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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01N
管理番号 1142762
審判番号 不服2006-653  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-11 
確定日 2006-08-30 
事件の表示 平成7年特許願第141391号「包接化合物の成形物」拒絶査定不服審判事件〔平成8年2月27日出願公開、特開平8-53304〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は平成7年5月17日(優先権主張 平成6年5月18日及び平成6年6月6日)の出願であって、平成17年12月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年1月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願請求項1〜3に係る発明は、平成16年3月25日付け、平成16年9月21日付け及び平成17年5月2日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載されたとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾロン-3-オンと多分子系ホスト化合物からなる包接化合物の1種または2種以上を有効成分とし、ヒドロキシプロピルセルロース、ソルビタンアルキルエステル、ショ糖脂肪酸エステル、高級アルコールアルキルエステル、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、硫安、尿素、ステアリン酸カルシウム、硼酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、フタル酸、アルキルスルホン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする成形物。」

3.引用文献及び記載事項
原査定の拒絶理由に引用された特開昭63-175068号公報(以下、「引用例4」という。)、特開昭64-40408号公報(以下、「引用例7」という。)、特開昭63-99002号公報(以下、「引用例9」という。)及び特開昭63-317597号公報(以下「引用例11」という。)には、次の事項が記載されている。

摘記4a:引用例4の第1頁左下欄第4行〜第2頁右上欄第4行
「2.特許請求の範囲
(1)水溶性殺菌剤と下記(I)〜(VI)で示される化合物群から選ばれる少なくとも1種の化合物との包接化合物を合成樹脂材料と混合し、これを成形してなることを特徴とする合成樹脂製品。
(I)1,1’-ビ-2-ナフトール

(3)水溶性殺菌剤が5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンであることを特徴とする特許請求の範囲第1項又は第2項に記載の合成樹脂製品。」

摘記4b:引用例4の第4頁右下欄第15行〜第5頁左上欄第1行
「なお、成型材料には、顔料、染料、その他の改質剤等が含有されていても良い。…成型品の形態も、錠剤型の他、シート状、容器状、リング状、あらゆる形態を採用することができる。」

摘記4c:引用例4の第8頁左上欄第1行〜右上欄第9行
「[発明の効果]
以上詳述した通り、本発明の合成樹脂製品は、有効成分である水溶性殺菌剤と、1,1’-ビ-2-ナフトール…とよりなる包接化合物を合成樹脂材料を用いて成型したものであり、…有効成分が徐々に水中に溶出するため殺菌活性を長時間維持することができる、…任意の形状に容易に成型することが可能であり、取り扱いが容易である、…合成樹脂の種類又は包接化合物との混合比により、徐放性を任意にコントロールすることができる、等の優れた効果が奏される。」

摘記7a:引用例7の第1頁左下欄第4行〜右下欄第4行
「2.特許請求の範囲
次亜塩素酸カルシウムを主成分とする高度晒し粉錠剤の原料顆粒に糖類及び/又は糖アルコール類と、ショ糖脂肪酸エステルを配合することを特徴とする殺菌剤錠剤組成物。
3.発明の詳細な説明
…錠剤は、その崩壊時間により、使用目的が異なる。例えば、崩壊時間が短いものはプール水の殺菌用に、また長いものは浄化槽用に使用される。」

摘記7b:引用例7の第2頁左上欄第4〜9行
「本発明は、高度晒し粉錠剤の原料顆粒に糖類及び/又は糖アルコール類と、ショ糖脂肪酸エステルを配合することにより、結晶の大きさを調整したり、また種々の大きさの結晶を配合したりすることなく、錠剤の崩壊時間を促進させる殺菌剤錠剤組成物とすることを可能としたものである。」

摘記9a:引用例9の第2頁左上欄第4〜16行
「常温で固体状の酸性物質を所定の範囲で均一に配合し、加圧成形することによって、膨潤や崩壊を伴わず速効性と持続性の両面を兼ね備えた殺菌清浄錠剤を製造しうることを見出した。…酸性物質としては、アジピン酸、…コハク酸、…から選ばれる化合物であり、殊にこれらのうちコハク酸とアジピン酸は打錠時の成形性及び水中投与時の溶解性の両面において特にすぐれている。」

摘記11a:引用例11の第1頁右下欄第15行
「本発明は徐溶化剤および組成物に関する。」

摘記11b:引用例11の第4頁右上欄第18行〜左下欄第8行
「さらに必要により…界面活性剤(…アルキル硫酸塩など)、殺菌性を与えるため塩化ベンザルコニウムなどのカチオン活性剤およびペンタクロルフェノールなどの抗菌成分、溶解性調整のため、…ソルビタンモノステアレートなど固状の化合物を添加してもよい。また…水溶性樹脂などの増量剤などを加えて成形してもよい。」

4.対比・判断
本願発明と引用例4に記載された発明とを比較するに、引用例4には、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンと1,1’-ビ-2-ナフトールとの包接化合物を合成樹脂材料と混合し、これを成形してなる合成樹脂製品であって(摘記4a)、その他の改質剤等が含有されていても良く(摘記4b)、有効成分が徐々に水中に溶出するため殺菌活性を長時間維持することができ、合成樹脂の種類又は包接化合物との混合比により、徐放性を任意にコントロールすることができる(摘記4c)、合成樹脂製品が記載されており、ここで、引用例4の「1,1’-ビ-2-ナフトール」は本願請求項3に記載された(8)の「多分子系ホスト化合物」に合致し、本願発明は合成樹脂材料を含まないことを発明の必須構成要件とするものではないから、両者は、「5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾロン-3-オンと多分子系ホスト化合物からなる包接化合物を有効成分とし、他の改質剤等を含有する成形物。」である点で一致し、他の改質剤等として、本願発明においては、「ヒドロキシプロピルセルロース、ソルビタンアルキルエステル、ショ糖脂肪酸エステル、高級アルコールアルキルエステル、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、硫安、尿素、ステアリン酸カルシウム、硼酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、フタル酸、アルキルスルホン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種」を含有するのに対して、引用例4記載の発明においては、他の改質剤の内容について具体的に記載していない点でのみ相違する。

そこで、上記相違点について検討するに、引用例7には、殺菌剤錠剤組成物にショ糖脂肪酸エステルを添加することが(摘記7a)、引用例9には、殺菌清浄錠剤にアジピン酸やコハク酸を添加することが(摘記9a)、引用例11には、徐溶化剤および組成物に関する発明において(摘記11a)、殺菌・抗菌成分と、溶解性の調整のためソルビタンモノステアレートとを添加し、水溶性樹脂などの増量剤を加えて成形することが(摘記11b)、それぞれ記載されており、本願発明の「ショ糖脂肪酸エステル」、「アジピン酸」、「コハク酸」及び「ソルビタンアルキルエステル」等の添加剤は、殺菌性の錠剤に関する技術分野における周知慣用の添加剤にすぎない(さらに必要ならば、特開平5-247011号公報の請求項1の「5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン…のシクロデキストリン包接化合物。」及び段落0010の「粉末担体として…硫酸マグネシウム…顆粒状やその他の剤形に加工」との記載、特開平4-13614号公報の第1頁右下欄第12〜15行及び第4頁左上欄第1〜2行、特開平3-193705号公報の第4頁右下欄第18行〜第5頁左下欄第7行、並びに特開平5-155715号公報の段落0028〜0033の記載を参照されたい。)ものと認められるので、引用例4に記載される発明の他の改質剤として、引用例7などにも記載されている周知慣用の添加剤を採用することは、当業者にとって格別の創意工夫を要することなく想到し得たものと認められる。

そして、本願発明の作用効果について検討するに、本願明細書の段落0004に記載された「殺菌剤と包接可能な多分子系ホスト化合物での包接化合物を成形することにより、各種水系において、殺菌剤を長期間均一に溶出調整させることが可能であり、計量上の不便さをなくし、運搬、取扱いに優れることを見出し、本発明を完成した。」との作用効果及び本願明細書の段落0039に記載された「本発明の包接化合物の成形物は粉体と比較して、水溶液中における殺菌剤の溶出性は長期間均一であり、溶出調整に於いて優れたものである。」との作用効果について、引用例4のものは、「有効成分が徐々に水中に溶出するため殺菌活性を長時間維持」し、「徐放性を任意にコントロールすることができる」というものである(摘記4c)から、本願発明の「殺菌剤を長期間均一に溶出調整させることが可能」ないし「殺菌剤の溶出性は長期間均一であり、溶出調整に於いて優れたもの」という作用効果は格別予想外のものとは認められず、引用例4のものは、「任意の形状に容易に成型することが可能であり、取り扱いが容易である」というものである(摘記4c)から、本願発明の「計量上の不便さをなくし、運搬、取扱いに優れる」という作用効果は格別予想外のものとは認められない。

したがって、本願発明は、引用例4に記載された発明に、引用例7、9又は11などにも記載された周知慣用技術を組み合わせたにすぎない程度のものであり、その作用効果についても格別予想外の顕著なものは認められないので、当業者にとって容易に発明をすることができたものである。

なお、審判請求人は、平成18年4月6日付けの物件提出書に実験成績証明書(以下、「甲第1号証」という。)を添付して提出し、平成18年4月5日付けで手続補正した審判請求書の請求の理由の欄において、「本願発明は、有効成分を包接化することにより徐放性を持たせ、さらに、有効成分が100%溶出可能な成形物を提供するという従来にない新しい課題を解決した成形物である点が特徴である」と主張しているが、本願出願当初明細書には、「有効成分が100%溶出可能な成形物を提供するという従来にない新しい課題を解決」することについての記載は見当たらず、甲第1号証に示された組成物1(TEP-CMI包接化合物100部からなる組成物)、組成物2(TEP-CMI包接化合物15部、アジピン酸78部、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)5部及びステアリン酸カルシウム2部からなる組成物)、並びに組成物3(TEP-CMI包接化合物10部、硫酸カルシウム(β型)35部、コハク酸48部、HPC5部及びステアリン酸カルシウム2部からなる組成物)の3つのサンプルについても、組成物1については補正によって本願発明の範囲外とされた本願明細書の実施例1と同一の組成であるところ、組成物2及び3については本願出願当初明細書に記載されたものではなく、本願出願当初明細書の記載に基づかない作用効果の主張については採用することはできない。

5.むすび
以上総括するに、本願発明は、引用例4、7、9及び11に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-27 
結審通知日 2006-07-03 
審決日 2006-07-18 
出願番号 特願平7-141391
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 直子  
特許庁審判長 原 健司
特許庁審判官 原田 隆興
木村 敏康
発明の名称 包接化合物の成形物  
代理人 松橋 泰典  
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