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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1143160
審判番号 不服2004-25082  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-03-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-09 
確定日 2006-09-07 
事件の表示 特願2000-243511「パチンコ遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月13日出願公開、特開2001- 62069〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.出願の経緯
本願は、平成2年11月22日に出願した特願平2-316172号の一部を平成11年1月18日に新たな特許出願とした特願平11-8918号の一部を平成12年8月11日に特願2000-243511号として新たな特許出願としたものであって、平成16年6月21日付けの拒絶理由通知に対し平成16年9月13日付けで手続補正がなされ、平成16年11月1日付けで拒絶査定がなされ、平成16年12月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成18年3月28日付けで当審より拒絶理由通知がなされ、平成18年5月25日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、平成18年5月25日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される「パチンコ遊技機」にあると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「可動翼片の作動により開閉される大入賞口を有すると共に、前記大入賞口を通じてのみ入球可能とされた入賞空間内に普通入賞口と、特別入賞口と、前記入賞空間内に入ったパチンコ球を前記普通入賞口及び前記特別入賞口のうちの何れかに振り分ける振分部材とを備えた役物ユニットを遊技盤面に備えたパチンコ遊技機において、
前記遊技盤面に、前記役物ユニットとは別に、図柄始動口と、該図柄始動口への入球により複数の図柄を変動して停止する図柄表示器と、パチンコ球が入球困難な状態からパチンコ球が入球しやすい状態に開放する翼片を有した可変入賞装置を具備した入賞口であってパチンコ球の入賞により前記役物ユニットの可動翼片を作動して前記大入賞口を開閉させる可変入賞装置付始動口と、を配設し、
前記役物ユニットの前記振分部材は、パチンコ球が前記特別入賞口に振り分けられる可能性が低い遊技者に不利な第1の姿勢とパチンコ球が前記特別入賞口に振り分けられる可能性が高い遊技者に有利な第2の姿勢とに変換可能であり、
前記図柄始動口にパチンコ球が入球したことを条件として前記図柄表示器の図柄を変動して停止させ、前記図柄表示器の図柄が所定の停止表示態様となった場合に前記可変入賞装置の翼片を動作させて前記可変入賞装置付始動口を開放し、パチンコ球が前記可変入賞装置付始動口に入球したことを条件として前記役物ユニットの可動翼片を動作させて前記大入賞口を開閉させ、前記大入賞口を通過して前記入賞空間内に入ったパチンコ球が、前記特別入賞口に落入した場合に大当りとなり、前記可動翼片の開閉動作を所定回数繰り返す大入賞口の連続開閉動作を開始すると共に、当該大入賞口の連続開閉動作中に、前記振分部材を前記遊技者に不利な第1の姿勢から前記遊技者に有利な第2の姿勢に変換動作させるように遊技制御する遊技制御装置を備えたことを特徴とするパチンコ遊技機。」

3.引用刊行物に記載の発明
当審は、平成18年3月28日付の拒絶理由で、本願発明は、下記の刊行物1乃至刊行物3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨通知した。
刊行物1:特開平2-152482号公報
刊行物2:特開平2-209181号公報
刊行物3:特開平2-156973号公報

(1)刊行物1に記載の発明
i.刊行物1〔特開平2-152482号公報〕には、以下の事項が記載されている。
「パチンコ機の遊技盤1の表面には、第1図に示すように、ガイドレール2で囲んだ遊技部3を形成し、該遊技部3内に無数の障害釘を植設するとともに、風車4…や一般の入賞具5…を配設し、また遊技部3のほぼ中央に変動入賞装置6を配設し、該変動入賞装置6の下方左右に第1特定入賞口7,7を、該第1特定入賞口7,7の中に第2特定入賞口8を並設してあり、第1特定入賞口7,7に入った球が流下する流路に第1特定入賞検出器9,9、第2特定入賞口8に入った球が流下する流路に第2特定入賞検出器10を各々設けてある。変動入賞装置6は、遊技盤1の表面に取付ける基板11に開口部12を開設し、該開口部12の上方の基板11表面に横長な箱状の鎧部13を突設して該鎧部13の上面左右に天入賞口14,14を形成し、鎧部13の前面にはLED等小さな発光源を縦横(例えば、縦7個×横15個)に配置してなり文字や図柄等をスクロール表示可能な表示装置15を設け、開口部12の左右には直立状に起立して流下してきた球が開口部12内に流入することを阻止して遊技者にとって不利となる第1状態と上端を外側に倒してきた球を受け止めて開口部12に流入させて遊技者にとって有利となる第2状態とに変換可能な一対の可動部材16,16を支軸17,17により往復回動自在に軸着し、上記可動部材16,16の軸着基端間に上面に突条18を形成した棚板19を開口部12に向けて僅かに下り傾斜させた状態で突設し、該棚板19の下方の左右にはほぼ直立状に延在して流下してきた球が直接する入賞することを阻止する阻止壁20,20を形成するとともに、左右の阻止壁20,20の下端間隔内に球受枠21を形成してある。また、上記した基板11の裏側にケース22を設けることにより開口部12に連通する凹室23を形成し、該凹室23内には人形状にして装飾性を持たせた貯留部材としての流下方向変更部材24を設けるとともに、該流下方向変更部材24の後方に背景板25を回転可能に設け、凹室23の傾斜底面26の前端縁の左右に形成した貯留段部27,27に臨ませた状態で球跳ね返し部材28,28を前後方向に移動可能に配設し、凹室23の底面26の傾斜下端前方に位置する球受枠21内のほぼ中央に球が入った場合に特別の入賞とする特別入賞口29を突設し、該特別入賞口29の左右の空部を、球が入った場合に普通の入賞とする一般入賞口30,30とし、各一般入賞口30に臨ませて回転体31を設け、凹室23底面26上の左右に案内突条32,32を底面26の傾斜方向に対して斜めに形成し、上記特別入賞口29には特別入賞検出器33を、特別入賞口29に入った球と一般入賞口30,30に入った球を合流して流下する流路には入賞個数検出器34を各々臨ませてある。」(第2頁右上欄第18行〜第3頁左上欄第11行)、
「また、第8図で示すように、駆動受部材47の昇降受片46に第2ソレノイド36のプランジャを下方から臨ませてある。したがって、第2ソレノイド36が消磁した状態では支柱43及び流下方向変更部材24が自重及びコイルスプリング48の付勢により下降して、球停留部42に球を停留可能な状態となっているが、第2ソレノイド36が励磁すると、プランジャが昇降受片46を上昇するので、支柱43及び流下方向変更部材24が支柱43のストッパ53が凹室23の天井面に当接するまで上昇する。したがって、球停留部42に球を停留していた場合には、貯留を解除する状態となって球を流下させる。そして、第2ソレノイド36が消磁すると、支柱43及び流下方向変更部材24が自重及びコイルスプリング48の付勢により下降する。したがって、第2ソレノイド36の励磁・消磁を繰り返すと、人形状の流下方向変更部材24が飛び跳ねているように上下動する。なお、モータ37の作動と第2ソレノイド36の励磁・消磁を同時に行うと、人形状の流下方向変更部材24が支柱43を中心にして左右方向に回動しながら飛び跳ねる。そして、特別入賞口29から上流側に遡った位置で流下方向変更部材24が上昇すると、球停留部42で停留していた球が特別入賞口29に向って流下することとなり、特別入賞口29への入賞確率が高まる。」(第3頁右下欄第12行〜第4頁左上欄第17行)、
「本実施例における変動入賞装置6を用いた特別遊技は、第23図及び第24図のフローチャートに示すように、電気的制御装置63が第1ソレノイド35,35を励磁し、可動部材16,16を所定時間宛所定回数(例えば、0.8秒間宛18回)だけ第1状態から第2状態に変換するとともに、第3ソレノイド57を所定条件が成立するまで略連続励磁して変動入賞装置6の貯留段部27,27内に球が貯留可能な状態とする。そして、可動部材16,16の開閉回数が所定回数(例えば、8回)になると第2ソレノイド36を所定の時間間隔で励磁(例えば、0.5秒間励磁した後 0.3秒間消磁し、その後0.3秒間の励磁 0.9秒間の消磁を反復)して流下方向変更部材24を上下動させる。第3ソレノイド57の所定条件は、適宜に設定することができるが、本例では入賞個数が所定数(例えば、5個)に達することにより達成される。この様な所定条件が達成すると、第3ソレノイド57が所定の時間間隔で励磁・消磁を繰り返して貯留段部27内の球を底面26上に弾き返して特別入賞口29に入るチャンスを与え、また、遊技状態判別手段65が現在の遊技状態を判別して表示データ収納部64内に収納してある第5モードを選択し、変動入賞装置6の表示装置15に『ヤァー』(MV-1)を約2秒間点灯表示する。これら一連の動作を1サイクルとすると、球が特別入賞口29に入ることを条件として予め設定した所定回数(例えば、8回)だけ継続して行うことができ、斯かるサイクル数は変動入賞装置6の表示装置15に可視表示される。なお、当該サイクルにおいて可動部材16,16が第1状態から第2状態に所定回(例えば、18回目)まで変換しても球が特別入賞口29に入らなかったり、入賞個数が所定数(例えば、10個)以上に達しても球が特別入賞口29に入らなかった場合には、これら中止条件の成立により、残りサイクル数に拘らず当該サイクルで特別遊技が終了する。」(第6頁右下欄第20行〜第7頁右上欄第17行)、
「本実施例では一般入賞口30,30に球が5個以上入っても今だ特別入賞口29に球が入らない場合に球跳ね返し部材28を作動するように設定してあるので、入賞個数表示器の表示が「5」に達すると球跳ね返し部材28の作動によって弾き返された球により特別入賞口29に入る確率が高められる。」(第8頁左上欄第1〜7行)。

ii.刊行物1には、前記摘示の記載及び図面によれば、以下の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「可動部材16の作動により開閉される開口部12を有すると共に、前記開口部12を通じてのみ入球可能とされた入賞空間内に一般入賞口30と、特別入賞口29と、前記入賞空間内に入ったパチンコ球を前記一般入賞口30及び前記特別入賞口29のうちの何れかに振り分ける球跳ね返し部材28とを備えた変動入賞装置6を遊技盤1面に備えたパチンコ機において、
前記遊技盤1面に、前記変動入賞装置6とは別に、入賞口であってパチンコ球の入賞により前記変動入賞装置6の可動部材16を作動して前記開口部12を開閉させる第1特定入賞口7及び第2特定入賞口8と、を配設し、 前記変動入賞装置6の前記球跳ね返し部材28は、パチンコ球が前記特別入賞口29に入る確率が低い貯留段部27内に球が貯留可能な第1の状態と、パチンコ球が前記特別入賞口29に入る確率が高い貯留段部27内に貯留されていた球を弾き返して特別入賞口29に入るチャンスを与える第2の状態とに変換可能であり、
パチンコ球が前記第1特定入賞口7及び第2特定入賞口8に入球したことを条件として前記変動入賞装置6の可動部材16を動作させて前記開口部12を開閉させ、前記開口部12を通過して前記入賞空間内に入ったパチンコ球が、前記特別入賞口29に落入した場合に特別遊技となり、前記可動部材16の開閉動作を所定回数繰り返す開口部12の連続開閉動作を開始すると共に、当該開口部12の連続開閉動作中に、前記球跳ね返し部材28をパチンコ球が前記特別入賞口29に入る確率が低い第1の状態と、パチンコ球が前記特別入賞口29に入る確率が高い第2の状態に変換動作させるように遊技制御する遊技制御装置を備えるパチンコ機。」

(2)刊行物2に記載の発明
i.刊行物2〔特開平2-209181号公報〕には、以下の事項が記載されている。
「図外の電源スイッチ操作によりパチンコ遊技機に電気が供給された初期状態においては、特別変動入賞装置30の可動片31,31は遊技球が1個分流入可能な状態に閉じ、変動入賞装置50の開閉扉51と左右の可動部材52,52は閉じた状態にある。そして、可変表示装置20の可変表示器240の表示は、常時は停止した状態にある。このような状態にあるときに、後述の打球発射装置によって、遊技領域2内に遊技球が発射され、その遊技球が始動入賞装置4に入賞すると、その入賞ごとに、始動入賞装置4に設置された始動入賞検出器4a(SW1またはSW2)に検出される。その検出信号に基づいて、可変表示装置20の可変表示器240の3つの表示部241,242,243の表示が所定時間変化された後停止されるゲームが行なわれる。そのゲームの結果、可変表示器240の可変表示装置241,242,243の表示が偶発的に特定の表示態様(この実施例の場合、「09,9」、「19,9」、「29,9」)で停止したときには、予備遊技の権利が発生して特別変動入賞装置30の判定表示装置370の「×」表示が点灯する。そして、その予備遊技として、特別変動入賞装置30の可動部材31,31が一定時間(この実施例の場合、2秒間)開状態となる。この予備遊技が行われているときに、特別変動入賞装置30に遊技球が入賞しなかったときには、可動部材31,31が閉じるとともに「×」表示が消えて、再び通常の遊技状態に戻り、入賞したときには前記判定表示装置370の「○」表示が点灯して可動部材31,31が閉じて特別遊技の権利が発生し、その権利に基づいて特別遊技が行なわれる。ここに、特別遊技とは、変動入賞装置50が可変表示装置20によるゲーム結果として表示された時間だけ入賞し易い状態に変換して遊技者に多くの昇給獲得のチャンスを与える遊技態様で、この実施例ではその状態を複数サイクル繰り返すようになっていて、その第1サイクル目はその特別遊技の権利の発生時にその可変表示器240に停止表示として示されている時間だけ、変動入賞装置50の開閉扉511と左右の可動部材514,514を開状態にさせ、第2サイクル目以降は各サイクルの開始前に始動入賞装置4への入賞に基づいて可変表示装置20の表示を変化させた後停止させて、その停止表示に示される時間だけ変動入賞装置50の開閉扉511と左右の可動部材514,514を開状態にさせるサイクルを繰り返し、打止め又は後述の権利消滅条件が成立するまで行なうようになっている。ただし、各サイクル中、変動入賞装置50の開かれた入賞口511中に入賞した遊技球の個数はその入賞口の流路に設置された入賞個数検出器562(SW3)により検出されていて、その検出個数が「10個」になると、その時点で、開閉扉511と左右の可動部材52,52が閉じてそのサイクルが終了するようになっている。」(第3頁左上欄第5行〜右下欄第1行)、
「特別変動入賞装置30は、第9図の分解斜視図および第10図の縦断側面図に示すように、遊技盤1の盤面の開口部1b(第10図)に取り付けられる構成基枠330と、該構成基枠330の前面側に取り付けられる前枠320と該前枠320に開閉自在に設置される一対の可動部材31,31と、これら一対の可動部材31,31に開閉力を伝達する開閉力伝達部材340と、該開閉力伝達部材340に駆動力を付与するソレノイド350とを備えている。・・・この基枠330の上部には入賞用開口部331が設けられ、下部には放射熱用開口部332が設けられている。また、この基枠330の後部には前記入賞用開口部331中に流入した入賞球を遊技盤1の裏側へ導く案内樋を兼ねた後枠333が後方に突出した状態で一体に設けられている。」(第7頁右上欄第17行〜右下欄第3行)、
「第16図には、上記のように構成されたパチンコ遊技機に設置された役物制御装置906の制御ブロック図の一例を示す。」(第10頁右上欄第14〜16行)。
ii.刊行物2には、前記摘示の記載及び図面によれば、以下の発明(以下、「刊行物2記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「開閉扉513及び案内部材514の作動により開閉される比較的大型の入賞口511を有すると共に、前記入賞口511を通じてのみ入球可能とされた入賞空間を備えた変動入賞装置50を遊技盤面に備えたパチンコ遊技機において、
前記遊技盤1面に、前記変動入賞装置50とは別に、始動入賞口4と、該始動入賞口4への入球により複数の図柄を変動して停止する可変表示器240と、パチンコ球が入球困難な状態からパチンコ球が入球しやすい状態に開放する可動部材31を有した特別変動入賞装置30を具備した入賞用開口部331であってパチンコ球の入賞により前記変動入賞装置50の開閉扉513及び案内部材514を作動して前記入賞口511を開閉させる特別変動入賞装置30付きの入賞用開口部331と、を配設し、
前記始動入賞口4にパチンコ球が入球したことを条件として前記可変表示器240の図柄を変動して停止させ、前記可変表示器240の図柄が所定の停止表示態様となった場合に前記特別変動入賞装置30の可動部材31を動作させて前記特別変動入賞装置30付きの入賞用開口部331を開放し、パチンコ球が前記特別変動入賞装置30付きの入賞用開口部331に入球したことを条件として前記変動入賞装置50の開閉扉513及び案内部材514を動作させて前記入賞口511を開閉させるように遊技制御する役物制御装置960を備えるパチンコ遊技機。」

i.刊行物3〔特開平2-156973号公報〕には、以下の事項が記載されている。
「上記の始動口を形成する可変入賞装置3L、3C及び3Rは、例えば第3図に示すように構成される。まず、遊技盤の正面側に一対の円弧状に湾曲した可動片42a、42bが回動自在に配置され、その下部はカバー部材43で覆われる。この可変入賞装置は、一対の可動片42a、42bが第3図(A)に示すように閉じたとき遊技球が入賞できない第1状態となり、第3図(B)に示すように開いたとき遊技球が入賞できる第2状態となる。」(第4頁左上欄第18行〜右上欄第7行)、
「まず、大入賞装置4は第4図に示すように構成される。すなわち、遊技盤の正面側に一対の翼片21a、21bが開閉自在に配置され、その間に遊技球(入賞球)の通過を検出するセンサ22と入賞口23か配置される。このセンサ22と入賞口23は適当なカバー部材で覆われる。大入賞装置4は、一対の翼片21a、21bが第1図のように閉じることで遊技球が入賞できない第1状態となり、一対の翼片21a、21bが左右に開いたとき、遊技球がセンサ22を通って入賞口23に入賞できる第2状態となる。入賞口23に入る遊技球はセンサ22で検出され、その検出信号に応じて、パチンコ遊技機に組み込まれた公知の賞球払出し装置が所定個数(例えば13個)の賞品球を払い出す。」(第5頁右上欄第2〜16行)、
「また、遊技球が始動口に大賞することによって大賞球カウンタ35が所定値になると(その値が1の場合は遊技球が入賞すると)、制御部33は駆動部38に大入賞装置4のソレノイド44を駆動する信号を送り、一対の翼片21a、21bの開閉による別遊技を開始させる。翼片の開閉動作(1回)は、入賞口23に遊技球が所定個数(例えば10個)大賞するまで行なわれる。遊技球が入賞口23に大賞する毎に、制御部33は賞球払出し装置(図示省略)に信号を送り、所定個数(例えば13個)の賞品球を払い出させる。一方、始動口への大賞と共に乱数発生部31で発生した第2の乱数値を判定部32で判定する。その結果、第2の乱数の値が予め定めた数に当った場合には、別遊技を継続させること(大当り)になる、この別遊技継続の確率は、次のように定められる。例えば、乱数の発生する範囲を1〜4096とした場合、継続になる第2の乱数値の範囲を1001〜1082とすれば、継続の確率は約50分の1となる。第2の乱数値の判定結果として、継続に当らなかった場合には、大入賞装置4の一対の翼片の開閉動作は1回、すなわち入賞口23に所定個数(例えば10個)の遊技球が入賞した時点で終了する。これに対し、別遊技が継続となった場合には、大入賞装置4の一対の翼片の開閉動作を所定回数(例えば8回)行なう、この場合、制御部33は、センサ22が遊技球の通過を検出した時点で表示器5の循環点灯を上部中央の発光体5cにて停止させる信号を駆動部38に送る。更に、継続される各動作毎に入賞口23に受け入れる遊技球の個数(入賞可能数)を乱数で決める。そのため、次の回の継続動作が始まる前に、乱数発生部31で発生した第3の乱数の値を判定部32で判定し、その結果により、次回の継続動作で入賞口23に受はけれる遊技球の個数を設定する。」(第6頁右下欄第1行〜第7頁左上欄第17行)。

ii.刊行物3には、前記摘示の記載及び図面によれば、以下の発明(以下、「刊行物3記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「翼片21a、21bの作動により開閉される大入賞口を有すると共に、前記大入賞口を通じてのみ入球可能とされた入賞空間内に入賞口23を備えた別遊技を行なう大入賞装置4を遊技盤面2に備えた弾球遊技機において、 前記遊技盤面2に、前記大入賞装置4とは別に、パチンコ球が入球困難な状態からパチンコ球が入球しやすい状態に開放する可動片42a、42bを有し、パチンコ球の入賞により前記大入賞装置4の翼片21a、21bを作動して前記大入賞口を開閉させる、始動口としての可変入賞装置3L、3C、3R、を配設し、
パチンコ球が前記可変入賞装置3L、3C、3Rに入球したことを条件として前記大入賞装置4の翼片21a、21bを動作させて前記大入賞口を開閉させるように遊技制御する電気回路部を備える弾球遊技機。」

4.対比判断
(1)対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、 刊行物1記載の発明の「可動部材16」、「開口部12」、「一般入賞口30」、「特別入賞口29」、「球跳ね返し部材28」、「変動入賞装置6」、「第1特定入賞口7及び第2特定入賞口8」、「特別遊技」、「パチンコ機」は、それぞれ、本願発明の「可動翼片」、「大入賞口」、「普通入賞口」、「特定入賞口」、「振分部材」、「役物ユニット」、「始動口」、「大当り」、「パチンコ遊技機」に相当する。
また、刊行物1記載の発明の「パチンコ球が特別入賞口29に入る確率が低い貯留段部27内に球が貯留可能な第1の状態」及び「パチンコ球が特別入賞口29に入る確率が高い貯留段部27内に貯留されていた球を弾き返して特別入賞口29に入るチャンスを与える第2の状態」は、それぞれ、本願発明の「パチンコ球が前記特別入賞口に振り分けられる可能性が低い遊技者に不利な第1の姿勢」及び「パチンコ球が前記特別入賞口に振り分けられる可能性が高い遊技者に有利な第2の姿勢」に相当する。
そうすると、本願発明と刊行物1記載の発明とは、以下の点でそれぞれ、一致ならびに相違するものと認められる。
一致点「可動翼片の作動により開閉される大入賞口を有すると共に、前記大入賞口を通じてのみ入球可能とされた入賞空間内に普通入賞口と、特別入賞口と、前記入賞空間内に入ったパチンコ球を前記普通入賞口及び前記特別入賞口のうちの何れかに振り分ける振分部材とを備えた役物ユニットを遊技盤面に備えたパチンコ遊技機において、
前記遊技盤面に、前記役物ユニットとは別に、パチンコ球の入賞により前記役物ユニットの可動翼片を作動して前記大入賞口を開閉させる始動口を配設し、
前記役物ユニットの前記振分部材は、パチンコ球が前記特別入賞口に振り分けられる可能性が低い遊技者に不利な第1の姿勢とパチンコ球が前記特別入賞口に振り分けられる可能性が高い遊技者に有利な第2の姿勢とに変換可能であり、
パチンコ球が前記始動口に入球したことを条件として前記役物ユニットの可動翼片を動作させて前記大入賞口を開閉させ、前記大入賞口を通過して前記入賞空間内に入ったパチンコ球が、前記特別入賞口に落入した場合に大当りとなり、前記可動翼片の開閉動作を所定回数繰り返す大入賞口の連続開閉動作を開始すると共に、当該大入賞口の連続開閉動作中に、前記振分部材を前記遊技者に不利な第1の姿勢から前記遊技者に有利な第2の姿勢に変換動作させるように遊技制御する遊技制御装置を備えたパチンコ遊技機。」
相違点.本願発明は、遊技盤面に、役物ユニットとは別に、図柄始動口と、該図柄始動口への入球により複数の図柄を変動して停止する図柄表示器と、パチンコ球が入球困難な状態からパチンコ球が入球しやすい状態に開放する翼片を有した可変入賞装置を具備した入賞口であってパチンコ球の入賞により前記役物ユニットの可動翼片を作動して前記大入賞口を開閉させる可変入賞装置付始動口と、を配設し、前記図柄始動口にパチンコ球が入球したことを条件として前記図柄表示器の図柄を変動して停止させ、前記図柄表示器の図柄が所定の停止表示態様となった場合に前記可変入賞装置の翼片を動作させて前記可変入賞装置付始動口を開放し、パチンコ球が前記可変入賞装置付始動口に入球したことを条件として前記役物ユニットの可動翼片を動作させて前記大入賞口を開閉させるように遊技制御する遊技制御装置を備えた構成であるのに対して、刊行物1記載の発明では、遊技盤面に、前記役物ユニットとは別に、パチンコ球の入賞により前記役物ユニットの可動翼片を作動して前記大入賞口を開閉させる始動口を配設し、パチンコ球が前記始動口に入球したことを条件として前記役物ユニットの可動翼片を動作させて前記大入賞口を開閉させるように遊技制御する遊技制御装置を備える点。

(2)相違点の検討
i.本願発明と刊行物2記載の発明とを対比すると、刊行物2記載の発明の「始動入賞口4」、「可変表示器240」、「可動部材31」、「特別変動入賞装置30」、「入賞用開口部331」、「開閉扉513及び案内部材514」、「比較的大型の入賞口511」、「特別変動入賞装置30付きの入賞用開口部331」、「役物制御装置960」は、それぞれ、本願発明の「図柄始動口」、「図柄表示器」、「翼片」、「可変入賞装置」、「入賞口」、「可動翼片」、「大入賞口」、「可変入賞装置付始動口」、「遊技制御装置」に相当する。
すなわち、刊行物2記載の発明の「可変表示器240」及び「特別変動入賞装置30」は、パチンコ球が入球したことを条件として可動翼片を動作させて大入賞口を開閉させる契機となる役割を果たす点で、本願発明の「図柄表示器」及び「可変入賞装置」に相当するとともに、刊行物2記載の発明の「変動入賞装置50」は、「可動翼片の作動によって開閉される大入賞口を備えた入賞装置」である点で、本願発明の「役物ユニット」と共通しているものである。
ii.一方、パチンコ遊技機において、遊技が単純だと遊技者に飽きられてしまうので、遊技をより複雑にして面白くするようにすることは、周知の課題であり、刊行物3記載の発明には、パチンコ球が入球困難な状態からパチンコ球が入球しやすい状態に開放する可動片42a、42b(本願発明の「可動翼片」に相当する。以下、同様。)を有し、パチンコ球の入賞(入球)により大入賞装置4(役物ユニット)の翼片21a、21b(可動翼片)を作動して大入賞口を開閉させる、始動口としての可変入賞装置3L、3C、3R(可変入賞装置)を配設した弾球遊技機(パチンコ遊技機)の発明が開示されている。
iii.そうすると、前記刊行物3記載の発明及び前記周知の課題を参酌すると、役物ユニットの可動翼片を作動して大入賞口を開閉させる始動構成として、刊行物1記載の発明に示される非可変の始動口を配設する構成に代えて、刊行物2記載の発明に示される、図柄始動口と図柄表示器と可変入賞装置付始動口とからなる構成を採用して、前記相違点に係る本願発明のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
iv.請求人は、本願発明の「可変入賞装置」は、大当たり機能を有さず役物ユニットにて大当りか否かが決定されるものであるのに対して、刊行物2記載の発明の「特別変動入賞装置30」は、「大当りを発生させる」ことに主たる機能を有し、「大入賞口の開放の契機とする」ことに従たる機能を有するものであるから、その従たる機能だけを取り出すことは容易でない旨主張しているが、大当りか否かを決定する役物ユニットの前段に該役物ユニットの大入賞口を開閉する可動翼片を作動させる入賞装置付始動口を配設する構成については、既に刊行物1記載の発明に開示されているところであり、該役物ユニットの可動翼片を作動させる始動口の構成として、例えば刊行物2又は3記載の発明の示される可変式の始動口を採用する程度のことは、当業者の単なる設計的事項にすぎないというべきである。
v.また、本願発明の作用効果は、刊行物1乃至3記載の発明に基づいて当業者が容易に予測できるものである。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1乃至3記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する
 
審理終結日 2006-07-10 
結審通知日 2006-07-11 
審決日 2006-07-25 
出願番号 特願2000-243511(P2000-243511)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 林 晴男
辻野 安人
発明の名称 パチンコ遊技機  
代理人 今崎 一司  

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