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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
管理番号 1142606
審判番号 不服2002-19606  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-08-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-08 
確定日 2006-08-25 
事件の表示 平成11年特許願第15957号「電子部品自動装着装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年8月4日出願公開、特開2000-216596〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年1月25日の出願であって、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成14年6月28日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明は、次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】 本体部に対してレール及び該レール間に摺動自在に設けられたナット部材を介して昇降するヘッド昇降テーブルに装着ヘッドを取付け、該ヘッド昇降テーブルの昇降により装着ヘッドがチップ状電子部品を取出してプリント基板に装着する電子部品自動装着装置において、
前記ヘッド昇降テーブルの材料を金属にセラミックス強化材を複合化させた金属-セラミックス複合材とし、前記ヘッド昇降テーブル、前記レール及び前記ナット部材の熱膨張率を略同一としたことを特徴とする電子部品自動装着装置。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例とその記載事項
これに対して、当審が平成18年1月11日付けの拒絶理由通知で引用した、いずれも本願の出願前に日本国内において頒布された引用例とその記載事項は次のとおりである。

第1引用例:特開平8-195582号公報
第2引用例:特開平10-330864号公報

2-1.第1引用例(特開平8-195582号公報)の記載事項
第1引用例には、「電子部品自動装着装置」に関して、図とともに次の事項が記載されている。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ロータリーテーブルの外周にヘッド昇降テーブルを設け、このヘッド昇降テーブルに装着ヘッドを設けた電子部品自動装着装置において、一対のレールと、一対のレール間に摺動自在に設けられ、一対のレールの厚さより僅かに厚さの厚いナット部材とを有するヘッド昇降機構を備え、このヘッド昇降機構のナット部材を前記ロータリーテーブルに固定し、前記一対のレールを前記ヘッド昇降テーブルに固定したことを特徴とする電子部品自動装着装置。
……
【請求項3】 ロータリーテーブルの外周にヘッド昇降テーブルを設け、このヘッド昇降テーブルに装着ヘッドを設け、この装着ヘッドにより電子部品供給装置からチップ状電子部品を吸着し、プリント基板上に装着するようにした電子部品自動装着装置において、……を特徴とする電子部品自動装着装置。」
(イ)「【0041】装着ヘッド23の取付け構造は、図8及び図9を参照して、ヘッド昇降機構151を備えている。このヘッド昇降機構151は、上述したように、一対のレール28と、一対のレール28間に摺動自在に設けられ、一対のレール28の厚さより僅かに厚さの厚いナット部材27とを有する。
【0042】そして、このヘッド昇降機構151のナット部材27はロータリーテーブル21に固定され、一対のレール28は、図10及び図11に示すように、ビス153を用いてアルミニウム製のヘッド昇降テーブル26に固定される。」

上記各記載事項及び図の記載を総合すると、第1引用例には、
「ロータリーテーブル21に対してレール28及び該レール28間に摺動自在に設けられたナット部材27を介して昇降するヘッド昇降テーブル26に装着ヘッド23を取付け、該ヘッド昇降テーブル26の昇降により装着ヘッド23がチップ状電子部品を取出してプリント基板に装着する電子部品自動装着装置」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

2-2.第2引用例(特開平10-330864号公報)の記載事項
第2引用例には、「金属-セラミックス複合材料の製造方法」に関して、次の事項が記載されている。
(ウ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属に強化材を複合させた金属-セラミックス複合材料の製造方法に関し、特に熱膨張率を鋳鉄と同程度にすることのできる金属-セラミックス複合材料の製造方法に関する。」
(エ)「【0002】
【従来の技術】セラミックス繊維または粒子で強化された金属-セラミックスの複合材料は、金属とセラミックスの両方の特性を兼ね備えており、例えばこの複合材料は、高剛性、低熱膨張性、耐摩耗性等のセラミックスの優れた特性と、延性、高靱性、高熱伝導性等の金属の優れた特性を備えている。このように、従来から難しいとされていたセラミックスと金属の両方の特性を備えているため、機械装置メーカ等の業界から次世代の材料として注目されている。」
(オ)「【0006】そして、この複合材料を、最も汎用的に使われていて、しかも最も多用されている鋳鉄に替えたいという要望、例えば、鋳鉄によって構成されている機械の可動部品を軽量化し、高速移動に伴う慣性を軽減したいなどの理由で、この複合材料に替えたいとの要望が強かった。しかし、鋳鉄をこの複合材料に替えるためには、摩擦により生じる熱膨張が、鋳鉄との間に大きな相違があると、構造に狂いが生じ、ガタツキが起こったり、あるいは逆に噛み込んでしまうという事態が起こるため、複合材料の熱膨張率を鋳鉄の熱膨張率(10×10-6/℃)にできるだけ近づけることが必要であった。」
(カ)「【0017】その沈降成形で成形した成形体を適切な温度で焼成することにより、粉末充填率が50〜60vol%のプリフォームを形成することができ、その形成されたプリフォームにアルミニウムを主成分とする合金を浸透させることにより、鋳鉄の熱膨張率に近い10×10-6/℃前後の熱膨張率を有する金属-セラミックス複合材料が得られる。」

3.発明の対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ロータリーテーブル21」は、本願発明の「本体部」に相当するから、本願発明と引用発明とは、
《一致点》
「本体部に対してレール及び該レール間に摺動自在に設けられたナット部材を介して昇降するヘッド昇降テーブルに装着ヘッドを取付け、該ヘッド昇降テーブルの昇降により装着ヘッドがチップ状電子部品を取出してプリント基板に装着する電子部品自動装着装置」
である点で一致するが、次の点で相違する。
《相違点》
本願発明では、「ヘッド昇降テーブルの材料を金属にセラミックス強化材を複合化させた金属-セラミックス複合材とし、ヘッド昇降テーブル、レール及びナット部材の熱膨張率を略同一とした」と限定されているのに対して、引用発明では、そのような限定がない点。

4.当審の判断
そこで、上記相違点について以下で検討する。
先ず、発明が解決しようとする課題に関して、本願明細書の段落【0005】には、第1引用例に記載されているような従来の装置では、「電子部品の装着タクトが高速になり昇降サイクルが短くなるとヘッドの昇降速度が高速になると、ナット部材とレールとが高速で摺動するため加熱されレール、ナット部材及びヘッド昇降テーブルが高温になる。一方、ナット及びレールは軸受けとしての強度が必要であるので、通常ステンレスであり、また、ヘッド昇降テーブルは軽量にする必要からアルミニウム製である。従って、あまり、高温になると、両材料の熱膨張率の相違から、各部材に無視できない熱膨張の相違が現われ部品装着の高速化の妨げとなるという問題点が発生する。」と記載されている。
そこで、上記の問題点について考えてみると、「電子部品の装着タクトが高速になり……ヘッドの昇降速度が高速になる」傾向にあることは、当該技術分野における普遍的な趨勢であって、このようなことは既に広く知られているところである。そして、上記ヘッドの昇降速度が高速になる結果として、ヘッド昇降機構を構成するレールとナット部材との摺動によって生じる摩擦熱が大となり、当該レール、ナット部材、及びレールに固定されたヘッド昇降テーブルが高温になることは、当業者であれば容易に予測しうるし、更に、それらの部材等に使用される材料の熱膨張率が相違すると、部材の変形などの不都合を生じる可能性があることも同様に予測しうるし、あるいは予測はしないまでも、当該不都合の現象を認識することは、当業者にとって、格別困難なこととは考え難い。よって、上記の問題点は、当業者であれば容易に予測あるいは認識しうる範囲内の技術事項といえる。
一方、第2引用例には、金属-セラミックス複合材料を用いると機械の可動部品を軽量化することができる旨が記載されているし(記載事項(オ)、参照)、また、特定の製造方法により、鋳鉄の熱膨張率に近い熱膨張率を有する金属-セラミックス複合材料が得られる旨が記載されている(記載事項(ウ)〜(カ)、参照)。
そうすると、引用発明において、上記の問題点を解決するために、可動部材の一つであるヘッド昇降テーブル26の材料を「金属にセラミックス強化材を複合化させた金属-セラミックス複合材」とすると共に、「ヘッド昇降テーブル26、レール28及びナット部材27の熱膨張率を略同一」とすることは、当業者であれば容易に想到することができた事項といえる。
なお、平成18年3月23日付けの意見書において、請求人(出願人)は、「本願は引用例2に記載されたように可動部材を金属セラミックス複合材とするのではなく、可動部材であるレール及びナットは互いに熱膨張率が同一で強度の強い従来の金属材料を用いつつ、このレール及びナット部材を介して昇降するヘッド昇降テーブルを熱膨張率が略同一な金属セラミックス複合体とすることで、可動部であるレール及びナットの強度の維持とレール及びナットとこれらを介して昇降するヘッド昇降テーブル全体の軽量化を熱膨張の影響を受けずに達成することができたものであります。」と主張するが、本願発明のヘッド昇降テーブルは第2引用例でいう可動部品に相当するといえるし、また、本願発明においては、ヘッド昇降テーブルの材料のみを金属-セラミックス複合材とするとはされていないし、レール及びナット部材の材料については何ら限定されていないから、上記請求人の主張は採用することができない。

また、本願発明が奏する作用効果も、第1引用例及び第2引用例に記載された発明から予測される程度以上のものでもない。

5.むすび
したがって、本願発明(請求項1に係る発明)は、第1引用例及び第2引用例に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、そのような本願発明(請求項1に係る発明)を含む本願は、請求項2ないし5に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-16 
結審通知日 2006-06-27 
審決日 2006-07-10 
出願番号 特願平11-15957
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深澤 幹朗  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 永安 真
柴沼 雅樹
発明の名称 電子部品自動装着装置  
代理人 相澤 清隆  

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