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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1142804
審判番号 不服2002-23957  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-12 
確定日 2006-08-31 
事件の表示 特願2000- 45026「遊技機制御装置、遊技機およびコンピュータ読取り可能な記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月28日出願公開、特開2001-231972〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年2月22日の出願であって、平成14年11月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成15年1月14日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年1月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について

[補正却下の決定の結論]
平成15年1月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「表示画面を有する表示手段を、予め設定された複数の識別情報を複数の列で、抽選により決定されたコマンド信号に基づいて変動表示した後に停止させるよう制御する表示制御手段と、各列の識別情報が大当たり表示で停止した場合に遊技者が有利となるように遊技機の遊技形態を変更する遊技形態変更手段とを有する遊技機制御装置であって、
表示制御手段は、外れ表示で停止する完全外れモードのとき、前記コマンド信号に基づいて識別情報を表示する複数の列領域の内側で識別情報が変動表示される第1表示パターンで表示手段に表示させ、外れ表示で停止するリーチ外れモードおよび大当たり表示で停止する大当たりモードのとき、変動開始から停止までの少なくとも途中において前記コマンド信号に基づいて、前記複数の列領域のうちの少なくとも1以上で識別情報が、移動および拡大の少なくとも一方により他の列領域にはみ出して変動表示される第2表示パターンを表示手段に表示させる表示パターン変更部を有し、
上記遊技形態変更手段は上記大当たりモードに伴う大当たり表示での停止に基づき遊技機の遊技形態を遊技者が有利となるように変更することを特徴とする遊技機制御装置。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「変動表示した後に停止させるよう制御する表示制御手段」について「抽選により決定されたコマンド信号に基づいて」との限定を付加し、同じく「識別情報を表示する複数の列領域の内側で識別情報を変動表示させる」について「前記コマンド信号に基づいて」の限定を付加するとともに「識別情報を表示する複数の列領域の内側で識別情報が変動表示される」(下線部訂正)と誤記を訂正し、「前記複数の列領域のうちの少なくとも1以上で識別情報を、移動および拡大の少なくとも一方により他の列領域にはみ出させて変動表示させる」について「前記コマンド信号に基づいて、」との限定を付加するとともに「前記複数の列領域のうちの少なくとも1以上で識別情報が、移動および拡大の少なくとも一方により他の列領域にはみ出して変動表示される」(下線部訂正)と誤記を訂正し、「表示制御手段」について「(・・・第1表示パターンで表示手段に表示させ、・・・第2表示パターンを表示手段に表示させ)る表示パターン変更部を有し、」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(1)引用発明
原審における、平成14年3月4日付けの拒絶の理由に引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平8-243228号公報(以下、「引用文献」という。)には以下の発明が記載されている。

引用文献(特開平8-243228号公報)
引用文献には、以下の記載がある。
a.「画像表示画面上で識別情報を複数列の可変表示部にて可変表示する画像表示装置を備え、該画像表示装置における複数列の可変表示部の表示結果が予め定めた組合せとなったときに遊技者にとって有利となるような特別遊技を行うことができるパチンコ機において、前記可変表示部に表示される識別情報を仮想回転板に表示すると共に、該仮想回転板をその中心を通る軸を回転軸として回転表示し、その回転に応じて識別情報を可変表示し得る画像表示制御手段を備えたことを特徴とするパチンコ機。」(特許請求の範囲の請求項1)
b.「遊技球が始動入賞装置51,52,52に入賞した場合には、・・・画像表示装置46の識別情報を可変表示させることができるという特典が付加されている。そして、識別情報の可変表示が停止したときの組み合わせが、予め定められた特定の組み合わせ結果となったときは、特別遊技が開始されて大入賞装置47を所定時間の経過、若しくは所定個数の遊技球の入賞の何れか一方が達成されるまで開放する。」(第5頁第7欄第21-29行)
c.「図柄表示装置の構成46は、画像表示手段としての液晶パネル64・・・から構成されており・・・」(第5頁第8欄第45-49行)
d.「マイクロコンピュータ69は、・・・表示画像記憶手段としての表示用マイクロコンピュータ74及び液晶パネル駆動回路75とから構成された画像表示制御手段としての画像表示制御基盤76と、も接続されている。・・・表示用マイクロコンピュータ74は、第1制御基盤21のマイクロコンピュータ69の指示にしたがって、予め記憶された表示画像データに基づいて表示画像を作成し、液晶パネル駆動回路75を介して液晶パネル64に画像を表示するようになっている。」(第6頁第10欄第9-21行)
e.「液晶パネル64には、背景部77と、該背景部77を縦方向に三等分する区画部78と、各区画内に回転表示される仮想回転板81と、が表示されている。仮想回転板81の表裏の平面部は、上・中・下の3コマの識別情報80が表示される識別情報表示部79を構成しており、画面全体では9コマの識別情報80によって組合せゲームを行うことができるようになっている。
始動入賞球が発生して可変表示が開始されると各仮想回転板81は、図5及び図6の画像(A)〜(H)の順に次々と切換え表示される。そして、(A)〜(H)の画像の切り換え表示を1サイクルとして複数サイクル繰り返すことにより連続的な回転表示を行うようになっている。」(第6頁第10欄第25-38行)
f.「各仮想回転板81上の識別情報80は、上から下へ順に数字が小さくなるように、且つ連続した並びで表示されるようになっており、各仮想回転板81の回転に伴う識別情報80の変更時には、識別情報80が上から下へと順に1コマ分だけずれて表示されるようになっている。」(第7頁第11欄第44-49行)
g.「始動入賞装置に遊技球が入賞した時点のカウンター値が予め決定された大当たりのカウンター値と一致すれば大当たりと判定され、不一致であれば外れの処理がされる。」(第8頁第13欄第20-23行)
h.「液晶パネルを左・中・右の3つの部分に分割し、その分割した表示部分毎に対応する表示画像データ、つまり左識別情報表示部・中識別情報表示部・右識別情報表示部毎に表示画像データを記憶し、前記各識別情報表示部毎に回転動作の制御をするようにしてもよい。」(第8頁第14欄第4-9行)
上記の記載より、引用文献には以下の発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。
「画像表示画面上で複数列の識別情報を可変表示する、液晶パネル64から構成される画像表示装置46を備え、遊技球が始動入賞装置51,52,52に入賞すると画像表示装置46の複数列の識別情報を可変表示させ、識別情報の可変表示が停止したときの組み合わせが予め定められた特定の組み合わせ結果となったときに、遊技者にとって有利となるような特別遊技を行うことができる特別遊技が開始されて大入賞装置47を所定時間の経過、若しくは所定個数の遊技球の入賞の何れか一方が達成されるまで開放するパチンコ機において、第1制御基盤21のマイクロコンピュータ69は、表示画像記憶手段としての表示用マイクロコンピュータ74及び液晶パネル駆動回路75とから構成された画像表示制御手段としての画像表示制御基盤76と接続されており、表示用マイクロコンピュータ74は、上記マイクロコンピュータ69の指示にしたがって、予め記憶された表示画像データに基づいて表示画像を作成し、液晶パネル駆動回路75を介して液晶パネル64に画像を表示するようになっており、液晶パネル64には、背景部77と、該背景部77を縦方向に三等分する区画部78と、各区画内に回転表示される仮想回転板81と、が表示されており、仮想回転板81の表裏の平面部は、上・中・下の3コマの識別情報80が表示される識別情報表示部79を構成しており、各仮想回転板81の回転に伴う識別情報80の変更時には、識別情報80が上から下へと順に1コマ分だけずれて表示され、画面全体では9コマの識別情報80によって組合せゲームを行うことができ、回転動作の制御は、液晶パネルを左・中・右の3つの部分に分割し、その分割した表示部分毎に対応する表示画像データ、つまり左識別情報表示部・中識別情報表示部・右識別情報表示部毎に表示画像データを記憶し、前記各識別情報表示部毎に回転動作の制御をするようにしてもよく、始動入賞装置に遊技球が入賞した時点のカウンター値が予め決定された大当たりのカウンター値と一致すれば大当たりと判定されて可変表示が開始され、不一致であれば外れの処理がされ、可変表示が開始されると各仮想回転板81は連続的な回転表示を行い、その回転に応じて識別情報を可変表示し得る画像表示制御手段を備えたパチンコ機。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「液晶パネル64から構成される画像表示装置46」は本願補正発明における「表示画面を有する表示手段」に、「可変表示」は「変動表示」に、それぞれ対応しており、さらに引用発明について、次のことがいえる。
(i) 引用発明において、「画像制御手段」が備える「表示用マイクロコンピュータ74」は、「マイクロコンピュータ69の指示にしたがって、予め記憶された表示画像データに基づいて表示画像を作成し、液晶パネル駆動回路75を介して液晶パネル64に画像を表示」するものであり、上記「マイクロコンピュータ69の指示」とは、「始動入賞装置に遊技球が入賞した時点のカウンター値が予め決定された大当たりのカウンター値と一致」したと「マイクロコンピュータ69」が「判定」したときに「画像制御手段」において「複数列の識別情報を可変表示させ」るために、該「マイクロコンピュータ69」が「表示用マイクロコンピュータ74」に対して送信する「指示」であることが明らかであり、実質的に、本願補正発明を特定する「コマンド信号」に対応するものということができるとともに、「カウンター値が予め決定された大当たりのカウンター値と一致」したと「判定」することは、本願補正発明を特定する「抽選により決定」することに対応しているということができる。
そうすると、引用発明は、本願補正発明を特定する「表示画面を有する表示手段(引用発明における「液晶パネル64から構成される画像表示装置46」が対応する。)を、予め設定された複数の識別情報を複数の列で、抽選により決定されたコマンド信号に基づいて変動表示した後に停止させるよう制御する」に対応する構成を実質上備えており、当該構成を備えた引用発明における「画像表示制御手段」と、本願補正発明における「表示制御手段」とを包括して「制御手段」と表現することができる。
(ii)引用発明は、「複数列」の「識別情報の可変表示が停止したときの組み合わせが予め定められた特定の組み合わせ結果となったときに、遊技者にとって有利となるような特別遊技を行うことができる特別遊技が開始されて大入賞装置47を所定時間の経過、若しくは所定個数の遊技球の入賞の何れか一方が達成されるまで開放」するものであり、実質上、本願補正発明を特定する「各列の識別情報が大当たり表示で停止した場合に遊技者が有利となるように遊技機の遊技形態を変更する遊技形態変更手段」の事項に対応する構成を備えているということができ、本願補正発明も引用発明も、共に「遊技機制御装置」に関する発明であるということができる。
(iii) 引用発明は、「液晶パネル64には、背景部77と、該背景部77を縦方向に三等分する区画部78と、各区画内に回転表示される仮想回転板81と、が表示され」ており、「画面全体では9コマの識別情報80によって組合せゲームを行う」ものであり、上記(i)に記載したように、「マイクロコンピュータ69」から送信される「指示」(すなわち、本願補正発明における「コマンド信号」に対応する信号。)に基づいて「画像表示制御手段」(上記(i)に記載したように、「制御手段」と包括的に表現することができる。)が「識別情報を可変表示」するものである。そして、上記「可変表示」は「背景部77を縦方向に三等分」する「各区画内」、すなわち本願補正発明における、「列領域の内側」に対応する領域において行われるものであり、上記「可変表示」の態様は、「複数の列領域の内側で識別情報が可変表示(本願補正発明における「変動表示」に対応する。)される表示パターンで表示手段に表示させ」るものであるということができる。
一方、本願補正発明は「表示制御手段(上記(i)に記載したように、「制御手段」と包括的に表現することができる。)は、外れ表示で停止する完全外れモードのとき、前記コマンド信号に基づいて識別情報を表示する複数の列領域の内側で識別情報が変動表示される第1表示パターンで表示手段に表示させ」るものであり、上記「第1表示パターン」は、「複数の列領域の内側で識別情報が変動表示される表示パターン」であるから、本願補正発明と引用発明とは、「制御手段は、前記コマンド(引用発明における「指示」が対応する。)信号に基づいて識別情報を表示する複数の列領域の内側で識別情報が変動表示(引用発明における「可変表示」が対応する。)される表示パターン」を有する点で共通しているといえる。
(iv)上記(ii)に記載したように、引用発明は、実質上、本願補正発明を特定する「各列の識別情報が大当たり表示で停止した場合に遊技者が有利となるように遊技機の遊技形態を変更する遊技形態変更手段」の事項に対応する構成を備えているということができるから、本願補正発明と引用発明とは、「上記遊技形態変更手段は大当たり表示での停止に基づき遊技機の遊技形態を遊技者が有利となるように変更する」点で一致している。

以上の事項より、本願補正発明と引用発明とは以下の点で一致し、また、相違していると認められる。
一致点;
表示画面を有する表示手段を、予め設定された複数の識別情報を複数の列で、抽選により決定されたコマンド信号に基づいて変動表示した後に停止させるよう制御する制御手段と、各列の識別情報が大当たり表示で停止した場合に遊技者が有利となるように遊技機の遊技形態を変更する遊技形態変更手段とを有する遊技機制御装置であって、制御手段は、前記コマンド信号に基づいて識別情報を表示する複数の列領域の内側で識別情報が変動表示される表示パターンを有し、上記遊技形態変更手段は大当たり表示での停止に基づき遊技機の遊技形態を遊技者が有利となるように変更する遊技機制御装置、である点。
相違点;
A.制御手段が、本願補正発明では、外れ表示で停止する完全外れモードのとき、前記コマンド信号に基づいて識別情報を表示する複数の列領域の内側で識別情報が変動表示される第1表示パターンで表示手段に表示させ、外れ表示で停止するリーチ外れモードおよび大当たり表示で停止する大当たりモードのとき、変動開始から停止までの少なくとも途中において前記コマンド信号に基づいて、前記複数の列領域のうちの少なくとも1以上で識別情報が、移動および拡大の少なくとも一方により他の列領域にはみ出して変動表示される第2表示パターンを表示手段に表示させる表示パターン変更部を有している表示制御手段であるのに対して、引用発明では画像表示制御手段であり、外れ表示で停止する完全外れとなるときの完全外れモード、外れ表示で停止するリーチ外れとなるときのリーチ外れモード、および大当たり表示で停止する大当たりとなるときの大当たりモードに基づく制御を行うものでなく、リーチ外れとなるときおよび大当たりとなるときに、可変表示から停止までの少なくとも途中においてコマンド信号に基づいて、複数の区画部のうちの少なくとも1以上で識別情報が、移動および拡大の少なくとも一方により他の区画部にはみ出して可変表示される表示パターンを画像表示装置に表示させる表示パターン変更部を有していない点。
B.遊技形態変更手段が遊技機の遊技形態を変更するのが、本願補正発明では、大当たりモードに伴う大当たり表示での停止に基づくものであるのに対して、引用発明では大当たりとなったときである点。

(3)判断
上記の相違点について検討する。
A.の相違点について
引用発明における「画像表示制御手段」は、本願補正発明が有する「外れ表示で停止する完全外れモード」、「外れ表示で停止するリーチ外れモード」、「大当たり表示で停止する大当たりモード」の別を設定しておらず、また各モードに応じた表示を行うものではなく、外れ表示で停止する完全外れとなるときにも、外れ表示で停止するリーチ外れとなるときにも、大当たり表示で停止する大当たりとなるときにも、「マイクロコンピュータ69」から送信される「指示」(すなわち、本願補正発明における「コマンド信号」に対応する信号。)に基づいて、「識別情報80」を表示する、「背景部77を縦方向に三等分」する「各区画内」(本願補正発明における「複数の列領域の内側」に対応する。)において、常に「識別情報80」が「可変表示」(本願補正発明における「変動表示」に対応する。)されるものであるといえる。そして、引用発明における、「マイクロコンピュータ69」から送信される「指示」(「コマンド信号」)に基づいて、「背景部77を縦方向に三等分」する「各区画内」(「複数の列領域の内側」)において「識別情報80」が「可変表示」(「変動表示」)される、上記した表示パターンは、外れ表示で停止する完全外れとなるときについては、本願補正発明において、「外れ表示で停止する完全外れモードのとき、前記コマンド信号に基づいて識別情報を表示する複数の列領域の内側で識別情報が変動表示される第1表示パターンで表示手段に表示させ」る表示パターンと実質的に異なるところがない。
ところで、外れ表示で停止する完全外れモード、外れ表示で停止するリーチ外れモード、大当たり表示で停止する大当たりモードなどの遊技のモードに応じて、表示手段に表示させる複数の表示パターンを有し、遊技制御装置から送信されるコマンド信号に基づいて、遊技のモードに応じた表示パターンで識別情報が変動表示されるように表示パターンを変更する制御を行う表示制御手段は、例えば下記の周知例1ないし3に例示するようによく知られており、特に周知例1は、画像の移動、拡大等の動画(アニメーション表示)処理を伴う表示パターンを表示する「映像制御部」を有するものである。また、外れ表示で停止するリーチ外れおよび大当たり表示で停止する大当たりとなるときに、変動開始から停止までの少なくとも途中において必ず成立するリーチ状態になると、複数の列領域のうちの少なくとも1以上の列領域で、識別情報が移動や拡大することにより他の列領域にはみ出して変動表示することで表示パターンを変化させ、遊技者の注意を喚起することは遊技機の画像表示手段として通常行われており、例えば下記の周知例5、6は移動することにより表示パターンを変化させ、周知例7、8は拡大することにより表示パターンを変化させ、周知例4は移動及び拡大することにより表示パターンを変化させるものである。
そうすると、引用発明において、外れ表示で停止する完全外れとなるときにも、外れ表示で停止するリーチ外れとなるときにも、大当たり表示で停止する大当たりとなるときにも、「マイクロコンピュータ69」から送信される「指示」(「コマンド信号」)に基づいて、「識別情報80」を表示する、「背景部77を縦方向に三等分」する「各区画内」(「複数の列領域の内側」)で「識別情報80」が「可変表示」(「変動表示」)される表示パターンで「画像表示装置46」(「表示手段」)に表示させていた「画像表示制御手段」に上記した周知技術を適用して、外れ表示で停止する完全外れモード、外れ表示で停止するリーチ外れモード、大当たり表示で停止する大当たりモードなどの遊技のモードに応じて表示手段に表示させる複数の表示パターンを有するものとし、「マイクロコンピュータ69」から送信される「指示」(「コマンド信号」)に基づいて、遊技のモードに応じて表示パターンを変更するよう制御する制御部(すなわち、本願補正発明における「表示パターン変更部」に相当するもの。)を備えるようにし、外れ表示で停止するリーチ外れモードおよび大当たり表示で停止する大当たりモードのときに、変動開始から停止までの少なくとも途中において、複数の列領域のうちの少なくとも1以上の列領域で、識別情報が移動や拡大することにより他の列領域にはみ出して変動表示される上記した周知の表示パターン(すなわち、本願補正発明における「第2表示パターン」に相当するもの。)で「画像表示装置46」(「表示手段」)に表示するように、表示パターンを変更するよう制御することは当業者であれば容易に想到し得ることであり、表示パターンを変更するよう制御する制御部(「表示パターン変更部」)を備えた引用発明における「画像表示制御手段」は、実質上、本願補正発明における「表示制御手段」と同様の機能を奏するものとなる。

B.の相違点について
「A.の相違点について」において上記したように、引用発明において、外れ表示で停止する完全外れモード、外れ表示で停止するリーチ外れモード、大当たり表示で停止する大当たりモードなどの遊技のモードに応じて、表示手段に表示させる複数の表示パターンを有するように構成することは当業者が適宜になし得る設計的事項にすぎず、引用発明が遊技のモードに応じた表示制御を行うと、「複数列」の「識別情報の可変表示が停止したときの組み合わせが予め定められた特定の組み合わせ結果となったとき」に、「大入賞装置47を開放」することによる遊技形態の変更は、大当たりモードに伴う遊技形態の変更となるから、B.の相違点に係る構成も単なる設計的事項にすぎない。
ここで、本願補正発明の効果について、本願の明細書の段落【0065】には「請求項1または4の発明の遊技機制御装置による場合には、第2表示パターンのとき、全列領域のうちの少なくとも一つに表示する識別情報が他の列領域にはみ出すので、識別情報の動きがより大きな動きとなり、遊技者の興奮度をより効果的に高めることができる。」と記載されている。そこで検討するに、上記したとおり、「全列領域のうちの少なくとも一つに表示する識別情報」を「他の列領域にはみ出す」ことにより、「識別情報の動き」を「より大きな動き」として表示することは遊技機における識別情報の表示手段として常套手段であり、上記した「識別情報の動き」を「より大きな動き」とすることで遊技者に強くアピールすることができ、結果的に遊技者の興奮度をより効果的に高めることができるであろうことも当業者に熟知されているから、引用発明に周知技術を適用することで得られる本願補正発明の効果も、引用発明および周知技術から当業者が予測しうる範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

【周知例】
1.特開平8-131627号公報
「メイン制御部220」側の現在の遊技状態、例えば図柄変動時、リーチ時等、の遊技状態に最適な図柄の内容を表示することを指令する「コマンドブロック500」を「映像制御部240」に対して送信し、上記「コマンドブロック500」に基づいて、「特別図柄表示装置126」の表示画面に図柄の移動、拡大等の動画(アニメーション)表示を行う、弾球遊技機における画像表示装置に関して。(段落【0073】、【0079】、【0100】、【0104】、【0105】、図6、図13、図22)

2.特開平7-194796号公報
可変表示ゲーム処理において、「遊技制御回路2」より転送される「表示図柄データ」に基づくモードの変化がチェックされ、「表示制御回路3」内に格納された、「通常回転処理(モード0)」、「ハズレ停止処理(モード2)」、「通常リーチ回転処理(モード3)」、「通常リーチ停止処理(モード4)」、・・・などの各モードに対応する画像のうち、現在のモードに対応する画像を取り出して可変表示を行う点。(段落【0089】-【0114】及び図10)

3.特開平10-99495号公報
「役物制御装置17」から「表示制御装置18」に「表示制御信号」が送られると、その「表示情報(コマンド)」に基づいた画面情報を作成して、「画像表示装置4」に所定の画像を表示するもので、「表示情報(コマンド)」としては、図柄変動処理においては、「図柄変動モード(通常回転等)、図柄データ、図柄位置データ」、ならびに図柄停止時に「停止モード(ハズレ停止)」等を送信し、リーチ態様のときは、「リーチモード(通常リーチ回転、スペシャルリーチ回転)、図柄データ、図柄位置データ」、ならびに図柄停止時に「リーチ停止モード(通常停止、スペシャルリーチ停止)」等を送信する点に関して。(段落【0033】、【0034】【0054】、【0055】、【0062】、【0063】及び図2)

4.特開平5-123441号公報
「液晶表示器22」の「左図柄表示部3a」、「中図柄表示部3b」、「右図柄表示部3c」が可変表示し、「左図柄表示部3a」と「中図柄表示部3b」とが停止してリーチ状態が成立すると、可変表示中の識別情報(「右図柄表示部3c」)が拡大されて変動表示され、「左図柄表示部3a」と「中図柄表示部3b」は左上隅に縮小された状態で表示される点。(段落【0014】-【0016】及び図2、図3)(すなわち、可変表示中の識別情報(「右図柄表示部3c」)は、拡大することでリーチ状態が成立する前の他の識別情報の変動領域にはみ出して変動表示され、「左図柄表示部3a」と「中図柄表示部3b」は左上隅に縮小された状態で表示されることで、特に「中図柄表示部3b」はリーチ状態が成立する前の他の識別情報の変動領域にはみ出して変動表示される。)

5.特開平9-122308号公報
「基本回路24」からの「可変表示制御指令信号」に従って「飾り図柄用可変表示装置1」の「画像表示装置2」に対し「可変表示制御信号」が与えられ、「画像表示装置2」が「画像表示用のデータ」を読み出して「飾り図柄用可変表示装置1」において「図柄列」が順次スクロール表示され、リーチ状態になると、「キャラクタ81」が、例えば「飾り図柄表示部2i」の「飾り図柄」を順次めくっていく動作をすることにより、めくられた「飾り図柄」は、順次画面上の左方向へ飛ばされて消滅する「めくり表示の可変表示態様」に切換えられる点。
(段落【0039】、【0046】、【0047】、【0120】-【0123】及び図3、図16)(すなわち、可変表示中の識別情報は、「めくり表示の可変表示態様」に切換えられ、「画面上の左方向へ飛ばされ」ることで、リーチ状態が成立する前の他の識別情報の変動領域にはみ出して変動表示される。)

6.特開平9-19549号公報
「基本回路46」から出力される「コマンド信号」に従って「可変表示装置24」に含まれる「LCD表示装置35」を駆動制御し、「左側、中央、右側」の「特別図柄」に対応した「キャラクタ画像」である「レーシングカー」を「変動表示」させ、特にリーチ状態においては、「どけどけリーチ」、「S字リーチ」など、「キャラクタ画像」である「レーシングカー」が他の「レーシングカー」の変動領域にはみ出して変動表示される点。
(段落【0041】、【0064】、【0068】、【0117】【0124】及び図29)

7.特開平9-108415号公報
「役物制御回路20」から「表示制御回路40」に「送信データ」が送られて、「可変表示装置4」の「左、中、右の縦長に3分割された」「3つの表示部分から構成され」る「可変表示部4a」により「特別図柄の可変表示遊技」が行われ、「スペシャルリーチ」になると、「左表示部分41a」と「右表示部分41c」を小さい表示に、「中表示部分41b」を大きい表示にしてスクロールさせる点。
(段落【0039】、【0040】、【0046】、【0116】及び図12)

8.特開平11-192351号公報
「主制御部140」からの「コマンドデータ」に従って、「液晶制御基板160」は「キャラクタデータ」を読み出して画像データを作成し、「液晶モジュール161」に「図柄表示」を行い、リーチ状態になると、「中図柄501b」が急拡大して「左図柄501a」及び「右図柄501b」が部分的にその背後に隠れた状態が表示される点。
(段落【0024】、【0033】-【0035】【0038】及び図8、27)

(4)むすび
したがって、本件補正は、平成15年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成15年1月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年5月13日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「表示画面を有する表示手段を、予め設定された複数の識別情報を複数の列で変動表示した後に停止させるよう制御する表示制御手段と、各列の識別情報が大当たり表示で停止した場合に遊技者が有利となるように遊技機の遊技形態を変更する遊技形態変更手段とを有する遊技機制御装置であって、表示制御手段は、外れ表示で停止する完全外れモードのとき、識別情報を表示する複数の列領域の内側で識別情報を変動表示させる第1表示パターンで表示手段に表示させ、外れ表示で停止するリーチ外れモードおよび大当たり表示で停止する大当たりモードのとき、変動開始から停止までの少なくとも途中において、前記複数の列領域のうちの少なくとも1以上で識別情報を、移動および拡大の少なくとも一方により他の列領域にはみ出させて変動表示させる第2表示パターンを表示手段に表示させ、上記遊技形態変更手段は上記大当たりモードに伴う大当たり表示での停止に基づき遊技機の遊技形態を遊技者が有利となるように変更することを特徴とする遊技機制御装置。」

(1)引用発明
原審における、平成14年3月4日付けの拒絶の理由に引用した引用文献、及び、その記載事項は、前記「2.(1)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「変動表示した後に停止させるよう制御する表示制御手段」の限定事項である「抽選により決定されたコマンド信号に基づいて」との事項を省き、「識別情報を表示する複数の列領域の内側で識別情報が変動表示される」の限定事項である「前記コマンド信号に基づいて」との事項を省き、「前記複数の列領域のうちの少なくとも1以上で識別情報を、移動および拡大の少なくとも一方により他の列領域にはみ出して変動表示される」の限定事項である「前記コマンド信号に基づいて、」との事項を省き、「表示制御手段」の限定事項である「(・・・第1表示パターンで表示手段に表示させ、・・・第2表示パターンを表示手段に表示させ)る表示パターン変更部を有し」との事項を省いたものである。(なお、平成15年1月14日付けの手続補正(本願補正)により、誤記の訂正(下線部)も行われている。)
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本願の他の請求項に係る発明について論ずるまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-29 
結審通知日 2006-07-04 
審決日 2006-07-20 
出願番号 特願2000-45026(P2000-45026)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塩崎 進  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 川島 陵司
渡部 葉子
発明の名称 遊技機制御装置、遊技機およびコンピュータ読取り可能な記録媒体  
代理人 植木 久一  
代理人 伊藤 孝夫  
代理人 小谷 悦司  

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