• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1143083
審判番号 不服2003-17731  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-12-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-11 
確定日 2006-09-06 
事件の表示 平成 6年特許願第139740号「超音波診断装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年12月12日出願公開、特開平 7-323030〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年5月31日の出願であって、平成15年7月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年9月11日に審判請求がなされるとともに、平成15年10月10日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年10月10日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年10月10日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正内容
本件補正は、補正前の請求項1(平成14年12月25日付けの手続補正書に記載の請求項1)において、
「【請求項1】被検体内に超音波を送受信する探触子と、この探触子を駆動すると共に受信した反射エコーの信号を処理する超音波送受信部と、この超音波送受信部からの超音波データを時系列に複数フレーム記録するシネメモリと、このシネメモリから読み出した超音波データを用いてBモード像データを形成するディジタルスキャンコンバータと、上記超音波データを入力し前記シネメモリを再生して得られるBモード像に対し任意方向のMモード像及び又はAモード像を抽出して表示するための処理を行うMモード・Aモード像処理部と、操作入力により任意方向のMモード・Aモード像抽出ラインを設定する制御・グラフィック部と、上記ディジタルスキャンコンバータ及びMモード・Aモード像処理部からの出力データを合成してBモード像とMモード像及び又はAモード像とを表示する画像表示装置とを有する超音波診断装置において、
上記シネメモリはテレビ表示のフレームレートを超える高フレームレートで画像データを記録し、上記画像表示装置は上記シネメモリを上記高フレームレートで再生し抽出したMモード像及び又はAモード像を表示することを特徴とする超音波診断装置。」
と記載していたのを、補正により、
「【請求項1】被検体内に超音波を送受信する探触子と、この探触子を駆動すると共に受信した反射エコーの信号を処理する超音波送受信部と、この超音波送受信部からの超音波データを時系列に複数フレーム記録するシネメモリと、このシネメモリから読み出した超音波データを用いてBモード像データを形成するディジタルスキャンコンバータと、上記超音波データを入力し前記シネメモリを再生して得られるBモード像に対し任意方向のMモード像及び又はAモード像を抽出して表示するための処理を行うMモード・Aモード像処理部と、操作入力により任意方向のMモード・Aモード像抽出ラインを設定する制御・グラフィック部と、上記ディジタルスキャンコンバータ及びMモード・Aモード像処理部からの出力データを合成してBモード像とMモード像及び又はAモード像とを表示する画像表示装置とを有する超音波診断装置において、
上記シネメモリはテレビ表示のフレームレートを超える高フレームレートで画像データを記録し、上記Mモード・Aモード像処理部は上記シネメモリから読み出した高フレームレートの画像データを順次繰り返して書き込み及び読み出す複数のバッファメモリを備えて成り、上記画像表示装置は上記複数のバッファメモリの画像データを順次繰り返して読み出して高フレームレートの画像の全フレームから再生し抽出したMモード像及び又はAモード像を表示することを特徴とする超音波診断装置。」
とすることを含むものである。(下線部は、今回補正ヶ所である)

前記に係る補正事項は要するに、
補正前は「画像表示装置は上記シネメモリを上記高フレームレートで再生し抽出したMモード像及び又はAモード像を表示する」であったのを、
補正により「Mモード・Aモード像処理部は上記シネメモリから読み出した高フレームレートの画像データを順次繰り返して書き込み及び読み出す複数のバッファメモリを備えて成り、上記画像表示装置は上記複数のバッファメモリの画像データを順次繰り返して読み出して高フレームレートの画像の全フレームから再生し抽出したMモード像及び又はAモード像を表示する」とするものである。

(2)補正の目的の適否
この補正事項は、本願出願時の明細書の段落0012に記載されていた事項に基づくものであるから、新規事項には該当せず、また複数のバッファメモリを設け、シネメモリから読み出して画像表示装置への表示を該バッファメモリを介して行うことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3)独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか[平成6年改正前の特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定(独立特許要件)に適合するか]について以下で検討する。

(3-1)刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物は、次のものである。
刊行物1:特開昭59-118145号公報
刊行物2:特開平3-170137号公報
刊行物3:特開昭60-165946号公報
刊行物4:特開平3-4840号公報

刊行物1には、
ア)「本発明は一度記憶された画像上の任意の方向に於ける線分区間内の画像情報の時間的変動(Mモード情報)を表示及び/又は記録する超音波画像処理装置に関する。」(第1頁左下欄第17-20行)、

イ)「従来、超音波診断装置により超音波による例えば心臓等の診断の際、Mモードによる特定部位の観察が行われていた。これは通常Bモードと呼ばれる断層像を参照しながら超音波放射方向の所望の線状区間の時間的推移を測定するものであった。」(第1頁右下欄第2-6行)、

ウ)「本発明の目的は……、Bモードで記録された超音波画像を再生し、該画像上の任意の線分区間内の画像情報を検出することにより、該画像上の任意の線分区間のMモード情報を得る超音波画像処理装置を提供することにある。」(第1頁右下欄第20行-第2頁左上欄第4行)、

エ)「第2図は本発明の一実施例を示す回路のブロック図である。画像記録部5は例えばVTRの如きもので画像を記録再生又は再生する機能を持つ。」(第2頁右上欄第6-8行)、

オ)「画像メモリ6は画像記録部5より入る再生画像を記録する。」(第2頁右上欄第9-10行)、

カ)「表示部7は画像メモリ部6の画像の各画素のアドレスに対応して例えばモニターテレビに該画像を表示する。該表示画像を見ながら入力部12(例えばジョイスティック等の座標入力装置)より該表示部7の画像上の所望の位置の間に線分を指定する。該指定線分のアドレスは線分アドレスメモリ部11に入って記憶されると共に表示部7に送出され、表示部7の表示画面上に輝線等で表示される。」(第2頁右上欄第10-18行)、

キ)「画像読出し回路8は線分アドレスメモリ部11からの該線分アドレスと、画像メモリ部6からの各画素のアドレスとを比較し、一致した画素のアドレスに対応する画像メモリ部6の画像情報、即ち画素の表示位置や輝度情報等を抽出画像メモリ部9に送る。」(第2頁右上欄第18行-同頁左下欄第3行)、

ク)「抽出画像メモリ部9に入った画像情報は画像記録部5からの一画面毎に発生する同期信号が送られて来る迄の間記憶され、表示部10に送出され表示される。」(第2頁左下欄第3-6行)、

ケ)「第3図は本実施例により得られる表示画像の一例を示す。一画面毎に所望の線分区間の運動による寸法の変動が時間軸t上に表示される。本実施例では表示方法としてモニターテレビを用いる例を示したが、」(第2頁左下欄第7-11行)、

コ)「又表示部10の代わりにVTR、メモリ等を用い記録することも可能である。」(第2頁左下欄第13-14行)、
が記載されている。

(3-2)刊行物1記載の発明
刊行物1の前記記載を参照すると、
ウ)に、Bモードで記録された超音波画像を再生し、該画像上の任意の線分区間内の画像情報を検出することにより、該画像上の任意の線分区間のMモード情報を得る超音波画像処理装置であることが記載され、
エ)に、VTRの如きもので画像を記録再生又は再生する機能を持つ画像記録部5が記載され、
ウ),オ)に、画像記録部5より入るBモード再生画像を記録する画像メモリ6が記載され、
ウ),カ)に、表示部7に表示された画像メモリ部6のBモード再生画像上の所望の位置の間に、該画像を見ながら線分を指定することができる入力部12と、指定線分のアドレスを記憶する線分アドレスメモリ部11が記載され、
キ)に、線分アドレスメモリ部11からの該線分アドレスと、画像メモリ部6からの各画素のアドレスとを比較し、一致した画素のアドレスに対応する画像メモリ部6の画像情報、即ち画素の表示位置や輝度情報を得る画像読出し回路8が記載され、
キ),ク)に、画像読出し回路8の出力である指定した線分区間の輝度情報が送られる抽出画像メモリ部9であって、この抽出画像メモリ部9に入った画像情報は画像記録部5からの一画面毎に発生する同期信号が送られて来る迄の間記憶されるようになっているところの抽出画像メモリ部9が記載され、
ア)、ケ)、コ)に、抽出画像メモリ部9に記憶されたMモード情報をモニターテレビで表示部10に表示する、及び/又は、VTRまたはメモリ手段で記録する、ことが記載されているから、
これらを整理して記載すると、刊行物1には、
Bモードで記録された超音波画像を再生し、Bモード画像を表示部7において表示し、該画像上の任意の線分区間内の画像情報を検出することにより、該画像上の任意の線分区間のMモード情報を得る超音波画像処理装置において、
VTRの如きもので画像を記録再生又は再生する機能を持つ画像記録部5と、
画像記録部5より入る再生画像を記録する画像メモリ6と、
表示部7に表示された画像メモリ部6のBモード再生画像上の所望の位置の間に、該画像を見ながら線分を指定することができる入力部12と、
指定線分のアドレスを記憶する線分アドレスメモリ部11と、
線分アドレスメモリ部11からの該線分アドレスと、画像メモリ部6からの各画素のアドレスとを比較し、一致した画素のアドレスに対応する画像メモリ部6の画像情報、即ち画素の表示位置や輝度情報を得る画像読出し回路8と、
画像読出し回路8の出力である指定した線分区間の輝度情報が送られる抽出画像メモリ部9であって、この抽出画像メモリ部9に入った画像情報は画像記録部5からの一画面毎に発生する同期信号が送られて来る迄の間記憶されるようになっているところの抽出画像メモリ部9と、
抽出画像メモリ部9に記憶されたMモード情報を表示部10に表示または記録する手段を具備した超音波画像処理装置、
の発明が記載されている。

(3-3)対比・検討
本願補正発明と刊行物1記載の発明を対比すると、
α:刊行物1記載の発明の「VTRの如きもので画像を記録再生又は再生する機能を持つ画像記録部5」も本願補正発明の「超音波データを時系列に複数フレーム記録するシネメモリ」も、超音波データを時系列に記録する画像記録部である点で共通しており、

β:刊行物1記載の発明で、「Bモードで記録された画像を再生し、Bモード画像を表示部7において表示する」というのは、本願発明において、シネメモリから読み出した超音波データを用いて、ディジタルスキャンコンバータによりBモード像データを形成して表示するということと、Bモードで記録された画像を再生し、Bモード画像を表示部において表示する点で共通しており、

γ:刊行物1記載の発明の「表示部7に表示された画像メモリ部6のBモード再生画像上の所望の位置の間に、該画像を見ながら線分を指定することができる入力部12」及び「抽出画像メモリ部9に記憶されたMモード情報を表示する手段」からなる全体が、本願補正発明の「Bモード像に対し任意方向のMモード像を抽出して表示するための処理を行うMモード像処理部と、操作入力により任意方向のMモード像抽出ラインを設定する制御・グラフィック部と操作入力により任意方向のMモード像抽出ラインを設定する制御・グラフィック部」及び「Mモード像を抽出して表示する画像表示装置」からなる全体に相当し、

δ:刊行物1記載の発明における「画像記録部5より入る再生画像を記録する画像メモリ6」も、本願補正発明における「シネメモリから読み出した画像データを順次繰り返して書き込み読み出すバッファメモリ」も、超音波データを時系列に記録する画像記録部から読み出した画像データを順次繰り返して書き込み読み出すメモリである点で共通しており、

ε:刊行物1記載の発明も本願補正発明も、画像記録部から読み出した画像データを順次繰り返して書き込み読み出すメモリから再生し抽出したMモード像を表示する装置を具備する超音波画像処理装置である点で一致する。
したがって両者は、共通点及び一致点について整理記載すると、

α:超音波データを時系列に記録する画像記録部と、
β:Bモードで記録された画像を再生し、Bモード画像を表示する表示部と、
γ:Bモード像に対し任意方向のMモード像を抽出して表示するための処理を行うMモード像処理部と、操作入力により任意方向のMモード像抽出ラインを設定する制御・グラフィック部と、Mモード像を抽出して表示する画像表示装置と、
を有する超音波画像処理装置であって、
δ:前記画像記録部から読み出した画像データを順次繰り返して書き込み読み出すメモリと、
ε:前記メモリから再生し抽出したMモード像を表示する装置を具備する超音波画像処理装置、
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1
本願補正発明は、超音波診断装置の発明であって、「被検体内に超音波を送受信する探触子と、この探触子を駆動すると共に受信した反射エコーの信号を処理する超音波送受信部」を有するものであるのに、
刊行物1記載の発明は、超音波画像処理装置の発明である点。

相違点2
本願発明は、「シネメモリから読み出した超音波データを用いてBモード像データを形成するディジタルスキャンコンバータ」を具備するのに、
刊行物1記載の発明は、シネメモリについて記載がなく、また、ディジタルスキャンコンバータの記載もない点。

相違点3
本願発明は、「ディジタルスキャンコンバータ及びMモード・Aモード像処理部からの出力データを合成してBモード像とMモード像及び又はAモード像とを表示する画像表示装置」を有するものであるのに対し、
刊行物1記載の発明は、出力データを合成して表示することについて記載がなく、Bモード像を表示部7に表示し、Mモード像を表示部10に表示するものである点。

相違点4
本願補正発明は、シネメモリはテレビ表示のフレームレートを超える高フレームレートで画像データを記録するものであるのに対し、
刊行物1記載の発明は、単に、画像記録部5に画像データを記録するものである点。

相違点5
本願補正発明は、Mモード・Aモード像処理部は上記シネメモリから読み出した高フレームレートの画像データを順次繰り返して書き込み及び読み出す複数のバッファメモリを備えて成り、画像表示装置は上記複数のバッファメモリの画像データを順次繰り返して読み出して高フレームレートの画像の全フレームから再生し抽出したMモード像及び又はAモード像を表示するのに対し、
刊行物1記載の発明は、超音波データを時系列に複数フレーム記録する画像記録部5より入る再生画像を記録する画像メモリ6を備えたものであって、Mモード情報を表示する表示部7は、前記画像メモリ6のデータを順次繰り返して読み出して、画像記録部5から再生し抽出したMモード像を表示するものである点。

前記相違点について検討すると、
相違点1について
刊行物1記載の超音波画像処理装置が超音波診断装置に組込んで用いるものであることは明らかである。そして、超音波診断装置において、被検体内に超音波を送受信する探触子と、この探触子を駆動すると共に受信した反射エコーの信号を処理する超音波送受信部は必須の構成であるから、刊行物1記載の超音波画像処理装置をこのような超音波診断装置に組み込むことは当業者が容易に想到できたものである。

相違点2について、
超音波診断装置の技術分野において、Bモードで時間的に順次採取した多数枚のエコーデータをシネメモリに蓄積しておくことは従来周知であり、「シネメモリから読み出した超音波データを用いてBモードデータを形成するディジタルスキャンコンバータ」も、従来周知の技術である。
(例として特開平4-285543号公報、特開平5-84243号公報、及び特開平5-329153号公報を参照)
したがって、刊行物1記載の発明において、画像記録部5をシネメモリとし、シネメモリから読み出した超音波データを用いてBモードデータを形成するのにディジタルスキャンコンバータを用いることは、当業者が容易に想到できたものである。

相違点3について
相違点2で記載したとおり、ディジタルスキャンコンバータは、Bモードデータを形成するためのものであり、その出力は、Bモードデータである。 そして、要するに「ディジタルスキャンコンバータ及びMモード・Aモード像処理部からの出力データを合成してBモード像とMモード像及び又はAモード像とを表示する」というのは、Bモード像を形成するためのBモードデータと、Mモード像処理部からのMモードデータを合成することを意味し、本願発明において、「合成」というのは、Bモード像とMモード像を同一表示画面に表示することを意味すると認められる。
そうすると、超音波診断装置の技術分野において、Bモード像とMモード像乃至Aモード像とを同一表示画面に表示するようにすることは、従来周知である[例として、刊行物1におけるイ)の記載、刊行物2における第3頁左下欄第4-11行の記載、刊行物4の第1頁左下欄第15-17行の記載、特開平4-75647号公報の第2図、第3図において同一画面上に表示されたBモードと、Mモードの超音波画像を参照]から、刊行物1記載の発明において、ディジタルスキャンコンバータの出力たるBモードデータと、Mモード・Aモード像処理部からの出力データを合成して、Bモード像とMモード像及び又はAモード像とを同一画面上に表示するようにすることは、当業者が容易に想到できたものである。

相違点4について
超音波診断装置において、超音波探触子からの出力情報をシネメモリに記録するに際してテレビ表示のフレームレートを超える高フレームレートで画像データを記録するシネメモリを採用することは従来周知である(例として、特開平4-71546号公報の第2頁右上欄第5行-同頁左下欄第13行の記載を参照)から、刊行物1記載の発明において、超音波データを時系列に記録する画像記録部として、テレビ表示のフレームレートを超える高フレームレートで画像データを記録するシネメモリを採用することは、当業者が容易に想到できたものである。

相違点5について
データ処理の技術分野において、データソースからデータを、逐次取得乃至引き出して、バッファメモリに書き込み、次いで、書き込んだデータを読み出して、読み出したデータを処理していく、という場合に、2個のバッファメモリを用いるようにして、一方のバッファメモリが、読み出し中は他方のバッファメモリが書き込み中とし、他方のバッファメモリが読み出し中は、一方のバッファメモリが書き込み中であるというように切替使用して、これによりデータを間断なく取得するようにする、乃至は、早くデータ処理できるようにするという手法を採用することが従来周知であるから[例として、実願昭61-114443号(実開昭63-20810号)のマイクロフィルム、及び実願昭61-119493号(実開昭63-26307号)のマイクロフィルムを参照]、刊行物1記載の発明において、画像記録部5として、前記相違点1で記載したようなテレビ表示のフレームレートを超える高フレームレートで画像データを記録するシネメモリを採用し、シネメモリの画像データを取得乃至処理するのに際し、画像メモリ部6(本願補正発明のバッファメモリに相当)の設置個数を2として、シネメモリから読み出した高フレームレートの画像データを順次交互に繰り返して書き込み及び読み出すようにするMモード像処理部を設けることは、当業者が必要に応じて採用できた設計的事項と認められる。
また、本願補正発明のMモード像処理部というのは、本願明細書段落【0012】の「……バッファメモリ24a,24bから読み出した画像データについて加算平均及び間引き処理又は補間処理などの画像処理を施す……」との記載からみて、「加算平均及び間引き」(フレーム数を減らすことである)などの処理をすることも含めてMモード像処理をするものと認められ、本願補正発明は、フレーム数を減らす処理をするMモード像処理部を用いて、高フレームレートの画像の全フレームから再生し抽出したMモード像を表示するものも含まれると認められるから、刊行物1記載の発明においても、シネメモリを採用した場合に、フレーム数を減らすMモード像処理部を用いて、高フレームレートの画像の全フレームから再生し抽出したMモード像を表示することは、当業者が適宜採用できた設計的事項である。

そしてAモード情報は、Mモード情報の所定時相での情報である(刊行物4の第1頁左下欄第15-17行参照)から、刊行物1記載の発明において、Aモード像処理やAモード像の表示を行うことは、当業者が必要に応じて適宜選択できた事項である。

そして、前記相違点1-5を総合的に判断しても、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び従来周知技術に基いて当業者が容易に発明できたものである。

(4)むすび
よって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び従来周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定を満足せず、独立して特許を受けることができないものであり、平成6年改正前の特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定(独立特許要件)に適合しないから、特許法第159条第1項において準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
平成15年10月10日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成13年5月25日付け及び平成14年12月25日付けの手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1に係る発明(以下で、「本願発明」という)は、前記2.(1)の段落で記載したとおりのものである。

4.刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物は、前記2.(3-1)の段落で記載したとおりのものである。

5.対比・検討
本願発明は、前記「2.(3-3)」で検討した本願補正発明から、「Mモード・Aモード像処理部は上記シネメモリから読み出した高フレームレートの画像データを順次繰り返して書き込み及び読み出す複数のバッファメモリを備えて成り」という限定に係る構成事項を省き、
本願補正発明において「画像表示装置は上記複数のバッファメモリの画像データを順次繰り返して読み出して高フレームレートの画像の全フレームから再生し抽出したMモード像及び又はAモード像を表示する」というのを「「画像表示装置は上記シネメモリを上記高フレームレートで再生し抽出したMモード像及び又はAモード像を表示する」と変更したものである。
そして変更内容は、実質上、「画像表示装置は上記複数のバッファメモリの画像データを順次繰り返して読み出して」という限定に係る構成事項を省くというだけのものである。

そうすると、本願発明の構成要件の一部をすべて含み、さらに上記限定を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3-3)」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び従来周知技術に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、かかる限定を欠く本願発明は、当然に、刊行物1に記載された発明及び従来周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

6.当審による審尋に対しての請求人からの回答について
平成18年5月26日付け回答書には補正案が記載されていたのでそれについても検討したが、補正をしたとしても依然として、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものと認められた。

7.むすび
したがって、本願発明は、本願出願前に頒布された刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、その余の請求項を検討するまでもなく特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
 
審理終結日 2006-06-22 
結審通知日 2006-06-27 
審決日 2006-07-18 
出願番号 特願平6-139740
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 右▲高▼ 孝幸  
特許庁審判長 高橋 泰史
特許庁審判官 櫻井 仁
菊井 広行
発明の名称 超音波診断装置  
代理人 西山 春之  
代理人 西山 春之  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ