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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1142553
審判番号 不服2002-13569  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-01-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-07-18 
確定日 2006-08-21 
事件の表示 平成 6年特許願第 84761号「文書の抽出部分をオブジェクトへとカプセル化する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 1月10日出願公開、特開平 7- 6170〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯、本願発明
本願は、平成6年4月22日(パリ条約による優先権主張1993年4月26日、米国)の出願であって、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成13年10月23日付けの手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、請求項1に記載された次のとおりのものと認めることができる。
「ビデオディスプレイと、オブジェクトを保持するメモリと、オブジェクト指向のオペレーティングシステムを実行する少なくとも1つのプロセッサとを有するデータ処理システムにおいて、
(a)文書の一部分をビデオディスプレイに表示し、
(b)ビデオディスプレイに表示された文書の一部分から抽出されるべき情報を選択し、
(c)その選択された情報を文書から抽出し、そして
(d)その選択された情報を、前記抽出に応答して前記選択された情報をカプセル化するように、前記システムによって自動的に作られ、前記メモリに記憶されたオブジェクトへとカプセル化する、という段階を備えたことを特徴とする方法。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶理由に引用された特開昭61-121160号公報(以下「引用例」という。)には、次のとおりの記載がなされている。
名称を「画像処理システム」とする発明について、
(a)上記発明の画像処理システムは、文書データ、画像イメージデータ等を編集して、印字出力、あるいは、表示することができるものであり、特にデータの切り取り、貼り付け作業において、切り取られたデータを貼り付けておく仮想ウインドウを設け、ここにどのデータから切り取ったデータで、どういう種類のデータかを判別できるようにして表示するものであること、また、当該画像処理システムはシステム制御用マイクロコンピュータ、RAM、ROM等で構成される内部メモリ、フロッピーディスク等で構成される外部メモリを備えた制御部31(ワークステイション)、CRT装置38、キーボード50、ポインティングデバイス61等を備えていること(第1頁左下欄下から4行ないし第4頁左上欄4行、第1-1図、第1-2図)。
(b)上記画像処理システムにおいて切り貼りの機能を実行した場合、CRT38には第13図のような表示をすること、すなわち、F1は切り取る為の枠でS1は切り取られる文章データ、I1は切り取られた文章データを示すi-con(絵文字)、T1はi-conI1が切り取られた元のファイル名、I2は切り取られた文章データを示すi-con、T2はi-conI2が切り取られた元のファイル名、F2はi-conI2で示されるデータが入る枠、G1はi-conI2で示されるデータが貼り付けられた表示である。また、動作としては枠F1を第11図のステップS10で範囲指定した後ポインティングデバイス61で「切取保管」のi-conを指示するとi-conI1及びファイル名T1が表示される。そして又、ポインティングデバイス61で「貼付」のi-conを指示して、i-conI2を指示しその後、枠F2の左上の頂点を指示するとi-conI2が表示された時点に切り取られたデータを枠F2に表示すること(第6頁右下欄最下行ないし第7頁左上欄最下行)。
(c)切り取りの制御手順は第16図(a)のフローチャートで示され、まず第11図のステップS10で範囲指定した後、ポインティングデバイス61でカーソルを動かして、「切取保管」を指示すると、ステップS16-1で指定された範囲内のデータを第17図のようなフォーマットにしてディスクH8に格納、そのデータのファイル名と切り取ってきた元のファイル名をファイル漢字名として付与する。そしてステップS16-2でクリップボード制御テーブルデータidc3、データウインドウWCBアドレスC4、データファイル名C5、データファイル漢字名C6を格納して登録する。そしてステップS16-3でクリップボードがCRT38に表示されているか否かをVRAMH4或いは、PMEMH15をみて判別して表示されていなければ、切り取り作業を終了し、表示されているとステップS16-4にてクリップボードにi-conを表示する。このステップS16-4では、クリップボード制御テーブルのデータidc3及びデータファイル漢字名C6を参照してi-conを表示すること(第7頁左下欄8行ないし右下欄8行)。

3.対比
[3-1]本願の前記請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)と上記引用例に記載された発明(以下「引用発明」という。)とを対比すると次のことが認められる。
(1)引用発明は、引用例の前記記載(a)によれば、CRT装置38、内部、外部メモリ、システム制御用マイクロコンピュータを有する画像処理システムにおいて、文書データ等を編集して表示するものであるから、オペレーティングシステムがオブジェクト指向である点、及び、メモリが保持するものがオブジェクトである点を別にすれば、本願発明と引用発明とは、いずれもビデオディスプレイと、メモリと、オペレーティングシステムを実行する少なくとも1つのプロセッサとを有するデータ処理システムに関するものといえる。
(2)また、引用発明は、引用例の前記記載(b)、(c)によれば、CRT38に文章を表示し、表示された文章の範囲を指定した後、切取保管を指示すると、指定された範囲内のデータをディスクに格納し、対応するi-conをCRT38に表示し、その後、貼付、前記i-conを指示して、貼り付ける位置を指示すると前記データを表示するというのであるから、引用発明は、本願発明と同様、文書の一部分をビデオディスプレイに表示し、ビデオディスプレイに表示された文書の一部分から抽出されるべき情報を選択し、その選択された情報を文書から抽出し、そして、その選択された情報を、メモリに記憶するという段階を備えた方法といえる。
(3)もっとも、本願発明では、上記選択された情報を、抽出に応答してカプセル化するように、前記システムによって自動的に作られ、オブジェクトへとカプセル化する段階を備えているのに対し、引用発明ではそのような点についての開示はない。

[3-2]以上の対比結果によれば、本願発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりであると認めることができる。
[一致点]両者はいずれも、
「ビデオディスプレイと、メモリと、オペレーティングシステムを実行する少なくとも1つのプロセッサとを有するデータ処理システムにおいて、
(a)文書の一部分をビデオディスプレイに表示し、
(b)ビデオディスプレイに表示された文書の一部分から抽出されるべき情報を選択し、
(c)その選択された情報を文書から抽出し、そして
(d)その選択された情報を、前記メモリに記憶する、という段階を備えたことを特徴とする方法」であるといえる点。

[相違点]
本願発明は、上記オペレーティングシステムがオブジェクト指向のオペレーティングシステムであり、上記選択された情報を、抽出に応答して前記選択された情報をカプセル化するように、前記システムによって自動的に作られ、オブジェクトへとカプセル化するという段階を備え、上記メモリは、オブジェクトを保持するのに対し、引用発明ではそのような点についての開示はない点。

4.判断
そこで、以下、上記相違点について判断する。
本願発明や引用発明が属するデータ処理の技術分野において、オブジェクト指向のオペレーティングシステム及び当該オペレーティングシステムを実行するプロセッサは、本願の優先権主張の基礎となる米国出願の出願日(1993年4月26日)前に周知の事項であり、オブジェクト指向プログラムシステムにおいて、データをオブジェクトへとカプセル化することは常套の事項である(「日経バイト」第103号、平成4年9月1日発行、日経BP社、第266頁ないし第274頁、「C MAGAZINE」第2巻、第1号、平成2年1月1日発行、株式会社日本ソフトバンク、第26頁ないし第32頁、「分散オペレーティングシステム-UNIXの次にくるもの」平成3年12月25日発行、共立出版株式会社、第187頁ないし第202頁等参照)ことからすると、引用発明においてオペレーティングシステムとしてオブジェクト指向のオペレーティングシステムを採用し、オペレーティングシステムの機能に含まれるいわゆるクリップボード機能において、表示文書中で選択された情報をメモリに記憶する際、当該情報を抽出に応答してオブジェクトへとカプセル化することは、当業者が格別の困難性なくなし得たことであると認められる。したがって、本願発明が上記相違点に係る構成において格別のものであるとは認められない。

以上判断したとおり、本願発明における上記相違点に係る構成は、当業者に想到し難い格別のものであるとはいえず、また本願発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は他の請求項2ないし18に係る発明について特に、検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-28 
結審通知日 2006-03-31 
審決日 2006-04-11 
出願番号 特願平6-84761
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金子 幸一貝塚 涼  
特許庁審判長 藤内 光武
特許庁審判官 竹井 文雄
野崎 大進
発明の名称 文書の抽出部分をオブジェクトへとカプセル化する方法  
代理人 谷 義一  
代理人 阿部 和夫  
代理人 橋本 傳一  

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