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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01F |
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管理番号 | 1143087 |
審判番号 | 不服2003-24690 |
総通号数 | 82 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-06-18 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-12-19 |
確定日 | 2006-09-06 |
事件の表示 | 平成6年特許願第332034号「コンバイン」拒絶査定不服審判事件〔平成8年6月18日出願公開、特開平8-154466〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯・本願発明 本願は、平成6年12月12日の出願であって、平成15年11月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成16年1月15日付けで手続補正がなされたものである。 そして、その請求項1に係る発明は、平成16年1月15日付けの手続補正により、明瞭でない記載の釈明を目的として補正された請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。 「扱胴6を軸装した扱室5の側部に穀稈を搬送する穀稈供給搬送装置13を設け、 該穀稈供給搬送装置13に続いて、前記扱室5の排出側に設けた排藁処理部67に脱穀済の排藁を挾持搬送する排藁搬送装置を設け、 前記穀稈供給搬送装置13の穀稈供給搬送チェン16は、供給側3を中心に排出側4が外側回動する供給チェンフレーム17に設けた受動歯車19と駆動歯車18に掛け回し、前記駆動歯車18は排出側4に設け、該駆動歯車18は機体側に設けた伝動ケース26の出力軸27と着脱自在に嵌合するようにし、 前記伝動ケース26には前記駆動歯車18に伝達する回転を入切りさせるクラッチ32を設け、該クラッチ32はクラッチ用モーター50により入切りさせるように構成したものにおいて、 前記クラッチ用モーター50は前記穀稈供給搬送チェン16の搬送移動軌跡よりも排出側4で、かつ、前記出力軸27および前記伝動ケース26に回転を入力する入力プーリー30よりも上方に配置すると共に、 刈取クラッチの入り切りに連動させて自動的に前記クラッチ32を入り切りさせ、 且つ、刈取部を上動させると前記クラッチ32を切りにし刈取部を下動させると前記クラッチ32を自動的に入りにし、 且つ、エンジンを始動させるときは前記クラッチ32を自動的に切りにし、 前記伝動ケース26と前記駆動歯車18との間に略平板形状の巻付防止板54を設けたことを特徴とするコンバイン。」 (以下「本願発明」という。) 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布されている刊行物である実願平4-20057号(実開平5-80227号)のCD-ROM(以下、「引用例1」という。)には、コンバインに関して図面とともに下記の記載がある。 (イ)「【0002】従来のコンバインにおいては、脱穀クラッチレバーと刈取クラッチレバーを共に「入」にすると、刈取作業を行うことができ、フィードチェーンも駆動され、刈取クラッチレバーを「切」にすると、フィードチェーンとの受け継ぎ部で稈が乱れるので刈取装置とフィードチェーンが停止する構成をしていた…」 (ロ)「【0004】…脱穀クラッチレバー,刈取クラッチレバーが共に「入」で且つ主変速レバーを前進に変速した状態で刈取クラッチレバーを「切」にすると、刈取装置が停止して走行速度に応じた遅れ時間後にフィードチェーンを停止すべく制御したものである。そして、脱穀クラッチレバー,刈取クラッチレバーが共に「入」の状態で、主変速レバーを前進からニュートラル又は後進に変速すると刈取装置停止した後に所定の遅れ時間後にフィードチェーンを停止し、主変速レバーを前進に変速すると刈取装置が駆動開始した後に所定の遅れ時間後にフィードチェーンを駆動すべく制御したのである。」 (ハ)「【0006】図1、図2においてコンバインの全体構成を説明すると、クローラ式走行装置1上に機体フレーム2を載置して、該機体フレーム2前方に刈取装置Cが配設されており、該刈取装置Cは刈取フレーム3前端に分草板6が突出され、その後部に引起こしケース4が立設されて、該引起こしケース4にはタインを突出したチェーンが巻回されて回動することにより倒伏穀稈を引き起こすのであり、該引起こしケース4後部には掻き込み装置と上部搬送装置と下部搬送装置が配設され、該掻き込み装置下方の刈取フレーム3に刈刃9が横設されて穀稈の株元を刈り取って搬送装置にて後方へ搬送するのである。」 (ニ)「【0007】前記搬送装置により搬送される穀稈の株元はフィードチェーン20に挟持されて、穂先側は脱穀室内の扱胴19にて脱粒され、排稈は排藁チェーン15にて機外へ排出されるのであり、…」 (ホ)「【0011】また、フィードチェーン20の駆動伝達部はフィードチェーン20後部に配設されており、図6に示すように、一番コンベアや二番コンベアを駆動するプーリーに巻回されたベルト42が駆動軸43上のプーリー44に巻回され、ギアケース45内の歯車48・50等を介してフィードチェーン駆動軸47に遊嵌した歯車49に伝達される。…フィードチェーン駆動軸47端にはフィードチェーン20を巻回したスプロケット34が固設されているのである。」 (ヘ)「【0012】前記フィードチェーン駆動軸47中央部上にはスプライン嵌合した摺動体51が外嵌され、該摺動体51の一端にはクラッチ爪51aが形成され、該クラッチ爪51aと対向して前記歯車49にクラッチ爪49aが形成されてフィードチェーンクラッチCL1が構成され、前記摺動体51はバネ52にてクラッチの噛合方向に付勢されて、該摺動体51上にはカム溝53が形成されて、該カム溝53に挿入可能なピン54を挿入した状態で回転すると、摺動体51をクラッチ爪49aから離す方向にカム溝53は切ってあるので、ピン54をカム溝53に挿入すると動力の伝達は断たれるのである。そして、ピン54の入(ピン54が摺動体51から離れた状態)位置と切(ピン54がカム溝53に挿入した状態)位置にそれぞれの位置を検出する為の検知スイッチ33a・33bが配設されているのである。」 (ト)「【0013】該ピン54の他端には図5に示すように、ベルクランクアーム55の一端が枢支され、該ベルクランクアーム55の中央は軸56に枢支され、他端には連結アーム57とバネ58が連結され、該連結アーム57の他端はアーム59中途部に枢支され、該アーム59は軸60を中心に回動可能であり、先端は減速ケース62より突出した回動アーム61に枢支され、該減速ケース62はフィードチェーンクラッチモーターMの出力軸に連結されて、該フィードチェーンクラッチモーターMを駆動させることにより回動アーム61を回動させて、アーム59、連結アーム57、ベルクランクアーム55を介してピン54を挿抜方向に摺動可能としているのである。」 これらの記載事項および特に図1,2,5,6を参照すると、引用例1には、次の発明が記載されているものと認める。かっこ内は対応する引用例1における構成・用語である。 「扱胴(扱胴19)を軸装(内設)した扱室(脱穀室)の側部に穀稈を搬送する穀稈供給搬送装置(搬送装置)を設け、 該穀稈供給搬送装置に続いて、前記扱室の排出側に設けた排藁処理部に脱穀(脱粒)済の排藁(排稈)を挾持搬送する排藁搬送装置(排藁チェーン15)を設け、 前記穀稈供給搬送装置の穀稈供給搬送チェン(フィードチェーン20)は、駆動歯車(スプロケット34)に掛け回し(巻回し)、前記駆動歯車は排出側(フィードチェーン20後部)に設け、該駆動歯車は機体(機体フレーム2)側に設けた伝動ケース(ギアケース45)内の出力軸(フィードチェーン駆動軸47)と固設し、 前記伝動ケースには前記駆動歯車に伝達する回転を入切りさせるクラッチ(フィードチェーンクラッチCL1)を設け、該クラッチはクラッチ用モーター(フィードチェーンクラッチモーターM)により入切りさせるように構成したものにおいて、 前記クラッチ用モーターは前記穀稈供給搬送チェンの搬送移動軌跡よりも排出側で、かつ、前記出力軸および前記伝動ケースに回転を入力する入力プーリー(プーリー44)よりも下方に配置すると共に、 刈取クラッチの入切りに連動させて自動的に前記クラッチを入切りさせるコンバイン。」 (以下、「引用例1発明」という。) 3.対比・判断 本願発明と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明における「固設し」と、本願発明における「着脱自在に嵌合するようにし」とは、「取付けるようにし」で共通するので、両者は、 「扱胴を設けた扱室の側部に穀稈を搬送する穀稈供給搬送装置を設け、 該穀稈供給搬送装置に続いて、前記扱室の排出側に設けた排藁処理部に脱穀済の排藁を挾持搬送する排藁搬送装置を設け、 前記穀稈供給搬送装置の穀稈供給搬送チェンは、駆動歯車に掛け回し、前記駆動歯車は排出側に設け、該駆動歯車は機体側に設けた伝動ケースの出力軸に取付けるようにし、 前記伝動ケースには前記駆動歯車に伝達する回転を入切りさせるクラッチを設け、該クラッチはクラッチ用モーターにより入切りさせるように構成したものにおいて、 前記クラッチ用モーターは前記穀稈供給搬送チェンの搬送移動軌跡よりも排出側に配置すると共に、 刈取クラッチの入り切りに連動させて自動的に前記クラッチを入り切りさせるコンバイン。」 の点で一致し、下記の点で相違している。 相違点1:本願発明では、穀稈供給搬送チェンは、供給側を中心に排出側が外側回動する供給チェンフレームに設けた受動歯車と駆動歯車に掛け回し、該駆動歯車は出力軸と着脱自在に嵌合するようにしたのに対し、 引用例1発明では、穀稈供給搬送チェン(フィードチェーン20)は、駆動歯車(スプロケット34)に掛け回し(巻回し)、該駆動歯車は出力軸(フィードチェーン駆動軸47)と固設した点。 相違点2:本願発明では、クラッチ用モーターは、出力軸および伝動ケースに回転を入力する入力プーリーよりも上方に配置するのに対し、 引用例1発明では、クラッチ用モーター(フィードチェーンクラッチモーターM)は、出力軸(フィードチェーン駆動軸47)および伝動ケース(ギアケース45)に回転を入力する入力プーリー(プーリー44)よりも下方に配置する点。 相違点3:本願発明では、刈取部を上動させるとクラッチを切りにし刈取部を下動させるとクラッチを自動的に入りにするのに対し、 引用例1発明では、そのようになっていない点。 相違点4:本願発明では、エンジンを始動させるときはクラッチを自動的に切りにするのに対し、 引用例1発明では、そのようになっていない点。 相違点5:本願発明では、伝動ケースと駆動歯車との間に略平板形状の巻付防止板を設けたのに対し、 引用例1発明では、そのようになっていない点。 そこで、上記の各相違点につき、以下検討する。 <相違点1について> 穀稈供給搬送チェンを、供給側を中心に排出側が外側回動する供給チェンフレームに設けた受動歯車と駆動歯車に掛け回し、駆動歯車は出力軸と着脱自在に嵌合するようにすることは、周知技術(例えば、査定時に周知例として提示された、特開平5-49336号公報、特開平6-133634号公報等参照。)にすぎず、これらの技術を、引用例1発明に採用することは当業者が容易になし得ることにすぎない。 <相違点2について> 引用例1発明において、クラッチ用モーター(フィードチェーンクラッチモーターM)を、出力軸(フィードチェーン駆動軸47)および伝動ケース(ギアケース45)に回転を入力する入力プーリー(プーリー44)よりも下方に配置したために、駆動歯車(スプロケット34)から落下する藁屑が降り掛かって作動に支障を来すようなら、上方に配置し直す程度のことは、当業者が当然考慮する設計的事項にすぎない。 <相違点3について> 刈取部を上動させるとクラッチを切りにし刈取部を下動させるとクラッチを自動的に入りにする、つまり、刈取部の昇降と穀稈供給搬送チェン(フィードチェーン20)の入り切りとを連動させることは、周知技術(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平4-258217号公報、特開平1-312917号公報等参照。)にすぎず、該技術を引用例1発明に採用することは当業者が容易になし得ることにすぎない。 <相違点4について> エンジンを始動させるときはクラッチを自動的に切りにすることは、周知技術(例えば、実願平2-27082号(実開平3-117422号)のマイクロフィルム等参照。)にすぎず、該技術を、引用例1発明に採用することは当業者が容易になし得ることにすぎない。 <相違点5について> 伝動ケースと駆動歯車との間に略平板形状の巻付防止板を設けることは、周知技術(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された、実願昭55-118393号(実開昭57-41041号)のマイクロフィルム、特開昭61-124316号公報、実願昭57-73668号(実開昭58-176737号)のマイクロフィルム等参照。)にすぎず、該技術を、引用例1発明に採用することは当業者が容易になし得ることにすぎない。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1発明および上記各周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-06-08 |
結審通知日 | 2006-06-19 |
審決日 | 2006-06-30 |
出願番号 | 特願平6-332034 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A01F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山田 昭次 |
特許庁審判長 |
安藤 勝治 |
特許庁審判官 |
西田 秀彦 宮川 哲伸 |
発明の名称 | コンバイン |