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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1142579
審判番号 不服2005-1295  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-09-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-01-20 
確定日 2006-08-24 
事件の表示 特願2001- 54935「半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月13日出願公開、特開2002-261210〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、平成13年2月28日の出願であって、平成16年12月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年1月20日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると共に、平成17年2月18日付けで手続補正がなされたものである。

[2]平成17年2月18日付け手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成17年2月18日付けの手続補正を却下する。

〔理由〕
1.手続補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲において、請求項1等を引用して記載された請求項6だけを次のとおりに補正するものである。
「【請求項6】 請求項1から請求項3の何れかに記載の半導体装置において、前記半導体チップの他方の面にリード電極体を接続し、前記高温半田が、Pb-Sn系半田あるいは、Sn-Ag系半田あるいは、Sn-Zn系半田あるいは、Au-Sn系半田であることを特徴とする半導体装置。」
この補正は、請求項1に記載されていることにより請求項6記載の発明を特定するために必要な事項となっている「高温半田」に関し、「前記高温半田が、Pb-Sn系半田あるいは、Sn-Ag系半田あるいは、Sn-Zn系半田あるいは、Au-Sn系半田である」と限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、特許法第17条の2第4項第2号において問題とされているのは、「特許請求の範囲」全体について減縮があったか否かであり、「特許請求の範囲」全体に減縮があれば、同条第5項により、「特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明」について独立特許要件の判断が必要となるものと解される〔平成17年(行ケ)第10266号判決参照〕。
そこで、本件補正により補正されていない請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本出願前頒布された刊行物である引用例1、2とその主な記載事項は、後記[3]2.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明1は、後記[3]3.に記載したとおり、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

[3]本願発明について
1.本願発明
平成17年2月18日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜9に係る発明は、平成16年11月29日付け手続補正書で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(「本願発明1」)は、次のとおりのものである。
「熱膨張緩和体を中間に介して半導体チップの一方の面を高温半田を用いて接合支持する支持電極体と、
前記支持電極体を圧入する穴部を有する放熱板とを備え、前記半導体チップに発生した熱を前記放熱板を介して放熱する半導体装置において、
前記支持電極体が、ジルコニウムを含有する銅合金製であって、前記支持電極体のビッカース硬度が前記放熱板のビッカース硬度よりも大きく、前記支持電極体が前記半導体チップを前記熱膨張緩和体を介して収容する凹部を有する柱状体であって、該支持電極体の凹部の底面が前記放熱板の上面と下面との間に位置し、該支持電極体の凹部底面の厚さが前記放熱板の穴部の厚さより薄いことを特徴とする半導体装置。」

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本出願前頒布された刊行物である引用例1、2とその主な記載事項は、次のとおりである。
〔1〕引用例1:特開昭55-19828号公報
〔1a〕「第1図は、正方形のシリコンチップを使用した圧入型半導体整流装置13を放熱板7に圧入した状態を示す概略平面図、第2図はそのA-A’線拡大断面図で、正方形シリコンチップ1は、その裏面において、従来から一般に使用されているローレット付凹型ケース2の底板フラット部21に、半田等のろう材3Aを介してろう付けされる。シリコンチップ1の表面には、リード線4がろう材3Bによりろう付けされる。更に、表面安定剤としてシリコンゴム5が注入され、・・・。これを自動車の三相交流発電機用として用いる場合には、導電および熱伝導の目的によりケース2を金属製放熱板7の穴7Aに圧入しなければならない・・・」(第2頁左上欄第2〜20行)
〔1b〕第1図の半導体整流装置を放熱板に圧入した状態を示す平面図、及び、そのA-A’線拡大断面図を示す第2図から、半導体整流装置の凹型ケースは、底板フラット部が放熱板の上面と下面の間に位置し、底板フラット部の厚さが前記放熱板の穴部の厚さより薄い柱状体であることが読み取れる。(第4頁第1図及び第2図参照)
〔2〕引用例2:特開平11-307682号公報
〔2a〕「【従来の技術】従来、交流発電機の交流出力を直流出力に変換する半導体装置においては、例えば、凹型の支持電極体の底板フラット部に半導体チップを固着し、凹型の支持電極体を導電性および熱伝導性のある金属材放熱板に圧入して用いる圧入型半導体装置が特開昭55-19828号公報に開示されている。
【発明が解決しようとする課題】上記従来の圧入型半導体装置の半導体チップ部分は、絶縁保護を目的として絶縁材料で封止されている。絶縁材料としてはシリコンゴムが多く使われているが、エポキシ系樹脂を用いる場合もある。
半導体装置の圧入による放熱板支持固定は、放熱板に支持電極体の外径よりも若干小さい内径を持った円形の取付穴を設け、支持電極体に荷重を加えてこの取付穴に挿入することによって行われる。
そのため、従来構造の半導体装置を放熱板に圧入した場合、半導体チップには支持電極体を介して、大きな力が加わる。これにより圧入時に半導体チップが破壊する場合がある。その防止のために、支持電極体と半導体チップとの間に板状の中間部材を介在させることが考えられるが、この対策では、部品点数の増加と組立性悪化によりコストが大幅に上昇するので、好ましくない。また、圧入時には、凹型支持電極体の側壁が内周側に変形し、絶縁部材が圧縮される。絶縁部材に縦弾性係数の大きいエポキシ系の樹脂が用いられている場合は、その変形により生じた力が半導体チップに伝わるため、半導体チップの破壊がより生じ易くなる。
そこで、圧入時に支持電極体から半導体チップに加わる力を従来構造より低減した図2に示す試作構造を作成し、圧入実験を行った。試作構造は、放熱板4から加わる圧縮力による支持電極体3の湾曲を防ぐ目的で、支持電極体3の厚さを従来構造より厚くしたものである。半導体チップはエポキシ系樹脂で封止している。実験の結果、半導体チップ1に図2に示す外周側側面からの横割れや上面からの縦割れのような破壊が見られる場合もあった。これは、支持電極体3から半導体チップ1に加わる力を低減する機能が不十分なことが原因であると推測される。
また、圧入時の支持電極体3と放熱板4の接触により、絶縁部材7が支持電極体3から剥がれる問題が発生した。この原因は放熱板4から支持電極体3に加わる力により、支持電極体が大きく変形したためである。被水の可能性が高い環境下で使用される場合には、この剥がれ部分から水が浸入し、逆方向リーク電流の増加による整流作用の低下等の問題が発生する可能性がある。
【課題を解決するための手段】上記の課題は、支持電極体および絶縁材料を介して半導体チップに加わる力を減少させることで解決できる。また、支持電極体と絶縁部材の接着面近傍での圧入による支持電極体の変形を減少させることによって解決することができる。
本発明の半導体装置は、半導体チップと、この半導体チップの一端側に接合部材を介して接合された支持電極体であって、外周には放熱板に支持固定するための放熱板固定部が形成された支持電極体と、前記半導体チップの他端側に接合部材を介して接合されたリード電極体と、前記半導体チップと前記支持電極体との接合部及び前記半導体チップと前記リード電極体との接合部に配設された絶縁封止部材とを備えた半導体装置において、次の構成要件を備えたことを特徴とする。
(1):前記支持電極体には、前記放熱板固定部とは外径の異なる第1の部位が形成されていること。◆
(2):(1)において、前記第1の部位の外径は前記放熱板固定部の外径の0.95倍以下であること。◆これにより、放熱板から加わる力が支持電極体内で分散するため、上記の課題を解決することができる。
本発明者の実験および数値解析による検討によると、図3に示すようにチップ搭載面側の円柱状の外径または円錐台状の最大外径が、支持電極体の0.95倍以下であれば、半導体チップに発生する応力は破壊応力限度以下となることがわかった。
(3):(1)または(2)において、・・・
(4):(1)または(2)において、前記支持電極体の厚さから前記支持電極体の半導体チップ搭載面から放熱板に接する部分の厚さを除いた厚さが、前記支持電極体の最大外径の0.07倍以上0.25倍以下または0.47倍以上であること。・・・
(5):(1)または(2)において、・・・
(6):(1)または(2)において、前記半導体チップと前記支持電極体との間に板状の部材を介在させたこと。◆このように形成すれば、半導体チップが板状部材(半導体チップ搭載板)を介して支持電極体に搭載されるため、圧入時に支持電極体から半導体チップに伝わる力を低減できる。また、接合部材の疲労寿命も向上できる。
さらに、(1)または(2)において、・・・
また、(1)または(2)において、前記支持電極体のビッカース硬さを、圧入される放熱板のビッカース硬さより大きくすれば、圧入時に放熱板が大きく変形し、支持電極体の変形は小さくなる。よって、半導体チップの破壊や絶縁部材と支持電極体の剥離を防止できる。本発明者の実験による検討によると、放熱板の材質が無酸素銅の場合、ジルコン銅または錫入り銅または銀入り銅またはクロム入り銅を用いることが望ましいことを見出した。」(段落【0002】〜【0018】)
〔2b〕「半導体チップ1と両電極体3、6を電気的に接合する接合部材2、5には、融点300℃程度の高温はんだ(Pb-Sn系はんだ)が用いられ、機械的な接合も兼ねている。熱伝導性および電気伝導性があり、半導体チップ1が機能的に損なわれない温度で接合でき、使用期間内の両電極体3、6と半導体チップ1の接合が確保できる材質であれば、他の組成のはんだ・・・などを用いても何ら問題はない。使用する接合部材の例として、Sn-Ag系、Sn-Zn系、Au-Sn系のはんだがあげられる。・・・」(段落【0028】)
〔2c〕「・・・はんだ付け工程では200℃から400℃程度の温度が1回から5回程度支持電極体3に加わる。銅系合金の中には無酸素銅のように、この温度負荷により焼きなましが起こり、ビッカース硬さが小さくなるものがある。一方、放熱板4は一般的に焼きなましが起こるような熱負荷を受けることがない。そのため、支持電極体3と放熱板4に同じ材質の銅系合金を使った場合、熱負荷を受けない放熱板のほうがビッカース硬さが大きくなる場合がある。この場合、圧入時に支持電極体3が大きく変形し、半導体チップ1の破壊や絶縁部材7と支持電極体3の剥離が起こる可能性が大きい。
以上の理由から、はんだ付け温度負荷後の圧入時において、支持電極体3のビッカース硬さが、放熱板4のビッカース硬さより大きれば、支持電極体3の変形に起因する半導体チップ1の破壊および絶縁部材7の剥離が防止できる。よって、支持電極体3には、はんだ付け温度を負荷しても、ビッカース硬さの低下が起こらない材料を用いるのが望ましい。例えば、銅系合金では、ジルコン銅、錫入り銅、銀入り銅、クロム入り銅などがあげられる。」(段落【0029】〜【0030】)
〔2d〕「半導体チップ搭載板の材質としては、その部材の線膨張係数が支持電極体3の線膨張係数より半導体チップ1の線膨張係数に近いものが好ましい。例えば、モリブデンや銅-インバー-銅クラッド材、タングステン、鉄系合金などがあげられる。
半導体チップ1が半導体チップ搭載板8を介して支持電極体3に搭載されることにより、圧入時に支持電極体3から半導体チップ1に伝わる力を低減できる。また、接合部材5の疲労寿命が向上できる。」(段落【0045】〜【0046】)

3.当審の判断
3-1.引用例1に記載された発明
引用例1の上記〔1a〕には、“半導体整流装置を金属製放熱板の穴に圧入したもの”(以下、「半導体装置」という)について、「第1図は、正方形のシリコンチップを使用した圧入型半導体整流装置13を放熱板7に圧入した状態を示す概略平面図、第2図はそのA-A’線拡大断面図で、正方形シリコンチップ1は、その裏面において、従来から一般に使用されているローレット付凹型ケース2の底板フラット部21に、半田等のろう材3Aを介してろう付けされる。シリコンチップ1の表面には、リード線4がろう材3Bによりろう付けされる。更に、表面安定剤としてシリコンゴム5が注入され、・・・。これを自動車の三相交流発電機用として用いる場合には、導電および熱伝導の目的によりケース2を金属製放熱板7の穴7Aに圧入しなければならない・・・」と記載され、また、第1図の半導体整流装置を放熱板に圧入した状態を示す平面図、及び、そのA-A’線拡大断面図を示す第2図から、上記〔1b〕のとおり、“半導体整流装置の凹型ケースは、底板フラット部が放熱板の上面と下面の間に位置し、底板フラット部の厚さが前記放熱板の穴部の厚さより薄い柱状体である”ことが読み取れるから、「ろう材」が「半田」である場合について、これらの事項を整理すると、引用例1には、
「正方形シリコンチップの裏面がローレット付凹型ケースの底板フラット部に半田付けされ、シリコンチップの表面には、リード線が半田付けされ、更に、表面安定剤としてシリコンゴムが注入された半導体整流装置を金属製放熱板の穴に圧入した半導体装置であって、半導体整流装置の凹型ケースは、底板フラット部が放熱板の上面と下面の間に位置し、底板フラット部の厚さが前記放熱板の穴部の厚さより薄い柱状体である半導体装置。」という発明(以下、「引用例1発明」という)が記載されていると認められる。

3-2.本願発明1と引用例1発明との対比
本願発明1と引用例1発明を対比すると、引用例1発明における「シリコンチップ」は、本願発明1における「半導体チップ」に、引用例1発明における「凹型ケースの底板フラット部」は、本願発明1における「凹部の底面」乃至「凹部底面」に、それぞれ相当する。
また、引用例1発明における「半導体整流装置の凹型ケース」は、その凹部にシリコンチップ(半導体チップ)を収容し、シリコンチップの一方の面を半田を用いて接合支持すると共に、金属製放熱板の穴(穴部)に圧入されるものであるから、本願発明1における「支持電極体」に相当するといえる。
そうすると、両者は、
「半導体チップの一方の面を半田を用いて接合支持する支持電極体と、前記支持電極体を圧入する穴部を有する放熱板とを備え、前記半導体チップに発生した熱を前記放熱板を介して放熱する半導体装置において、前記支持電極体が前記半導体チップを収容する凹部を有する柱状体であって、該支持電極体の凹部の底面が前記放熱板の上面と下面との間に位置し、該支持電極体の凹部底面の厚さが前記放熱板の穴部の厚さより薄い半導体装置。」である点で一致するが、次の点で相違する。
相違点:
(イ)本願発明1では、支持電極体における半導体チップの一方の面の接合支持に用いる半田が、「高温半田」であるのに対し、引用例1発明では、「高温半田」を用いることが規定されていない点。
(ロ)本願発明1では、支持電極体における半導体チップの一方の面の半田を用いた接合支持が、「熱膨張緩和体を中間に介して」なされ、かつ、支持電極体の柱状体凹部における半導体チップの収容が、「前記熱膨張緩和体を介して」なされるのに対し、引用例1発明では、半導体チップのそのような接合支持や収容が熱膨張緩和体を介してなされることが規定されていない点。
(ハ)本願発明1では、「前記支持電極体が、ジルコニウムを含有する銅合金製であって、前記支持電極体のビッカース硬度が前記放熱板のビッカース硬度よりも大き」いのに対し、引用例1発明では、支持電極体の材料や、支持電極体と放熱板の硬度についての関係が規定されていない点。

3-3.相違点についての判断
(i)相違点(イ)について
引用例2の上記〔2b〕には、半導体チップと電極体を接合する接合部材として高温はんだ(本願発明1における「高温半田」に相当するもの)を用いることが記載され、しかも、該高温はんだは、上記〔2a〕の記載から明らかなように、本願発明1や引用例1発明における半田と同様に、放熱板の穴部に圧入される支持電極体に対し半導体チップの一方の面を接合支持するのに用いるものである。
してみれば、引用例1発明において、そのような支持電極体における半導体チップの一方の面の接合支持に用いる半田を「高温半田」とすることは、引用例2の前示の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものというべきである。

(ii)相違点(ロ)について
引用例2の上記〔2a〕には、凹型の支持電極体を金属材放熱板に圧入して用いる従来の半導体装置では、圧入時に支持電極体を介して半導体チップに大きな力が加わったり、凹型支持電極体の側壁が内周側に変形し絶縁部材が変形することにより、半導体チップが破壊する等の解決すべき課題が存在すること、そのような課題は、支持電極体及び絶縁材料を介して半導体チップに加わる力を減少させ、また、支持電極体と絶縁部材の接着面近傍での圧入による支持電極体の変形を減少させることによって解決できること、具体的には、次の(1)、(2)等の構成要件を備えることが記載され、(2)の構成要件を備えれば、放熱板から加わる力が支持電極体内で分散するため、上記の課題を解決できることも示されている。
「(1):前記支持電極体には、前記放熱板固定部とは外径の異なる第1の部位が形成されていること。・・・
(2):(1)において、前記第1の部位の外径は前記放熱板固定部の外径の0.95倍以下であること。・・・」

また、上記〔2a〕には、上述のような記載に続けて、
〔A〕:(1)または(2)において、前記半導体チップと前記支持電極体との間に板状の部材を介在させれば、半導体チップが板状部材(半導体チップ搭載板)を介して支持電極体に搭載されるため、圧入時に支持電極体から半導体チップに伝わる力を低減でき、また、接合部材の疲労寿命も向上できる旨、
などの前記課題を解決するための教示が記載されている。
さらに、上記〔2d〕には、
〔B〕:半導体チップ搭載板の材質としては、その部材の線膨張係数が支持電極体の線膨張係数より半導体チップの線膨張係数に近いものが好ましく、例えば、銅-インバー-銅クラッド材などがあげられる旨、
などの教示も記載されている。

そして、引用例1発明は、前示のとおり、シリコンチップ(半導体チップ)を収容する凹部にシリコンゴム(絶縁材料)が注入された凹型の支持電極体(半導体整流装置)を金属製放熱板に圧入して用いる半導体装置であり、引用例2に記載された、課題が解決されるべき従来の半導体装置といえる。
してみれば、引用例1発明において、引用例2に記載された課題解決のための上記(1)又は(2)の構成要件を採用すると共に、さらに、上記〔A〕、〔B〕の教示に示されるように、銅-インバー-銅クラッド材等の線膨張係数が支持電極体の線膨張係数より半導体チップの線膨張係数に近い半導体チップ搭載板(本願発明1における「熱膨張緩和体」に相当するもの)を半導体チップと支持電極体との間に介在させて、上記相違点(ロ)の本願発明1の特定事項のように、支持電極体における半導体チップの一方の面の半田を用いた接合支持を、「熱膨張緩和体を中間に介して」行い、かつ、支持電極体の柱状体凹部における半導体チップの収容を、「前記熱膨張緩和体を介して」行うことは、引用例2の前示の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものというべきである。

(iii)相違点(ハ)について
引用例2の上記〔2a〕には、上記(ii)で述べたような記載に続けて、
〔C〕:(1)または(2)において、前記支持電極体のビッカース硬さを、圧入される放熱板のビッカース硬さより大きくすれば、圧入時に放熱板が大きく変形し、支持電極体の変形は小さくなり、半導体チップの破壊や絶縁部材と支持電極体の剥離を防止できる旨、放熱板の材質が無酸素銅の場合、ジルコン銅(本願発明1における「ジルコニウムを含有する銅合金」に相当するもの)等が望ましい旨、
などの前記課題を解決するための教示が記載されている。
さらに、上記〔2c〕には、
〔D〕:支持電極体には、はんだ付け温度を負荷しても、ビッカース硬さの低下が起こらない材料を用いるのが望ましく、その材料は、例えば、ジルコン銅等である旨、
などの教示も記載されている。

そして、引用例1発明は、前述のとおり、引用例2に記載された課題が解決されるべき従来の半導体装置といえるから、引用例1発明において、引用例2に記載された上記〔C〕、〔D〕の教示に示されるように、支持電極体のビッカース硬さを放熱板のビッカース硬さより大きくすると共に、支持電極体の材質をジルコン銅(ジルコニウムを含有する銅合金)として、上記相違点(ハ)の本願発明1の特定事項のように、「前記支持電極体が、ジルコニウムを含有する銅合金製であって、前記支持電極体のビッカース硬度が前記放熱板のビッカース硬度よりも大き」くすることは、引用例2の前示の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものというべきである。

(iv)相違点検討のまとめ
上記(i)〜(iii)の相違点検討のとおり、上記相違点(イ)〜(ハ)は、当業者が容易に想到し得たものであり、また、それらを組み合わせることによって格別に顕著な相乗効果が得られるとも認められない。
したがって、本願発明1は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-4.請求人の主張に対して
請求人は、本願発明1の容易性判断における引用例1記載の技術と引用例2記載の技術との組合せに関し、“圧入時に、凹型支持電極体の側壁が内周側に変形し、絶縁部材が圧縮される形状、すなわち、半導体チップの搭載面の厚さ(a)が放熱板の厚さ(b)より薄い形状を明確に除外した技術である引用例2記載の技術と、前記除外された技術である引用例1記載の技術を組み合わせることにはそれを阻害する要因がある”旨を主張している。
しかしながら、上記3-3.で検討した引用例2の上記〔2a〕〜〔2d〕には、前示の(1)又は(2)や〔A〕〜〔D〕の事項が、「半導体チップの搭載面の厚さ(a)が放熱板の厚さ(b)より薄い形状を除外した」技術であることを示す記載は存在しない。仮に、上記〔2a〕の(4)に記載された「前記支持電極体の厚さから前記支持電極体の半導体チップ搭載面から放熱板に接する部分の厚さを除いた厚さが、前記支持電極体の最大外径の0.07倍以上0.25倍以下または0.47倍以上であること。」が「半導体チップの搭載面の厚さ(a)が放熱板の厚さ(b)より薄い形状を除外した」技術を意味するとしても、上記〔2a〕の記載から明らかなように、前示の(1)又は(2)や〔A〕〜〔D〕の事項は、前記(4)のそのような技術と独立した事項であるから、「半導体チップの搭載面の厚さ(a)が放熱板の厚さ(b)より薄い形状を除外した」技術とはいえない。
したがって、引用例2に記載された前示の(1)又は(2)や〔A〕〜〔D〕の事項は、引用例1記載の技術と組み合わせることが阻害されているとはいえないから、請求人の上記主張は採用できない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-26 
結審通知日 2006-06-27 
審決日 2006-07-10 
出願番号 特願2001-54935(P2001-54935)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和瀬田 芳正  
特許庁審判長 綿谷 晶廣
特許庁審判官 岡 和久
宮崎 園子
発明の名称 半導体装置  
代理人 武 顕次郎  
代理人 武 顕次郎  

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