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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03G
管理番号 1143146
審判番号 不服2004-9074  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-05-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-30 
確定日 2006-09-07 
事件の表示 平成11年特許願第311301号「利得可変型増幅装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年5月18日出願公開、特開2001-136038〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成11年11月1日の出願であって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年11月13日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
(本願発明)
「減衰回路と、
前記減衰回路の入力側に結合される第1増幅回路と、
前記減衰回路の出力側に結合される第2増幅回路とを備え、
前記減衰回路の減衰量を制御する制御信号を参照して、前記第1増幅回路の増幅量が制御され、
前記第2増幅回路は、増幅量が固定である
利得可変型増幅装置。」

2.引用発明および周知技術
(1)これに対して、原審の拒絶理由に引用された特開平9-36677号公報(以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「【0011】
【課題を解決するための手段】図1は、本発明の可変利得増幅器・減衰器の原理構成を示す図である。図1に示すように、本発明の可変利得増幅器・減衰器は、少なくとも1個の利得が可変な増幅器と、増幅器に直列に接続された少なくとも1個の減衰率が可変な減衰器と、増幅器の利得を変化させる利得制御端子と減衰器の減衰率を変化させる減衰率制御端子とに接続される統合利得制御端子とを備え、統合利得制御端子に印加する電圧を一方に変化させると、増幅器の利得が増加すると共に減衰器の減衰率が減少するように変化し、統合利得制御端子に印加する電圧をもう一方に変化させると、増幅器の利得が減少すると共に減衰器の減衰率が増加するように変化することを特徴とする。
【0012】本発明の可変利得増幅器・減衰器では、統合利得制御端子に印加する電圧の変化に対して増幅器の利得と減衰器の減衰率が同じ方向に変化するように、増幅器の利得制御端子と減衰器の減衰率制御端子とを統合利得制御端子に接続する。増幅率を変化させるために利得制御端子に印加する電圧の変化範囲と、減衰率を変化させるために減衰率制御端子に印加する電圧の範囲がほぼ同じ範囲となるように設定すれば、統合利得制御端子に印加する電圧により、可変利得増幅器・減衰器の利得を最小値から最大値まで変化させることが可能になる。これにより、従来別々であった利得制御端子に印加する電圧と減衰率制御端子に印加する電圧をまとめることができる。」(3頁3欄〜4欄、段落11〜12)
ロ.図1には「減衰率が可変な減衰器32の入力側に、利得が可変な増幅器21と減衰率が可変な減衰器31が結合され、前記減衰器32の出力側に、利得が可変な増幅器22が結合された可変利得増幅器・減衰器」が開示されている。
ハ.図3、図4、図7、図8には、増幅器と減衰器の実施例としての「回路」が開示されている。

上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記2つの「利得が可変な増幅器」はそれぞれ「第1増幅回路」及び「第2増幅回路」を構成しており、それらの増幅量と減衰器(即ち、減衰回路)の減衰量はいずれも「統合利得制御端子に印加する電圧」により制御されるものである。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
(引用発明)
「減衰回路と、
前記減衰回路の入力側に結合される第1増幅回路と、
前記減衰回路の出力側に結合される第2増幅回路とを備え、
前記減衰回路の減衰量と前記第1増幅回路の増幅量は統合利得制御端子に印加する電圧により制御され、
前記第2増幅回路は、増幅量が前記電圧により制御される
可変利得増幅・減衰回路。」

(2)例えば特開平1-101713号公報(以下、「周知例1」という。)には図面とともに以下の事項イが記載されており、また例えば特開平6-291570号公報(以下、「周知例2」という。)には図面とともに以下の事項ロが記載されている。
イ.「〔従来の技術〕
第5図は従来例のブロック図を示す。
図はディジタル多重無線装置に用いられる自動利得制御増幅器(以下,AGC増幅器と省略する)で、例えば70MHz帯の多値直交振幅変調波(以下,多値QAM波と省略する)が入力すると,固定利得の増幅器11で増幅した後,可変減衰器14で減衰し,固定利得の増幅器12,可変減衰器15,固定利得の増幅器13を通して出力する。
この時、出力の一部を検波器16で検波した後,検波出力を抵抗R1,R2を有する直流増幅器11を介してダイオードで構成された可変減衰器14,15に加え,多値QAM波の出力レベルが一定になる様に減衰量が制御される。」(周知例1、2頁左上欄5〜17行目)

ロ.「【0026】図2で示す電子回路装置1bは図1で示す電子回路装置1aの入,出力端に、他のB,C増幅回路2B,2Cとをそれぞれ直接電気的にかつ一体に接続することにより1つの電子回路に構成したものであり、この電子回路装置1bを前記実施例と同様に1つの基板上に形成してMHICやMMIC等の1つの集積回路に構成したものである。
【0027】これによれば、複数の増幅回路2A,2B,2Cを多段に接続しているので、1つの電子回路装置1bの全体としての利得を増大させることができる上に、これらの利得またはその誤差を、入,出力側アッテネータ3,4により減衰させることにより調整して、恰も可変アンプとして機能させることができる。
【0028】図3で示す電子回路装置1cは図1で示す電子回路装置1aの出力側可変アッテネータを省略したものであり、この電子回路装置1cを例えば図4で示すように3段直列に接続して1つの電子回路装置1dに構成してもよく、これによれば、複数の増幅回路2Aを多段に接続しているので、1つの電子回路装置としての利得を増大できる上に、複数の増幅回路2A間に、入力側可変アッテネータ3をそれぞれ介在させることができるので、各増幅回路2Aの利得またはその誤差を各入力側可変アッテネータ3により各段で調整することができるので、段間の発振を防止すること等が可能である。」(周知例2、3頁4欄、段落26〜28)

上記周知例1の構成における「可変減衰器14」と「固定利得の増幅器12」の組合せは、いわゆる「利得可変増幅回路」を構成しており、その増幅量は「可変減衰器15」の減衰量を制御する制御信号を参照して制御されている。また同様に上記周知例2の「入力側可変アッテネータ3」と「増幅回路2A」の組合せも「可変アンプとして機能」するものである。
したがって、例えば上記周知例1、2に開示されているように「可変減衰器と固定利得の増幅器を組合せた利得可変増幅回路の出力に可変減衰器を介して固定利得の増幅器を配置した利得可変多段増幅回路」は周知である。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「可変利得増幅・減衰回路」は、本願発明と同じように減衰回路を組み込んだ可変利得増幅装置であるから、本願発明の「利得可変型増幅装置」と同義である。
また、引用発明の「前記減衰回路の減衰量と前記第1増幅回路の増幅量は統合利得制御端子に印加する電圧により制御され」という構成は、第1増幅回路の増幅量が減衰回路の減衰量と同じ電圧(即ち、制御信号)を参照して制御されるということであるから、引用発明の当該構成と本願発明の「前記減衰回路の減衰量を制御する制御信号を参照して、前記第1増幅回路の増幅量が制御され」という構成の間に実質的な差異はない。
また、本願発明の「前記第2増幅回路は、増幅量が固定である」という構成と引用発明の「前記第2増幅回路は、増幅量が前記電圧により制御される」という構成はいずれも「前記第2増幅回路は、増幅量が所定値に制御される」という構成である点で一致している。
したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「減衰回路と、
前記減衰回路の入力側に結合される第1増幅回路と、
前記減衰回路の出力側に結合される第2増幅回路とを備え、
前記減衰回路の減衰量を制御する制御信号を参照して、前記第1増幅回路の増幅量が制御され、
前記第2増幅器は、増幅量が所定値に制御される
利得可変型増幅装置。」

<相違点>
「増幅量が所定値に制御される」構成に関し、本願発明は「増幅量が固定である」という構成であるのに対し、引用発明は「増幅量が前記電圧により制御される」という構成である点。

4.判断
そこで、上記相違点の「増幅量が所定値に制御される」構成について検討するに、例えば上記周知例1、2に開示されているように「可変減衰器と固定利得の増幅器を組合せた利得可変増幅回路の出力に可変減衰器を介して固定利得の増幅器を配置した利得可変多段増幅回路」は周知であるところ、そもそも利得可変多段増幅回路の最終段を利得固定増幅段とするか利得可変増幅段とするかは単に多段増幅回路全体の増幅率の広狭に関する単なる設計的事項であり、当業者であれば適宜選択し得る事項であるから、引用発明の「増幅量が前記電圧により制御される」という構成を本願発明のような「増幅量が固定である」という構成に変更する程度のことは当業者であれば適宜成し得ることである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-07-05 
結審通知日 2006-07-11 
審決日 2006-07-25 
出願番号 特願平11-311301
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 畑中 博幸  
特許庁審判長 羽鳥 賢一
特許庁審判官 小林 紀和
浜野 友茂
発明の名称 利得可変型増幅装置  
代理人 徳丸 達雄  

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