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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1142563
審判番号 不服2004-2000  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-06-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-03 
確定日 2006-08-21 
事件の表示 平成11年特許願第340298号「記録再生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年6月8日出願公開、特開2001-155450〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成11年11月30日に出願されたもので、当審の拒絶理由に対してなされた平成18年5月17日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、請求項1に記載された事項により特定される、次に記載されたとおりである。
「媒体に情報を記録し又は記録された情報を再生するヘッドを駆動するためのボイスコイルモータドライバを備え、前記ボイスコイルモータドライバにより前記ヘッドを前記媒体の目的位置にシーク動作を行い、フォロー動作を行うことによって情報を記録し又は記録された情報を再生する記録再生装置において、
前記ヘッドのフォロー動作時とシーク動作時とで前記ボイスコイルモータドライバに供給する電源電圧を降圧することにより可変する可変手段を備え、
前記フォロー動作時に前記シーク動作時に比べて低い電圧に可変することを特徴とする記録再生装置。」

2.引用例
(1)これに対して、当審における拒絶の理由で引用した特開平4-150794号公報(以下、「引用例1」という。)には、ブリッジ駆動回路およびそれを用いた磁気ディスク装置について、次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。
ア 「さてここで磁気ディスク装置では磁気ヘッドを移動するためのボイスコイルモータの駆動を行なう。このボイスコイルモータがインダクタンス負荷を形成し、これを出来るだけ低消費電力で駆動したいという要請がある。磁気ヘッドの制御においては、磁気ヘッドをまず目標トラックの位置まで高速に移動するシーク期間がある。ついで目標トラックに移動後に磁気ヘッドを押すバネの反発力と釣り合うトルクを発生させ、磁気ヘッドを目標トラック上に固定してこれをフォローするフォロイング期間がある。シーク期間には磁気ヘッドを高速に移動するため、ボイスコイルモータに大電流を供給する。3.5 インチ磁気ディスクの典型的な一例では、約1A程度の電流を供給する。フォロイング期間には、目標トラック上をフォローするだけでよいので、小電流を供給する。同様の典型的な一例では約100mA程度を供給する。ディスク上に記憶されたデータの読み取りは主にフォロイング期間に行なわれる。シーク期間には、磁気ヘッドを目標トラックへ到達させるために必要な現在のトラック位置等の、サーボデータの読み取りが行なわれる。
上記の磁気ディスク装置の駆動の特徴の1つは、大電流の駆動(シーク期間)と、小電流の駆動(フオロイング期間)が、混在して行なわれることである。」(第3頁左下欄第8行〜同右下欄第13行)
イ 「リニア駆動における消費電力の大きさは、上記の例では、フォロイング期間では負荷電流ILが100mAと小さいのに負荷であるボイスコイルモータの抵抗が10Ω程度と小さい。このためボイスコイルモータではおおよそ1V程度の電圧しか消費されない、従って電源電圧の大部分が能動素子に印加され、このためフォロイング期間において十分低消費電力化できなかった。その結果上記例の駆動回路では消費電力が1W以上必要であった。」(第4頁左上欄第14行〜同右上欄第3行)
ウ 「また、本発明によるとVCMドライバ回路の低消費電力化が可能となるため、サーボ用に使用するマイクロプロセッサまたはデジタルシグナルプロセッサからなるデジタル演算回路をドライバ回路とワンチップ化することも可能となる。このため、駆動ボードの小型化が図れるという効果がある。」(第7頁左下欄第11行〜同第17行)

上記記載によれば、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されている。
「磁気ヘッドを移動するためのボイスコイルモータの駆動を行なう磁気ディスク装置において、
シーク期間にはボイスコイルモータに大電流を供給し、フォロイング期間には小電流を供給する磁気ディスク装置。」

(2)同じく、当審における拒絶の理由で引用した特開平7-287916号公報(平以下、「引用例2」という。)には、取外し自在のディスク装置について、次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。
エ 「【0004】
【発明が解決しようとする課題】取外し自在のディスク装置の一つの問題点は、携帯形コンピュータは典型的には5ボルト電源しか供給されないので、携帯形に実装される場合にディスク装置の性能が制限される傾向のあることである。一方、デスクトップ形装置は5ボルト及び12ボルトの両方の電源を供給し、デスクトップ形装置の利用者は12ボルト電源で利用可能なより優れたディスク性能に即座に慣れる。殆どの最新式ディスクドライブ装置において、ディスク上にヘッドを位置決めするために使用されるボイスコイルモータは、5ボルト電源よりも12ボルト電源でドライブされる場合に著しく良好な性能を提供することが当業者により認められる。
【0005】従って、従来技術では、携帯形コンピュータの環境において5ボルトで機能するディスクドライブ装置が必要とされ、一方、ディスクトップ形コンピュータの環境において12ボルトで機能するディスクドライブが切望される。本発明の第1の目的は、アクチュエータが5ボルト又は12ボルトの何れでもドライブし得る電圧検出式ディスクドライブ装置を提供することである。」
オ 「【0015】電流変換器112への電圧は、D/A変換器からの信号に応じて、VCMドライバ回路114を制御する。相互コンダクタンス増幅器は電流を制御するために典型的に使用される。VCMドライバ回路は、5ボルトと12ボルトの動作の両方に適合するよう比較的広い電圧レンジで動作することが必要とされ、例えば、アレグロ社製8958形装置を使用しても良い。」

(3)同じく、当審における拒絶の理由で引用した特開平11-53743号公報(平成11年2月26日公開。以下、「引用例3」という。)には、光ディスク再生装置及びシーク制御方法について、次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。
カ 「【0019】一般に、光ディスク再生装置においては、サーチ動作における光ピックアップユニットの移動(シーク)動作、例えば、光ピックアップ移動手段が光ピックアップユニットを光ディスク半径方向へ移動させる場合には、光ピックアップ移動手段への電源供給手段からの印加電圧が高い方が、安定した光ピックアップユニットの移動制御(特に密シーク時における精密移動制御)を行うことが可能となる。しかし、印加電圧が高くなると、消費電力が大きくなるうえ、光ピックアップユニット移動時の騒音が大きくなるという欠点があった。逆に、印加電圧を低くすると、消費電力は小さくなるが、光ピックアップ移動手段の負荷変動に対応できなくなるおそれ(特に粗シーク時)がある、という問題があった。」
キ 「【0056】ステップ7の粗シークか密シークかの判断結果に従い、スレッドモータ305に供給される印加電圧がスレッドモータ電圧制御手段24によって制御される。すなわち、密シークと判断された場合には、スレッドモータ電圧制御手段24の制御により、スレッドモータ電圧切替手段32がバッテリー23からの印加電圧を3.9Vの側に切り替え制御する。また、粗シークと判断された場合には、スレッドモータ電圧制御手段24の制御により、スレッドモータ電圧切替手段32が2.5Vの側に切り替え制御される(ステップ8a,8b)。」

(4)同じく、当審における拒絶の理由で引用した特開平3-293986号公報(以下「引用例4」という。)には、モータ制御回路について、次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。
ク 「第1図は本発明のモータ制御回路の一実施例のブロック図である。
本実施例では、速度制御回路1はモータ回転速度信号検出回路3より出力された回転速度信号aを受け、この回転速度信号aに対応する速度差電圧すを発生し、位相制御回路2は回転位相基準信号Cとモータ回転位相検出回路4より出力された回転位相信号dとを受け、これらの位相差に対応する位相差電圧eを発生する。これらの速度差電圧すと位相差電圧eを加算器5で加算してモータ駆動電圧fを発生する。そして、可変電源回路6は回転速度信号aを受け、この周期に対応するモータ印加電圧gを供給する。またモータ駆動回路7はモータ駆動電圧fとモータ印加電圧gによってモータ10を駆動する。つまり、モータ駆動回路7はモータ10の駆動時には高電圧を供給し、モータ10の定常回転時には低電圧を供給する。
〔発明の効果〕
以上説明したように本発明は、回転速度信号によりモータ供給電圧を起動時には高電圧にし、定常回転時には低電圧に可変するようにしたので、モータの起動の高速化、低消費電力化という効果を有する。」(第2頁左欄第7行〜同右欄第9行)

3.対比
本願発明と引用例1発明とを対比する。
引用例1発明における、磁気ディスク装置の「磁気ヘッド」は、本願発明の、磁気ディスクに情報を記録し又は情報を再生する「ヘッド」に相当する。
引用例1発明の「ボイスコイルモータ」は、磁気ヘッドを移動するためのモータであり、ボイスコイルモータはドライバを備えていることは明らか(上記「2.(1)ウ」「2.(2)オ」参照)であるから、ボイスコイルモータがドライバを備えている点において、本願発明の「ヘッドを駆動するためのボイスコイルモータドライバを備え」た構成といえる。
引用例1発明の「シーク期間」の動作は、本願発明の「シーク動作」に相当し、また引用例1発明の「フォロイング期間」の動作は、本願発明の「フォロー動作」に相当する。
引用例1発明の「磁気ディスク装置」は、本願発明の、ボイスコイルモータドライバによりヘッドを媒体の目的位置にシーク動作を行い、フォロー動作を行うことによって情報を記録し又は記録された情報を再生する「記録再生装置」に相当する。

引用例1発明の「シーク期間」は、磁気ヘッドを目標トラックの位置まで高速に移動するための期間であり、本願発明の「シーク動作時」に相当する。
引用例1発明の「フォロイング期間」は、磁気ヘッドを目標トラック上に固定してこれをフォローする期間であり、本願発明の「フォロー動作時」に相当する。
引用例1発明の「フォロイング期間」に印加される電源電圧(上記「2.(1)イ」参照)は、ボイスコイルモータの電源電圧であり、「シーク期間」においても印加される電源電圧であるから、引用例1発明においても、本願発明の、ヘッドのフォロー動作時とシーク動作時とでボイスコイルモータドライバに供給する「電源電圧」を備えているといえる。
引用例1発明の「シーク期間にはボイスコイルモータに大電流を供給し、フォロイング期間には小電流を供給する」ことは、シーク期間の電流がフォロイング期間より大であるから、フォロイング期間の電圧がシーク期間のものより低く変わることを意味しているから、本願発明の「フォロー動作時に」「シーク動作時に比べて低い電圧」とすることに相当する。

したがって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「媒体に情報を記録し又は記録された情報を再生するヘッドを駆動するためのボイスコイルモータドライバを備え、前記ボイスコイルモータドライバにより前記ヘッドを前記媒体の目的位置にシーク動作を行い、フォロー動作を行うことによって情報を記録し又は記録された情報を再生する記録再生装置において、
前記ヘッドのフォロー動作時とシーク動作時とで前記ボイスコイルモータドライバに供給する電源電圧を備え、
前記フォロー動作時に前記シーク動作時に比べて低い電圧とする記録再生装置。」
<相違点>
本願発明では「電源電圧を降圧することにより可変する可変手段」を備えて、フォロー動作時にシーク動作時に比べて低い電圧に「可変する」と、特定しているのに対して、引用例1発明には、このような特定された構成をそなえていない点。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
引用例2には、携帯形コンピュータに取り付けられるディスク装置のアクチュエータが5ボルト又は12ボルトの何れの電源でも動作しえるVCMドライバ回路が記載されている。引用例3には、スレッドモータが3.9V又は2.5Vで制御されることが記載されている。また、低消費電力化のために、モータ供給電圧を高電圧と低電圧に可変する可変電源回路が引用例4に記載されてるように、モータに供給する電圧を可変させて消費電力を低く抑えていることは周知(特開平3-128694号公報(出力電圧可変可能な電源1参照))である。
してみれば、低消費電力で駆動することを目的とした引用例1発明のディスク装置において、シーク期間にはボイスコイルモータに大電流を供給し、フォロイング期間には小電流を供給するために、電源電圧を降圧することにより可変する可変手段を設け、フォロイング期間時にシーク期間動作時に比べて低い電圧に可変するように構成することは、当業者であれば容易に推考できることと認められる。当該相違点は、格別なものではなく、奏される効果も当業者が当然に予測できる範囲内のものと認められる。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1乃至4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-14 
結審通知日 2006-06-15 
審決日 2006-07-10 
出願番号 特願平11-340298
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齊藤 健一梅岡 信幸船越 亮岩井 健二  
特許庁審判長 片岡 栄一
特許庁審判官 山田 洋一
相馬 多美子
発明の名称 記録再生装置  
代理人 山下 穣平  

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