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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1142802
審判番号 不服2002-16133  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-01-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-22 
確定日 2006-08-31 
事件の表示 平成8年特許願第162096号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成10年1月13日出願公開、特開平10-5399〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成8年6月21日の出願であって、平成13年6月20日付で拒絶理由が通知され、平成13年8月8日付で意見書並びに手続補正書が提出され、平成14年2月15日付で拒絶理由が通知され、平成14年4月9日付で意見書並びに手続補正書が提出され、平成14年7月17日付で平成14年4月9日付手続補正書の補正の却下の決定がなされると同時に拒絶査定がなされ、平成14年8月22日に審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

2.平成14年8月22日付手続補正についての補正却下について
[補正却下の決定の結論]
平成14年8月22日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願補正発明
平成14年8月22日付の手続補正により補正された明細書及び図面からみて、補正後の本願発明は、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「遊技領域に特定入賞装置が設けられており、所定条件が満たされた場合に、前記特定入賞装置が予め設定された所定回数だけ断続的に開成可能となる遊技機であって、
前記特定入賞装置のN回目の開成時の入賞個数が、予め設定された定数に満たない場合には、N+1回目の開成時の定数を、予め設定された定数より1増やし、
前記特定入賞装置のN回目の開成時の入賞個数が、予め設定された定数以上である場合には、N+1回目の開成時の定数を、予め設定された定数に設定することを特徴とする遊技機。」(以下、「本願補正発明」という。)

そして、平成14年8月22日付の手続補正は、平成13年8月8日付の手続補正の内容を下位概念化し、発明を特定するための事項の限定に相当するものであり、平成15年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例について
1)引用例1について
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-275451号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。

・記載事項1
「遊技領域に打玉を打込んで遊技が行なわれる弾球遊技機であって、
遊技者にとって有利となる第1の状態と遊技者にとって不利となる第2の状態とに変化可能な可変入賞球装置と、
予め定められた特定遊技状態が発生したことを検出する特定遊技状態検出手段と、
該特定遊技状態検出手段の検出出力に基づいて前記可変入賞球装置を第1の状態にし、該第1の状態となっている可変入賞球装置内に打玉が所定の上限個数入賞した場合に可変入賞球装置を第2の状態にする制御手段と、
前記可変入賞球装置への打玉の入賞に伴った遊技者への価値の付与状況に応じて、前記特定遊技状態の発生に伴なう遊技者への価値付与の大きさを補正する価値補正手段とを含むことを特徴とする、弾球遊技機。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)

・記載事項2
「前記制御手段は、前記特定遊技状態の発生により、前記可変入賞球装置を複数回第1の状態に制御可能に構成され、
前記価値補正手段は、前記第1の状態となっている可変入賞球装置への入賞玉数が前記上限個数を超えた場合に、以降の第1の状態における前記上限個数を少ない個数に補正することを特徴とする、請求項1記載の弾球遊技機。」(【特許請求の範囲】【請求項2】)

・記載事項3
「前記価値補正手段は、前記第1の状態となっている可変入賞球装置への入賞玉数が前記上限個数を超えた場合に、該超過分の入賞玉に応じた価値の付与を行なわない、または、通常の入賞玉よりも少ない価値の付与を行なうことを特徴とする、請求項1記載の弾球遊技機。」(【特許請求の範囲】【請求項3】)

・記載事項4
「【課題を解決するための手段】請求項1に記載の本発明は、遊技領域に打玉を打込んで遊技が行なわれる弾球遊技機であって、遊技者にとって有利となる第1の状態と遊技者にとって不利となる第2の状態とに変化可能な可変入賞球装置と、予め定められた特定遊技状態が発生したことを検出する特定遊技状態検出手段と、該特定遊技状態検出手段の検出出力に基づいて前記可変入賞球装置を第1の状態にし、該第1の状態となっている可変入賞球装置内に打玉が所定の上限個数入賞した場合に可変入賞球装置を第2の状態にする制御手段と、前記可変入賞球装置への打玉の入賞に伴った遊技者への価値の付与状況に応じて、前記特定遊技状態の発生に伴なう遊技者への価値付与の大きさを補正する価値補正手段とを含むことを特徴とする。」(段落【0005】)

・記載事項5
「請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の発明の構成に加えて、前記制御手段は、前記特定遊技状態の発生により、前記可変入賞球装置を複数回第1の状態に制御可能に構成され、前記価値補正手段は、前記第1の状態となっている可変入賞球装置への入賞玉数が前記上限個数を超えた場合に、以降の第1の状態における前記上限個数を少ない個数に補正することを特徴とする。」(段落【0006】)

・記載事項6
「請求項3に記載の本発明は、請求項1に記載の発明の構成に加えて、前記価値補正手段は、前記第1の状態となっている可変入賞球装置への入賞玉数が前記上限個数を超えた場合に、該超過分の入賞玉に応じた価値の付与を行なわない、または、通常の入賞玉よりも少ない価値の付与を行なうことを特徴とする。」(段落【0007】)

・記載事項7
「【発明の詳細な説明】【産業上の利用分野】本発明は、パチンコ遊技機やコイン遊技機等で代表される弾球遊技機に関し、詳しくは、遊技領域に打玉を打込んで遊技が行なわれる弾球遊技機に関する。」(段落【0001】)

・記載事項8
「【従来の技術】この種の弾球遊技機において、従来から一般的に知られているものに、たとえば、予め定められた特定遊技状態が発生したことに基づいて可変入賞球装置が遊技者にとって有利な第1の状態に制御され、その可変入賞球装置内に打玉が所定の上限個数入賞した場合にその可変入賞球装置が第2の状態に制御され、たとえば、予め定められた繰返し継続条件が成立した場合に可変入賞球装置が再度第1の状態に繰返し継続制御されるものがあった。すなわち、従来の弾球遊技機は、特定遊技状態が発生したことに伴って、可変入賞球装置が第1の状態に制御され、その可変入賞球装置の第1の状態への制御に伴って遊技者に価値が付与可能となるように構成されていた。」(段落【0002】)

・記載事項9
「図1は、本発明に係る弾球遊技機の一例のパチンコ遊技機を示す正面図である。パチンコ遊技機22の前面枠52には、遊技盤1の前面を覆うガラス扉枠57と前面板53とが開閉可能に設けられている。前面板53には、賞品玉や貸玉を貯留する打球貯留皿54が設けられている。打球貯留皿54がパチンコ玉で満杯となりそれ以上貯留できなくなった余剰玉は余剰玉貯留皿55内に払出される。図中24はスピーカである。遊技者が打球操作ハンドル56を操作すれば、打球貯留皿54に貯留されてるパチンコ玉が1つずつ遊技盤1の前面に形成されている遊技領域3内に打込まれる。遊技領域3には、動画を表示可能な表示装置からなる可変表示装置4が設けられているとともに、始動入賞口7が設けられている。この始動入賞口7内に入賞したパチンコ玉は、始動口スイッチ8により検出される。」(段落【0014】)

・記載事項10
「始動口スイッチ8の検出信号に基づき、可変表示装置4のLCDディスプレイ5により後述する複数種類の図柄がスクロール表示される可変表示が行なわれる。そして、可変表示装置4の停止時の表示結果が予め定められた特定の表示態様(たとえば777)になった場合に、特定遊技状態が発生して可変入賞球装置9の開閉板10が開成して打玉が入賞しやすい遊技者にとって有利となる第1の状態となり、所定の遊技価値が付与可能な大当り状態となる。」(段落【0015】)

・記載事項11
「この可変入賞球装置9は、通常時は開閉板10が閉成した遊技者にとって不利な第2の状態となっているが、可変表示装置4の表示結果が前記予め定められた特定の表示態様となれば、ソレノイド11が励磁されて開閉板10が開成した第1の状態となり、大当り状態が発生する。この可変入賞球装置9の第1の状態は、打玉の入賞許容個数(後述するように変動する)の入賞あるいは所定期間(たとえば30秒間)の経過のいずれか早い方の条件が成立することにより終了して第2の状態となる。なお、この第1の状態を終了させる条件としては入賞許容個数の入賞のみにしてもよい。」(段落【0016】)

・記載事項12
「一方、可変入賞球装置9内には、特定入賞領域(Vポケット)と通常入賞領域とが形成されており、第1の状態となっている可変入賞球装置9内に進入したパチンコ玉が特定入賞領域に入賞して特定入賞玉検出器(Vスイッチ)12により検出されれば、その回の第1の状態が終了するのを待って可変入賞球装置9を再度第1の状態に駆動制御する繰返し継続制御が行なわれる。この繰返し継続制御の上限回数はたとえば16回と定められている。図1中13は可変入賞球装置9内に形成された通常入賞領域に入賞した入賞玉を検出する入賞玉検出器(カウントスイッチ)である。なお、この可変入賞球装置9の第2の状態としては、打玉が全く入賞できない状態ではなく打玉が入賞可能ではあるが入賞困難な状態であってもよい。(段落【0017】)

・記載事項13
「図10(A)は、前記S39により示した入賞個数補正処理の第1実施例を示すフローチャートである。まずSA45により、入賞許容個数-入賞個数カウンタ>10であるか否かの判断がなされる。そして、一般的には、第1の状態となっている可変入賞球装置内に入賞許容個数だけの打玉が入賞した段階でその可変入賞球装置が第2の状態に制御されるために、入賞個数カウンタの値は通常は入賞許容個数を超えることがない。その結果、SA45は通常はNOの判断がなされてSA46により、補正値が「10」にセットされる。ところが、第1の状態となっている可変入賞球装置内に入賞許容個数だけの打玉が入賞して可変入賞球装置9の開閉板10の閉じ際にパチンコ玉が可変入賞球装置9内に進入した場合には、入賞個数カウンタはその閉じ際の入賞玉も計数して入賞許容個数を超えたカウント値となる。その場合に、SA45によりYESの判断がなされSA47に進み、補正値を「入賞許容個数+入賞個数カウンタの値」にセットする処理がなされる。たとえば、可変入賞球装置9の閉じ際に1個パチンコ玉が進入した場合に、入賞個数カウンタはその超過分の1個の入賞玉を計数してその結果カウント値が「-1」となる。ゆえに、その場合には、補正値=入賞許容個数+(-1)となり、今までの入賞許容個数が「1」減算された補正値なる。(段落【0076】)

・記載事項14
「図10(B)は、S39に示された入賞個数補正処理のサブルーチンプログラムを示す第2実施例のフローチャートである。SB45により、総入賞個数カウンタ-開放回数カウンタ×10>0であるか否かの判断がなされる。大当りが発生してから現時点までの可変入賞球装置9内に入賞した入賞玉の総個数から、現時点における可変入賞球装置9の第1の状態への制御回数に10を乗じた値を減算したものが、0より大きいか否かの判断がなされる。そして、1回の大当りにおける可変入賞球装置内に入賞した入賞玉数の総数がその時点までの総入賞許容個数を超えていない場合には、SB45によりNOの判断がなされてSB46に進み、補正値を「10」にセットする処理がなされる。一方、大当りが発生してから現時点までに、いずれかのラウンドにおいて、第1の状態となっている可変入賞球装置内に前記入賞許容個数を超えた打玉が入賞するとともに、入賞許容個数を超えないラウンドについては入賞許容個数に相当するだけの打玉が入賞した場合には、S45によりYESの判断がなされ、SB47に進み、開放回数カウンタが「8」以上であるか否かの判断がなされる。そして開放回数カウンタが「8」未満である場合にSB50に進み、補正値を「8」にセットする処理がなされる。一方、開放回数カウンタが「8」以上である場合には、SB48に進み、総入賞個数カウンタ-開放回数カウンタ×10>4である否かの判断がなされる。そして、大当りが発生してから現時点までに、第1の状態となっている可変入賞球装置内に進入した打玉であって前記総入賞許容個数を超えた超過玉の数の合計が「4」を超える場合に、SB48によりYESの判断がなされてSB50に進むが、「4」以下である場合には、SB49に進み、補正値を「9」にセットする処理がなされる。」(段落【0077】)

以上の記載事項1〜14及び図1〜図14によれば、引用例1には次の発明が記載されていると認められる。
「遊技領域に可変入賞球装置が設けられており、所定条件が満たされた場合に、可変入賞球装置が予め設定された所定回数だけ断続的に開成可能となる弾球遊技機であって、
可変入賞球装置の開成時の入賞玉数が、予め設定された上限個数を超えた場合には、超過分の入賞玉に応じた価値の付与を行わない弾球遊技機。」(以下、「引用例1に記載された発明」という。)

2)引用例2について
原査定の拒絶の理由に引用された特公平6-30653号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。

・記載事項15
「【発明の詳細な説明】[産業上の利用分野]
本発明は、パチンコ機等の弾球遊技機に関するもので、詳しくは、遊技盤面に打ち出された遊技球(打球)の入賞率を可変制御する弾球遊技機に関する。」(公報2頁左欄第8行〜12行)

・記載事項16
「[従来の技術]
例えばパチンコ遊技機では、打球が入賞口に入賞する確率は、遊技盤面上に配置される釘の位置や向き、曲がり角度、或いは釘同士の間隔等に応じて変化する。そのため、パチンコ店にとって釘の調整が重要な作業であると共に、遊技者にとっては玉がよく出るように調整されたパチンコ台を見つけることがゲームに勝つ、すなわち多くの利益を獲得するための条件の1つとなっている。
ところが、打球の入賞率を決める釘の向きや間隔等の調整は、0.01mmの単位で行われる極めて微妙な作業であり、熟練した調整技術を持つ専門家を必要としていた。
そこで、パチンコ機の釘調整を自動的に行なうことによって打球の入賞率を変える装置として、次のようなものが提案されている。
(1)(本審では○の中に数字を表記することができないので、(1)で表記する。以下同様)入賞口の上方に設けられる一対の釘の開度を一定の範囲内で変化させるようにしたもの(特公昭59-35633号)、
(2)各入賞部に設けられた釘の位置又は傾きを各入賞孔毎の入賞率に応じて変えるようにしたもの(特公昭61-36949号)。
一方、釘調整ではなく、チューリップ等の可変入賞装置の開口時間を設定することで入賞率を可変制御する技術も知られている。例えば、
(3)パチンコ店の利益指数が一定の範囲に設定されるように入賞装置の開口時間を制御するもの(特開昭54-78233号)、
(4)電子的に発生した乱数に基づいて可変入賞装置の開口時間を指定するようにしたもの(特公昭61-47548号)。」((公報2頁左欄第13行〜41行)

・記載事項17
「[発明が解決しようとする課題]
しかしながら、上記(1)及び(2)の釘調整を行なう装置にあっては、微妙な調整を精度良く行なうことが要求されるため、調整機構は精密で高価なものとなり、従来の人手に代わるものとして採用することは困難であるという問題点があった。
一方、上記(3)及び(4)のパチンコ遊技機では、チューリップ等の形態変化がわかる入賞装置を開閉するようにしているので、遊技者は入賞装置の状態を見て、これに応じた打球操作をすることができる。例えば、入賞装置が開状態から閉状態に変化したとき、遊技者は発射球を少なくして損失を抑えるようにする。このため、遊技者による技術介入性が増大してゲーム性が半減すると共に、機械で設定した開口時間に応じた入賞率を達成し難いという問題点があった。また、入賞装置を単に開閉するだけでは、釘調整の場合のように任意の入賞口に対する入賞率をきめ細かく可変制御することはできないという問題点もあった。
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、釘調整によらず、且つゲーム性を損なうことなく、1又は2以上の入賞口に対する打球の入賞率をきめ細かく制御できる弾球遊技機を提供することを目的とする。」(公報2頁左欄第42行〜右欄第13行)

・記載事項18
「[実施例] 以下、添付図面を参照して説明する。
第1図は、本発明の一実施例であるパチンコ遊技機の正面図である。このパチンコ遊技機1の遊技盤面2には、位置が固定した入賞口3,4と共に適宜の個数の移動入賞口5が配設されている。この移動入賞口5については、後で詳細に説明する。」(公報2頁右欄第40行〜46行)

・記載事項19
「第5図は、本発明の弾球遊技機による入賞口制御動作を示すフローチャートである。まず、移動制御手段は、移動入賞口を移動させる条件を検出し、その条件が達成されたか否かを判定する。そして、移動条件が達成された場合には、次に説明する入賞口移動処理を実行する。移動条件は、例えば、第3図の発射球検出部45で検出した発射球の数が所定個数に達するか又はある発射時点から所定時間経過した時とする。或は第4図の各入賞球センサで検出した入賞球の数が所定個数に達するか又はある入賞時点から所定時間経過した時とする。これらの移動条件は、前述のようにマイクロコンピュータに設定したカウンタ又はタイマーで検出される。その他、移動条件は任意に設定できる。」(公報3頁右欄第31行〜43行)

・記載事項20
「上記の処理で第1の状態にする場合、大入賞、中入賞、小入賞は、それぞれに応じた個数(例えば30個、20個、10個まで)を受け入れるものとする。これらの入賞可能個数は、各移動入賞口毎に設定できるが、全部の移動入賞口の入賞数の合計として定めてもよい。そして、各段階の入賞状態において実際に入賞したパチンコ球の数がそれぞれの入賞可能個数に満たなかったときは、差の個数を次回に振り向ける。例えば、大入賞の状態で20個しか入賞しなかった場合は、差の10個は、次に決定した乱数が外れになった時、小入賞に振り替えるようにする。上記の移動制御手段によれば、このようにして入賞率を自動調整することができる。或は、入賞のランクに応じて移動入賞口5を入賞位置に設定する時間を変えてもよい。例えば、小入賞の場合の時間tとし、中入賞及び大入賞の場合の時間をそれぞれ2t、3tと定める。」(公報4頁右欄第9行〜24行)

・記載事項21
「以上、本発明を実施例によって説明したが、本発明はパチンコ遊技機に限らず、スマートボール機や雀球遊技機、その他の弾球遊技機に適用できる。また、移動入賞口は左右だけでなく、上下或は前後に移動するようにしてもよい。更に、移動入賞口の形状、移動制御手段及び駆動手段の構成などは、図示の例のほか任意に設計することができる。」(公報4頁右欄第33行〜39行)

以上の記載事項15〜記載事項21及び第1図〜第8図によれば、引用例2には次の発明が記載されていると認められる。
「遊技盤面上に入賞装置が設けられており、入賞装置が入賞に応じた個数を受け入れて開閉する弾球遊技機であって、
入賞装置が開いた状態のときのパチンコ球が、入賞可能個数が満たなかったとき、差の個数を次に決定した乱数が外れになった時、小入賞に振り替える弾球遊技機。」(以下、「引用例2に記載された発明」という。)

(3)対比
本願補正発明と上記引用例1に記載された発明とを対比する。
引用例1に記載された発明の「遊技領域」は、本願補正発明の「遊技領域」に相当し、以下同様に引用例1に記載された発明の「可変入賞球装置」「弾球遊技機」「入賞玉数」「予め設定された上限個数を超えた場合には」「超過分の入賞玉に応じた価値の付与を行わない」は、本願補正発明の「特定入賞装置」「遊技機」「入賞個数」「予め設定された定数以上である場合には」「予め設定された定数に設定する」にそれぞれ相当している。

・実質的具備事項
引用例1の記載事項14の「・・・そして、大当りが発生してから現時点までに、第1の状態となっている可変入賞球装置内に進入した打玉であって前記総入賞許容個数を超えた超過玉の数の合計が「4」を超える場合に、SB48によりYESの判断がなされてSB50に進むが、「4」以下である場合には、SB49に進み、補正値を「9」にセットする処理がなされる。・・・」なる記載及び図10(A)(B)に基づけば、引用例1に記載された発明の入賞個数補正処理のサブルーチンプログラムにおいて、総入賞許容個数を超えた超過玉の数の合計が4以上であれば、SB50に進み補正値を「8」にし、4以下である場合には、補正値を「9」にセットしているように、補正のサブルーチンは、N回目現在の可変入賞球装置の開成に基づき、N+1回目次回の開成時において入賞玉数が補正されるから、引用例1に記載された発明において、可変入賞球装置への入賞玉数の差に基づいて予め設定された定数を補正する時期は、N回目の開成時の入賞玉数に基づいて、N+1回目の開成時に行うものであると解される。
そして、引用例1に記載された発明の「可変入賞球装置」「入賞玉数」は本願補正発明の「特定入賞装置」「入賞個数」に相当していることは上記したとおりである。
そうすると、引用例1に記載された発明は「特定入賞装置のN回目の開成時の入賞個数が、予め設定された定数以上である場合には、N+1回目の開成時の定数を、予め設定された定数に設定する」なる構成を実質的に具備しているということができる。

以上を勘案すると、本願補正発明と引用例1に記載された発明は、
「遊技領域に特定入賞装置が設けられており、所定条件が満たされた場合に、特定入賞装置が予め設定された所定回数だけ断続的に開成可能となる遊技機であって、
特定入賞装置のN回目の開成時の入賞個数が、予め設定された定数以上である場合には、N+1回目の開成時の定数を、予め設定された定数に設定する遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点
本願補正発明が、特定入賞装置の開成時の入賞個数が予め設定された定数に満たない場合にはN+1回目の開成時の定数を予め設定された定数より1増やすのに対して、引用例1に記載された発明は、特定入賞装置の開成時の入賞個数が予め設定された定数に満たない場合の定数の増加についての言及がない点。

(4)判断
上記相違点について、検討する。
パチンコ遊技機技術分野において、特開平4-102485〜7号公報、特開平7-213726号公報及び特開平7-124319号公報等に示されるように、特定の入賞口(始動入賞口)に遊技球が入賞し、可変表示装置が可変して、大当たり状態になったとき、通称アタッカーと呼ばれる大入賞口もしくは可変入賞装置を例えば16回又は10回の所定の回数に亘って開閉することがよく知られた周知慣用技術にすぎない。
また、引用例2に記載された発明の記載事項20の「・・・そして、各段階の入賞状態において実際に入賞したパチンコ球の数がそれぞれの入賞可能個数に満たなかったときは、差の個数を次回に振り向ける。例えば、大入賞の状態で20個しか入賞しなかった場合は、差の10個は、次に決定した乱数が外れになった時、小入賞に振り替えるようにする。・・・」なる記載に基づけば、引用例2に記載された発明は、入賞したパチンコ球の数が入賞可能個数に満たなかったときに、その差の個数を次に決定した乱数が外れになったときに、小入賞に振り替えることが示されている。
さらに、上記実質的具備事項において示したように、引用例1に記載された発明は、補正ルーチン又は補正サイクルにおいて、入賞球を補正するための定数を1つづつ加減していることが示されている。
そして、引用例2に記載された発明の「可変入賞装置」を本願補正発明の「特定入賞装置」と言い換えることができることは上記例示周知技術からみて明らかなことである。
そうすると、引用例1に記載された発明と引用例2に記載された発明はともに、特定の入賞口に遊技球が入賞し、可変表示装置が可変して大当たり状態になったとき、通称アタッカーと呼ばれる可変入賞装置を例えば16回又は10回の所定の回数に亘って開閉するすることにより生じるパチンコ遊技機の特別遊技状態において、予め設定された定数と入賞した遊技数の差が生じた際にその差を補正する点で機能が一致しているから、引用例1に記載された発明の「特定入賞装置のN回目の開成時の入賞個数が予め設定された定数以上である場合に、N+1回目の開成時の定数を、予め設定された定数に設定する」ことに、上記引用例2に記載された発明の「特定入賞装置の入賞個数が予め設定された定数未満である場合に、次回のゲームにおいて、補正を行う」ことを適用する際に、引用例1に記載された発明のように、特定入賞装置のN回目の開成時の入賞個数が予め設定された定数未満である場合に1だけ定数を補正付加するようにすること、すなわち本願補正発明の相違点に係る構成となすことに格別の困難性を見出すことができないので、本願補正発明の相違点に係る構成となすことは、当業者が、周知技術を参酌しつつ、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された発明に基づいて、容易に想到できたものということができる。

(5)作用効果
本願補正発明によって奏する効果も、引用例1に記載された発明および引用例2に記載された発明並びに周知技術から普通に予測できる範囲内のものであって格別のものがあるとは認められない。

(6)補正却下の判断
よって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明および引用例2に記載された発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
上記のとおり、本願補正発明は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるので、平成14年8月22日付の手続補正は、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成14年8月22日付の手続補正は上記のとおり却下され、また、平成14年4月9日付の手続補正も平成14年7月17日付の補正却下の決定をもって却下されているので、本願発明は、平成13年8月8日付の手続補正書における特許請求の範囲の請求項1において特定される以下のものである。
「遊技領域に特定入賞装置が設けられており、所定条件が満たされた場合に、前記特定入賞装置が予め設定された所定回数だけ断続的に開成可能となる遊技機であって、
前記特定入賞装置のN回目の開成時の入賞個数に応じて、N+1回目の開成時の定数が決定されることを特徴とする遊技機。」(以下、「本願発明」という。)

(1)引用例について
引用例1の記載及び引用例2の記載並びにそれらの記載事項は上記2.(2)に記載したとおりである。

2)対比・判断
本願発明は、上記2.(1)〜(5)で検討した本願補正発明の「N+1回目の開成時の定数」に関する構成要件の中から、「予め設定された定数より1増やす」と「予め設定された定数に設定する」を実質的に削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含む本願補正発明が、上記2.(1)〜(5)に記載したとおり、引用例1に記載された発明および引用例2に記載された発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明および引用例2に記載された発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明および引用例2に記載された発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-29 
結審通知日 2006-07-04 
審決日 2006-07-19 
出願番号 特願平8-162096
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤田 年彦澤田 真治  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 辻野 安人
渡部 葉子
発明の名称 遊技機  
代理人 石田 喜樹  

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