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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16H |
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管理番号 | 1142625 |
審判番号 | 不服2004-3903 |
総通号数 | 82 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-06-10 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-02-26 |
確定日 | 2006-08-25 |
事件の表示 | 平成7年特許願第335733号「カム機構およびこれを用いた電子部品装着装置」拒絶査定不服審判事件〔平成9年6月10日出願公開、特開平9-152010〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1、手続の経緯・本願発明 本願は、平成7年11月30日に特許出願されたものであって、本願請求項1〜5に係る発明は、出願当初の明細書及び図面並びに平成15年11月28日付手続補正書でした補正の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 「外周面で相互に転接する板カムとカムフォロアとから成り、前記板カムの外周面と前記カムフォロアの外周面との少なくとも一方に、周方向に亘って潤滑用のグリースを充填するグリース溝が形成されていることを特徴とするカム機構。」 2、引用例 これに対し、原査定の拒絶理由に引用された実願昭61-97842号(実開昭63-3556号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という)には、以下の(イ)、(ロ)の記載が図面と共に認められる。 (イ)「1.カム軸1上に形成した板カム2の外周面10にオイル吐出孔12を開口し、このオイル吐出孔12から吐出されたオイルをタペット3の底面3aに吹き付けるように構成したカム軸上の板カムの圧送式潤滑装置において、上記オイル吐出口12の出口12aを、板カム2の幅方向中央位置Aよりもその幅方向に偏位する位置に開口したことを特徴とするカム軸上の板カムの圧送式潤滑装置」(第1頁第5行〜同頁第13行、「実用新案登録請求の範囲」) (ロ)「まず、板カム2の回転に伴い(第1図中矢印R)、オイル吐出孔12から吐出するオイルをタペット3の底面3aにカム回転方向に沿う線状に塗着した後、板カム2がタペット3をリフトさせるときに、その塗着オイルをカム幅方向に塗り広げる。これにより、板カム2とタペット3との接触面間の潤滑が強力に行われる。」(第4頁第12行〜同第18行) これらの記載内容及び図面から、刊行物1には少なくとも「外周面10で相互に転接する板カム2とタペット3とから成り、前記板カム2の外周面10に、外周方向に対して潤滑用のオイルを供給するオイル吐出孔12が形成されていることを特徴とするカム機構。」なる発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認めることができる。 また、同じく引用された実願昭61-22182号(実開昭62-134958号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という)には、以下の(ハ)、(ニ)なる記載が図面と共に認められる。 (ハ)「モータからの駆動により回転するカム溝付ギヤと、 このカム溝付ギヤのカム溝に嵌合する嵌合ピンと、 この嵌合ピンを備えると共に基台に回転自在に支持され、前記カム溝と前記嵌合ピンの摺動によつて回動する回動レバーと、 前記回動レバーに噛合しテープローデイングポストを動作せしめるローデイング手段とを、 備えるカム溝付ギヤの摺動構造に於いて、 前記カム溝の内壁側面と前記嵌合ピンの外周の一方に設けられた突条を、 備えることを特徴とするカム溝付ギヤの摺動構造。」(第1頁第4行〜第17行、「実用新案登録請求の範囲」) (ニ)「第1図を参照しつつ本考案の一実施例を説明する。第1図に於いて、従来例と同一部分には同一符号を付した。(18e)は嵌合ピン(18b)の周面(18d)に設けられた突条であり、この突条(18e)間には凹部(18f)が形成される。 よって、VTRのローデイング時には、この凹部(18f)に潤滑用グリスが溜まり、この嵌合ピン(18b)の摺動時には、この凹部(18f)よりグリスが供給され、摺動を円滑にする。 又、嵌合ピン(18b)とカム溝(16a)の接触面積も大きくならず抵抗が少なくなる。 第2図は本考案の他の実施例を示す。第2図は内壁側面(16b)に突条(16d)を設けた例であり、(16e)は凹部である。」(第5頁第14行〜第6頁第8行) 3、対比 ここで、本願発明と引用発明とを比較する。 ところで、引用発明の「外周面10」は本願発明の「外周面」に、以下同様に「板カム2」は「板カム」に、「タペット3」は「カムフォロア」に、夫々相当しているから、本願発明と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。 一致点:「外周面で相互に転接する板カムとカムフォロアとから成り、潤滑機能を備えたことを特徴とするカム機構。」 相違点:かかる潤滑機能に関して、本願発明が、「板カムの外周面とカムフォロアの外周面との少なくとも一方に、周方向に亘って潤滑用のグリースを充填するグリース溝が形成されている」なる構成を有しているのに対して、引用発明は、「板カムの外周面に、外周方向に対して潤滑用のオイルを供給するオイル吐出孔12が形成されている」なる構成を採っている点。 4、当審の判断 そこで、上記相違点につき検討する。 相違点の要点は、板カム機構の潤滑機能にあることが明らかである。更に、潤滑について考察すると、本願発明のようなグリース潤滑も引用発明におけるオイルによる強制潤滑も共に慣用手段である所、その具体的構成につき検討すると、刊行物2には、正面カムの一種である渦巻きカムに適用したものではあるが、カム溝16aの内壁側面16b、即ちカムの転接部にグリース溜まりとなる凹部16e、即ちグリース溝を設けたもののみならず、嵌合ピン18bの周面、即ちカムフォロアの外周にグリース溜まりとなる凹部18f、即ちグリース溝を設けたものも記載されているから、かかる潤滑技術は少なくとも、正面カム装置に於いては文献公知であることが分かる。 そうしてみると、かかる潤滑技術を同じカム機構の分野にある板カム機構に適用する程度のことは、当業者が容易になし得るものであり、かかる潤滑技術はカムの転接面に第一義的に施されることが自明であるから、それが板カム機構であれば板カムもしくはカムフォロアの転接面であるそれらの外周面に施されるであろう事は技術的に見て当然のことである。 そして、「周方向に亘って」の解釈を「全周に亘って」の意味だと解釈したとしても、刊行物2に記載されるカムフォロアたる嵌合ピン18bには「全周に亘って連続して」グリース溝たる凹部18fが設けられていることが明らかであるし、正面カムたる渦巻きカムのカム溝16aがたとえ両端部を持っているからと言って、カムの転接面たる内壁側面16b全体に亘ってグリース溝たる凹部16eが設けられていることに変わりがある訳ではないから、これを板カムに適用して板カムの全体に亘ってグリース溝を設けたとすれば、取りも直さず板カムの全周に亘って設けたことを意味することは論を待たない。 なお、請求人は審判請求書において、『本願発明1に関して引用例1及び引用例2から本願発明1が奏する上記a)に記載の「極めて簡単な構造で、高速に耐え得る潤滑構造とすることができます。」という作用効果を到底期待することができず、本願発明1は引用例1及び引用例2に基づいて容易に発明することができたものではないと確信いたします。』と主張するからこの点を検討する。 刊行物1に開示される引用発明に刊行物2に記載される潤滑技術を適用することは既述のとおり当業者が容易になし得るものであるから、「極めて簡単な構造で、高速に耐え得る潤滑構造とすることができます。」という作用効果は刊行物1に開示される引用発明が奏する作用効果と、刊行物2に記載される潤滑技術が奏する作用効果との単なる総和を上回るものではないと言うべきである。 5、むすび したがって、本願発明、即ち本願の請求項1に係る発明は、引用発明、即ち刊行物1に記載される発明と刊行物2に記載される技術的事項とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 前記のとおり、本願請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、本願の請求項2〜5に係る発明について審究するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-06-16 |
結審通知日 | 2006-06-27 |
審決日 | 2006-07-10 |
出願番号 | 特願平7-335733 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F16H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鳥居 稔 |
特許庁審判長 |
村本 佳史 |
特許庁審判官 |
水野 治彦 町田 隆志 |
発明の名称 | カム機構およびこれを用いた電子部品装着装置 |
代理人 | 相澤 清隆 |