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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A23L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1142565
審判番号 不服2004-10347  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-10-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-14 
確定日 2006-08-21 
事件の表示 特願2001-139328「大豆搬送浸漬装置と大豆浸漬方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月 8日出願公開、特開2002-291435〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年4月2日の出願であって、平成16年3月11日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年4月14日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年4月14日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年4月14日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
上記補正は、平成15年7月7日付手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項2及び3を削除するとともに、同請求項1を「浸漬前の大豆を所要の速さで、先入れ先出しで搬送し、排出する大豆搬送装置、搬送中の大豆に所要量加水する所要数の加水装置、加水する水を所要の温度に設定する水温設定装置、からなる、豆腐類製造用大豆搬送浸漬装置。」と、同請求項4を請求項2として「浸漬前の大豆を所要流量で供給し、それを所要速度で、先入れ先出しで搬送し、搬送中に、所要温度に設定された所要水量の水で浸漬する、豆腐類製造用大豆の浸漬方法。」と補正するものである。
上記補正は、平成15年7月7日付手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載の発明を特定するために必要な事項である「大豆搬送浸漬装置」を「豆腐類製造用大豆搬送浸漬装置」と限定し、同じく請求項4に記載の発明を特定するために必要な事項である「大豆の浸漬方法」を「豆腐類製造用大豆の浸漬方法」と限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2、4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2、5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(独立特許要件について)
(1)本願補正発明
本願補正発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】浸漬前の大豆を所要の速さで、先入れ先出しで搬送し、排出する大豆搬送装置、搬送中の大豆に所要量加水する所要数の加水装置、加水する水を所要の温度に設定する水温設定装置、からなる、豆腐類製造用大豆搬送浸漬装置。」

(2)引用例
当審において新たに発見された「特開昭62-262959号公報」(以下、「引用例1」という。)には、下記(a)ないし(g)の事項が記載されている。
(a)「スクリューフィーダーを架設したトラフの始端側に浸漬水の定量供給装置と大豆の定量供給装置を夫々連結すると共に、前記トラフの終端側底部には定量排出装置を連結し、かつトラフに水位調節管を連結し、該水位調節管の排出端を前記定量排出装置の排出側に合流させたことを特徴とする大豆の連続処理装置」(特許請求の範囲の6項)
(b)「この発明は豆乳又は豆腐を製造する際の大豆の処理方法および連続処理装置に関し、食品の製造分野で利用される。」(1頁右下欄10〜12行)
(c)「一方浸漬水の定量供給装置10は第3図に示したようにスチームミキサー14、水温計15、流量調整弁16およびフローメータ17を順次連結して構成してあり、フローメータ17の出口側に接続された配管18の外端が前記トラフ2の始端側壁に開口している。トラフ2の上部には長手方向に散水管19が設置してあり、該散水管19の一端も前記配管18と連結されている。図中20、21は夫々バルブであって、トラフ2内に直接流入する浸漬水と、散水管19を経てトラフ2内に流入する浸漬水の割合を調節できるようになっている。」(3頁左上欄16行〜右上欄7行)
(d)「前記スチームミキサー14には蒸気配管24と水配管25とが連結されてあり、水温計15を見ながらスチームミキサー14を調節して、所定温度の浸漬水が得られるようになっている。」(3頁右上欄12〜15行)
(e)「上記の連続処理装置において、各変速機付モータ6.13.30を夫々駆動すると共に、ホッパー11に、乾燥後脱皮かつ分割した大豆を投入する一方、浸漬水の定量供給装置10より浸漬水を供給すると、大豆は定量宛トラフ2内に投入されて、トラフ2内で浸漬水に浸漬され乍ら、矢示34の方向へ搬送されて、浸漬を完了した大豆が定量排出装置27より順次得られる。大豆の浸漬時間は、スクリューフィーダー3を駆動する変速機付モータ6を調節して、所定の時間に設定することができる。」(3頁左下欄末行〜右下欄10行)
(f)「散水管19から供給される浸漬水はスクリューフィーダー3の全長に亘って散水され、スクリューフィーダー3に付着した大豆を洗い流し、浸漬水内へ戻すことができる。」(3頁右下欄12〜16行)
(g)「浸漬水の定量供給装置10は、35℃の温水が300l/hで供給できるように設定し、一部を散水管19より供給し、残部は直接トラフ2へ供給した。」(4頁左上欄9行〜12行)
上記(a)ないし(g)の記載からみて、引用例1には、スクリューフィーダーを架設したトラフの始端側に浸漬水の定量供給装置と大豆の定量供給装置を夫々連結すると共に、前記トラフの終端側底部には定量排出装置を連結し、かつスクリューフィーダーの全長に亘って散水するための散水管をトラフの上部に長手方向に設け、さらに、浸漬水の定量供給装置及び散水管に供給する水を所要の温度に設定する水温度設定装置を設けてなる豆腐類製造用大豆の連続処理装置」が記載されているといえる。

(3)対比・判断
本願補正発明と引用例1に記載の発明を対比すると、両者は「浸漬前の大豆を所要の速さで搬送し、排出する大豆搬送装置、搬送中の大豆に所要量加水する所要数の加水装置、加水する水を所要の温度に設定する水温設定装置からなる、豆腐類製造用大豆搬送浸漬装置」の点で一致し、ただ、搬送が、前者では「先入れ先出し」で行っているのに対して、後者では、それについて明確でない点で、両者は一応相違する。
この相違点について検討するに、引用例1において、大豆は、トラフの始端側の定量供給装置から供給され、スクリューフィーダーにより搬送されながら、トラフの終端側底部の定量排出装置から連続的に排出されるものであるから、先に供給された大豆が、先に排出されることは、技術常識上当然のことである。そうすると、この相違点は、両者の実質的に相違点とはなり得ない。
してみれば、本願補正発明は、引用例1に記載された発明であるということになり、特許法29条1項3号の規定に該当し、特許を受けることができない。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2、5項で準用する同法126条5項の規定に違反するので、特許法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成16年4月14日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成15年7月7日付手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項4に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「浸漬前の大豆を所要流量で供給し、それを所要速度で、先入れ先出しで搬送し、搬送中に、所要温度に設定された所要水量の水で浸漬する、大豆の浸漬方法。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された「特開平8-56589号公報」(以下、「引用例2」という。)には、
(a)「本発明は、米、麦、大豆、とうもろこし等の穀類、香辛料等の食品からなる粒状又は粉状の原料、特に醤油製造における脱脂大豆を、連続加圧蒸煮処理するための予熱方法と加圧蒸煮方法及びその装置に関する。」(段落【0001】)、
(b)「図1は、本発明の予熱方法及び加圧蒸煮方法を用いた、醤油醸造用の脱脂大豆を処理するための散水装置1、撹拌予熱装置2、滞留装置3と連続加圧蒸煮装置4との構成図である。散水装置1の投入口5から投入された原料である脱脂大豆は、パドルスクリュー6により温水と共に撹拌されながら撹拌予熱装置2へ送られ、大気圧下の飽和水蒸気雰囲気中で予熱されて、滞留装置3から外気を混入することなく加圧蒸煮装置4へ投入される。」(段落【0012】)、及び
(c)「図1を参照して、各装置の構成、作用について説明する。散水装置1は、脱脂大豆に温水を散水して膨潤させる装置で、モータ11駆動のパドルスクリュー6を内蔵している。この散水処理は、予熱処理の前工程に当るもので、パドルスクリュー6により撹拌されながら移送される脱脂大豆に対して、135重量%、80℃の温水を散水する。過剰蒸気は、排蒸気ファン12から排出する。散水された脱脂大豆は、密閉された連結路13を撹拌予熱装置2へ送られる。」(段落【0013】)と記載されている。
上記摘示事項(b)によると、装置の投入口から投入された脱脂大豆は、パドルスクリューにより温水と共に撹拌されながら送られ、同(c)によると、脱脂大豆に対して135重量%、80℃の温水という所要温度に設定された所要水量の水で散水処理するものであり、しかも、同(a)によると、引用例2に係る装置は、連続処理されるものであるから、大豆は所要流量で供給されるものと解される。
そうすると、引用例2には、「大豆を所要流量で供給し、それを所要速度で搬送し、搬送中に、所要温度に設定された所要水量の水で処理する大豆の散水処理方法」という発明が記載されているといえる。

(2)対比・判断
本願発明と引用例2に記載の発明を対比すると、両者は「処理前の大豆を所要流量で供給し、それを所要速度で搬送し、搬送中に、所要温度に設定された所要水量の水で処理する大豆の処理方法」の点で一致し、ただ、(i)搬送が、前者では「先入れ先出し」で行っているのに対して、後者では、それについて明確でない点、及び(ii)処理が、前者では「浸漬」であるのに対して、後者では「散水」である点で相違する。
相違点(i)について
引用例2において、大豆は、投入口から供給され、パドルスクリューにより搬送されながら次工程の装置へ連続的に送られるものであるから、先に供給された大豆が、先に排出されることは、技術常識上当然のことである。
そうすると、相違点(i)は、両者の実質的に相違点とはなり得ない。
相違点(ii)について
引用例2には、「パドルスクリュー6により撹拌されながら移送される脱脂大豆に対して、135重量%、80℃の温水を散水する。」(摘示事項(c)参照。)と記載されているが、大豆に対する上記散水量を考慮すると、引用例2において、散水後の大豆が浸漬状態に置かれることは明らかであり、相違点(ii)も、両者の実質的な相違点とはならない。
したがって、本願発明は、引用例2に記載された発明であるということになる。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例2に記載された発明であるから、特許法29条1項3号の規定に該当し特許を受けることができない。
したがって、本出願に係る他の請求項について検討するまでもなく、本出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-08 
結審通知日 2006-06-13 
審決日 2006-07-03 
出願番号 特願2001-139328(P2001-139328)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A23L)
P 1 8・ 113- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 淳子  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 河野 直樹
高堀 栄二
発明の名称 大豆搬送浸漬装置と大豆浸漬方法  

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