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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01C 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C |
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管理番号 | 1142903 |
審判番号 | 不服2004-21106 |
総通号数 | 82 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-10-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-10-12 |
確定日 | 2006-09-01 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第105236号「ナビゲーション装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年10月23日出願公開、特開平10-281790〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成9年4月8日の出願であって、平成16年9月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月12日に審判請求がなされるとともに、同年11月9日に手続補正がなされたものである。 2.平成16年11月9日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年11月9日付け手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の請求項1に記載された発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。 「現在位置を検出する現在位置検出手段と、 通行障害道路の情報を受信する道路通行情報受信手段と、 目的地までの経路を探索する経路探索手段とを備え、 前記経路探索手段は、前記検出された現在位置から案内中の経路における現在位置前方の右左折すべき交差点までの距離が所定距離以上であるならば、前記現在位置が前記目的地から所定距離以内であるか否かを判断し、所定距離以内の場合には、前記通行障害道路以外の道路を利用して前記目的地までの経路全体を再探索し、所定距離以内でない場合には、案内中の経路において前記通行障害道路を挟む道路それぞれの分岐点を繋ぐ迂回経路を再探索することを特徴とするナビゲーション装置。」 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「受信された通行障害道路の情報に基づいて経路を再探索すること」について「現在位置が目的地から所定距離以内であるか否かを判断し、所定距離以内の場合には、通行障害道路以外の道路を利用して前記目的地までの経路全体を再探索し、所定距離以内でない場合には、案内中の経路において通行障害道路を挟む道路それぞれの分岐点を繋ぐ迂回経路を再探索すること」と限定するものであって、特許法17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-83685号公報(平成7年3月28日公開、以下、「引用例1」という。)には、「車載ナビゲーション装置」に関する発明が開示されており、そこには、図面とともに次の事項が記載されている。 ・「【特許請求の範囲】 【請求項1】 地図情報に基づいて目的地までの最適経路の探索を行い、探索された経路を表示して経路誘導を行う車載用ナビゲーション装置において、 交通情報を受信する受信手段と、 この受信した交通情報に基づいて、目的地までの最適経路を再探索する経路再探索手段と、 再探索により、現表示経路と異なる新経路が得られた時、その結果を報知する報知手段と、 ドライバーの経路変更の意志を検出する検出手段と、 経路変更の意思が確認された時に、経路表示を新経路に変更する経路変更手段と、を有することを特徴とする車載ナビゲーション装置。」 ・「【0003】さらに、目的地への最適経路は、道路の渋滞状況等によって変化する。そこで、特開昭62-95423号公報には、交通情報を受信する通信装置を車載し、受信した交通情報より、最適経路を変更することが示されている。すなわち、受信した交通情報から進行方向前方の渋滞を認識した場合には、ここを迂回する経路を探索し、迂回路の案内を行う。これによって、交通情報を考慮した最適経路の案内を行うことができる。」 ・「【0014】 【実施例】以下、本発明の実施例について、図面に基づいて説明する。図1は実施例の情報システムの特に車両に搭載される装置の構成ブロック図である。GPSナビゲーションシステムを構成するGPS用アンテナ10、GPSレシーバ12、車速センサ14、車輪速センサ16、地磁気センサ18の各センサと制御部としてのECU20が備えられている。GPSレシーバ12ではGPSアンテナ10を介して衛星軌道上の測地衛星からの電波を受信する。この受信電波を基に、ECU20にて自車両の現在位置の緯度経度が算出される。さらに、その他のセンサ(車速センサ14、車輪速センサ16、地磁気センサ18)で、衛星からの電波が受信できなくとも自車両の位置を算出することが可能である。たとえば、車輪速センサ16により、自車両が単位時間にどのくらい移動したか算出され、また車輪速センサ16と地磁気センサ18により自車両がどのくらい進行方向を変化させたかが算出できる。この進行方向の変化量の検出は、ジャイロシステムによっておこなってもよい。そして、これらのセンサにより検出された相対移動量と、CD-ROM22に記憶された地図情報とを対応させ、地図上での自車両の位置がECU20により算出される。この地図情報と自車両の位置をディスプレイ24に重畳表示させ、ドライバー等のユーザに報知する。また、検出された自車両の位置と地図情報の対比が常におこなわれ(マップマッチング)、地図上の位置が妥当な位置かが判断される。たとえば、現在走行している場所には道路が全くなく自車両の走行軌跡と平行に道路があった場合などは、自車両位置をシフトさせ、現在位置が道路上になるように補正される。また、交差点を右左折したときにもその交差点位置から補正が行われる。このような補正によってGPSなどの位置検出制度を補償する。」 ・「【0041】再探索のタイミングの制御 さらに、上述の例では、新しい交通情報を受信した場合に、経路の再探索を行ったが、その後、分岐点に至る手前で受信した新しい交通情報により再探索した結果、前回得られた経路とは別の経路が選択される場合があり、このような時前回の探索結果が利用されない場合もあり、処理の効率が悪い。そこで、本実施例では、この再探索実施のタイミングを制御する。 【0042】このために、本実施例では、CD-ROM22に記憶されている地図データの中に、再探索開始のためのフラグが記憶されている。すなわち、図7に示すように、分岐点から所定距離手前にフラグを立て、車両がこのフラグが立っている地点に至った時に再探索を開始する。すなわち、現在地がこのフラグが立っている地点を通過した時に再探索を開始する。 【0043】ここで、フラグを立てる地点は、ドライバーが新経路を選択するの十分な距離に再探索の処理に必要な時間に対応する距離を加算して、決定される。従って、その道路におけるその部分における平均走行速度に基づいて、距離を決定すると良い。」 ・「【0050】このように、フラグによって再探索を行うか否かを制御することによって、 ・必要な地点で必ず情報を取得できる。 ・ECU20の処理に要する時間およびドライバーの動作のための時間をあらかじめ考慮できるため、分岐点の手前で処理が終了し、迂回についてのデータを供給することができ有効な迂回路を提供できる という効果が得られる。」 ・図9には、迂回路の例として、案内中の経路において渋滞箇所を挟む道路それぞれの分岐点を繋ぐ経路が記載されている。 これらの記載によると、引用例1には、 「GPSレシーバでGPSアンテナを介して衛星軌道上の測地衛星から受信した電波や、車速センサ、車輪速センサ、地磁気センサの検出値を基に、ECUにて自車両の現在位置を算出するとともに、 渋滞を含む交通情報を受信する受信手段と、 この受信した交通情報に基づいて、目的地までの最適経路を再探索する経路再探索手段とを備え、 経路再探索手段は、ドライバーが新経路を選択するのに十分な距離に再探索の処理に必要な時間に対応する距離を加算した距離を所定距離として、車両が、分岐点から所定距離手前の地点に至った時に、案内中の経路において渋滞箇所を挟む道路それぞれの分岐点を繋ぐ迂回路の再探索をする車載ナビゲーション装置」の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。 (3)対比 本願補正発明と引用例1記載の発明を対比すると、後者における「渋滞」、「渋滞を含む交通情報を受信する受信手段」は前者における「通行障害道路」、「通行障害道路の情報を受信する道路通行情報受信手段」に相当し、同様に、後者における「受信した交通情報に基づいて、目的地までの最適経路を再探索する経路再探索手段」は前者における「目的地までの経路を探索する経路探索手段」に、後者における「車載ナビゲーション装置」は前者における「ナビゲーション装置」に相当する。また、後者においては「GPSレシーバでGPSアンテナを介して衛星軌道上の測地衛星から受信した電波や、車速センサ、車輪速センサ、地磁気センサの検出値を基に、ECUにて自車両の現在位置を算出する」ことから前者における「現在位置を検出する現在位置検出手段」に相当する手段を備えているといえる。 また、後者において、「経路再探索手段は、ドライバーが新経路を選択するのに十分な距離に再探索の処理に必要な時間に対応する距離を加算した距離を所定距離として、車両が、分岐点から所定距離手前の地点に至った時に、案内中の経路において渋滞箇所を挟む道路それぞれの分岐点を繋ぐ迂回路の再探索をする」ことと、前者において、「経路探索手段は、検出された現在位置から案内中の経路における現在位置前方の右左折すべき交差点までの距離が所定距離以上であるならば、現在位置が目的地から所定距離以内であるか否かを判断し、所定距離以内の場合には、通行障害道路以外の道路を利用して目的地までの経路全体を再探索し、所定距離以内でない場合には、案内中の経路において通行障害道路を挟む道路それぞれの分岐点を繋ぐ迂回経路を再探索する」こととは、「経路探索手段は、現在位置と分岐点との距離が所定の条件であるならば、通行障害道路以外の道路を利用して目的地までの経路を再探索する」ことである点で共通する。 したがって、両者は、 「現在位置を検出する現在位置検出手段と、 通行障害道路の情報を受信する道路通行情報受信手段と、 目的地までの経路を探索する経路探索手段とを備え、 経路探索手段は、現在位置と分岐点との距離が所定の条件であるならば、通行障害道路以外の道路を利用して目的地までの経路を再探索する ナビゲーション装置」である点で一致し、次の各点において相違する。 [相違点1] 「現在位置と分岐点との距離が所定の条件である」ことについて、本願補正発明においては、「検出された現在位置から案内中の経路における現在位置前方の右左折すべき交差点までの距離が所定距離以上である」ことであるのに対して、引用例1記載の発明においては、「ドライバーが新経路を選択するのに十分な距離に再探索の処理に必要な時間に対応する距離を加算した距離を所定距離として、車両が、分岐点から所定距離手前の地点に至った時」である点。 [相違点2] 「通行障害道路以外の道路を利用して目的地までの経路を再探索する」ことについて、本願補正発明においては、「現在位置が目的地から所定距離以内であるか否かを判断し、所定距離以内の場合には、通行障害道路以外の道路を利用して目的地までの経路全体を再探索し、所定距離以内でない場合には、案内中の経路において前記通行障害道路を挟む道路それぞれの分岐点を繋ぐ迂回経路を再探索する」ことであるのに対し、引用例1記載の発明においては、「案内中の経路において渋滞箇所を挟む道路それぞれの分岐点を繋ぐ迂回路の再探索をする」ことである点。 (4)判断 ・相違点1について 本願補正発明は、「検出された現在位置から案内中の経路における現在位置前方の右左折すべき交差点までの距離が所定距離以上である」ならば、再探索を行うようにすることにより、案内中の経路における右左折予定の地点近傍でのルート変更による急激な進行方向の変更が要求されること、再探索に要する時間によって、案内地点近傍においてディスプレイ上に案内経路が表示されないこと、音声による情報報知が停止すること、を防止できるものであるが、引用例1記載の発明は、「ドライバーが新経路を選択するのに十分な距離に再探索の処理に必要な時間に対応する距離を加算した距離を所定距離として、車両が、分岐点から所定距離手前の地点に至った時」、再探索を行うようにするものであるから、案内中の経路における右左折予定の地点近傍に限らず、案内中の経路の他の交差点、分岐点においても、本願補正発明におけるものと同様の作用、効果が得られるものと認められるので、該相違点において、本願補正発明が、当業者にとって、格別なものであるとは認められない。 ・相違点2について 目的地までの経路を再探索するに際し、現在位置が目的地から所定距離以内であるか否かを判断し、所定距離以内の場合には、目的地までの経路全体を再探索し、所定距離以内でない場合には、案内中の経路を利用した経路を再探索するようにすることは、平成16年9月9日付けの補正の却下の決定においても示されたように、周知であり(一例として、平成16年9月9日付けの補正の却下の決定において提示された特開平8-159795号公報参照)、引用例1記載の発明において、再探索を行うに際し、現在位置が目的地から所定距離以内であるか否かを判断し、所定距離以内の場合には、目的地までの経路全体を再探索するようにすることは、当業者が容易に想到しうることにすぎない。 そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1に記載された事項、および周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。 したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明、および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができない。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成16年11月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は平成16年6月1日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「現在位置を検出する現在位置検出手段と、 通行障害道路の情報を受信する道路通行情報受信手段と、 目的地までの経路を探索する経路探索手段とを備え、 前記経路探索手段は、前記検出された現在位置から案内中の経路における現在位置前方の右左折すべき交差点までの距離が所定距離以上であるならば、前記受信された通行障害道路の情報に基づいて経路を再探索することを特徴とするナビゲーション装置。」 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用した引用例、及びその記載事項は前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明における「現在位置が目的地から所定距離以内であるか否かを判断し、所定距離以内の場合には、通行障害道路以外の道路を利用して前記目的地までの経路全体を再探索し、所定距離以内でない場合には、案内中の経路において通行障害道路を挟む道路それぞれの分岐点を繋ぐ迂回経路を再探索すること」を「受信された通行障害道路の情報に基づいて経路を再探索すること」と上位概念にし限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1、引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1、引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明、および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-06-29 |
結審通知日 | 2006-07-04 |
審決日 | 2006-07-18 |
出願番号 | 特願平9-105236 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01C)
P 1 8・ 575- Z (G01C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 片岡 弘之 |
特許庁審判長 |
田良島 潔 |
特許庁審判官 |
丸山 英行 高橋 学 |
発明の名称 | ナビゲーション装置 |
代理人 | 仲野 均 |
代理人 | 川井 隆 |