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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02H
管理番号 1142239
審判番号 不服2004-18654  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-07-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-09 
確定日 2006-08-17 
事件の表示 平成10年特許願第363467号「欠相検出回路」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月 4日出願公開、特開2000-188824〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1. 手続の経緯
本件出願は、平成10年12月21日の出願であって、平成16年2月19日付けで手続補正がされたところ、平成16年8月3日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、平成16年9月9日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年10月12日付けで手続補正がされたものである。

第2. 平成16年10月12日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年10月12日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1. 補正後の本願発明
(1) 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「三相の電源に接続した変流器(CT)を結線した3本の出力を全波整流する整流回路と、該整流回路の出力を増幅する演算増幅器と、該演算増幅器の出力を平均化して分圧する抵抗及びコンデンサと抵抗との直並列回路からなる平均分圧回路と、該平均分圧回路出力と前記演算増幅器出力とを比較し、前記演算増幅器出力が前記平均分圧回路出力よりも低くなるときに、出力パルスを出力するアナログ電圧比較器とを備え、該アナログ電圧比較器の出力を直接CPUの外部割込入力に取り込むようにしたことを特徴とした欠相検出回路。」
と補正された。

(2) 上記補正は、請求項1に記載された発明の全体について、整流回路の出力を「増幅する演算増幅器」を備えたものであると限定すると共に、発明を特定する事項である、「変流器(CT)又は変圧器(PT)」について、「変流器(CT)」と限定し、「平均分圧回路」について、「演算増幅器の出力を」平均化して分圧する「抵抗及びコンデンサと抵抗との直並列回路からなる」ものであると限定し、さらに、「比較回路」について、「アナログ電圧比較器」であって、「該アナログ電圧比較器の出力を直接CPUの外部割込入力に取り込む」ようにしたものであると限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、即ち本件補正が特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものでないか否かにつき以下に検討する。

2. 引用刊行物
刊行物1:実願昭61-165134号(実開昭63-70229号)のマイクロフィルム
刊行物2:特開平7-134154号公報

(1) 原査定の拒絶の理由に引用された上記刊行物1には、「欠相保護継電器」と題して、図面とともに次の記載がある。
「本考案は上記内容に鑑みて提案するもので第2図〜第6図に基づいて説明すると,R,S,Tは3相電路,20,21,22は変流器で3相電路R,S,Tの電流を検出し,23〜28はダイオードで3相全波整流器29を構成し,3相全波整流器29の出力端には抵抗30を接続し,電圧変換した抵抗30の両端電圧を可変抵抗31,32と抵抗33で分圧し適切な出力電圧を得,この出力電圧を抵抗34,35,36で分圧し,37は平滑用のコンデンサで抵抗36に並列接続し,38はマイコンで第1図で示すマイコン5と同一構成を有する。直列接続した抵抗35,36の両端検出電圧VDをマイコン38の入力端子A/DIに印加し,抵抗36両端の平滑された平均値電圧Vaを入力端子A/DOに印加する。出力端子P2,P3,P4と操作電源の正極VCC間には発光ダイオード39,40,41が接続され,欠相,過負荷,逆相等の各種の異常動作に対する表示をし,出力端子P5には出力トランジスタQ1のベースが接続し,トランジスタQ1のコレクタと正極VCC間には出力リレー42が接続し出力端子P6と負荷VSS間にはスイッチS1が接続しスイッチS1のON,OFFで欠相検出感度を設定し,43はダイオードである。」(明細書第3頁13行から第4頁14行)。

第3図、第4図によれば、欠相が発生している場合には、両端検出電圧VDの最小値であるVminが平均値電圧Vaよりも低くなっており、この関係から、一応の欠相検出が可能であることが明らかである。

以上によれば、刊行物1には、欠相を検出する回路について記載されているということができ、これを「欠相検出回路」ということができるので、同刊行物には、
「三相の電源に接続した変流器を結線した3本の出力を全波整流する全波整流器と、該全波整流器の出力を分圧した両端検出電圧VDを得る複数の可変抵抗と抵抗と、該両端検出電圧VDを、平滑化して分圧するコンデンサと複数の抵抗とからなる回路とを備え、該回路の出力としての平均値電圧Vaと前記両端検出電圧VDとをマイコンに印加し、マイコンにて処理を行うようにした欠相検出回路。」
との発明(以下「引用発明」という。)が開示されているということができる。

(2) 原審における面接手続に関連して審査官より提示された刊行物2には、欠相を検出するに、全波整流回路の出力を演算増幅器にて増幅させるものが記載されている。

3. 対比
(1) 本願補正発明と引用発明との比較すると、後者の「全波整流器」は、前者の「整流回路」に相当する。
また、後者の「全波整流器の出力を分圧した両端検出電圧VDを得る複数の可変抵抗と抵抗」と、前者の「整流回路の出力を増幅する演算増幅器」とは共に、全波整流器あるいは整流回路の出力を増減を含めて調整する機能を有するから、この両者を、「整流回路の出力を調整する手段」との概念にて捉えることができる。
さらに、後者の「平滑化して分圧するコンデンサと複数の抵抗とからなる回路」において、「平滑化」とは、機能からみて平均化と言い替えることができるから、この回路は、前者の「平均分圧回路」と機能において一致する。
すると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。

(2) 一致点
「三相の電源に接続した変流器を結線した3本の出力を全波整流する整流回路と、該整流回路の出力を調整する手段と、該手段からの出力を平均化して分圧する平均分圧回路とを備えた欠相検出回路。」

(3) 相違点
(ア) 整流回路の出力を調整する手段に関して、本願補正発明のものが、「整流回路の出力を増幅する演算増幅器」であるのに対して、引用発明のものは、「全波整流器の出力を分圧した両端検出電圧VDを得る複数の可変抵抗と抵抗」である点。
(イ) 平均分圧回路について、本願補正発明のものが、「演算増幅器の出力を平均化して分圧する抵抗及びコンデンサと抵抗との直並列回路からなる平均分圧回路」であるのに対して、引用発明のものは、「両端検出電圧VDを平滑化して分圧するコンデンサと複数の抵抗とからなる回路」である点。
(ウ) 本願補正発明のものが、「アナログ電圧比較器」を備え、「平均分圧回路出力と演算増幅器出力とを比較し、前記演算増幅器出力が前記平均分圧回路出力よりも低くなるときに、出力パルスを出力する」ものであるのに対して、引用発明のものは、「アナログ電圧比較器」を備えず、両端検出電圧VDと平均値電圧Vaとをマイコンに印加し、マイコンにて処理を行うようにした点。
(エ) 本願補正発明のものが、「アナログ電圧比較器の出力を直接CPUの外部割込入力に取り込む」ようにしたものであるのに対して、引用発明のものは、そのような構成を有していない点。

4. 相違点についての判断
(1) 相違点(ア)について
引用発明のものは、全波整流器の出力を分圧して両端検出電圧VDを得ている。ここで、両端検出電圧VDとは、次のステップにて行う平均値電圧Vaとの比較のための電圧であって、この比較を適切に行うために調整されたものである。言い替えれば、引用発明において、両端検出電圧VDは、次のステップにおいて比較を行う平均値電圧の高さとの関係で、その高さを適宜変更したものであって、平均値電圧の高さ如何によっては、全波整流器の出力を増幅して両端検出電圧VDとすることも十分に考えられるところである。そして実際、刊行物2に記載のものは、欠相を検出するに、全波整流回路の出力を演算増幅器にて増幅させている。この場合、この演算増幅器は、その増幅度を可変とする構造とされるが、必ずしも可変であることを要しないことは明らかである。
そうすると、引用発明において、平均値電圧の高さ如何によって、全波整流器の出力を増幅するべく、ここに、「全波整流器の出力を増幅する演算増幅器」を採用するようにすることは当業者に容易である。
なお、演算増幅器については、入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低いという特性が周知である。

(2) 相違点(イ)について
引用発明において、「平滑化して分圧するコンデンサと複数の抵抗とからなる回路」は、「平均分圧回路」といい得るものであって、その回路配置からは、コンデンサと複数の抵抗とからなる「直並列回路」といい得るものである。
引用発明において、その回路を、本願補正発明のような「抵抗及びコンデンサと抵抗との直並列回路」とすることは、正に設計的事項であって格別のものではない。

(3) 相違点(ウ)について
引用発明のものは、「アナログ電圧比較器」を備えず、検出電圧VDと平均値電圧Vaとをマイコンに印加し、マイコンにて処理を行うようにしたものである。
ところで、第3図、第4図によれば、欠相が発生している場合には、両端検出電圧VDの最小値Vminが平均値電圧Vaよりも低くなっており、この関係から、一応の欠相検出が可能であることが明らかである。
すると、引用発明において、両端検出電圧VDが平均値電圧Vaよりも低くなっていることを捉えて、欠相を検出するようにすることは当業者に容易である。ここで、一般に2つの電圧を比較する場合に、アナログ電圧比較器を用いることは、例えば、特開昭55-122424号公報、特開昭62-68018号公報などに記載があるように周知の技術であるから、引用発明の場合にあっても、この電圧の比較に、「アナログ電圧比較器」を用いることは、単なる周知技術の適用といい得るのであって設計的事項である。

(4) 相違点(エ)について
異常検出信号をマイコンに取り込むようにすることは通常考えられることであって、例えば、特開昭61-189460号に記載のものも、欠相したことを検出した場合に、その検出信号を割込信号としてマイコンに取り込むようにしている。引用発明においても、これと同様に、欠相検出信号としての比較後の出力をCPUの外部割込入力に取り込むようにすることは、当業者にとって容易想到の範囲である。

(5) そして、本願補正発明の作用効果についても、刊行物1、2に記載された発明及び周知の技術から当業者が予測できた範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、刊行物1、2に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5. むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において準用する特許法第53条第1項の規定により却下を免れない。

第3. 本願発明について
1. 本願発明
平成16年10月12日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成16年2月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「三相の電源に接続した変流器(CT)又は変圧器(PT)を結線した3本の出力を全波整流する整流回路と、該整流回路の出力を平均化して分圧する平均分圧回路と、該平均分圧回路出力と前記整流回路出力とを比較し、前記整流回路出力が前記平均分圧回路出力よりも低くなるときに、出力パルスを出力する比較回路とを備えたことを特徴とした欠相検出回路。」

2. 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及びその開示事項は、前記「第2.2.(1)」に記載されたとおりである。

3. 対比・判断
本願発明は、前記「第2」において検討した本願補正発明から、整流回路の出力を「増幅する演算増幅器」を備えたことの限定を省くとともに、「変流器(CT)又は変圧器(PT)」について、「変流器(CT)」との限定を省き、「平均分圧回路」について、「演算増幅器の出力を」平均化して分圧する「抵抗及びコンデンサと抵抗との直並列回路からなる」ものとの限定を省き、「比較回路」について、「アナログ電圧比較器」であって、「該アナログ電圧比較器の出力を直接CPUの外部割込入力に取り込む」ようにしたとの限定を省いたものである。
すると、本願発明と引用発明とを比較したときの相違点については、前記「第2.3.(3)」において認定した4つの相違点の内、少なくとも相違点(ア)と(エ)が除かれたものとなり、その他の相違点についての判断は、本願補正発明について検討したと同様となるから、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4. むすび
以上、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができない。
よって、結論とおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-02 
結審通知日 2006-06-06 
審決日 2006-07-03 
出願番号 特願平10-363467
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02H)
P 1 8・ 575- Z (H02H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 昇  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 田良島 潔
丸山 英行
発明の名称 欠相検出回路  
代理人 堀田 信太郎  
代理人 渡邉 勇  
代理人 堀田 信太郎  
代理人 渡邉 勇  

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