特開平5-193288号公報)には、図面と共に以下の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】重ね合わせ面を剥離可能に接着し、この重ね合わせ面に表示される隠蔽すべき情報を隠蔽するための重ね合わせ接着用シートであって、所定の重ね合わせ面に、印刷あるいは印字が可能で、かつ、所定以上の圧が加えられると接着可能となり、接着後には施された印刷あるいは印字を損なうことなく剥離可能な感圧接着剤を設ける一方、この感圧接着剤が塗布された所定の重ね合わせ面の所定部分に前記感圧接着剤の接着力を弱化させた弱化加工部を設け、この弱化加工部の一端に沿って帯状の切り取り部を設けたことを特徴とする重ね合わせ接着用シート。」、
(1b)「【請求項2】 所定の重ね合わせ面に、印刷あるいは印字が可能で、かつ、所定以上の圧が加えられると接着可能となり、接着後には施された印刷あるいは印字を損なうことなく剥離可能な感圧接着剤を設ける一方、この感圧接着剤が塗布された所定の重ね合わせ面の所定部分に前記感圧接着剤の接着力を弱化させた弱化加工部を設け、この弱化加工部の一端に沿って帯状の切り取り部を設けてなる重ね合わせ接着用シートの前記弱化加工部に隠蔽すべき情報を印字あるいは印刷した後、前記弱化加工部を設けた重ね合わせ面同士を重ね合わせ、次いで、前記弱化加工部は剥離可能に、他の部分は強接着に、それぞれ接着するよう所定の圧を加えて前記重ね合わせ面同士を加圧接着することを特徴とする隠蔽情報所持体の作成方法。」、
(1c)「【産業上の利用分野】本発明は、三つ折り、二つ折り、切り重ね等の各種態様で重ね合わせ、重ね合わせ面を剥離可能に接着することにより、この重ね合わせ面に表示した隠蔽すべき情報(以下隠蔽情報という)を隠蔽するための重ね合わせ接着用シート及びこの重ね合わせ接着用シートを用いて葉書、カード等の隠蔽情報所持体を作成する方法に関する。」(段落【0001】)、
(1d)発明が解決しようとする課題として、「従来の重ね合わせ接着用シートを用いて作成した隠蔽情報所持体では、この隠蔽情報所持体を正規の隠蔽情報宛名人に渡す前に、その重ね合わされた剥離可能な隠蔽情報表示面が、他人により剥離されて隠蔽情報が視認された後、再び適宜手段で剥離可能に接着され、不正に使用される事態が起こり得る。しかし、従来の重ね合わせ接着用シート及びこれを用いて作成した隠蔽情報所持体にあっては、このような不正使用を防ぐ手段は何ら講じられていない。本発明は、前述のような事態を防ぐことを目的として開発された重ね合わせ接着用シート及びこの重ね合わせ接着用シートを用いて隠蔽情報所持体を作成する方法を提供するところにある。」(段落【0003】)、
(1e)上記課題を解決するための手段として、「本発明の重ね合わせ接着用シートは、所定の重ね合わせ面に、印刷あるいは印字が可能で、かつ、所定以上の圧が加えられると接着可能となり、接着後には施された印刷あるいは印字を損なうことなく剥離可能な感圧接着剤を設ける一方、この感圧接着剤が塗布された所定の重ね合わせ面の所定部分に前記感圧接着剤の接着力を弱化させた弱化加工部を、例えば前記感圧接着剤上に網点状、ベタ状等に淡色系のインキで印刷を施すことにより設けて、この弱化加工部の接着強度を他の部分より弱め、さらに、前記弱化加工部の一端に沿って帯状の切り取り部を設けたものである。
また、本発明の隠蔽情報所持体を作成する方法は、上述した本発明に係る重ね合わせ接着用シートの弱化加工部に隠蔽すべき情報を印字あるいは印刷した後、前記弱化加工部を設けた重ね合わせ面同士を重ね合わせ、次いで、塗布された感圧接着剤の通常の接着条件よりも高い所定の圧を加えて、前記弱化加工部は剥離可能に、他の部分は強接着にそれぞれ接着するものである。」(段落【0004】〜【0005】)、
(1f)「【作用】所定の重合わせ面における弱化加工部に対応する感圧接着剤の接着力は弱化されており、この弱化加工部に隠蔽情報を印字あるいは印刷するので、塗布した感圧接着剤を剥離可能に接着する通常の接着時よりも高い圧力を加えても、前記弱化加工部は剥離可能に接着される一方、前記弱化加工部以外の感圧接着剤が塗布された重ね合わせ面は所定以上の圧力が加えられるので、通常と異なり強接着に接着される。これによって、重ね合わせ面の隠蔽情報が表示された前記弱化加工部は剥離可能であるが、前記弱化加工部以外の強接着部分によって前記重ね合わせ面が容易かつ円滑には剥離できない隠蔽情報所持体となる。そして、前記弱化加工部に設けた帯状の切り取り部を切り離すと、前記重ね合わせ面の前記弱化加工部は容易かつ円滑に剥離でき、隠蔽情報を視認することができる。この切り離した帯状の切り取り部は、線状の切り取り部と比べて、切り離し前状態に復元することはより困難である。」(段落【0006】)、
(1g)「図1に示すように、重ね合わせ接着用シート1は折り兼切り用ミシン目(図示せず)を介して単位シート2が、図1上上下方向に多数連接された連続状態にあり、その幅方向両側には切り用ミシン目3を境にして移送孔4が等間隔に多数透設されたマージナル部5が設けられている。そして、前記各単位シート2は、折り用ミシン目6,7で区画連接された上紙片8、中紙片9、下紙片10の3部分からなる。前記中紙片9と前記下紙片10の表面側が隠蔽情報が表示され、剥離可能に接着される重ね合わせ面であり、前記上紙片8と前記中紙片9の裏面側が強接着に接着される重ね合わせ面である。」(段落【0008】)、
(1h)「図1、図2及び図4で明らかなように、前記重ね合わせ接着用シート1の中紙片9及び下紙片10の表面と、上紙片8及び中紙片9の裏面には、通常の状態では接着することなく、所定以上の圧力が付与されると接着する透明あるいは半透明な感圧接着剤13が全面的に塗布されている。」
(段落【0009】、図1、図2および図4)、
(1i)「図1及び図2で理解できるように、中紙片9及び下紙片10の表面には、それぞれ隠蔽情報記入欄11,12が印刷されている。また、前記中紙片9と前記下紙片10の表面には、前記中紙片9の折り用ミシン目6に沿った部分と、前記下紙片10の切り用ミシン目3に沿った部分とを除いた、仮想線14,15に挟まれて隠蔽情報記入欄11,12が設けられた部分に、網点状の印刷(図1及び図2では斜線で表示)が淡色のインキで施されてなる弱化加工部16が設けられている。この印刷による弱化加工部16によって、前記仮想線14,15に挟まれた隠蔽情報を表示する部分の感圧接着剤13の接着力が弱化される一方、前記仮想線14,15の外側における感圧接着剤13の接着力には変化がなく、通常の強さが維持されている。」
(段落【0010】、【図1】および【図2】)、
(1j)「下紙片10の弱化加工部16の切り用ミシン目3に沿って、2本の平行な切り用ミシン目17,18が設けられ、帯状の切り取り部19が形成されている。」(段落【0011】、【図1】および【図2】)、
(1k)「重ね合わせる態様としては、Z字状の三つ折りに限らず、真中の紙片に対して左右の紙片を順次折り重ねたり、二つ折りして重ねたり、切り重ねるものでもよいほか、部分的に重なり合う二つ折りでもよい。」(段落【0015】)、
(1l)発明の効果として、「本発明の重ね合わせ接着用シートによれば、重ね合わせ面の隠蔽情報を表示した弱化加工部は剥離可能であるが、他の部分は強接着に接着されるので、一旦接着した重ね合わせ面は切り取り部を切り取らない限り容易かつ円滑には剥離することができず、したがって、この重ね合わせ接着用シートで作成した隠蔽情報所持体は、正規の宛名人に渡される前に、他人により隠蔽情報が見られたり、改竄されたうえ、再度剥離不能に接着されて不正使用される恐れがなく、また、本発明の作成方法によれば容易かつ確実に前述の如き隠蔽情報所持体を作成できるという効果を奏する。」(段落【0016】)。
4 対比・判断
(1)刊行物1に記載された発明
刊行物1における産業上の利用分野の記載(1c)からみて、請求項1に記載の「重ね合わせ接着用シート」は、隠蔽情報を所持する葉書の作成に用いられるものである。
刊行物1の図1および図2には、折り用ミシン目7により連接された中紙片9および下紙片10(以下、「連接紙片」という。)を有する前記「重ね合わせ接着用シート」が記載されており、前記連接紙片の重ね合わせ面には、前記折り用ミシン目7に平行な辺の近傍に仮想線14,15が存在し、重ね合わせ面における前記仮想線14,15に挟まれた部分には、隠蔽情報記入欄11,12が設けられている(1i)。
前記連接紙片の重ね合わせ面には、印刷あるいは印字が可能で、かつ、所定以上の圧が加えられると接着可能となり、接着後には施された印刷あるいは印字を損なうことなく剥離可能な感圧接着剤13が全面的に塗布されてなる接着層(以下、「全面塗布接着層」という。)が設けられている(1aおよび1h)。
そして、前記「全面塗布接着層」における、仮想線14,15に挟まれた部分の接着層(以下、「仮想線14,15内側の接着層」という。)には、網点状の印刷が施されてなる弱化加工部16が設けられている(1i)。
前記弱化加工部16が設けられたことにより、前記「仮想線14,15内側の接着層」の接着力は弱化される一方、前記弱化加工部16が設けられていない、前記「全面塗布接着層」における、仮想線14,15の外側部分に存在する接着層(以下、「仮想線14,15外側の接着層」という。)の接着力には変化がなく、通常の強さが維持されている(1i)。
また、刊行物1における(1b)ないし(1i)の記載からみて、まず、仮想線14,15に挟まれた部分に設けられた隠蔽情報記入欄11,12に、隠蔽すべき情報を印字あるいは印刷した後、連接紙片を折り用ミシン目7で折り返して重ね合わせ面同士を重ね合わせ、次いで、前記「全面塗布接着層」に所定以上の圧を加えて加圧接着することにより、隠蔽情報を所持する葉書が作成される。
前記「全面塗布接着層」の加圧接着により、弱化加工部16が設けられている「仮想線14,15内側の接着層」は、剥離可能に接着された接着層となる一方、前記弱化加工部16が設けられていない「仮想線14,15外側の接着層」は、強接着、すなわち剥離不能に接着された接着層となる(1bないし1l)。
さらに、下紙片10における仮想線14,15に挟まれた部分には、折り用ミシン目7と略平行な切り用ミシン目17と、前記切り用ミシン目17と所定間隔を隔てて略平行である切り用ミシン目18とにより形成される帯状の切り取り部19が設けられている(1j)。
前記帯状の切り取り部19の紙片に存在する接着層(以下、「帯状切り取り部の接着層」という。)は、弱化加工部16が設けられている「仮想線14,15内側の接着層」の一部分であるので、前記「全面塗布接着層」の加圧接着により、前記「帯状切り取り部の接着層」は、前記「仮想線14,15内側の接着層」と同一の粘着力で剥離可能に接着された接着層となる(1bないし1i)。
重ね合わせ面が剥離可能に接着された、前記隠蔽情報を所持する葉書を開封する際には、まず、「帯状の切り取り部19」の紙片を連接紙片から切り離して剥離する。それによって、剥離可能に接着された接着層が設けられている残りの部分の紙片は、容易かつ円滑に剥離できるようになり、隠蔽情報を視認することができるので(1f)、前記帯状の切り取り部19の紙片は、隠蔽情報を所持する葉書の開封を容易かつ円滑にするための剥離開始部分となる紙片である。
以上のことから、刊行物1には、以下の発明が記載されている。
「折り用ミシン目7によって連接する中紙片9および下紙片10(以下、「連接紙片」という。)を有する重ね合わせ接着用シートにおいて、
前記連接紙片の重ね合わせ面には、折り用ミシン目7に平行な辺の近傍に仮想線14,15が存在し、
前記重ね合わせ面における仮想線14,15に挟まれた部分には、隠蔽情報記入欄11,12が設けられ、
さらに前記重ね合わせ面には、印刷あるいは印字が可能で、かつ、所定以上の圧が加えられると接着可能となり、接着後には施された印刷あるいは印字を損なうことなく剥離可能な感圧接着剤13が全面的に塗布されてなる接着層(以下、「全面塗布接着層」という。)が設けられ、
前記全面塗布接着層における、前記仮想線14,15に挟まれた部分の接着層(以下、「仮想線14,15内側の接着層」という。)には、接着力を弱化するために、網点状の印刷が施されてなる弱化加工部16が設けられてなる、前記重ね合わせ接着用シートを用い、
まず、隠蔽情報記入欄11,12に隠蔽すべき情報を印字あるいは印刷した後、前記連接紙片を折り用ミシン目7で折り返して重ね合わせ面同士を重ね合わせ、
次いで、前記全面塗布接着層に所定以上の圧を加えて加圧接着して、前記仮想線14,15内側の接着層を剥離可能に接着された接着層とする、隠蔽情報を所持する葉書であって、
前記全面塗布接着層における、前記弱化加工部16が設けられていない、仮想線14,15の外側に存在する接着層(以下、「仮想線14,15外側の接着層」という。)は、前記所定以上の圧を加えて加圧接着することによって、剥離不能に接着された接着層となるものであり、
さらに、前記下紙片10における仮想線14,15に挟まれた部分には、折り用ミシン目7と略平行な切り用ミシン目17と、前記切り用ミシン目17と所定間隔を隔てて略平行である切り用ミシン目18とによって形成される帯状の切り取り部19の紙片が設けられており、
前記帯状の切り取り部19の紙片は、隠蔽情報を所持する葉書を開封を容易かつ円滑にするための剥離開始部分となる紙片であり、
前記帯状の切り取り部19の紙片に存在する接着層は、前記弱化加工部16が設けられた前記「仮想線14,15内側の接着層」の一部分の接着層であり、前記加圧接着によって、前記「仮想線14,15内側の接着層」と同一の粘着力で剥離可能に接着された接着層となるものである、
隠蔽情報を所持する葉書。」
(2)本願補正発明と刊行物1に記載された発明との対比
前記刊行物1に記載された発明(以下、「刊行物1発明」という。)における「折り用ミシン目7によって連接する中紙片9および下紙片10(以下、「連接紙片」という。)を有する重ね合わせ接着用シート」は、本願補正発明における「連接する第1の帳票片および第2の帳票片」に相当し、刊行物1発明における、全面塗布接着層が設けられている重ね合わせ面における仮想線14,15に挟まれた部分に設けられた「隠蔽情報記入欄11,12」は、本願補正発明における、隠蔽情報を記録するために設けられた「粘着層上の所定領域」に相当する。
刊行物1発明における、「まず、隠蔽情報記入欄11,12に隠蔽すべき情報を印字あるいは印刷した後、前記連接紙片を折り用ミシン目7で折り返して重ね合わせ面同士を重ね合わせ、次いで、前記全面塗布接着層に所定以上の圧を加えて加圧接着することにより、前記仮想線14,15内側の接着層を剥離可能に接着された接着層とすること」とは、前記連接紙片に隠蔽情報を記録し、重ね合わせ面を剥離可能に接着することを意味しているので、
本願補正発明における、「前記粘着層上の所定領域に情報を記録し、連接部を折り返して、前記粘着層を介して前記第1の帳票片と前記第2の帳票片とを剥離可能に粘着」すること、に相当する。
よって、刊行物1発明における、「折り用ミシン目7によって連接する中紙片9および下紙片10(以下、「連接紙片」という。)を有する重ね合わせ接着用シートにおいて、・・・仮想線14,15が存在し、前記重ね合わせ面における仮想線14,15に挟まれた部分には、隠蔽情報記入欄11,12が設けられ、さらに前記重ね合わせ面には、・・・感圧接着剤13が全面的に塗布されてなる接着層(以下、「全面塗布接着層」という。)が設けられ、前記全面塗布接着層における、前記仮想線14,15に挟まれた部分の接着層(以下、「仮想線14,15内側の接着層」という。)には、接着力を弱化するために、網点状の印刷が施されてなる弱化加工部16が設けられてなる、前記重ね合わせ接着用シートを用い、まず、・・・、前記連接紙片を折り用ミシン目7で折り返して重ね合わせ面同士を重ね合わせ、次いで、前記全面塗布接着層に所定以上の圧を加えて加圧接着することにより、前記仮想線14,15内側の接着層を剥離可能に接着された接着層とすることによって作成される、隠蔽情報を所持する葉書」、とは、
本願補正発明における、「連接する第1の帳票片及び第2の帳票片の所定面上に粘着層を形成し、前記粘着層上の所定領域に情報を記録し、連接部を折り返して、前記粘着層を介して前記第1の帳票片と前記第2の帳票片とを剥離可能に粘着し、前記情報を一時的に隠蔽するメールフォーム」、に相当する。
刊行物1発明における「仮想線14,15」は、前記連接紙片の連接部である折り用ミシン目7に平行な辺の近傍に存在するものであって、「仮想線14,15外側の接着層」は、前記加圧接着によって、剥離不能に接着された接着層となるものであるから、刊行物1発明における前記「仮想線14,15外側の接着層」は、本願補正発明における、「前記第1の帳票片及び前記第2の帳票片の前記連接部に平行な辺の近傍に設けられ、前記連接部が折り返されたときに重なる位置に配置され、密着されることにより前記第1の帳票片と前記第2の帳票片とを剥離不能に接着する接着層」に相当する。
刊行物1発明における「折り用ミシン目7と略平行な切り用ミシン目17」は、折り用ミシン目7が連接紙片の連接部であり、切り用ミシン目17は下紙片10に形成されていることからみて、本願補正発明における、「前記第1の帳票片又は前記第2の帳票片のいずれか一方の帳票片に形成され、前記連接部と略平行に配置された第1のミシン目」に相当し、刊行物1発明における「前記切り用ミシン目17と所定間隔を隔てて略平行である切り用ミシン目18」は、切り用ミシン目17と同じく下紙片10に形成されていることからみて、本願補正発明における、「前記第1のミシン目と所定間隔を隔てて前記第1のミシン目と略平行に配置された第2のミシン目」に相当する。
ここで、本願補正発明における第1のミシン目と第2のミシン目とは所定の間隔を隔てて略平行であるので、本願補正発明における「前記第1のミシン目と前記第2のミシン目との間の領域」の部分には帯状の紙片が形成されている。
前記帯状の紙片について、本願明細書の発明の詳細な説明では、【図5】および段落【0017】において、前記帯状の紙片は「ミシン目36と37とで挟まれた部分」として記載されているところ、本願明細書の段落【0017】における、「このメールフォーム30の受取人は、図5に示すように、ミシン目36,37が裁断されるように、ミシン目36と37とで挟まれた部分を、帳票片32から分離する。この部分の密着された領域の粘着力は、他の領域の粘着力より弱い力であるので、容易に剥離することができる。これにより、帳票片32は、粘着層34,35によって帳票片31に剥離可能に粘着されている部分のみとなる。」との記載からみて、前記帯状の紙片は、メールフォームの開封を容易かつ円滑にするための剥離開始部分となる紙片である。
してみると、刊行物1発明における、前記「折り用ミシン目7と略平行な切り用ミシン目17と、前記切り用ミシン目17と所定間隔を隔てて略平行である切り用ミシン目18とによって形成される帯状の切り取り部19の紙片」は、本願補正発明における、「前記第1の帳票片又は前記第2の帳票片のいずれか一方の帳票片に形成され、前記連接部と略平行に配置された第1のミシン目と、前記第1のミシン目と所定間隔を隔てて前記第1のミシン目と略平行に配置された第2のミシン目と、前記第1のミシン目と前記第2のミシン目との間の領域」に形成された帯状の紙片に相当しており、しかも、いずれもメールフォームの開封を容易かつ円滑にするための剥離開始部分となる紙片である。
そして、本願明細書の記載からみて、本願補正発明における「前記第1のミシン目と前記第2のミシン目との間の領域に形成された粘着層」とは、前記「帯状の紙片」に形成された粘着層を意味しているので、刊行物1発明における「前記帯状の切り取り部19の紙片に存在する接着層」は、本願補正発明における「前記第1のミシン目と前記第2のミシン目との間の領域に形成された粘着層」に相当している。
よって、本願補正発明と刊行物1発明とを対比すると、両者は、
「連接する第1の帳票片及び第2の帳票片の所定面上に粘着層(以下、「所定面上に形成された粘着層」という。)を形成し、前記粘着層上の所定領域に情報を記録し、連接部を折り返して、前記粘着層を介して前記第1の帳票片と前記第2の帳票片とを剥離可能に粘着し、前記情報を一時的に隠蔽するメールフォームであって、
前記メールフォームには、
前記第1の帳票片及び前記第2の帳票片の前記連接部に平行な辺の近傍に設けられ、前記連接部が折り返されたときに重なる位置に配置され、密着されることにより前記第1の帳票片と前記第2の帳票片とを剥離不能に接着する接着層が設けられており、
さらに、前記第1の帳票片又は前記第2の帳票片のいずれか一方の帳票片には、前記連接部と略平行に配置された第1のミシン目と、前記第1のミシン目と所定間隔を隔てて前記第1のミシン目と略平行に配置された第2のミシン目とによって形成され、メールフォームの開封を容易かつ円滑にするための剥離開始部分となる、帯状の紙片が設けられており、
前記帯状の紙片には粘着層が形成されている、
メールフォーム。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
・相違点:前記剥離開始部分となる帯状の紙片に形成された粘着層(以下、「剥離開始部分の粘着層」という。)について、本願補正発明における前記「剥離開始部分の粘着層」は、既に設けられている前記「所定面上に形成された粘着層」の上に、さらに「密着時の粘着力を弱める印刷層」を設けることによって得られる粘着層であるのに対し、刊行物1発明における前記「剥離開始部分の粘着層」は、既に設けられている前記「所定面上に形成された粘着層」の一部分の粘着層であって、刊行物1には、前記「所定面上に形成された粘着層」の上に、さらに前記「密着時の粘着力を弱める印刷層」を設けることは記載されていない点。
(3)相違点についての判断
前記(2)で既に検討したように、前記「剥離開始部分となる帯状の紙片」とは、メールフォームの開封を容易かつ円滑にするために設けられた紙片である。
本願明細書の段落【0016】における、「また、ミシン目36と37で挟まれた領域では、この領域に設けられた印刷層41と、帳票片31側の粘着層34とが密着される。従って、この領域の粘着力は、粘着層34と35とが粘着したときの粘着力より弱い力である。」との記載、および前記(2)で既に検討した本願明細書の段落【0017】における記載によれば、本願補正発明では、前記帯状の紙片に既に設けられている前記「所定面上に形成された粘着層」の上に、さらに前記「密着時の粘着力を弱める印刷層」を設けているので、第1の帳票片と第2の帳票片とを剥離可能に粘着した際には、前記帯状の紙片に形成された粘着層の粘着力は、剥離可能に粘着されている他の部分の粘着層の粘着力よりも、弱められている。
そのため、前記帯状の紙片は、剥離可能に粘着されている他の部分の紙片よりも容易に剥離できるようになり、前記帯状の紙片は、メールフォームの開封を開始する際の剥離開始部分として機能するものとなる。
しかしながら、例えば平成16年3月22日付け拒絶査定で引用された周知文献:実願平3-50447号(実開平4-135374号)のマイクロフィルムの【0021】、特開平5-69687号公報(特に【0051】における「折り用ミシン目5a部分と周縁部分には接着力の弱い接着剤層7aを設けたので、各紙片1a,2aの剥離が容易となる。」との記載を参照。)、実願平2-66914号(実開平4-26760号)のマイクロフィルムに記載のように、隠蔽情報所持体において、剥離可能に接着されている紙片の開封を容易かつ円滑にするために、前記隠蔽情報所持体に剥離開始部分となる紙片を設け、前記剥離開始部分の紙片に設けられた接着層の接着力を他の部分よりも弱化させておくことにより、前記剥離開始部分となる紙片を、他の部分の紙片よりも容易に剥離できるようにすることは、当該技術分野において本願出願前に周知の技術である。
してみると、刊行物1発明において、メールフォームの開封を容易かつ円滑にするために、前記「剥離開始部分となる帯状の紙片」に既に設けられている粘着層の上に、その接着力を弱化させる手段を講じることにより、第1の帳票片と第2の帳票片とを剥離可能に粘着した際には、前記帯状の紙片を、剥離可能に粘着されている他の部分の紙片よりも容易に剥離できるようにすることは、当該技術分野における前記周知技術からみて、当業者が容易に想到し得たことである。
また、前記接着力を弱化させる手段として、既に設けられている粘着層の上にさらに印刷層を設けるという手段を用いることは、例えば平成16年3月22日付け拒絶査定で引用された周知文献:実願平3-87491号(実開平5-29780号)のCD-ROMの【0019】、特開平5-69687号公報の【0053】の記載からみて、単に当該技術分野における本願出願前に周知の技術を適用したに過ぎない。
したがって、刊行物1発明において、前記「剥離開始部分となる帯状の紙片」に既に設けられている粘着層の上に、さらに「密着時の粘着力を弱める印刷層」を設け、本願補正発明における前記「剥離開始部分の粘着層」を得ることに、格別の困難性は認められない。
そして、本願明細書の段落【0019】に記載されている「メールフォームの信頼性と開封作業性との双方を両立させることができる。そして、メールフォームの開封時に切り離す部分を容易に剥離することができる。」という効果は、刊行物1の記載および当該技術分野における前記周知技術からみて、当業者が予測し得た程度のものであって、格別顕著ではない。
よって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明および当該技術分野における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
5 むすび
以上のとおり、上記補正は、特許法第17条の2第5項において準用する、同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成16年5月17日付けの手続補正は上記のように却下されたので、本願の請求項1および2に係る発明は、平成15年10月24日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1および2に記載されたとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明は、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】連接する第1の帳票片及び第2の帳票片の所定面上に粘着層を形成し、前記粘着層上の所定領域に情報を記録し、連接部を折り返して、前記粘着層を介して前記第1の帳票片と前記第2の帳票片とを剥離可能に粘着し、前記情報を一時的に隠蔽するメールフォームであって、
前記第1の帳票片及び前記第2の帳票片の前記連接部に平行な辺の近傍に設けられ、前記連接部が折り返されたときに重なる位置に配置され、密着されることにより前記第1の帳票片と前記第2の帳票片とを剥離不能に接着する接着層と、
前記第1の帳票片又は前記第2の帳票片のいずれか一方の帳票片に形成され、前記連接部と略平行に配置された第1のミシン目と、
前記第1のミシン目と所定間隔を隔てて前記第1のミシン目と略平行に配置された第2のミシン目と、
前記第1のミシン目と前記第2のミシン目との間の領域であって前記粘着層上、又はその領域と前記連接部を折り返したときに重なる領域であって前記粘着層上のうちの少なくとも一方には、密着時の前記粘着層の粘着力を弱める印刷層が設けられていることを特徴とするメールフォーム。」
2 引用刊行物に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物1(特開平5-193288号公報)には、図面と共に、前記「第2 平成16年5月17日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 引用刊行物に記載された事項」の欄に摘示したとおりの事項が記載されている。
3 対比、判断
本願請求項1に係る発明(以下、「本願請求項1発明」という。)における、「前記第1の帳票片又は前記第2の帳票片のいずれか一方の帳票片に形成され、前記連接部と略平行に配置された第1のミシン目と、前記第1のミシン目と所定間隔を隔てて前記第1のミシン目と略平行に配置された第2のミシン目と、前記第1のミシン目と前記第2のミシン目との間の領域」の紙片に形成された粘着層は、前記「第2 平成16年5月17日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「4 対比、判断」における「(3)相違点についての判断」の欄で既に検討した、本願補正発明における「剥離開始部分となる帯状の紙片に形成された粘着層」に相当するものである。
そして、既に検討したように、前記「剥離開始部分となる帯状の紙片に形成された粘着層」とは、前記帯状の紙片に既に形成されている粘着層、すなわち、連接する第1の帳票片及び第2の帳票片の所定面上に既に形成されている粘着層の上に、さらに密着時の粘着力を弱める「印刷層」を設けて得られた粘着層を意味するものである。
本願請求項1発明と既に検討済みの本願補正発明とを対比すると、両者は、密着時の粘着層の粘着力を弱める前記「印刷層」を設ける位置について、本願請求項1発明では、前記位置は、「前記第1のミシン目と前記第2のミシン目との間の領域であって前記粘着層上、又はその領域と前記連接部を折り返したときに重なる領域であって前記粘着層上のうちの少なくとも一方」であると記載されているのに対し、本願補正発明では、前記位置は、「前記第1のミシン目と前記第2のミシン目との間の領域に形成された粘着層上」であると記載されている点でのみ、相違している。
ここで、本願明細書の段落【0018】における「実施例では印刷層41を帳票片32側に設けたが、ミシン目33を折り返したときにその領域と重なる帳票片31側の領域、あるいはこれらの双方の領域に印刷層41を設けても良い。」との記載からみて、本願請求項1発明における「その領域」とは、第1の帳票片及び第2の帳票片に設けられた前記「剥離開始部分となる帯状の紙片」を意味しており、本願請求項1発明における「連接部を折り返したときに重なる領域」とは、連接部を折り返したときに前記「剥離開始部分となる帯状の紙片」と重なる部分にある紙片、を意味している。
してみると、本願請求項1発明における、「その領域と前記連接部を折り返したときに重なる領域であって前記粘着層上のうちの少なくとも一方」であるとの記載は、前記「印刷層」を、(a)前記「剥離開始部分となる帯状の紙片」に既に形成されている粘着層の上のみに設ける場合、(b)前記(a)の帯状紙片と重なる部分にある紙片に既に形成されている粘着層の上のみに設ける場合、(c)前記(a)の粘着層の上と前記(b)の粘着層の上との両方に設ける場合、という3つの場合があることを意味している記載である。
そこで、前記相違について検討すると、前記「印刷層」を設ける位置が、本願請求項1発明における「前記粘着層上」である場合、すなわち前記(a)の場合は、本願補正発明における「前記第1のミシン目と前記第2のミシン目との間の領域に形成された粘着層上」、すなわち、連接する第1の帳票片及び第2の帳票片の所定面上に既に形成されている粘着層の上、の場合と同一であって、この場合については前記「(3)相違点についての判断」の欄において、既に検討済みである。
また、前記「印刷層」を設けるにあたって、前記(a)ないし(c)のどの場合を選択するかは、メールフォームの信頼性と開封作業性との双方を両立させるために必要とされる、前記「剥離開始部分となる帯状の紙片に形成された粘着層」の粘着力を勘案しつつ、当業者が適宜なし得る単なる設計事項に過ぎないことから、前記相違は、構成上の実質的な差異を形成するものではない。
よって、前記「(3)相違点についての判断」の欄において、本願補正発明について既に検討したものと同様の理由により、本願請求項1発明は、刊行物1に記載された発明および当該技術分野における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
審理終結日 2006-06-05 
結審通知日 2006-06-07 
審決日 2006-06-30 
出願番号 特願平7-2495
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B42D)
P 1 8・ 121- Z (B42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武田 悟  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 藤井 靖子
前田 佳与子
発明の名称 メールフォーム  
代理人 金山 聡  

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