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審決分類 審判 査定不服 1項2号公然実施 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23B
管理番号 1142562
審判番号 不服2004-1122  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-10-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-15 
確定日 2006-08-21 
事件の表示 平成 8年特許願第134494号「サケ科魚類の焙乾品製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年10月21日出願公開、特開平 9-271316〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年4月9日の出願であって、その請求項1に係る発明は(以下、「本願発明」という。)、平成15年10月21日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】次の1乃至4の製法からなることを特徴とするサケ科魚類の焙乾品製造方法。
1.重量比0.05%乃至0.3%のタンパク質分解酵素を内臓摘出後のサケ科類の魚類に注入して、35℃乃至60℃で3時間乃至8時間酵素反応させ、蒸煮した後放冷し、その後、第1の焙乾、あん蒸としては、焙乾をして1晩室温であん蒸した後補修し、第2の焙乾、あん蒸としては、焙乾をして1晩室温であん蒸をし、その後、表面タールを除去してなる。
2.第1の焙乾は80℃乃至100℃で1時間乃至3時間とする。
3.第2の焙乾、あん蒸後の焙乾品は水分15%乃至25%、水分活性0.8以下とする。
4.第2の焙乾、あん蒸は4回乃至6回繰り返す。」
なお、本願については、平成16年2月12日付で手続補正がされたが、これは平成18年3月31日付の補正の却下の決定により却下された。

2.引用例
当審の拒絶の理由に引用された特許第121712号明細書(以下、「引用例1」という。)には、削節用魚類乾製品の製造方法に関し「頭尾内蔵等を除去したる魚類の肉片を適当の大きさに細断し生鮮のまま又は適当時間の加熱を施したるものを蛋白質分解酵素液に適当時間浸漬し又は酵素液の適当量を之に注入したる後焙乾するを特徴とする削節用魚類乾製品の製造方法」(特許請求の範囲の項)、「其の目的とする所は元来鰹節加工方法が製品の形態又は外面の整正に重きを置き其の処理工程複雑にして長時間を要するの欠陥あるを除き形態の良否に重きを置かず肉質の分解を促進し味の良化を主とし削節用乾製品として通常の鰹節類に比較し味感上遜色なき製品を工程極めて簡易に且つ短時間に製了し得んとするにあり」(発明の性質及目的の要領)、及び「先ず原料を削節に適当したる大さに細断し生鮮のまま又は適当時間の煮熟を加えたる後蛋白質分解酵素例えば「パパイヤ」の水溶液中に適当時間浸漬するか又は肉片中に其の適当量を注入し以て蛋白質の分解を促進し香味の増加を誘導せしめたる後常法に依り焙乾して之を製了するときは煮熟及び緩慢なる乾燥はその原料の小形なるが為め極めて簡易且短時日にて其の目的を達することを得へく茲に香味良好、製法簡易、価格低廉なる削節用魚類乾製品の需給を計ることを得へし」(発明の詳細なる説明)と記載されている。
同じく特開平8-47366号公報(以下、「引用例2」という。)には、削り節用魚節の製造方法に関し「また、節用原料魚としてはかつおに限らず、さば、まぐろ、いわし、あじ、鮭、鱈または鯛などいずれの魚を用いても同様の結果を得ることができる。」(段落【0030】)と記載されている。
同じく特開平6-105640号公報(以下、「引用例3」という。)には、「節用原料魚を、蒸気、マイクロ波、オーブン、遠赤外線等の加熱手段で魚肉の表面温度を50℃〜70℃に保持しながら魚肉の中心温度を50℃〜70℃に保持して5分〜20分加温処理した後、ばい乾処理を施すことを特徴とする魚節の製造方法。」(特許請求の範囲の請求項1)、「しかしながら、特開平3ー15339号公報に記載の方法によるときは、原料魚を温水に浸漬するためエキス分が温水に流出し、だし用に適する高いエキス分が得られないという問題がある。」(段落【0007】)、「また、魚肉蛋白質の変性を不完全な状態に抑えるため、ばい乾中の蛋白質の加水分解が起り易くなりエキス分を増加させることができる。さらに魚体を温水などの水に浸漬することなく加温処理するため、エキス分の流出が抑えられ、エキス分を一層増加させることができる。」(段落【0011】)、「(3)次に生肉を並べたせいろに蒸気を照射し、魚肉の表面温度を50℃〜70℃に保持しながら、魚肉の中心温度が50℃〜70℃に達してから10分間保持して加温処理をする。表面温度および中心温度は選出した魚肉に温度計を接地したり、刺し込んで測定する。」(段落【0017】)、及び「本発明によれば、魚肉の自己消化酵素を失活させ、しかも魚肉蛋白質の変性を不完全な状態に抑えたため、旨味成分のイノシン酸含量は従来の節と同様であり苦味の原因となるヒポキサンチンが少なく、魚肉を温水に浸漬しないでエキス分の流出を抑えたため、エキス分が従来の節よりも高いだし用に適する魚節を得ることができる。」(段落【0029】)と記載されている。

3.対比
本願発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、両者は、「魚類の焙乾品製造方法であって、タンパク質分解酵素を内臓摘出後の魚類に注入して、酵素反応させた後に焙乾する」点で一致し、(a)前者では「魚類」が「サケ科類」であるのに対し、後者では「サケ科類」であるか不明である点、(b)前者では、サケ科魚類に対するタンパク質分解酵素の注入量を「重量比0.05%乃至0.3%」に限定すると共に、「35℃乃至60℃で3時間乃至8時間」酵素反応させるのに対し、後者には、酵素の用量、酵素反応の温度及び時間について明らかでない点、(c)前者では、酵素反応させた後に「蒸煮した後放冷」するのに対し、後者ではそれが明らかでない点、(d)前者では、その後「第1の焙乾、あん蒸としては、焙乾をして1晩室温であん蒸した後補修し、第2の焙乾、あん蒸としては、焙乾をして1晩室温であん蒸をし、その後、表面タールを除去し、第1の焙乾は80℃乃至100℃で1時間乃至3時間とする、第2の焙乾、あん蒸は4回乃至6回繰り返す」のに対し、後者では、具体的な焙乾方法について明らかでない点、及び(e)前者では、「第2の焙乾、あん蒸後の焙乾品は水分15%乃至25%、水分活性0.8以下」であるのに対し、後者では、焙乾品の水分量及び水分活性について明らかでない点で、両者は相違する。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
相違点(a)について
引用例2には、削り節用原料魚としてサケを用いることが記載されていることから、引用例1に係る「削節用魚類」としてサケ科魚類を用いることは、当業者が容易になし得ることである。
相違点(b)について
各種食品原料に酵素を加えて酵素反応を行わせるにあたって、酵素の用量、及び酵素反応時の温度と時間についての最適条件を実験により定めることは当業者の慣用手段であり、しかも上記「重量比0.05%乃至0.3%」及び「35℃乃至60℃で3時間乃至8時間」という条件は、タンパク質分解酵素を用いて酵素反応させる場合の通常の条件であるといえるから、上記のような条件で酵素反応を行うことは、当業者において格別困難なことではない。
相違点(c)について
魚節を製造する際に、魚を温水等の水に浸漬した状態で加熱処理するとエキス分が温水に流出するが、魚に蒸気を照射して加熱すればエキス分の流出が抑えられることが引用例3に記載されていることから、酵素処理により生じたうまみ成分の流出を防止するために、蒸気による加熱、すなわち、蒸気を主たる加熱源とする蒸煮という方法を採用することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
相違点(d)について
第1の焙乾をして1晩室温であん蒸した後補修し、第2の焙乾をして1晩室温であん蒸した後表面タールを除去すること、第1の焙乾を約100℃で1時間程度行うこと、及び第2の焙乾-あん蒸を複数回繰り返すことは、いずれも本願出願前に当業者において周知であった(必要なら、例えば須山三千三他1名著「最新食品加工講座 水産加工」株式会社建ぱく社、昭和56年7月20日発行、101頁〜103頁参照。)ことから、上記相違点(d)に係る事項は、当業者において容易になし得ることである。
相違点(e)について
かつお節の1種である本枯節の水分含量が「16%〜18%」であることは、本願出願前に当業者において周知であった(必要なら、上記「最新食品加工講座 水産加工」の104頁参照。)ことから、焙乾品の水分含量を「15%乃至25%」とすることは、当業者が容易になし得ることであり、また、「0.8以下」という水分活性は、保存上の観点から当業者が通常選択する程度の値であるから、焙乾品の水分活性を「0.8以下」にすることも当業者が適宜なし得ることである。
そして、本願発明に係る効果も、引用例1乃至3に記載された事項から予測されるところを超えて優れているとはいえない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1乃至3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるからであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
 
審理終結日 2006-06-23 
結審通知日 2006-06-26 
審決日 2006-07-11 
出願番号 特願平8-134494
審決分類 P 1 8・ 112- WZ (A23B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村上 騎見高  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 鵜飼 健
河野 直樹
発明の名称 サケ科魚類の焙乾品製造方法  
代理人 窪谷 剛至  

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