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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C11D
管理番号 1142882
審判番号 不服2002-15395  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-12 
確定日 2005-11-16 
事件の表示 平成10年特許願第505242号「界面活性剤ペーストをコンディショニングして高い活性の界面活性剤凝集物を形成させる方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年1月15日国際公開、WO98/01529、平成11年11月30日国内公表、特表平11-514034〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.出願の経緯・本願発明
本願は、1997年6月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1996年7月4日、ヨーロッパ特許庁)を国際出願日とする出願であって、その請求項1〜6に係る発明(以下、「本願発明1〜6」という。)は、平成13年8月3日付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願発明1は以下のとおりのものである。

「1.下記工程(i)〜(iii)からなる、粒状洗剤成分または組成物を製造する方法。(i)少なくとも40重量%のアニオン界面活性剤を含んでなる中性またはアルカリ性のペーストを形成させる工程。(ii)押出機において、第1粉末を、界面活性剤ペーストと、ペースト100部に対して粉末が少なくとも1部の比で混合し、この混合によって界面活性剤ペーストの粘度を増加させる工程(ここで、第1粉末は少なくとも80重量%のアルキル硫酸塩を含んでなる)。(iii)5〜50m/秒のツールチップ速度を有する高剪断ミキサーの造粒装置、および中速度凝集装置において、順次に、そのように形成された高粘度ペーストをビルダー粉末と混合することによって粒状洗剤成分または組成物を形成させる工程(ここで、高粘度ペースト:ビルダー粉末の比は、9:1〜1:5である)。」

2.引用例
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された本願優先権主張日前に頒布された刊行物である刊行物1(特表平6-506719号公報)、刊行物2(国際公開第95/19421号パンフレット)には、以下の事項が記載されている。

刊行物1:
ア)「1.濃縮洗剤組成物の製造法において、(i)余分のアルカリ中において単数または複数のアニオン界面活性剤酸を中和して高活性(少なくとも40重量%のアニオン界面活性剤)ペーストを形成し、前記ペーストは70℃で測定された場合に少なくとも10Pa・sの粘度および25s-1の剪断速度を有する段階と、(ii)前記ペーストをコンディショニングする段階と、(iii)高剪断ミキサ/造粒機の中において有効量の洗剤粉体の存在において高活性洗剤粒子を形成する段階とを含む方法。
2.前記高活性ペーストをポンプ輸送しまた/あるいはその水分を低下させまた/あるいは冷却しまた/あるいは化学構造剤を前記ペーストに添加する際に押出器を使用することを特徴とする請求項1の段階(ii)を実施する方法。
・・・
4.押出器バレル中の単数または複数の導入ポートによって粉体および/または追加ペーストを追加し、これらの粉体およびペーストを押出器の中で混合することを特徴とする請求項2または3のいずれかに記載の方法。」(特許請求の範囲の請求項1、2及び4)
イ)「本発明は、硫酸塩/スルホン酸塩化プロセスとは完全に分離されたアグロメレーション/造粒段階に基づいている。アグロメレートの界面活性を大幅に増大するため、本発明はペースト/粉末比を増大して固く砕け易い粒子に形成する事ができる。」(3頁左下欄3〜7行)
ウ)「ペーストのコンディショニングとは、通常の操作条件では得られないような高い活性アグロメレートを形成するように、ペーストの物性を変更する事を意味する。本発明は特に全ての中和されたAS水性ペーストに対して適用される。」(4頁左上欄12〜16行)
エ)「さらに好ましい実施態様においては、界面活性剤ペーストの物理構造および/または物理特性を変更させる有機および/または無機化合物がペーストに対して添加される。このような界面活性剤ペーストに対する添加は、ペーストの固着性を低下させ、その粘性を増大させ、またその軟化点を上昇させる。これにり、アグロメレーション工程に際して、より多量の、すなわち50%以上のペーストを添加する事ができ、従ってより活性のアグロメレートを生じる。」(4頁右上欄3〜11行)
オ)「本明細書におけるペーストコンディショニングとは、(a)その見掛け粘度を増大し、(b)その有効融点を上昇させ、(c)ペースト「硬度」を増進し、また(d)形成された粒子の固着性を低減するにある。」(4頁右上欄21〜24行)
カ)「また本発明に使用されるアニオン界面活性剤は、分子構造中に約10乃至約20の炭素原子を含むアルキル基とスルホン酸エステル基とを有する有機硫酸反応生成物の水溶性塩・・・アルキル硫酸ナトリウムおよびカリウム・・・である。」(5頁右下欄5〜19行)
キ)「押出機 押出機は粘性界面活性剤ペーストを連続ベースでポンプ輸送し混合する機能を果たす。・・・押出機の細部設計により、種々の機能を実施する事ができる。第1に、バレル中の追加ポートを通して、化学構造剤を含めて他の成分をバレルの中に直接添加する事ができる。」(7頁右上欄19行〜左下欄5行)
ク)「押出機はペーストを水分および温度の低減によってコンディショニングする事ができる。」(7頁右下欄6〜7行)
ケ)「粉体流 本発明の好ましい実施態様は前記のようにアニオン界面活性剤をペースト状で導入する段階を含むが、一定量の界面活性剤を粉体流として、例えば吹き込み粉体の形で導入する事ができる。このような実施態様においては、粉体流の固着性と水分を低レベルに保持してアニオン界面活性剤の「装入量」の増大を防止し、界面活性剤濃度の過度に高いアグロメレートの製造を防止する必要がある。」(7頁右下欄15〜23行)
コ)「微細分散混合および造粒 本明細書において使用される「微細分散混合および/または造粒」とは、特記なき限り約5m/sないし約50m/sのブレード先端速度の微細分散ミキサの中で前記混合物を混合しまた/あるいは造粒する事を意味する。・・・ペーストと粉体との比率は工程のすべての段階において個々の粒子が見えるように選定される。これらの粒子は高温においては固着性となるが、混合/造粒段階が同時的に実施されあるいはミキサ/造粒機の閉塞を生じる事なく順次に実施されるように、これらの粒子は自由流動性でなければならない。」(8頁左上欄15行〜右上欄6行)
サ)「洗剤ビルダーおよび粉末 本発明の方法および組成においては、任意の相容性洗剤ビルダーまたはビルダー組合せまたは粉末を使用する事ができる。・・・好ましいイオン交換物質はゼオライトA・・・で市販されている。・・・他の有効な水溶性塩は一般に洗剤ビルダー物質として公知の化合物を含む。ビルダーは一般に・・・炭酸塩・・・から選定される。」(9頁右上欄17行〜10頁右上欄9行)
シ)「実施例1 この実施例は・・・まずミキサに使用粉体混合物、この場合、2:1のゼオライトA:微細炭酸塩または微細クエン酸塩の混合物を充填する。界面活性剤は、78%の洗剤活性と13%の水分とを有するC45アルキル硫酸塩である。この実施例においては、NaOH(0.6kg)の50%溶液をミキサ(Eirich RV02)中のペースト(3kg)に添加した後に、造粒を開始する。・・・この処理を停止し、粉体(1.050kg)を追加する。・・・製造されたアグロメレートは60%の洗剤活性・・・を有する。これらのアグロメレートはすぐれた物性を示す。
実施例2 この実施例は実施例1と同様である。粉体混合物はこの場合にも2:1比のゼオライトA:微細炭酸塩である。界面活性剤は・・・C45ASの水性ペーストである。この実施例において、粉体(1.05kg)とペースト(3kg)とをミキサ・・・に添加した後に、造粒を開始する。」(11頁左上欄11行〜右上欄12行)
ス)「実施例4 この実施例は、6セクションから成るバレルを有するパイロットプラントツインスクリュー押出器・・・の中で連続モードでペーストコンディショニングを実施し、次に押出器からでるペーストを実験室スケールの高剪断力ミキサの中で直ちに造粒する処理法を示す。界面活性剤は78%の洗剤活性と18%の水分とを有するアルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム(NaLAS)の水性ペーストである。・・・押出器から出るペーストを実験室スケールの高剪断力ミキサの中で、2:1重量%比のゼオライトA:微分炭酸塩粉体と共に造粒する。」(11頁左下欄13行〜右下欄2行)
セ)「実施例6 実施例4と同一の装置と重量比を使用してアグロメレートを製造する。この実施例においては、マレイン酸とアクリル酸とのコポリマーの固体粉体が押出器の入口においてペーストに加えられる。・・・得られたアグロメレートの活性は54%である。
実施例7 実施例4と同一の装置と重量比を使用してアグロメレートを製造する。しかしこの実施例においては、NaLASの代わりに、C14-C15の炭素鎖長を有する60重量%のアルキル硫酸ナトリウムを含有し、25%の水分を有する界面活性剤ペーストを使用する。・・・
実施例8 実施例7と同一の装置および重量比を使用しまたこの例のアルキル硫酸ペーストを使用して、アグロメレートを製造する。しかしこの実施例においては・・・真空を加える。・・・冷却を実施する。・・・このペーストによって製造されたアグロメレートは60%のアルキル硫酸活性を有する。
実施例9 実施例7と同一の装置および重量比を使用し、またこの例のアルキル硫酸ペーストを使用して、アグロメレートを製造する。しかしこの実施例においては・・・冷却された。・・・得られたアグロメレートは65%のアルキル硫酸活性を有していた。」(11頁右下欄19行〜12頁右上欄9行)

刊行物2:(刊行物2に対応する国内公表公報である特表平9-507683号公報の対応箇所の訳文で示す。)
ソ)「1.(i)重量で(a)水・・・(b)陰イオン界面活性剤・・・(c)水溶性ケイ酸塩・・・の均一な混合物を含む構造化ペーストを連続法で調製し、(ii)その後、前記構造化ペーストを粉末形態の1種以上のビルダーと共に高剪断ミキサー中で・・・分散させる(ただし、構造化ペースト対ビルダー粉末の比率は9:1から1:5である)、工程からなる、嵩密度少なくとも650g/Lを有する洗剤成分の製法であって・・・洗剤成分の製法。
2.工程(i)を前記構造化ペーストをダイを通して押し出すことによって行い、・・・請求項1に記載の方法。」(特許請求の範囲の請求項1及び2)
タ)「本発明の目的は、界面活性剤ペーストを、高い界面活性剤活性および良好な取扱いおよび性能特性を有する自由流動性粒状洗剤に変換するための方法を提供することにある。」(3頁12〜15行、上記対応する国内公表公報5頁7〜9行)
チ)「界面活性剤ペースト・・・有用な陰イオン界面活性剤としては・・・この群の天然または合成界面活性剤の例は・・・アルキル硫酸ナトリウムおよびアルキル硫酸カリウム・・・である。」(7頁9行〜9頁20行、同7頁11行〜8頁24行)
ツ)「界面活性剤ペーストは、水溶性シリケートとの緊密混合によって構造化する。特に好適な水溶性シリケートは、以下により詳細に定義する。構造化なる用語は、界面活性剤ペーストの粘度が増大される相を達成するために界面活性剤ペーストの相化学(液晶構造)の修正を意味するとここで使用される。」(14頁3〜9行、同11頁17〜21行)
テ)「例 例1 陰イオン界面活性剤直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS)、タローアルキル硫酸(TAS)・・・を含有する水性界面活性剤ペーストを74:24:2の比率で調製した。・・・ゼオライトAと炭酸ナトリウムとカルボキシメチルセルロース(CMC)との混合物を含有する粉末流を連続的に混合した。ペーストを・・・高剪断ミキサーに直接供給する・・・二軸スクリュー押出機(TSE)の第一バレルに・・・供給し、同時に、粉末流をミキサーに供給した。・・・次いで、この製品を・・・中速ミキサーに移した。・・・中速ミキサーを去る製品は、よく規定された凝集粒状物からなっていた。・・・TSEに、界面活性剤ペーストと粉末状構造化剤との両方ともバレル1に供給した。構造化剤をペーストの直上流で供給し、両方とも混合し、混練し、搬送し、ダイを通して押し出した。」(35頁1行〜38頁4行、同24頁2行〜25頁22行)

3.対比・判断
刊行物1にはアで摘記した発明が記載されているところ、その造粒時のブレード先端速度はコに摘記したとおりであるから、刊行物1には、「(i)余分のアルカリ中において単数または複数のアニオン界面活性剤酸を中和して高活性(少なくとも40重量%のアニオン界面活性剤)ペーストを形成し、前記ペーストは70℃で測定された場合に少なくとも10Pa・sの粘度および25s-1の剪断速度を有する段階と、(ii)前記ペーストを押出器を用いてコンディショニングする段階と、(iii)約5m/s〜約50m/sのブレード先端速度を有する高剪断ミキサ/造粒機の中において有効量の洗剤粉体の存在において高活性洗剤粒子を形成する段階とを含む濃縮洗剤組成物の製造方法。」の発明が記載されているものと認める。
本願発明1と刊行物1に記載された発明とを対比する。
両者ともに、(i)工程で界面活性剤のペーストを形成し、(ii)工程で押出機を用い、(iii)工程で粒状洗剤成分を形成させる、洗剤組成物の製法であるところ、互いに対応している各工程の異同について検討すると、刊行物1に記載された発明における工程(i)は、余分のアルカリ中で中和し、少なくとも40重量%のアニオン界面活性剤である高活性のペーストを形成させるのであるから、本願発明1の工程(i)に相当し、刊行物1に記載された発明の工程(iii)における「ブレード先端速度」、「高剪断ミキサ/造粒機」は本願発明1の工程(iii)における「ツールチップ速度」、「高剪断ミキサーの造粒装置」に相当し、また、本願発明1で製造される「粒状洗剤成分または組成物」は、刊行物1に記載された発明において高活性洗剤粒子を形成する段階を含む方法で製造される「濃縮洗剤組成物」を当然に包含しているから、本願発明1と刊行物1に記載された発明とは、「1.下記工程(i)〜(iii)を含む、粒状洗剤成分または組成物を製造する方法。(i)少なくとも40重量%のアニオン界面活性剤を含んでなる中性またはアルカリ性のペーストを形成させる工程。(ii)押出機を用いる工程。(iii)5〜50m/秒のツールチップ速度を有する高剪断ミキサーの造粒装置において粒状洗剤成分または組成物を形成させる工程。」である点で一致し、以下のa〜cの点で相違する。
a)工程(ii)について、本願発明1においては、「押出機において、第1粉末を、界面活性剤ペーストと、ペースト100部に対して粉末が少なくとも1部の比で混合し、この混合によって界面活性剤ペーストの粘度を増加させる工程(ここで、第1粉末は少なくとも80重量%のアルキル硫酸塩を含んでなる)」であるのに対し、刊行物1に記載された発明においては、「押出機を用いてコンディショニングする工程」である点。
b)工程(iii)について、本願発明1においては、高剪断ミキサーの造粒装置及び中速度凝集装置を順次に用いるのに対し、刊行物1に記載された発明においては、中速度凝集装置を用いるものではない点。
c)工程(iii)において、本願発明1においては、「そのように形成された高粘度ペーストをビルダー粉末と混合する(高粘度ペースト:ビルダー粉末の比は、9:1〜1:5である)」ものであるのに対し、刊行物1に記載された発明においては、そのように特定されていない点。

上記相違点a〜cを検討する。
相違点aについて
本願発明1における工程(ii)に関連して、本願明細書には「ペーストのコンディショニングは、その物理的特性を変更して、通常の操作条件下では容易に得ることができない、より高活性で低粘着性の凝集物を形成させることを意味する。本明細書において定義するペーストのコンディショニングは、下記のことを意味する。a)その見掛粘度を増加させること。b)その有効な融点を上昇させること。c)ペーストの「硬度」を増加させること。・・・化学コンディショニング剤は、ペーストに添加したとき、界面活性剤ペーストの物理的構造および/または物理的特性を変更する化合物である。本発明において、化学コンディショニング剤は、粉末の形態のアルキル硫酸塩である。・・・本発明の好ましい態様において、押出機を使用してペーストをコンディショニングする。押出機は、2種またはそれより多くのペーストおよびアルキル硫酸塩の粉末を混合することができる、多角的な装置である。」(明細書3頁1行〜4頁5行)とされ、これからすると、本願発明1における工程(ii)は、押出機を用いたコンディショニング工程であるということができる。
一方、刊行物1に記載の工程(ii)もコンディショニングの工程であり、当該工程により、粘度の増大、融点の上昇、硬度の増進、粒子の固着性の低減がなされ、高い活性アグロメレートが形成されるものであって、本願発明1と同様の目的のためになされる工程と認められ、そして、該工程は水分の低下、冷却、化学構造剤の添加等により行われ、また、粉体を追加しペーストと混合することができる工程である(摘記ア、ウ、オ、キ、及びク)。
ところで、刊行物1には、アニオン界面活性剤をペースト状で導入する以外にも、粉体流として一定量の界面活性剤を導入することができることが示されており、アニオン界面活性剤としてはアルキル硫酸塩も用いられるものであり、また、押出機はバレル中の追加ポートを通して、化学構造剤や他の成分を直接添加できるものである(摘記カ、キ、ケ、及びセ)。
そうしてみると、刊行物1に記載された工程(ii)において、界面活性剤であるアルキル硫酸塩の粉体流を採用し、「押出機において、第1粉末を、界面活性剤ペーストと混合し、この混合によって界面活性剤ペーストの粘度を増加させる工程(ここで、第1粉末はアルキル硫酸塩を含んでなる)」とすることに格別の創意を要したものとは認められない。また、その際に、ペーストと粉末の混合比、粉末中のアルキル硫酸塩の重量割合は、摘記ケに示された、粉体流の固着性、水分レベル、アニオン界面活性剤の装入量の増大、界面活性剤濃度等を考慮しつつ適宜設定し得るものであると認められるから、ペースト100部に対して粉末が少なくとも1部とすること、第1粉末は少なくとも80重量%のアルキル硫酸塩を含んでなるとすること、はいずれも当業者が適宜なし得る設計事項に過ぎない。

相違点bについて
刊行物2には、ソ〜テに摘記したように、刊行物1に記載された発明と同様に高界面活性剤活性の洗剤を得る方法が記載されているところ、更に具体的には、(i)アルキル硫酸塩等のペーストと水溶性シリケート構造化剤を押出機において混合して粘度を増大させ、(ii)高剪断ミキサー、中速ミキサーにおいて、ペーストをビルダー粉末と混合、造粒、凝集して粒状洗剤を製造すること、かかる製造方法によって得られる洗剤が、高界面活性剤活性を有すること、中速ミキサーを去る製品がよく規定された凝集粒状物であることが記載されており、上記中速ミキサーは本願発明1の中速度凝集装置に相当するものである。
そして、摘記コにあるように、刊行物1に記載された発明においては、混合/造粒段階を同時的にも順次にも実施できるものであり、これらの段階を複数の装置を用いて行うことを阻害する特段の事情もないから、刊行物1に記載された発明において、よく規定された凝集粒状物を得るために、刊行物2に記載されているように、高剪断ミキサーの造粒装置及び中速度凝集装置を順次に用いるとすることは当業者が容易に想到し得たものと認められる。

相違点cについて
摘記ウ〜オにあるように、刊行物1に記載された発明における工程(ii)はペーストの粘度を増大させる工程であるから、工程(ii)より得られたペーストは高粘度ペーストであるといえる。そして、摘記サ〜セにあるように、刊行物1に記載された発明においてはゼオライトA、炭酸塩等のビルダーが用いられるものであり、実施例においても造粒時にゼオライトA、炭酸塩粉体がビルダーとして用いられ、また、摘記シによれば、刊行物1の実施例1及び2において、ペーストとビルダー粉末との配合比は3.6:1.050=3.42:1(実施例1)、3:1.05=2.86:1(実施例2)と計算され、摘記ソによれば、刊行物2に記載された製造方法において、ペーストとビルダー粉末との配合比は9:1から1:5とされている。
そうしてみると、刊行物1に記載された発明の工程(iii)において、工程(ii)において形成された高粘度ペーストをビルダー粉末と混合し、その際に、高粘度ペースト:ビルダー粉末の比を9:1〜1:5程度とすることすることは格別のことではない。

本願発明の効果について
本願発明の目的は、「少なくとも40重量%のアニオン界面活性剤を含んでなるペーストをコンディショニングする有効な方法を提供すること」であり、「コンディショニング剤は、界面活性剤の結晶性を崩壊させ、また、ペーストの粘弾性を増加させる。結晶性の崩壊は、界面活性剤の溶解速度を改善し、粘弾性の増加は、ペーストを「コンディショニング」して、高い界面活性剤活性を有する凝集物の形成を可能とする」ものであり、また、本願発明においては、「凝集プロセス過程でより多くのペーストを添加することができ、こうして凝集物の活性をより高くすることができ、好ましくは40〜60%、より好ましくは50%より大きい、程度により高くすることができる」ものである(明細書1頁下から4行〜2頁2行、3頁12〜17行)。
これに対し、刊行物1には、少なくとも40重量%のアニオン界面活性剤を含むペーストをコンディショニングすること、堅く砕け易い粒子に形成すること、ペーストの粘性を増大させること、形成された粒子の固着性を低減させること、アグロメレートの界面活性を大幅に増大すること、アグロメレーション工程に際して、50%以上のペーストを添加する事ができること、アルキル硫酸塩を用いた実施例において、得られたアグロメレートが60%及び65%のアルキル硫酸活性を有していた旨が記載されており(摘記ア、イ、エ、オ、セ)、上記した本発明の目的・効果と同様の事項が示されているのであるから、本願発明の効果がこれに対して格別に優れているとすることはできない。
なお、請求人は平成14年8月12日付け審判請求書において、本願発明は、刊行物1及び2に記載の発明とは、異なる課題、および異質である有利な効果を有するものであり、本願発明に関するさらなるデータの提出は不要である旨主張しているが、上述のように、刊行物1には、本願発明と同様の課題、効果が示されており、数値として具体的に示された界面活性剤の活性についても同程度のものなのであるから、本願発明の効果は刊行物1及び2から予測し得る範囲内のものといわざるを得ず、請求人の主張は採用することができない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願発明2〜6を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-06-21 
結審通知日 2005-06-24 
審決日 2005-07-06 
出願番号 特願平10-505242
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C11D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤原 浩子  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 鈴木 紀子
冨永 保
発明の名称 界面活性剤ペーストをコンディショニングして高い活性の界面活性剤凝集物を形成させる方法  
代理人 吉武 賢次  
代理人 横田 修孝  
代理人 中村 行孝  
代理人 紺野 昭男  
代理人 伊藤 武泰  

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