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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M |
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管理番号 | 1142418 |
審判番号 | 不服2004-7744 |
総通号数 | 82 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-04-09 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-04-15 |
確定日 | 2006-08-24 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第260056号「着信転送システム」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 4月 9日出願公開、特開平11- 98256〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成9年9月25日の出願であって、平成16年3月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年5月17日付けで手続補正がなされたものである。 第2.補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年5月17日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を、 「発信側端末機から着信側端末機への呼を転送先端末機に転送する着信転送システムにおいて、 前記発信側端末機の発呼の際に該発信側端末機から送信される発番号を記憶し、前記着信側端末機から前記呼に対する応答が検出されない場合、前記記憶した発信側端末機の発番号を予め前記着信側端末機の転送先として設定している転送先端末機に転送し、該転送先端末機は前記発信側端末機の発番号を表示することを特徴とする着信転送システム。」 という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである(アンダーラインは補正箇所を示す)。 2.新規事項の有無、補正の目的要件について 本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「発信側端末機の発番号」を「発信側端末機から送信される発番号」に限定して特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)、及び第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。 3.独立特許要件について 本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。 (3-1)補正後の発明 上記「1.補正後の本願発明」の項で認定したとおりである。 (3-2)引用例及び周知技術 A.原審の拒絶理由に引用された本願の出願の日前である平成3年4月24日に頒布された特開平3-99569号公報(以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「〔産業上の利用分野〕 本発明は、着信呼がある時、その発信加入者情報を表示する表示器とその着信呼を転送するための転送釦とを備えた多機能電話機の着信転送サービスについての着信転送方式に関する。」(2頁左上欄5行ないし9行)、 ロ.「〔発明が解決しようとする課題〕 ・・・(中略)・・・着信呼の発信加入者に応じその着信呼を受信し或いはその着信呼を予め登録されている転送先加入者へ転送できる選択的着信転送が可能な着信転送方式を提供することを目的としている。」(2頁右上欄1行ないし14行)、 ハ.「〔課題を解決するための手段〕 第1図は本発明の原理説明図である。 図中、1-1、1-2、……、1-Nは多機能電話機加入者であり、その多機能電話機には着信呼がある時、その発信加入者情報を表示する表示器及びその着信呼を転送するための転送釦とを少なくとも備えているもの、2はネットワーク装置であり、多機能電話機加入者1-1ないしl-Nを結ぶ、例えば回線交換網、3は交換機であり、多機能電話機加入者1-1ないし1-Nから転送依頼があったとき予め登録されている転送先加入者へその転送を行うもの、4は転送先加入者登録部であり、多機能電話機加入者対応で転送したい転送先加入者を予め登録しておかれるもの、5は着信転送部であり、転送依頼があったときその転送依頼の多機能電話機加入者が予め転送先加入者登録部4に登録しておいた転送先加入者へ着信呼を転送させるものである。 〔作用〕 ネットワーク装置2以外又はネットワーク装置2に結ばれている加入者から当該ネットワーク装置2に結ばれている多機能電話機加入者1-1ないし1-Nに着信呼が入った時、その着信呼が入った多機能電話機加入者、すなわち着信加入者に対して呼出しが行われると共にその表示器に発信加入者情報が表示される。この着信加入者は表示器に表示されている発信加入者情報を見て応答するか否かを判断し、応答不要であれば転送釦を押下する。これにより交換機3へ着信呼の転送依頼が送られる。交換機3は着信転送部5を作動させ、まず多機能電話機加入者対応にその転送先加入者情報が必要に応じて登録されている転送先加入者登録部4の索引を行う。着信呼の多機能電話機加入者の対応欄に転送先加入者情報が登録されているとき、着信転送部5はその転送先加入者へ着信呼を転送させる。つまり着信加入者は着信呼を表示器に表示される発信加入者情報に基づき、選択的に転送することができる。」(2頁右上欄15行ないし右下欄14行)、 ニ.「そして転送先加入者1-3に表示器があるときには(フローチャート15)、発信加入者1-1の加入者番号等と着信加入者1-2の加入者番号等の情報とを送出し、転送先加入者1-3の表示器に上記発信者加入番号、着信者加入番号等の情報を表示させる」(3頁左下欄11行ないし16行)。 上記引用例の記載及びこの分野における技術常識を考慮すると、上記引用例に記載された「ネットワーク装置2以外又はネットワーク装置2に結ばれている加入者」は実質的に「発信側端末機」に相当し、同じく「多機能電話機」は「端末機」に相当することが明らかだから、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。 「発信側端末機から着信側端末機への呼を転送先端末機に転送する着信転送システムにおいて、 前記発信側端末機の発呼の際に、着信側端末で転送釦が押下される場合、該発信側端末機の発信加入者番号を予め前記着信側端末機の転送先として設定している転送先端末機に転送し、該転送先端末機は前記発信側端末機の発信加入者番号を表示することを特徴とする着信転送システム。」 B.同じく原審の拒絶理由に引用された本願の出願の日前である平成5年8月27日に頒布された特開平5-219240号公報(以下、「周知例1」という。)には、図面とともに下記イの事項が記載され、同じく平成9年2月25日に頒布された特開平9-55982号公報(以下、「周知例2」という。)には、図面とともに下記ロの事項が記載されている(下線加筆)。 イ.「【構成】交換機の記憶装置1に、発信側加入者番号対応に着信側加入者番号及びこの着信側加入者不応答時用の転送先の電話番号を格納するための転送先番号テーブル7を設ける。着信接続時、転送制御部4によって、発信側加入者が転送先番号テーブル7に登録されていることが確認された場合、タイマカウンタ5により所定時間を設定すると共に着信側加入者の応答を監視する。この所定の時間以内に応答が得られないときには、転送先内線番号検索部6によって転送先番号テーブル7から予め登録されている転送先の電話番号を読出す。転送制御部4により転送先の加入者を呼出し発信側加入者と接続する。」(周知例1、1頁下欄(57)【要約】) ロ.「【0022】呼処理プログラム4の実行上で、加入者端末番号5nのうちのいずれかの加入者である被呼者への着信呼に転送契機が発生するごとに(S200)、被呼者の加入者端末番号5nに対応する転送先番号テーブル2を検索して(S201)、着信呼に発生した転送契機と転送先番号テーブル2の転送契機識別子21の内容とが一致するか否かを調べる(S202)。転送契機が一致しない場合には、検索を終了する(S203)。転送契機が合致する場合には、転送先番号テーブル2の照合対象識別子22の内容を参照して、着信呼の呼制御信号のパラメータのうちのどのパラメータと転送先番号テーブル2の各照合対象のうちのいずれかとを照合するかを調べる(S204)。 【0023】ここで、転送契機となる起動条件としては、無条件、加入者圏外、加入者不応答、加入者話中、加入者の転送指示等がある。」(周知例2、4頁6欄) 上記周知例1、2の記載、及びこの分野における技術常識によれば、周知例1、2には、「着信側端末機から呼に対する応答が検出されない場合、転送先端末機に転送する」ことが開示されており、周知技術である。 C.また、例えば、本願の出願の日前である昭和64年1月10日に頒布された特開昭64-5295号公報(以下、「周知例3」という。)には、図面とともに以下イ〜ニの事項が記載されている(下線加筆)。 イ.「(産業上の利用分野) 本発明は、通信システムにおける着信転送装置に関する。」(1頁右下欄5行ないし7行)、 ロ.「ところで、ISDN(統合サービスディジタル網)における発着信の呼制御は、CCITT勧告I.450、I.451で規定されている様々な呼制御メツセージを用いて行われるのであるが、その中で発信、着信の最初に端末あるいは交換機より送信される呼設定メツセージに、発番号(発信者番号)の情報を含ませることができる。」(2頁右上欄20行ないし左下欄6行)、 ハ.「通信端末装置5aから通信端末装置5bに発呼を行う場合には、利用者が通信端末装置5aから通信端末装置5bへ発信操作を行うと、発番号と着番号を付加した呼設定メツセージがPBX1に送信される。」(3頁左上欄2行ないし6行)、 ニ.「通信端末装置5aから通信端末装置5bに発呼を行う場合、通信端末装置5aから呼設定メツセージがPBX1に送られる。PBX1において着信があると(ステップ301)、PBX1は内部のメモリを調べて着信端末に転送指定があるか否かを調べる(ステップ303)、この場合、通信端末装置5bは転送指定を行っているので、・・・(中略)・・・PBX1は呼設定メツセージを転送先の通信端末装置5cに転送する(ステップ317)。」(3頁右上欄16行ないし左下欄11行)。 上記周知例3の記載において、発番号が付加された呼設定メッセージはPBX1に送信された後、転送先の通信端末装置5cに転送されるまでの間に記憶されるのか否か明示が無いが、この間、「PBX1は内部のメモリを調べて着信端末に転送指定があるか否かを調べる(ステップ303)」という間合いがあることを踏まえれば、発番号が付加された呼設定メッセージはPBX1に記憶されることが自明である。 すると、例えば上記周知例3に開示されるように、「発信側端末機から送信される発番号を記憶する交換機(PBX)」は周知である。 (3-3)対比 補正後の本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「発信加入者番号」は補正後の発明における「発番号」に相当することは明らかであるから、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。 (一致点) 「発信側端末機から着信側端末機への呼を転送先端末機に転送する着信転送システムにおいて、 前記発信側端末機の発呼の際に、前記発信側端末機の発番号を予め前記着信側端末機の転送先として設定している転送先端末機に送信し、該転送先端末機は前記発信側端末機の発番号を表示することを特徴とする着信転送システム。」 (相違点) 発信側端末機の発呼の際に、補正後の発明は「該発信側端末機から送信される発番号を記憶し、前記着信側端末機から前記呼に対する応答が検出されない場合、前記記憶した発信側端末機の発番号」を転送先端末機に転送するのに対して、引用発明は「着信側端末で転送釦が押下される場合、該発信側端末機の発番号」を転送先端末機に転送するものである点。 (3-4)判断 そこで、上記相違点について検討する。 上記「(3-2)引用例及び周知技術」の「B.」の項で指摘したように、「着信側端末機から呼に対する応答が検出されない場合、転送先端末機に転送する」ことは周知であり、同じく「C.」の項で指摘したとおり、「発信側端末機から送信される発番号を記憶する交換機(PBX)」は周知である。 これらの周知技術は何れも着信転送に関する技術であるという点で引用発明と共通するとともに、これら周知技術を引用発明に適用することに特段の阻害要因は見あたらないから、これら周知技術を引用発明に適用し、補正後の発明のように「発信側端末機の発呼の際に該発信側端末機から送信される発番号を記憶し、前記着信側端末機から前記呼に対する応答が検出されない場合、前記記憶した発信側端末機の発番号を予め前記着信側端末機の転送先として設定している転送先端末機に転送する」よう構成することは、特段の創意工夫を要することとはいえない。 以上のとおり、補正後の発明は、上記引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.結語 以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。 したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成16年5月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年11月4日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「発信側端末機から着信側端末機への呼を転送先端末機に転送する着信転送システムにおいて、 前記発信側端末機の発呼の際に該発信側端末機の発番号を記憶し、前記着信側端末機から前記呼に対する応答が検出されない場合、前記記憶した発信側端末機の発番号を予め前記着信側端末機の転送先として設定している転送先端末機に転送し、該転送先端末機は前記発信側端末機の発番号を表示することを特徴とする着信転送システム。」 2.引用発明及び周知技術 引用発明及び周知技術は、上記「3.独立特許要件について」の項中の「(3-2)引用例及び周知技術」の項で認定したとおりである。 3.対比・判断 そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明は上記「1.補正後の本願発明」の項で認定した補正後の発明から、当該補正に係る構成(「から送信される」という限定)を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る構成を付加した補正後の発明が、上記「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、上記引用例に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明できたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-06-23 |
結審通知日 | 2006-06-27 |
審決日 | 2006-07-11 |
出願番号 | 特願平9-260056 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04M)
P 1 8・ 575- Z (H04M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 秀樹、稲葉 和生 |
特許庁審判長 |
羽鳥 賢一 |
特許庁審判官 |
中木 努 浜野 友茂 |
発明の名称 | 着信転送システム |