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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A23L |
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管理番号 | 1143014 |
審判番号 | 不服2003-1923 |
総通号数 | 82 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-10-10 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-02-06 |
確定日 | 2006-09-05 |
事件の表示 | 特願2000-20887「豚皮加工食材とその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月10日出願公開、特開2000-279131〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本件発明 本件出願は、平成12年1月28日(優先権主張平成11年1月30日)の特許出願であって、その請求項1乃至5に係る発明は、平成14年5月27日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1及び4に係る発明は、次のとおりのものである。(以下、「本件発明1及び4」という。) 「【請求項1】熱湯で煮沸消毒した後の豚皮を、沸騰した湯で煮た後、煮るのを止めて保温状態にすることによって豚皮の成分を抽出してなることを特徴とする豚皮加工食材。 【請求項4】熱湯で煮沸消毒した後の豚皮を、沸騰した湯で煮た後、煮るのを止めて保温状態にすることによって、豚皮の成分を抽出することを特徴とする豚皮加工食材の製造方法。」 2.引用例記載事項 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本件の出願日前に頒布された刊行物である特公昭39-18532号公報(以下、「引用例1」という。)には、(a)「この粒子はソーセージの組織を緊張化すると共に増量の目的で添加されるゼラチンから来るものである。ゼラチンを製造する場合、豚又は牛の皮の表面を削り取ったものを70°〜90℃に於て水で煮沸してコラーゲンをゼラチン化するものである・・・」(公報第1頁左欄下から13〜9行)ことが記載され、同じく、特開昭48-98060号公報(以下、「引用例2」という。)には、(b)「脱毛し、消毒した豚皮を油脂離脱用材と香辛料とともに熱湯中で煮込んだ後引上げて味付けし、・・・豚皮より食料品を製造する方法。」(特許請求の範囲)が記載され、(c)「次いで再び水を張った容器中に豚皮を投じ、加熱して沸騰させ、約30分後に取出す。こうして脱臭、脱毛、消毒を終えた豚皮を油脂離脱用材・・・」(公報第2頁右上欄5〜7行)と記載されている。 3.対比・判断 3.1 本件発明1について 本件発明1は、熱湯で煮沸消毒した後の豚皮を、沸騰した湯で煮た後、煮るのを止めて保温状態にすることによって、豚皮の成分を抽出してなる豚皮加工食材であって、通常有効利用されていない豚皮を食材として有効利用するものである。 これに対して、引用例1には、従来技術として、上記記載事項(a)のとおり、「豚皮の表面を削り取ったものを70°〜90℃に於て水で煮沸してコラーゲンをゼラチン化したものをソーセージの増量材とする」ことが記載されており、「豚皮を水で煮沸してコラーゲンをゼラチン化したソーセージの増量材」は、「豚皮の成分を抽出してなる豚皮加工食材」といえるから、引用例1には、「豚皮を、湯で煮ることによって、豚皮の成分を抽出してなる豚皮加工食材」が記載されているといえる。 本件発明1と引用例1に記載された発明(以下、「引用例発明」という。)とを対比すると、両者は、「豚皮を、湯で煮ることによって、豚皮の成分を抽出してなる豚皮加工食材」である点で一致し、抽出方法に関し、前者が、「熱湯で煮沸消毒した後の豚皮を、沸騰した湯で煮た後、煮るのを止めて保温状態にする」と特定しているのに対して、後者にはその点が記載されていない点で相違する。 しかしながら、「熱湯で煮沸消毒した後の豚皮を、沸騰した湯で煮た後、煮るのを止めて保温状態にする」ことにより、豚皮から引用例発明と異なる成分が抽出されるものとは技術常識上考えられないことから、本件発明1の豚皮加工食材が引用例発明の豚皮加工食材と異なるものとは認められない。 したがって、本件発明1は、引用例発明と同一である。 3.2 本件発明4について 本件発明4は、熱湯で煮沸消毒した後の豚皮を、沸騰した湯で煮た後、煮るのを止めて保温状態にして、豚皮の成分を抽出することにより、燃料費を節減でき、通常有効利用されていない豚皮に付加価値をつけて有効利用することができるものである。 本件発明4と引用例発明とを対比すると、両者は、「豚皮を、湯で煮ることによって、豚皮の成分を抽出してなる豚皮加工食材の製造方法。」である点で一致し、 (1)原料豚皮に関し、前者が、熱湯で煮沸消毒しているのに対して、後者にはその点が記載されていない点、 (2)抽出方法に関し、前者が、沸騰した湯で煮た後、煮るのを止めて保温状態にしているのに対して、後者にはその点が記載されていない点 で相違している。 そこで、これら相違点について検討する。 相違点(1) 引用例2には、上記記載事項(c)のとおり、本件と同様の豚皮を沸騰した湯で煮ることにより、豚皮から食料品を製造する方法において、原料豚皮を熱湯で煮沸消毒することが記載されており、引用例発明にこれを採用し、原料豚皮を熱湯で煮沸消毒することに、何ら困難性はない。 相違点(2) 本件出願日当時、有効成分を含む原料素材から有効成分を抽出する際に、可能な限り有効成分を抽出しようとすることは周知の課題であり、目的成分を効率よく抽出するために、有効成分を含有する原料素材を長時間保温して十分に抽出することは慣用技術であったことから、経済的に高温で長時間十分に抽出するために、沸騰した湯で煮た後、煮るのを止めて保温状態にすることは当業者が直ちに想到するところであるところ、引用例発明において豚皮を抽出する際に、沸騰した湯で煮た後、煮るのを止めて保温状態にすることは当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。 そして、保温することにより、燃料費が節減でき、煮崩れが少なく煮汁が濁りにくいこともよく知られている(必要なら、原審の拒絶査定で引用された特開平11-123140号公報、特開平9-135770号公報、及び、特開平3-269987号公報参照。)ことから、沸騰した湯で煮た後、煮るのを止めて保温状態にすることにより、当業者が予期し得ない効果を奏するものでもない。 したがって、本件発明4は、上記引用例1乃至2に記載された発明及び周知・慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4. むすび 以上のとおり、本件請求項1に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された上記の引用刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件請求項4に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された上記の引用刊行物1乃至2に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項について判断するまでもなく本件出願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-06-29 |
結審通知日 | 2006-07-04 |
審決日 | 2006-07-18 |
出願番号 | 特願2000-20887(P2000-20887) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A23L)
P 1 8・ 113- Z (A23L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 内田 淳子、深草 亜子 |
特許庁審判長 |
河野 直樹 |
特許庁審判官 |
冨永 みどり 鵜飼 健 |
発明の名称 | 豚皮加工食材とその製造方法 |