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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L |
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管理番号 | 1143026 |
審判番号 | 不服2004-17011 |
総通号数 | 82 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-02-14 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-08-16 |
確定日 | 2006-09-04 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第194680号「スクランブル放送受信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 2月14日出願公開、特開平 9- 46334〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成7年7月31日の出願であって、平成16年7月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月16日に審判請求がなされ、同年9月15日に手続補正がなされたが、当審より、平成18年3月23日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年5月19日に手続補正がなされたものであり、補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1には次のとおり記載されている。 「スクランブル放送のデータをデスクランブルし、デスクランブルされたデータを出力するデスクランブラを含むデコーダと、 前記デコーダに対して着脱可能に設けられ、前記デコーダに対して装着されたときに、前記デコーダの前記デスクランブラに対してデスクランブルする鍵を供給することが可能なICカードとを備えるスクランブル放送受信端末のスクランブル放送受信方法において、 前記ICカードが前記デコーダに対して装着された場合に、 前記デコーダは、 前記ICカードに、乱数、および前記乱数に対して所定の演算を行わせるコマンドを供給し、 前記ICカードは、 前記デコーダから前記乱数と前記コマンドの供給を受けたとき、前記乱数に対して予め決められた所定の演算を行って、その演算結果を前記デコーダに出力し、 前記デコーダは、 前記コマンドに対応して前記ICカードより出力される前記演算結果と、前記デコーダ自身が前記所定の演算を行って得られた演算結果との比較結果から、前記ICカードが正規のものであるか否かを判定し、 前記ICカードが正規のものであると判定された場合、前記ICカードから供給される前記デスクランブルする鍵を使用して前記デスクランブラによりデスクランブルされたデータのデコード処理を実行し、前記ICカードが正規のものではないと判定された場合、前記デコード処理を実行しない ことを特徴とするスクランブル放送受信方法。」 請求項1において、「前記ICカードから供給される前記デスクランブルする鍵を使用して前記デスクランブラによりデスクランブルされたデータのデコード処理を実行し」の記載部分は、文言どおり解釈すると、「デスクランブルする鍵」を使用して「データ」を「デスクランブル」し、これに対してさらに「デコード処理」を実行することを意味するが、そのような態様は本願の発明の詳細な説明には記載がなく、かつ、技術常識からしても、「デスクランブル」したデータに対しさらに「デコード処理」を施すことはあり得ない。そして、本願明細書の段落【0037】の記載「デコーダ31側においては、スクランブル鍵が、デスクランブラ41に供給される。デスクランブラ41においては、スクランブルされている所定の番組のディジタル信号が、復号器52より供給されたスクランブル鍵によってデスクランブルされ、正常に視聴可能な元の信号に戻された後、出力される。」の記載からすると、デコーダは、データに対しデスクランブル以外の処理を行っておらず、さらに、本願明細書の段落【0050】の記載「デコーダ31は、以後、デコード処理(デスクランブル処理)を実行することができない」からして、「デスクランブル(処理)」と「デコード処理」とは同義であるから、請求項1における前記の記載部分は、「前記ICカードから供給される前記デスクランブルする鍵を使用して前記デスクランブラによりデータをデスクランブルするデコード処理を実行し」の誤記と認め、請求項1に係る発明を認定する。(以下、この認定によるものを「本願発明」という。) 2.引用発明 (1)引用発明1 これに対して、当審より通知された上記拒絶理由に引用された、本願の出願日前である平成4年5月22日に頒布された刊行物である特開平4-150333号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「〔産業上の利用分野〕 本発明は、有料放送方式において、複数の放送事業者が独自の課金方式等の営業形態をとることができ、安全性が高く、秘密情報や鍵の管理の問題を解決し、かつ受信者の操作の容易な受信制御方式を与えるものである。」 (第2頁左上欄第2〜7行) (イ)「第7図は従来のテレビジョンやハイビジョンの有料放送受信機の機能ブロック構成例を示している。スクランブルされた放送信号Iから分離回路2、3でそれぞれスクランブルされた映像信号、スクランブルされた音声信号が分離され、映像デスクランブラ4、音声デスクランブラ5に加えられる。同時に分離回路3でデータチャンネルの関連情報が分離され、番組情報6が復号回路8に、個別情報7が復号回路9に加えられる。 まず、個別情報7は復号回路9で各有料デコーダに個有のマスタ鍵Km10で暗号復号され、ワーク鍵Kw11と各受信者の契約内容に関する情報12が得られる。番組情報6は放送番組に付随して頻繁に送られ、復号回路8でワーク鍵Kw11により暗号復号が行われ、スクランブル鍵にKs13と放送番組の属性に関する情報14が得られる。 契約条件比較回路15で受信中の放送番組の属性14が契約内容に関する情報12に合致しているかを比較し、条件が合致する場合はKs出力制御回路16を制御してKsをPN信号発生器17に出力する。合致しない場合は、通常は全て0のKsがPN信号発生器17に出力される。 PN信号発生器17で発生したPN信号で、映像信号と音声信号のデスクランブルを行い、復元された映像信号18と音声信号19が得られる。 以上は電波アドレッシングで個別情報を配布する場合の機能構成であるが、個別情報をICカード等で配布する場合は、ICカード等の入力インタフェース20が付加され、その出力の個別情報が復号回路9へ加えられる。 なお、復号回路の8と9は分離して示しであるが、暗号アルゴリズムが同一である場合には共用するのが一般的である。 また、これらの機能は図には直接示していないCPUによるプログラムで実行されるのが一般的である。 上述の構成は関連情報の処理部分が有料デコーダ内に埋め込まれている場合にも共通であるが、CPU内蔵のICカードとして取り外し可能な形態とする場合は例えば図の点線部分がICカードの中に含まれる。」 (第4頁右上欄第13行〜右下欄第13行) 上記(イ)からして、「有料デコーダ」は、「ICカード」を用いる場合、当該「ICカード」と、「ICカード」に含まれない有料デコーダ本体とから構成されていると認められる。 また、「ICカード」は、「取り外し可能」であることから、装着されたときに限りスクランブル鍵Ksをデスクランブラに供給することができ、有料デコーダ本体は、「ICカード」が装着された場合に限り、「ICカード」から供給されるデスクランブルする鍵を使用してデスクランブラによりデスクランブルするデコード処理を実行することは自明である。 よって、上記(ア)及び(イ)からして、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 スクランブル放送の信号をデスクランブルし、デスクランブルされた信号を出力するデスクランブラを含む有料デコーダ本体と、 前記デコーダに対して取り外し可能に設けられ、前記デコーダに対して装着されたときに、前記デコーダの前記デスクランブラに対してデスクランブルする鍵を供給することが可能なICカードとを備える有料デコーダのスクランブル放送受信方法において、 前記ICカードが前記デコーダに対して装着された場合に、 前記デコーダは、 前記ICカードから供給される前記デスクランブルする鍵を使用して前記デスクランブラにより前記信号をデスクランブルするデコード処理を実行する ことを特徴とするスクランブル放送受信方法。 (2)引用発明2 当審より通知された上記拒絶理由に引用された、本願の出願日前である昭和62年11月2日に頒布された刊行物である特開昭62-251945号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。 (ウ)「〔発明が解決しようとする問題点〕 一方、近年のコンピュータ技術の進展により、パーソナルコンピュータ等の手軽に利用できるコンピュータが盛んに利用されており且つその処理能力も高くなっている。 このような観点から、パーソナルコンピュータにICカードリーダ/ライタを接続し、自己又は他人のICカードを用いて、ICカードの偽造を行なう可能性がある。 このような場合、PINは自己の又は適当に付することによって比較的簡単に偽造できる。 一方、前述の認証データは、ICカード内の認証データ生成過程を知る必要があり、このため、パーソナルコンピュータから正当なICカード1に対し認証コマンドと乱数を送り、認証データをICカード1内で生成させ、認証データを受信することを、乱数を変えて何回も繰返していくと、キーデータや認証データ生成のアルゴリズムが解読されてしまうおそれがある。 このような認証データ生成過程の仕組みが知られてしまうと、偽造ICカードの作成が可能となり、犯罪につながるという問題が生じる。 本発明は、係る認証データ作成の仕組みを不正に知ろうとしてICカードにアクセスすることを防止することのでき且つ係る不正アクセスされたICカードを検知しうるICカードの不正アクセス防止方式を提供することを目的とする。」 (第3頁左上欄第1行〜右上欄第7行) (エ)「ICカード1とアクセス装置2との通常取引のためのプロトコルを第3図プロトコルを説明図により説明する。 <1> 先づ、ICカード1がICカードリーダ/ライタ2Cに挿入されると、ICカードリーダ/ライタ2CよりリセットコマンドがICカード1に発行される。これによって、CPU10は前述のリセット処理を実行し、メモリ11の受信回数mをリセットする。 そして、CPU10はリセットレスポンスを端末装置2aに返送する。 <2> 端末装置2aは、リセットレスポンスを受けると、利用者の入力したPINを本人PIN照合コマンドと共にICカード1に発行する。 ICカード1では、CPU10が、PIN照合コマンドによってPIN照合処理を実行し、与えられた入力PINとメモリ11のシステムゾーンZSの本人PINとを照合して、照合結果を端末装置2aに返送する。 <3> 端末装置2aは照合結果が良好で、本人確認OKと判定すると、カード正当性確認のため、カードACコマンドと乱数EをICカード1に発行する。 ICカード1では、CPU10がカードAC処理を実行し、乱数EとキーデータSCとを所定の関数(アルゴリズム)で演算し、ACデータを生成し、端末装置2aにカード発行者IDとACデータとを端末装置2aに返送する。 <4> 端末装置2aでは、第7図で説明した如くセンタ2bと同様にAC生成を行い、ICカード1からのACデータと生成したACデータとを照合し、カードACチェックを行い、カード正当性確認を行なう。 カード正当性確認が良好であれば、ICカード1のファイル利用のため、ICカードlにファイルオープンコマンドを発行し、ICカード1では、CPU10がファイルオーブンコマンドに応じてファイルオープン処理を行ない、メモリ11の業務ゾーンZAのファイルへのアクセスを可能とし、オープン結果を端末装置2aに通知する。 <5> 端末装置2aでは、ファイルオープンによって、ファイル内のレコードのリードなら、リードコマンドを発行し、ICカード1のCPU10にリード処理を行なわしめる。即ち、CPUl0はメモリ11のディレクトリゾーンZDのディレクトリ情報を参照して業務ゾーンZAの指定されたファイルの指定されたレコードを読出し、リード結果とリードデータを端末装置2aに返送する。 又、ファイル内へのレコードのライトなら、端末装置2aは、ライトコマンドとライトデータをICカード1に発行し、ICカード1のCPU10にライト処理を行なわしめる。即ち、CPUl0はメモリ11のディレクトリゾーンZDのディレクトリ情報を参照して業務ゾーンZAの指定されたファイルの空きエリアにライトデータを書込み、ライト結果を端末装置2aに返送する。 <6> 端末装置2aは、必要なリード/ライトを繰返すと、ICカード1にファイルクローズコマンドを与え、これに応じてCPUl0がクローズ結果をICカードリーダ/ライタ2cに返送することによって、ICカードリーダ/ライタ2cはICカード1を排出せしめ、終了する。」(注:引用中、<>付きの数字は、実際は丸囲み文字である。以降においても同様とする。) (第4頁左上欄第10行〜右下欄第11行) 上記(エ)の<5>及び<6>からして、「端末装置」は、「ICカード」のファイルのレコードを用いてデータ処理を行っていると認められるから、全体としてみれば、データ処理を行うことを目的としている。 また、(エ)からして、「ICカード」が「端末装置」に対して着脱可能に設けられており、該「ICカード」は、「端末装置」に対して挿入されているときに限りファイルのレコードを「端末装置」に供給することが可能であり、かつ、該「端末装置」は、「ICカード」が挿入された場合に、「カードACコマンド」を「ICカード」に供給している。 上記(エ)の<4>からして、「端末装置」は、「ICカード」と同じ予め定められた所定の演算によりACデータを生成している。 上記(エ)の<4>において、「カード正当性確認が良好」でない場合に、以降の取引を実行しないことはその目的からして自明である。 よって、上記(ウ)及び(エ)からして、引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。 ファイルのレコードを用いて取引を行う端末装置と、 前記端末装置に対して着脱可能に設けられ、前記端末装置に対して挿入されたときに、前記端末装置に対してファイルのレコードを供給することが可能なICカードとによるデータ処理方法において、 前記ICカードが前記端末装置に対して挿入された場合に、 前記端末装置は、 前記ICカードに、乱数E、および前記乱数Eに対して所定の演算を行わせるACコマンドを供給し、 前記ICカードは、 前記端末装置から前記乱数Eと前記ACコマンドの供給を受けたとき、前記乱数Eに対して予め決められた所定の演算を行ってACデータを生成し、ACデータを前記端末装置に出力し、 前記端末装置は、 前記ACコマンドに対応して前記ICカードより出力される前記ACデータと、前記端末装置自身が前記所定の演算を行って生成したACデータとの比較結果から、前記ICカードの正当性を確認し、 前記ICカードの正当性の確認が良好である場合、前記ICカードから供給される前記ファイルのレコードを使用して取引を実行し、前記ICカードの正当性の確認が良好でない場合、前記取引を実行しない ことを特徴とするデータ処理方法。 (3)引用発明3 当審より通知された上記拒絶理由に引用された、本願の出願日前である平成7年5月12日に頒布された刊行物である特開平7-123086号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。 (オ)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、ICカードを利用した著作物通信管理システムに係り、特に、ICカードのセキュリティ機能を利用して、ネットワーク(例えば、ISDN網)によって接続される端末装置と情報センタ間で、著作物(例えば、音楽情報、映像情報、コンピュータプログラム)であるディジタル情報の一部あるいは全部を暗号化し、配送するICカードを利用した著作物通信管理システムに関する。 【0002】 【従来の技術】著作物の流通については、通常、音楽情報はコンパクトディスク(CD)、映像情報はビデオテープやレーザーディスク、プログラム等のソフトウェアはフロッピーディスク(FD)等の各媒体を介して行われている。近年、ディジタル技術の進歩により、音楽情報や映像情報のディジタル化と、それらのディジタル情報の圧縮が可能になり、ISDNの普及と共に、これらの著作物をネットワークを介して流通させる環境が整えられつつある。 【0003】また、プログラムについては、そのデータ量が比較的小さいことから、パソコン通信などで配布されている例もある。 【0004】また、ICカードについては、企業内、金融、医療の各分野で実用され始めており、高いセキュリティ機能として所有者確認機能、メモリ保護機能(アクセス制御、暗号機能)を有している。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来のディジタル情報として著作物の情報は、CD、ビデオ、レーザーディスク、FD等は、パソコン等で簡単にコピーが可能であり、かつ、アナログ情報とは異なり、全く同一の情報が複製できることにより、著作物に対して適正な対価を支払わずに、不正者によるコピーが流通するという問題がある。さらに、ネットワークを介して著作情報を配送する場合においても、不正利用者による著作物情報の不正取得や改ざんが問題となる。 【0006】本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、上記従来の問題点を解決し、著作物情報の不正取得や改ざんが不可能なICカードを利用した著作物通信管理システムを提供することを目的とする。」 (カ)「【0014】本発明の一実施例の通信システムを利用するフェーズには、端末装置2が情報センタ4から著作物を受信し、蓄積する“著作物受信フェーズ”と、端末装置2が受信した著作物を利用する“著作物利用フェーズ”があり、それらを個々に説明する。 【0015】《著作物受信フェーズ》図3は、本発明の一実施例の著作物受信フェーズのシーケンスチャートである。同図に示すフェーズは、端末装置2が著作物を情報センタ4から受信し、蓄積するフェーズである。 【0016】ステップ1)まず、操作者はICカード1と端末装置2を用いて、操作者が当該ICカードの正当な所有者であるかの認証を行う(所有者認証)。 【0017】ステップ2)次に、ICカード1、端末装置2、及び情報センタ3間で通信を行い、端末装置2に接続されるICカード1と情報センタ4のICカード管理部41間で、相互に正当な通信相手であるかの認証を行う(相互認証)。 【0018】ステップ3)これらの認証が完了して初めて、端末装置2から情報センタ3の著作物蓄積管理部42にアクセス可能となる。端末装置2から検索条件を情報センタ4に送り、入手したい著作物を情報センタ4の著作物蓄積管理部42より検索する。 (キ)「【0025】・相互認証 所有者の認証(図3,ステップ1)が完了すると、はじめて端末装置2は、情報センタ4にアクセスでき、ICカード1と情報センタ4間での相互認証を行う。相互認証は、情報センタ4のICカード管理部41内の相互認証鍵とICカード内に書き込まれている相互認証鍵を用いて行われる。 【0026】図6は、本発明の一実施例の相互認証を説明するための図である。 【0027】ICカード1と情報センタ4は、予めある決められた関数fと暗号鍵KiaとKibをもつものとする。 【0028】まず、端末装置2は、ICカード1内のカードIDを情報センタ4に送信する。次に、お互いに乱数を交換する。その後、関数f103に『カードID102+乱数402』を入力し、互いに秘密に持っている相互認証鍵KiaとKibでデータを攪拌する。こうして、お互いに演算結果を交換し合い、相手演算結果と自分で求めた演算結果を比較照合する(106、405)。照合結果が一致すれば、互いに正当な通信相手と認証できる。 【0029】ここで、関数fは暗号アルゴリズムである。代表的な暗号アルゴリズムとしては、慣用暗号方式では、DES暗号アルゴリズムやFEAL暗号アルゴリズムがあり、公開暗号方式では、RSA暗号アルゴリズムがある。 【0030】これらのICカードを用いた認証方法については、例えば、文献:『水沢純一著、「ICカード」、pp.51〜60、オーム社、1987年刊行』を参照されたい。 【0031】相互認証で利用するICカード内に格納されている情報の例を説明する。図7は、本発明の一実施例のICカード内に格納されている情報を示す。 【0032】ICカード1内には、個別のカードID102と、カード発行時に書き込まれ、その後書き換えることのできない情報として、相互認証鍵KiaとKib101があり、この相互認証鍵101は外部からは読み込めないように設定しておく。」 (ク)「【0038】《著作物利用フェーズ》上記までの手順で、端末装置2は、著作物情報を情報センタ4から受信し、著作物蓄積管理部22に格納してある著作物情報の利用手順を図11により説明する。図11は、本発明の一実施例の著作物蓄積管理部の著作物情報の利用手順を示すシーケンスチャートである。 【0039】ステップ111)まず、操作者は、ICカード1と端末装置2を用いて、操作者がICカード1の正当な所有者か否かの認証を行う(所有者認証)。この所有者認証は、著作物受信フェーズと同一の手順で行う。 【0040】ステップ112)次に、操作者は、著作物暗号鍵を用いて利用したい著作物を端末装置2の著作物蓄積管理部22から検索する。 【0041】ステップ113)操作者は、著作物情報を選択することにより著作物を利用する(著作物利用)。 【0042】以下に著作物利用の手順を説明する。図12は、本発明の一実施例の著作物利用手順を示すフローチャートである。 【0043】ステップ120)著作物情報は、一部あるいは全部が暗号化されており、そのままでは利用できないため、端末装置2は、暗号化されている著作物情報の一部分をICカード1へ転送し、ICカード1に復号化を依頼する。 【0044】ステップ121)ICカード1は、転送された著作物情報を復号し、端末装置2へ返送する。 【0045】ステップ122)端末装置2は、ICカード1から復号化された著作物情報の一部分と、暗号化されていない著作物情報の残りの部分に基づいて、最初から最後まで順序よく並んだ著作物情報として再構成する。 【0046】ステップ123)再構成された著作物情報がプログラムの場合(例えば、著作物識別子により、判定できる)には、ステップ124に移行し、その他の場合には、ステップ125に移行する。 【0047】ステップ124)著作物情報がプログラムの場合には、そのままプログラム実行し、それをディジタル情報としてそのまま使い、その処理結果を得ることになる。 【0048】ステップ125)一方、再構成した著作物が音楽情報や映像情報の場合には、それらのディジタル情報をアナログ情報に変換し、アナログ情報を出力する。 【0049】この一連の処理において、著作物保護の観点で重要なことは、暗号化されていない著作情報(ディジタル情報)を簡単にコピーされないように端末を構成することである。そのため、暗号を解読され、再構成された著作物情報を、プログラムの場合ならプログラムの実行されるまでの経路を機密部として保持し、一方、音楽情報や映像情報の場合であれば、アナログ情報に変換されるまでの経路を機密部として外部に情報がもれないような配慮を施す必要がある。」 よって、上記(オ)乃至(ク)からして、引用文献3には次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されている。 暗号化された映像情報や音楽情報にアクセスするために用いるICカードの正当性を端末装置が認証する方法において、端末装置が乱数を送信し、ICカードが乱数を用いて演算を行い、演算結果を端末装置に送信し、端末装置が自身が演算した結果照合して一致したことをもって正当であると認証する方法。 3.本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「スクランブル放送の信号」、「有料デコーダ本体」、「取り外し可能」及び「有料デコーダ」は、それぞれ本願発明の「スクランブル放送のデータ」、「デコーダ」、「着脱可能」及び「スクランブル放送受信端末」に対応している。 よって、両者は、 スクランブル放送のデータをデスクランブルし、デスクランブルされたデータを出力するデスクランブラを含むデコーダと、 前記デコーダに対して着脱可能に設けられ、前記デコーダに対して装着されたときに、前記デコーダの前記デスクランブラに対してデスクランブルする鍵を供給することが可能なICカードとを備えるスクランブル放送受信端末のスクランブル放送受信方法において、 前記ICカードが前記デコーダに対して装着された場合に、 前記デコーダは、 前記ICカードから供給される前記デスクランブルする鍵を使用して前記デスクランブラによりデータをデスクランブルするデコード処理を実行する ことを特徴とするスクランブル放送受信方法 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点] 本願発明は、ICカードがデコーダに対して装着された場合に、デコーダは、ICカードに、乱数および前記乱数に対して所定の演算を行わせるコマンドを供給し、ICカードは、デコーダから前記乱数と前記コマンドの供給を受けたとき、前記乱数に対して予め決められた所定の演算を行って、その演算結果を前記デコーダに出力し、前記デコーダは、コマンドに対応して前記ICカードより出力される前記演算結果と、前記デコーダ自身が前記所定の演算を行って得られた演算結果との比較結果から、前記ICカードが正規のものであるか否かを判定し、前記ICカードが正規のものであると判定された場合、前記ICカードから供給される前記デスクランブルする鍵を使用して前記デスクランブラによりデータをデスクランブルするデコード処理を実行し、前記ICカードが正規のものではないと判定された場合、前記デコード処理を実行しないのに対し、 引用発明は、ICカードがデコーダに対して装着された場合に、デコーダは、無条件にICカードから供給されるデスクランブルする鍵を使用してデスクランブラによりデータをデスクランブルするデコード処理を実行する点。 4.当審の判断 上記相違点について、以下検討する。 引用発明2にあるように、ICカードが装着されるときに、ICカードが装着される端末装置からICカードに乱数を送信し、当該乱数に対しICカードと端末装置が同じ演算を実行し、端末装置が、ICカードから受信した演算結果と自身の演算結果とを比較し、両者が一致したときにICカードの正当性を確認することは周知である。また、正当性を確認することは、正規であると判定することと同義である。 さらに、引用発明1と引用発明2とは、いずれも、ICカードが装着される装置が、ICカードに格納された情報を利用して所定の処理を行うものである点で共通しており、引用発明1においては、使用される「ICカード」が必ず正規のものであることが保証されるような仕組みを備えているといった格別の事情は存在しないから、引用発明1において、正規の「ICカード」が使用することを保証するために、引用発明2に係る技術思想を適用し、ICカードがデコーダに対して装着された場合に、デコーダは、ICカードに、乱数および前記乱数に対して所定の演算を行わせるコマンドを供給し、ICカードは、デコーダから前記乱数と前記コマンドの供給を受けたとき、前記乱数に対して予め決められた所定の演算を行って、その演算結果を前記デコーダに出力し、前記デコーダは、コマンドに対応して前記ICカードより出力される前記演算結果と、前記デコーダ自身が前記所定の演算を行って得られた演算結果との比較結果から、前記ICカードが正規のものであるか否かを判定し、前記ICカードが正規のものであると判定された場合、前記ICカードから供給される前記デスクランブルする鍵を使用して前記デスクランブラによりデータをデスクランブルするデコード処理を実行し、前記ICカードが正規のものではないと判定された場合、前記デコード処理を実行しない、という構成を付加することは当業者が容易に想到し得たものである。 5.請求人の主張 請求人は、平成18年5月19日付けの意見書において、「しかしながら、引用文献2は、銀行カード、クレジットカードなどとして使用されるICカードにおいて、ICカードとアクセス装置との間の認証に乱数を使用する技術について記載されたものであり、このICカードは、基本的には、PINが入力され、ICカードを使用する人間が本人であることを確認した上で、ICカード内のファイルへのアクセスを許可するためのものである。すなわち、引用文献2に記載されたICカードは、請求項1に記載の本願発明のような、デコーダに対して装着されたときに、デコーダの前記デスクランブラに対してデスクランブルする鍵を供給するICカードとは使用態様が全く異なっている。」と主張しているが、本願発明において、「前記デコーダに対して装着されたときに」及び「前記ICカードが前記デコーダに対して装着された場合」とは、「ICカード」が「デコーダ」に対して「装着された」という条件を特定しているにとどまるから、本願発明の「デコーダ」が、前記の「装着された」というタイミングの直後に、すなわち、使用者の認証をすることなく直ちに「コマンド」を供給するものと限定的に解釈することはできない。 また、上記4.で述べたように、引用発明1と引用発明2とは、ICカードの利用について共通点を有しており、かつ、引用発明1において、正規のICカードのみが利用されるという保証はなされていないから、引用発明1に、引用発明2に係る技術思想を適用することに技術的な阻害要因は存在しない。実際、暗号化された情報にアクセスするために使用されるICカードが正規のものであることを認証してからアクセスを行うことは、引用発明3に開示されているように周知であることからしても、引用発明1に引用発明2を適用することに何らの困難性もない。 よって、請求人の上記主張は採用しない。 6.むすび したがって、本願発明は、引用発明1、2及び3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-07-14 |
結審通知日 | 2006-07-14 |
審決日 | 2006-07-25 |
出願番号 | 特願平7-194680 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04L)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 青木 重徳 |
特許庁審判長 |
吉岡 浩 |
特許庁審判官 |
林 毅 長島 孝志 |
発明の名称 | スクランブル放送受信方法 |
代理人 | 稲本 義雄 |