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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1142866
審判番号 不服2005-22227  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2005-09-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-17 
確定日 2006-08-31 
事件の表示 特願2004-57872「トリプレート型平面アレーアンテナ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年9月15日出願公開、特開2005-252474〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成16年3月2日の出願であって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年6月8日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
(本願発明)
「二次元的に縦横に配列された複数の放射素子と給電線路を含むアンテナ回路が形成されたアンテナ回路基板と、そのアンテナ回路基板を両面から挟む2枚の誘電体と、一方の誘電体に対して重ね合わせた地導体と、他方の誘電体に対して重ね合わせたスロット板と、を備えたトリプレート型平面アレーアンテナであって、
前記スロット板は、複数のスロット開口を有し、各スロット開口は、1列に並んだ複数の放射素子に対応して形成されており、
前記複数のスロット開口の長手方向に垂直な方向における前記複数のスロット開口の各配列間隔を、利用する周波数帯域の中心周波数に対応する自由空間波長の0.85〜0.93倍に設定したことを特徴とするトリプレート型平面アレーアンテナ。」

2.引用発明および周知技術
(1)これに対して、原審の拒絶理由に引用された特開平6-53734号公報(以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「【請求項1】 地導体板と、
この地導体板に対し誘電体シートを介して積層配置された給電回路シートと、
この給電回路シートのシート面に形成され、複数の放射端部を有する給電ラインと、
この給電ラインが形成された給電回路シートに対し誘電体シートを介して積層配置された放射回路板と、
この放射回路板に上記給電ラインの少なくとも2ずつの放射端部に対し1つずつ対応して開孔形成され、その放射端部からの放射波を外部に放射させる放射スロットとを具備し、
上記給電ラインの複数の放射端部で1つの放射スロットを共用することを特徴とする平面アンテナ。」(2頁1欄、特許請求の範囲)
ロ.「【0016】また、上記実施例では、楕円形の放射スロット18a,18b,19a,19bを形成して構成したが、例えば図3(A)で示すような長方形の放射スロット21や、図3(B)または図3(C)で示すような4個の放射端部15a〜15dに対応させて開孔径を広げた変形放射スロット22または23を形成して構成してもよい。」(3頁3欄、段落16)
ハ.図1〜3には「二次元的に縦横に配列された複数の放射端部と給電ラインを含む給電回路が形成された給電回路シート13」(図1参照)と、「その給電回路シートを両面から挟む2枚の誘電体シート12a、12bと、一方の誘電体シート12aに対して重ね合わせた地導体板11と、他方の誘電体12bに対して重ね合わせた放射回路板17」(図2参照)とを備えた「平面アンテナであって、前記放射回路板17は、複数の放射スロット18a、19aを有し、各放射スロットは、1列に並んだ複数の放射素子に対応して形成されている平面アンテナ。」(図1、図3参照)が記載されている。

上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記図1、図2に記載された平面アンテナはいわゆる「トリプレート型」の「アレー」アンテナであるから、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
(引用発明)
「二次元的に縦横に配列された複数の放射端部と給電ラインを含む給電回路が形成された給電回路シートと、その給電回路シートを両面から挟む2枚の誘電体と、一方の誘電体シートに対して重ね合わせた地導体板と、他方の誘電体シートに対して重ね合わせた放射回路板と、を備えたトリプレート型平面アレーアンテナであって、
前記放射回路板は、複数の放射スロットを有し、各放射スロットは、1列に並んだ複数の放射端部に対応して形成されているトリプレート型平面アレーアンテナ。」

(2)例えば特開平1-286602号公報(以下、「周知例1」という。)には図面とともに以下の事項イ、ロが記載されており、また例えば特開2000-101341号公報(以下、「周知例2」という。)には図面とともに以下の事項ハが記載されており、また例えば特開平6-69725号公報(以下、「周知例3」という。)には図面とともに以下の事項ニ〜ヘが記載されている。
イ.「マイクロストリップ素子により構成される平面アンテナは、一般に多数のマイクロ波ストリップ放射素子をN段M列のアレー状に配列し、これらの素子をマイクロ波ストリップラインから成る給電回路で励振するよう構成される。励振の方法は直接励振、電磁励振等がある。この場合、各素子への励振位相をすべて同位相となるように給電回路を構成すると、アンテナからの放射ビームはN段M列のアレー配列面に対して垂直方向(ボアサイト)を向く。また、上下方向の各素子を適当な位相角度で移送差給電すると上方にビームチルトしたアンテナを実現することができる。
[発明が解決しようとする課題]
しかし、通常各素子の配列間隔dはアンテナの面効率が最高となるように0.8〜0.9λ0(λ0は自由空間波長)に選定されるが、ビームチルトを行なうために位相差給電を行なうとグレーティングローブ(目的以外の方向に生じるレベルの大きな不要放射)が発生し、これを除去するために素子間隔dを小さくする必要がある。一例として、グレーティングローブを抑える23゜のビームチルト角を実現するためには、素子間隔d≦0.64λ。が必要となる。」(周知例1、1頁右下欄17行目〜2頁左上欄19行目)
ロ.「第4図はこうした構成の一例として右旋円偏波の環状スロット放射素子をトリプレート線路より成る給電回路で励振するよう構成された例を示す」(周知例1、2頁右上欄10〜12行目)

ハ.「一般にアレーアンテナではグレーティングローブが発生しないような素子間隔とするために、素子間隔をあまり大きくすることができず、通常0.5〜0.9波長程度となっている」(周知例2、3頁3欄、6〜10行目)

ニ.「【請求項1】地導体1の面上に誘電体2aを介してアンテナ回路基板3を設置し、さらにその面上に誘電体2bを介して電波放射のための開口7を有する地導体4を設置して構成されるトリプレート給電型平面アンテナにおいて、アンテナの外周側面に電波吸収体14を設置したことを特徴とするトリプレート給電型平面アンテナ。」(周知例3、2頁1欄、請求項1)
ホ.「【0004】本発明は、利得・効率特性を損なうことなく、不要なサイドローブレベルの上昇がない良好な指向特性を有する平面アンテナを提供するものである。」(周知例3、2頁2欄、段落4)
ヘ.「【0012】実施例1
上述の基本構成を組み合わせて、図4に示すアンテナを構成し、放射素子5と開口7の一方向の配列数が16で、直交する方向の配列数も16とした256素子アンテナを構成し、さらに直交する2方向の配列間隔が利用周波数14.3GHzの自由空間波長の約0.9倍である18.5mmとして、外形306mm角のアンテナを製作し、外形端から5mmの位置までの地導体1と4の間にフェライトゴムの吸収体14を設ける共に、アンテナの開口分布を-6dB台上余弦分布とするために各素子に所望の電力を配分するように給電線路6を設計した。」(周知例3、3頁3欄、段落12)

上記周知例1、2の記載によると、ビームチルトを行わないときのグレーティングローブが発生しないような素子間隔は0.9波長程度である。また上記周知例1、3の記載によると、アンテナの面効率が最高となる素子間隔はやはり0.9波長程度である。
したがって、上記周知例1〜3に開示されているように「アンテナ面効率の向上及びグレーティングローブ低減のために、素子間隔を0.9波長程度に設定したトリプレート型平面アンテナ等のアレーアンテナ」は周知である。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「放射端部」、「給電ライン」、「給電回路」、「給電回路シート」、「誘電体シート」、「地導体板」、「放射回路板」、「放射スロット」と本願発明の「放射素子」、「給電線路」、「アンテナ回路」、「アンテナ回路基板」、「誘電体」、「地導体」、「スロット板」、「スロット開口」はそれぞれ用語が異なるだけで実質的な差異はない。
したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。
(一致点)
「二次元的に縦横に配列された複数の放射素子と給電線路を含むアンテナ回路が形成されたアンテナ回路基板と、そのアンテナ回路基板を両面から挟む2枚の誘電体と、一方の誘電体に対して重ね合わせた地導体と、他方の誘電体に対して重ね合わせたスロット板と、を備えたトリプレート型平面アレーアンテナであって、
前記スロット板は、複数のスロット開口を有し、各スロット開口は、1列に並んだ複数の放射素子に対応して形成されているトリプレート型平面アレーアンテナ。」
(相違点)
本願発明は「前記複数のスロット開口の長手方向に垂直な方向における前記複数のスロット開口の各配列間隔を、利用する周波数帯域の中心周波数に対応する自由空間波長の0.85〜0.93倍に設定した」構成を備えているのに対し、引用発明は当該構成を備えているか否か不明である点。

4.判断
まず、適用条文について検討するに、原審の拒絶理由通知に対する補正後の請求項1に記載された本願発明は、例え旧請求項1の内容を旧請求項5の内容で減縮し旧請求項5を削除する補正によるものであるとしても、補正前の旧請求項1を引用する旧請求項5に記載された発明と実質的に変わらないから、当該補正は請求項の項番を旧請求項5から補正後の請求項1に単に変更するだけのものである。
したがって、原審の拒絶理由通知に対する補正後の請求項1に記載された本願発明には、当該拒絶理由通知において旧請求項5に対して指摘した理由2(特許法第29条第2項の規定)が適用される。

そこで、上記相違点について検討するに、例えば、上記周知例1〜3に開示されているように「アンテナ面効率の向上及びグレーティングローブ低減のために、素子間隔を0.9波長程度に設定したトリプレート型平面アンテナ等のアレーアンテナ」は周知であり、当該周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、当該周知技術に基づいて引用発明の「トリプレート型平面アンテナ」の素子間隔(即ち、本願発明でいう「前記複数のスロット開口の長手方向に垂直な方向における前記複数のスロット開口の各配列間隔」)を「0.9波長程度」とほぼ同義の「波長の0.85〜0.93倍」に設定して本願発明のような構成を得る程度のことは当業者であれば適宜成し得ることである。

ついで、作用効果について検討するに、引用発明のアンテナは加工時間の大幅な短縮を目的としており、利得、面効率及びサイドローブ(即ち、グレーティングローブ)特性については考慮されていない点で本願発明と一応の相違(特許請求の範囲の記載に基づく差異ではない)はあるが、上記したとおり「アンテナ面効率の向上及びグレーティングローブ低減のために、素子間隔を0.9波長程度に設定したトリプレート型平面アンテナ等のアレーアンテナ」は当業者には周知であるから、当該周知技術に基づいて、利得、面効率及びサイドローブ特性について考慮した上で、本願発明のような構成を得る程度のことに格別の創意工夫を要したものとは認められない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-29 
結審通知日 2006-07-04 
審決日 2006-07-18 
出願番号 特願2004-57872(P2004-57872)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 賢司  
特許庁審判長 羽鳥 賢一
特許庁審判官 宮下 誠
浜野 友茂
発明の名称 トリプレート型平面アレーアンテナ  
代理人 三好 秀和  
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