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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F |
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管理番号 | 1143013 |
審判番号 | 不服2003-1396 |
総通号数 | 82 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-09-09 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-01-23 |
確定日 | 2006-09-04 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第340027号「パターン形成方法、一組の露光マスク、薄膜トランジスタマトリクス装置及びその製造方法、液晶表示装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 9月 9日出願公開、特開平 9-236930〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、出願日が平成8年12月19日(優先権主張 平成7年12月26日)である特願平8-340027号であって、平成14年11月29日付で拒絶査定がなされ、これに対し平成15年1月23日付で拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成15年2月24日付で手続補正がなされた。 2.平成15年2月24日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年2月24日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由]独立特許要件違反 (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項8は、平成14年8月5日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項10記載の、「複数枚に分割して形成されたパターン形成領域同士を前記複数枚の境界部を重ね合わせて繋ぎ合わせ、一つの全体パターンを形成する前記複数枚からなる一組の露光マスクであって、 前記各露光マスクの境界部に前記パターン形成領域と遮光領域とが混在し、これらは、先に転写された前記露光マスクの境界部に他の前記露光マスクの境界部を重ね合わせて転写したとき、前記先に転写された露光マスクの遮光領域に前記他の露光マスクのパターン形成領域が転写され、かつ前記先に転写された露光マスクのパターン形成領域は前記他の露光マスクの遮光領域により覆われてそのまま残るように配列されており、 前記全体パターンは前記重ね合わせた部分において異なる前記露光マスクのパターン形成領域同士が縦方向及び横方向に交互に、かつ規則的に並んでいることを特徴とする一組の露光マスク。」が 新たな請求項8として、「複数枚に分割して形成されたパターン形成領域同士を前記複数枚の境界部を重ね合わせて繋ぎ合わせ、一つの全体パターンを形成する前記複数枚からなる一組の露光マスクであって、 前記各露光マスクの境界部に前記パターン形成領域と遮光領域とが混在し、これらは、先に転写された前記露光マスクの境界部に他の前記露光マスクの境界部を重ね合わせて転写したとき、前記先に転写された露光マスクの遮光領域に前記他の露光マスクのパターン形成領域が転写され、かつ前記先に転写された露光マスクのパターン形成領域は前記他の露光マスクの遮光領域により覆われてそのまま残るように配列されており、 前記全体パターンは前記重ね合わせた部分において異なる前記露光マスクのパターン形成領域同士が縦方向及び横方向に交互に、かつ規則的に並んでおり、 前記重ね合わせた部分において、異なる前記露光マスクのパターン形成領域の大きさは、縦方向及び横方向ともに200μm以下であり、肉眼によるパターン解像度以下であることを特徴とする一組の露光マスク。」と補正された。 この補正は、補正前の「パターン形成領域」に大きさの限定を加えたもので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項8に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-324474号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の点が記載されている。 ア.【0002】【産業上の利用分野】 本発明は液晶デバイス等の製造に用いられる投影露光装置において用いられるフオトマスク及びこのフオトマスクを用いた露光方法に関し、特に大面積のパターンを形成する画面合成に適用して好適なものである。 イ.【0013】 このとき第1回目のシヨツトと第2回目のシヨツトでは微小量だけ重ねて露光される。これはレチクル上に形成されたパターンの描画誤差や、投影レンズ11におけるデイストーシヨンや、ステージ13の位置決め誤差等によつて第1回目のシヨツトと第2回目のシヨツトによつて露光されるパターンの間に切れ目が発生するのを防ぐためである。 【0014】【発明が解決しようとする課題】 ところが従来方式においては以下に述べるような不都合が発生していた。 まず第1にレチクルの描画誤差の他、レンズのデイストーシヨンやステージ13の位置決め誤差に起因するパターンの段差の発生である。これは製作するデバイスの電気的な特性や物理的な特性に影響することもあり得る。特に液晶デイスプレイのようなデバイスにおいては、ミクロンオーダーの段差であつてもデバイスの表示特性に影響を与える。 【0015】 第2に複数台の投影露光装置を用いて液晶デバイスを露光する際に、主にレンズのデイストーシヨンに起因して重ね合わせの誤差が露光領域の接続部でステツプ的に変化することである。これは液晶デイスプレイの場合に、より深刻な問題となる。特にアクテイブマトリツクス型の液晶デバイスの場合には、薄膜トランジスタの動作特性に影響を与えるため露光領域の接続部におけるコントラストに違いが生じる。コントラストの違いはわずかであつても人間の視覚特性から知覚され易いため、コントラストに差が生じると表示品質が低下することになる。 ウ.【0021】 ここではマトリクス状に配置された画素電極を薄膜トランジスタによつてスイツチング駆動することにより画像を表示する液晶デイスプレイの製造に用いられるパターン像を基板12上にステツプアンドリピート方式の投影露光装置10を用いて露光する場合について説明する。 この実施例の場合、パターン像は左右2つのパターン像に分けて露光され、2回のシヨツトの終了後に1つのパターン像が形成されるようになされている。 エ.【0023】 このうち黒塗りの画素は第1回目のシヨツトによつて露光される画素を表し、白抜きの画素は2回目のシヨツトによつて露光される画素を表す。 この実施例の場合、露光領域41、42を接続する方向の9個の画素の領域が接続部43に当たる。 【0024】 この接続部43に位置する複数の画素のそれぞれは、第1回目のシヨツト又は第2回目のシヨツトのいずれか一方のシヨツトによつて1度だけ露光されるようになされており、2重露光されないようになされている。 ここで各シヨツトに用いられるレチクルパターン(図示せず)は、接続部43の部分に配置される画素のうち他方のシヨツトによつてのみ露光される画素部分が露光されないようにクロム等によつてマスクされている。 オ.【0028】 しかも第1回目又は第2回目のシヨツトによつて露光される領域のうち周辺部から領域中央に近い領域ほど同じシヨツトによつて露光される画素が多くなるように配置されているため、2つのシヨツトによるコントラストの違いは人間の目には徐々に変化しているかのように感じられる。特に人間の目はこのように徐々にコントラストの差が変化するようなパターンの認識性が劣つているため、実施例のように露光された液晶デイスプレイの接続部は知覚され難く、画面全体が均一に感じられて表示品質が向上している。 カ.【0035】 さらに上述の実施例においては、接続方向(すなわち図の左右方向)と直角な方向(すなわち図の上下方向)に並ぶ画素の配置については、規則性をもたないように配置する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、コントラスト差が視覚によつて認識されない範囲内で第1回目のシヨツトによつて露光される画素と第2回目のシヨツトによつて露光される画素が配置されていれば良く、厳密に規則性をもたないように配置しなくとも良い。 したがって、上記記載事項、及び図1から引用例1には、「左右2つのパターン像に分けて形成された露光領域41、42同士を前記2枚の接続部43を微小量だけ重ねて、2回のシヨツトの終了後に1つのパターン像が形成される前記2枚からなる一組のフオトマスクであって、 前記各フォトマスクの接続部43に前記露光される画素とクロム等によつてマスクされた露光されない画素とが混在し、これらは、第1回目のシヨツトによつて露光された前記フォトマスクの接続部43に他の前記フオトマスクの接続部43を重ね合わせて露光したとき、前記第1回目のシヨツトによつて露光されたフォトマスクのクロム等によつてマスクされた露光されない画素に前記他のフォトマスクの露光される画素が露光され、かつ前記第1回目のシヨツトによつて露光されたフォトマスクの露光される画素は前記他のフォトマスクのクロム等によつてマスクされた露光されない画素により覆われてそのまま残るように配列されており、 前記2回のシヨツトの終了後に形成される1つのパターン像は前記重ね合わせた部分において異なる前記フォトマスクの露光される画素同士が縦方向及び横方向に交互に、並んでいる一組のフォトマスク。」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを比較する。 引用発明の「左右2つのパターン像に分けて」は、本願補正発明の「複数枚に分割して」に相当する。同様に「露光領域41、42」は「パターン形成領域」に、「接続部43」は「境界部」に、「微小量だけ重ねて」は「重ね合わせて繋ぎ合わせ」に、「2回のシヨツトの終了後に1つのパターン像が形成される」は「一つの全体パターンを形成する」に、「2枚」は「複数枚」に、「フォトマスク」は「露光マスク」に、「露光される画素」は「パターン形成領域」に、「クロム等によつてマスクされた露光されない画素」は「遮光領域」に、「第1回目のシヨツトによつて露光される」は「先に転写された」に、それぞれ相当する。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、「複数枚に分割して形成されたパターン形成領域同士を前記複数枚の境界部を重ね合わせて繋ぎ合わせ、一つの全体パターンを形成する前記複数枚からなる一組の露光マスクであって、 前記各露光マスクの境界部に前記パターン形成領域と遮光領域とが混在し、これらは、先に転写された前記露光マスクの境界部に他の前記露光マスクの境界部を重ね合わせて転写したとき、前記先に転写された露光マスクの遮光領域に前記他の露光マスクのパターン形成領域が転写され、かつ前記先に転写された露光マスクのパターン形成領域は前記他の露光マスクの遮光領域により覆われてそのまま残るように配列されており、 前記全体パターンは前記重ね合わせた部分において異なる前記露光マスクのパターン形成領域同士が縦方向及び横方向に交互に、並んでいる一組の露光マスク。」 である点で一致し、以下の各点で相違する。 相違点1; 本願補正発明は、露光マスクのパターン形成領域が規則的に並んでいるのに対し、引用発明は、そのような限定がない点。 相違点2; 本願補正発明は、重ね合わせた部分において、異なる露光マスクのパターン形成領域の大きさは、縦方向及び横方向ともに200μm以下であり、肉眼によるパターン解像度以下であるのに対し、引用発明は、そのような限定がない点。 (4)判断 以下、各相違点について検討する。 相違点1について 引用例1には、重ね合わせの誤差が露光領域の接続部でステツプ的に変化するとコントラストの違いはわずかであつても人間の視覚特性から知覚され易いため(上記記載事項イ.)、第1回目又は第2回目のシヨツトによつて露光される領域のうち周辺部から領域中央に近い領域ほど同じシヨツトによつて露光される画素が多くなるように配置することにより、コントラストの違いが人間の目には徐々に変化しているかのように感じられるようにして、露光された液晶デイスプレイの接続部は知覚され難く、画面全体が均一に感じられて表示品質を向上したものである(上記記載事項オ.)旨記載されている。 このように、引用発明では、接続部の間で徐々にコントラストの差が変化するようにするため、上記相違点1に係る構成の限定を付していないことは明らかである。しかし、コントラスト差が視覚によつて認識されない範囲内で第1回目のシヨツトによつて露光される画素と第2回目のシヨツトによつて露光される画素が配置されていれば良く、厳密に規則性をもたないように配置しなくとも良い(上記記載事項カ.)とも記載され、規則的な配置も示唆されている。 結局、パターンの配置が規則的であれば、配置が容易になることは技術者にとって自明な技術事項であり、配置のし易さを考慮して、引用発明に上記相違点1に係る限定を付すことは、当業者にとって容易である。 相違点2について 引用発明も、アクテイブマトリツクス型の液晶デバイスの薄膜トランジスタの露光領域の接続部におけるコントラストに違いより生じる表示品質の低下を防止するための物であり、露光される画素は、200μm程度以下であり、肉眼によるパターン解像度以下であると理解するのが自然であり、「コントラスト差が視覚によつて認識されない範囲内」(上記記載事項カ.)の記載からも、引用発明に上記相違点2に係る限定を付すことは、当業者にとって容易である。 そして、本願補正発明の効果も、引用例1に記載された発明から予測される範囲のもので格別のものとは言えない。 したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成15年2月24日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項10に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年8月5日付手続補正書の請求項1記載に記載された事項により特定されるものである。(上記、「2.(1)補正後の本願発明」参照。) (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例1の記載事項は、前記「2.(2)引用例」に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、上記「2.(1)補正後の本願発明」で述べたように、本願補正発明から「パターン形成領域」の大きさの限定を削除したものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)判断」に記載したとおり、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-05-22 |
結審通知日 | 2006-06-13 |
審決日 | 2006-06-30 |
出願番号 | 特願平8-340027 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G03F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大熊 靖夫、伊藤 昌哉 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
井口 猶二 辻 徹二 |
発明の名称 | パターン形成方法、一組の露光マスク、薄膜トランジスタマトリクス装置及びその製造方法、液晶表示装置及びその製造方法 |
代理人 | 岡本 啓三 |