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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 B41C |
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管理番号 | 1143204 |
異議申立番号 | 異議2003-72629 |
総通号数 | 82 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2001-07-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-10-28 |
確定日 | 2006-03-22 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3400763号「製版印刷装置および製版印刷システム」の請求項1ないし3、5、6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3400763号の請求項1、2、4に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許出願 平成12年1月20日 特許権設定登録 平成15年2月21日 特許異議申立て(申立人:受野 博、請求項1〜3、5、6に係る 特許に対して) 平成15年10月28日 取消理由通知 平成16年1月15日付け 訂正請求 平成16年3月25日 2.訂正の適否 (1) 訂正の内容(訂正箇所にはアンダーラインを付している。) [訂正事項a] 特許査定時の特許請求の範囲の記載 「【請求項1】 画像データを孔版原紙に対して製版可能な製版データに変換処理し、この変換処理された製版データに基づいて前記孔版原紙を製版し、この製版された孔版原紙を用いて印刷用紙に印刷する製版印刷装置において、 前記変換処理された前記製版データを再製版データとして保持するデータ保持部を備えたことを特徴とする製版印刷装置。 【請求項2】 原稿の画像を読み取る画像読取部と、該画像読取部が読み取った画像データを孔版原紙に対して製版可能な製版データに変換処理する画像処理部と、該画像処理部からの製版データの画像に応じた感熱穿孔を前記孔版原紙に施す画像書込部と、該画像書込部によって製版された前記孔版原紙を用いて印刷用紙に印刷する印刷部とを備えた製版印刷装置において、 前記製版データによる前記孔版原紙への製版動作と並行して該製版動作時の前記製版データを再製版データとして保持するデータ保持部を備えたことを特徴とする製版印刷装置。 【請求項3】 装置本体に設けられた操作パネル部からの再製版動作の指示入力によって前記データ保持部に保持された再製版データを読み出して製版を実行させる制御部を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の製版印刷装置。 【請求項4】 前記制御部は、印刷動作が開始され累積印刷枚数が予め設定された制限枚数の整数倍に達する毎に、前記データ保持部に保持された再製版データによる製版を実行させることを特徴とする請求項3記載の製版印刷装置。 【請求項5】 画像データを編集出力するデータ編集装置と、該データ編集装置から出力された画像データを孔版原紙に対して製版可能な製版データに展開するデータ展開装置とを備え、該データ展開装置によって展開された製版データに基づいて前記孔版原紙を製版し、この製版された孔版原紙を用いて印刷用紙に印刷する製版印刷システムにおいて、 前記展開された製版データを再製版データとして保持するデータ保持部を備えたことを特徴とする製版印刷システム。 【請求項6】 装置本体に設けられた操作パネル部からの再製版動作の指示入力に基づき、前記データ保持部に保持された再製版データを読み出して製版を実行させる制御部を備えたことを特徴とする請求項5記載の製版印刷システム。 【請求項7】 前記制御部は、印刷動作が開始され累積印刷枚数が予め設定された制限枚数の整数倍に達する毎に、前記データ保持部に保持された再製版データによる製版を実行させることを特徴とする請求項6記載の製版印刷システム。」を、 「【請求項1】 画像データを孔版原紙に対して製版可能な製版データに変換処理し、この変換処理された製版データに基づいて前記孔版原紙を製版し、この製版された孔版原紙を用いて印刷用紙に印刷する製版印刷装置において、 前記変換処理された前記製版データを再製版データとして保持するデータ保持部を備え、装置本体に設けられた操作パネル部からの再製版動作の指示入力に基づき前記データ保持部に保持された再製版データを読み出して製版を実行させる制御部を備えたことを特徴とする製版印刷装置。 【請求項2】 原稿の画像を読み取る画像読取部と、該画像読取部が読み取った画像データを孔版原紙に対して製版可能な製版データに変換処理する画像処理部と、該画像処理部からの製版データの画像に応じた感熱穿孔を前記孔版原紙に施す画像書込部と、該画像書込部によって製版された前記孔版原紙を用いて印刷用紙に印刷する印刷部とを備えた製版印刷装置において、 前記製版データによる前記孔版原紙への製版動作と並行して該製版動作時の前記製版データを再製版データとして保持するデータ保持部を備え、装置本体に設けられた操作パネル部からの再製版動作の指示入力によって前記データ保持部に保持された再製版データを読み出して製版を実行させる制御部を備えたことを特徴とする製版印刷装置。 【請求項3】 前記制御部は、印刷動作が開始され累積印刷枚数が予め設定された制限枚数の整数倍に達する毎に、前記データ保持部に保持された再製版データによる製版を実行させることを特徴とする請求項1又は2記載の製版印刷装置。 【請求項4】 画像データを編集出力するデータ編集装置と、該データ編集装置から出力された画像データを孔版原紙に対して製版可能な製版データに展開するデータ展開装置とを備え、該データ展開装置によって展開された製版データに基づいて前記孔版原紙を製版し、この製版された孔版原紙を用いて印刷用紙に印刷する製版印刷システムにおいて、 前記展開された製版データを再製版データとして保持するデータ保持部を備え、装置本体に設けられた操作パネル部からの再製版動作の指示入力に基づき前記データ保持部に保持された再製版データを読み出して製版を実行させる制御部を備えたことを特徴とする製版印刷システム。 【請求項5】 前記制御部は、印刷動作が開始され累積印刷枚数が予め設定された制限枚数の整数倍に達する毎に、前記データ保持部に保持された再製版データによる製版を実行させることを特徴とする請求項4記載の製版印刷システム。」と訂正する。 [訂正事項b] 特許査定時の本件特許明細書の発明の詳細な説明中の段落【0014】の欄の末尾の「…備えたことを特徴とする。」を、 「…備え、装置本体に設けられた操作パネル部からの再製版動作の指示入力によって前記データ保持部に保持された再製版データを読み出して製版を実行させる制御部を備えたことを特徴とする。」と訂正する。 [訂正事項c] 同明細書の発明の詳細な説明中の段落【0015】の欄の末尾の「…備えたことを特徴とする。」を、 「…備えている。」と訂正する。 [訂正事項d] 同明細書の発明の詳細な説明中の段落【0016】の欄の頭部の「請求項3の発明は、請求項1又は2の製版印刷装置において、装置本体…」を、 「さらに、装置本体…」と訂正する。 [訂正事項e] 同明細書の発明の詳細な説明中の段落【0017】の欄の頭部の「請求項4の発明は、請求項3の製版印刷装置において、…」を、 「請求項3の発明は、請求項1又は2の製版印刷装置において、…」と訂正する。 [訂正事項f] 同明細書の発明の詳細な説明中の段落【0018】の欄の頭部の「請求項5の発明は、…」を、 「請求項4の発明は、…」と訂正する。 [訂正事項g] 同明細書の発明の詳細な説明中の段落【0018】の欄の末尾の「…備えたことを特徴とする。」を、 「…備えている。」と訂正する。 [訂正事項h] 同明細書の発明の詳細な説明中の段落【0019】の欄の頭部の「請求項6の発明は、請求項5の製版印刷システムにおいて、装置本体…」を、 「さらに、装置本体…」と訂正する。 [訂正事項i] 同明細書の発明の詳細な説明中の段落【0020】の欄の頭部の「請求項7の発明は、請求項6の製版印刷システムにおいて、…」を、 「請求項5の発明は、請求項4の製版印刷システムにおいて、…」と訂正する。 (2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・ 変更の存否 (訂正事項aについて) 当該訂正事項における訂正後の請求項1及び請求項2に追加特定された 「装置本体に設けられた操作パネル部からの再製版動作の指示入力によって前記データ保持部に保持された再製版データを読み出して製版を実行させる制御部を備え」たこと は、訂正前の請求項3に記載されていた技術的事項であるとともに、特許査定時の本件特許明細書の段落【0061】に記載されている「印刷動作中に、強制的に再製版動作を実行する場合」の処理の記載に裏付けられたものである。 したがって、当該訂正事項における請求項1或いは請求項2に係る訂正内容は、訂正前の請求項1或いは請求項2に訂正前の請求項3の構成要件を追加して減縮したもの(或いは訂正前の請求項1及び請求項2を削除して、同請求項1或いは請求項2を引用していた訂正前の請求項3をこれら請求項1或いは請求項2を引用することなく記載したものとも解し得る。)であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当する。 次に、当該訂正事項における訂正後の請求項3は、訂正前の請求項3に記載されていた技術的事項を訂正後の請求項1及び請求項2に追加特定することで、訂正前の請求項3が実質的に削除されたことに伴い、訂正前の請求項4を繰り上げて訂正後の請求項3としたものである。 ここで、訂正前の請求項4は、訂正前の請求項3を引用し、当該請求項3は同じく訂正前の請求項1及び請求項2を引用していたものであるから、訂正後の請求項3は、訂正前の請求項4とその特定する発明の内容に実質的な変更はない。 よって、当該訂正事項における請求項3に係る訂正内容は、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当する。 当該訂正事項における訂正後の請求項4に追加特定された 「装置本体に設けられた操作パネル部からの再製版動作の指示入力によって前記データ保持部に保持された再製版データを読み出して製版を実行させる制御部を備え」たこと は、請求項6に記載されていた技術的事項であるとともに、特許査定時の本件特許明細書の段落【0061】に記載されている「印刷動作中に、強制的に再製版動作を実行する場合」の処理の記載に裏付けられたものである。 したがって、当該訂正事項における請求項4に係る訂正内容は、訂正前の請求項5に訂正前の請求項6の構成要件を追加して減縮したもの(或いは訂正前の請求項5を削除して、同請求項5を引用していた訂正前の請求項6を請求項5を引用することなく記載したものとも解し得る。)であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当する。 次に、当該訂正事項における訂正後の請求項5は、訂正前の請求項6に記載されていた技術的事項を訂正後の請求項4に追加特定することで、訂正前の請求項6を実質的に削除したことに伴い、訂正前の請求項7を繰り上げて訂正後の請求項5としたものである。 ここで、訂正前の請求項7は、訂正前の請求項6を引用し、当該請求項6は同じく訂正前の請求項5を引用していたものであるから、訂正後の請求項5は、訂正前の請求項7とその特定する発明の内容に実質的な変更はない。 よって、当該訂正事項における請求項3に係る訂正内容は、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当する。 そして、前記で検討したように、当該訂正事項は、明細書に記載した事項の範囲内の訂正であって、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 (訂正事項b〜iについて) 当該訂正事項は、前記訂正事項aによる特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正、及び明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に伴い、特許査定時の本件特許明細書の発明の詳細な説明の欄の記載を、訂正された特許請求の範囲の記載に合わせて訂正するものであって、不明瞭な記載の釈明を目的とする訂正に該当する。 また、当該訂正事項は、明細書に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 (3) むすび 以上において、訂正後の請求項3あるいは請求項5について、また、異議申立てがされていない訂正前の請求項4あるいは請求項7については、その請求項番号を繰り上げると共に引用する請求項番号が改められたが、訂正前の引用関係を変更するものではなく、実質的訂正を行ったものではないから、平成15年改正前特許法第120条の4第3項において読み替えられる同法第126条第4項の独立特許要件の判断ができない。 よって、上記訂正は、平成15年改正前特許法第120条の4第2項及び第3項で準用する同法第126条第2、3項の規定に適合するので、この訂正を認める。 3.特許異議の申立て及び当審の取消理由通知の概要 3-1 異議申立人:受野 博(以下、「異議申立人」という。)の 主張する取消理由 異議申立人は、証拠として以下の甲第1号証〜甲第9号証を提出して、取消理由1及び2を主張している。 甲第1号証:特願平11-150362号に係る願書に最初に添付した明細書又は図面が記載されている文献としての特開2000-334919号公報(以下、「先願明細書1」という。) 甲第2号証:特開平8-142300号公報 甲第3号証:特開平7-319757号公報 甲第4号証:特開平6-311350号公報 甲第5号証:特開平5-162431号公報 甲第6号証:特開平9-57938号公報 甲第7号証:特開平8-258390号公報 甲第8号証:特開平11-34464号公報 甲第9号証:特開平10-63444号公報 (1) 取消理由1 本件請求項1に係る発明は、その出願日前の出願であって、その出願後に出願公開された上記先願明細書1に記載された発明と同一であると認められ、しかも、本件請求項1に係る発明の発明者が上記先願明細書1に記載された発明の発明者と同一であるとも、本件出願の時において、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、請求項1に係る発明の特許は特許法第29条の2第1項の規定に違反してなされたものである。 (2) 取消理由2 本件請求項1乃至請求項3、請求項5、請求項6に係る発明は、甲第2号証乃至甲第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1乃至請求項3、請求項5、請求項6に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである、旨の主張をしている。 3-2 当審における取消理由通知 当審では、前記異議申立人が主張する取消理由1及び2と同趣旨の取消理由通知を平成16年1月15日付けで行った。 4.本件発明 異議申立てがなされた本件特許第3400763号の請求項は訂正前の請求項1ないし3、5、6であるが、前記「2.訂正の適否」で検討したように訂正を認めたことで、訂正前の請求項1、2は訂正後の請求項1、2となり、訂正前の請求項5は訂正後の請求項4となり、訂正前の請求項3及び6は削除されたので、異議申立てがなされた請求項は請求項1、2及び4が対応することとなる。 そして、本件特許第3400763号の請求項1、2及び4に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」、「本件発明2」及び「本件発明4」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2及び、4に記載された事項により特定される通りのものである(前記「2.訂正の適否」における「(1) 訂正の内容」の「[訂正事項a]」を参照。)。 5.甲号各証の記載事項 (1) 甲第2号証:特開平8-142300号公報 [記載事項ア] 甲2の1頁の【構成】、段落【0045】及び【図1】には、孔版印刷装置において、読取部(1)で画像データを取り込み、アナログ処理部(2)においてA/D変換された画像データから、制御部(100)において孔版印刷装置におけるイメージデータを生成し、該イメージデータに基づき、孔版印刷用原紙(70)に製版する構成が記載されている。 [記載事項イ] そして、段落【0002】及び【0003】には、孔版式の製版装置において、原稿画像を読み取って得た画像データを「二値画像」に変換し、該二値画像データに基づき、サーマルヘッドにより孔版印刷用原紙に溶解穿孔して製版する構成が記載されている。 [記載事項ウ] また、段落【0028】には、【図5】を参照しつつ、実施例で想定されている孔版式の製版印刷装置(60)が、孔版印刷用原紙(70)の溶剤可溶性樹脂層(71)を溶剤で溶解して製版する機能と、製版された前記孔版印刷用原紙(70)を用いて孔版印刷する機能とを備えていることが記載されており、段落【0038】〜【0041】では、制御手段(100)が、孔版印刷用原紙(70)の製版を行うとともに、製版以外の動作、例えば孔版印刷用原紙(70)を版胴(91)に巻装する動作や、製版後の印刷動作、さらに印刷後の排版動作を制御する機能を備えても良いことが記載されている。 ここで、実施例で想定されている孔版式の製版印刷装置(60)では、製版された前記孔版印刷用原紙(70)を用いて孔版印刷する機能を備える以上は、この機能を実現する孔版製版する製版部及び印刷用紙に印刷する印刷部を当然に備えているといえる。 また、前記記載事項イは、従来の技術に係る記載であり、前記記載事項ウは、甲2における本発明の実施例に係る記載であるが、当該甲2の各請求項記載を参照するに、従来技術であるところの製版手段としてサーマルヘッド方式を採用するものを排除するところはないので、記載事項ウに係る製版機能について、「溶剤可溶性樹脂層(71)を溶剤で溶解して」とする点を除いた記載が、製版手段としてサーマルヘッド方式を採用したものにおいても妥当するといえる。 してみれば、甲2には、以下の構成が記載されている。 「画像データを読み取る読取部(1)と、 該読取部(1)が読み取られ、アナログ処理部(2)においてA/D変換された画像データから孔版印刷装置におけるイメージデータを生成する制御部(100)と、 該制御部(100)からのイメージデータに基づき、孔版印刷用原紙に溶解穿孔を行うサーマルヘッドを有する製版部と、 該サーマルヘッドを有する製版部によって製版された前記孔版印刷用原紙を用いて印刷用紙に印刷する印刷部とを備えた製版印刷装置。」(以下、「甲2記載の発明」という。) (2) 甲第3号証:特開平7-319757号公報 [記載事項エ] 甲3の段落【0002】には、デジタル複写機やプリンタ、またはファクシミリ等において、画像データを適宜画像メモリーに収納させたり、反対に画像メモリーから読み出す等の処理が、従来実施されていること、しかも画像メモリーに収納する画像データの形態としては、多値画像データや、該多値画像データを適宜画像処理して得られた2値画像データであることが記載されている。 [記載事項オ] 段落【0004】には、2値画像データでメモリーに保存する方式が、処理前の多値画像データで保存する場合よりも容量が少なくて済むことが記載されている。 したがって、甲3には、以下の構成が記載されている。 「デジタル複写機において、画像データを多値画像データや、該多値画像データを適宜画像処理して得られた2値画像データの形態となして、これを適宜画像メモリーに収納させたり、反対に画像メモリーから読み出す等の処理が従来から慣用されるものであること。」 (3) 甲第4号証:特開平6-311350号公報 [記載事項カ] 甲4の段落【0001】、【0002】からは、甲4記載のものが、グラビア印刷に用いる製版データ生成方法および製版装置に係るものであることが記載されている。 [記載事項キ] 同段落【0021】、【0022】には、スキャナ(10)により取り込んだ階調を有し、2次元的に配列された画像の画像データを、画像処理用CPU(12)によりアンチエリアス処理を行い、元の画像データの原画像の単位領域における階調の偏りを反映した変換を行うことで製版データを生成し、該製版データに基づいて版シート(19)に凹部を作成し、凹版製版を行なう構成が記載されていると共に、前記画像処理用CPU(12)により変換された製版データを、画像メモリ(11)に記憶し、製版可能な構成が記載されている。 [記載事項ク] 同段落【0044】には、製版データを版シート(19)に刻む際に、画像処理用CPU(12)を介して製版用CPU(13)に送られて製版が行われる詳細が記載されている。 したがって、甲4には、以下の構成が記載されている。 「グラビア印刷に用いる製版データ生成方法および製版装置において、画像データを適宜の画像処理を行って生成した製版データを画像メモリに記憶し、当該画像メモリに記憶した製版データを用いて、製版を行う構成。」 (4) 甲第7号証:特開平8-258390号公報 [記載事項ケ] 同段落【0042】、【0043】には、【図3】を参照しつつ、製版キースイッチ(21E)等の各種キースイッチ並びに表示用ディスプレイ(21J)を有する操作部(21)が記載されている。 [記載事項コ] 同段落【0044】には、ディスプレイ(21J)は、画像メモリ(52A)に記憶されており画像の選択をし、その選択情報に基づいて製版印刷工程部の動作制御を行うことが記載されている。 [記載事項サ] 同段落【0044】においては、画像メモリ52Aに記憶された画像情報を基にして画像編集を行うことができること、ここでいう「画像編集」とは、「原稿画像内での画像形成範囲の指定、多色画像を形成する際の色の指定および画像合成の一つである文字・写真の合成、合成の他の一つである異なる色の画像形成の際の色の指定、さらには、画像メモリに記憶されている画像の選択」が含まれていることが記載されている。 よって、操作部(21)の操作により、画像メモリ(52A)に記憶されている画像情報を読み出して、製版する構成が記載されており、前記段落【0042】においては、「製版キースイッチ21Eは、試し刷りを行う際に選択されるキースイッチであり、」に続き、「例えば、画像編集した内容に応じた孔版マスタの状態をチェックするような場合に用いられる。」と記載されることからみて、試し刷りの結果によっては、編集した画像情報に基づいた再度の製版が行われる場合のあることが窺える。 (5) 甲第9号証:特開平10-63444号公報 甲9の1頁【課題】によれば、当該甲9には、孔版印刷機の周辺機器も含めたシステムに適した出力結果を得ることができる画像形成装置用コンピュータインターフェース装置に関する技術が開示されており、段落【0005】には、パーソナルコンピュータ(1)と、製版及び孔版印刷を行なう孔版印刷機(2)と、コンピュータインターフェース装置(3)とを備え、該コンピュータインターフェース装置(3)が、パーソナルコンピューター(1)から入力される印刷データをページ展開して画像形成装置に出力することが記載されている。 また、段落【0020】には、パーソナルコンピューター(1)が、孔版印刷機(2)により所望の製版、孔版印刷を行なうためのデータの編集を行なうことが明記されている。 さらに、段落【0029】、【0030】、【0031】及び【0032】には、コンピュータインターフェース装置(3)が、入力データ記憶手段(5)とともにページデータ記憶手段(6)を備え、入力データ記憶手段(5)が、コンピューター(1)からのデータDを記憶保存し、ページデータ記憶手段(6)が、1ライン毎のラスタイメージ情報を記憶保存し、最終的に1ページ分に相当するラスタイメージデータ情報が生成され、記憶保存されることが記載されている。 してみれば、当該甲9には、以下の事項が記載されている。 「パーソナルコンピュータ(データ編集装置)(1)と、印刷データをページ展開するインターフェース装置(データ展開装置)(3)とを備え、 展開されたデータに基づき、孔版印刷機により所望の製版を行い、 製版された孔版原紙を用いて所望の孔版印刷を行う製版印刷システムにおいて、 入力データ記憶手段(5)とともに、ページ展開されたページデータの記憶手段(6)を備えた、 製版印刷システム。」 6.本件発明1について (1) 甲2記載の発明との対比 本件発明1と甲2記載の発明とを対比する。 甲2記載の発明における製版印刷と、本件発明1における製版印刷は、いずれも画像データを孔版原紙に製版し、この製版された孔版原紙を用いて印刷を行うものである。 そして、甲2記載の発明における「読取部(1)で画像データを読み取り、アナログ処理部(2)においてA/D変換された画像データから、制御部(100)において孔版印刷装置におけるイメージデータを生成」することが、本件発明1における「画像データを孔版原紙に対して製版可能な製版データに変換処理」することに相当するのは明らかであるから、甲2記載の発明における「孔版印刷装置におけるイメージデータ」は、本件発明1における「製版データ」に相当する。 また、甲2記載の発明における「制御部(100)」は、製版を実行する制御部である限りにおいて、本件発明1の「製版を実行させる制御部」に相当する。 すると、本件発明1と甲2記載の発明とは、以下の点において一致し、相違している。 一致点: 画像データを孔版原紙に対して製版可能な製版データに変換処理し、この変換処理された製版データに基づいて前記孔版原紙を製版し、この製版された孔版原紙を用いて印刷用紙に印刷する製版印刷装置において、 製版を実行させる制御部を備えた、 製版印刷装置。 相違点1: 本件発明1においては、「前記変換処理された前記製版データを再製版データとして保持するデータ保持部を備え」ていると特定されているとともに、製版を実行させる制御部が、「装置本体に設けられた操作パネル部からの再製版動作の指示入力によって前記データ保持部に保持された再製版データを読み出して製版を実行させる」ことを特定されているのに対して、 甲2記載の発明においては、そのような特定を有しない点。 (2) 相違点に係る判断 相違点1について検討する。 甲2の段落【0046】の記載によれば、甲2の実施例では、階調データ多値化回路4が出力した階調データが、通電電圧制御回路5に与えられ、当該通電電圧制御回路5は、画像の階調に応じた電圧を溶剤供給手段73に印加するようにノズル制御回路6を制御するとされ、製版データをデータ保持部に保持することなく、製版が行われていると解される。 してみれば、製版手段としてサーマルヘッド方式を採用した甲2記載の発明においても、製版データをデータ保持部に保持することなく、製版が行われていると解される。 これに対し、甲7及び甲9では、孔版印刷において、画像情報を保持する画像メモリを備えること、そして、この画像メモリに記憶された画像情報を編集して製版に用いることが記載されている。 ここで、甲7及び甲9では、画像メモリに記憶されている情報から製版が行われるものの、製版データそのものが記憶されているとはいえない。 しかしながら、画像情報を変換処理した製版データを記憶するか、製版データへの変換処理を行う前の画像情報のままで記憶するかのいずれにおいても、同じ画像情報からの製版データが得られることからして、得られた再製版データに特段に差違があるものとはいえず、製版データの形態で記憶保持することは設計事項に属することである。 よって、孔版印刷において当該データ保持部を備えることで製版データを記憶しておき、この記憶した製版データを製版に供し得るようになすことは、前記甲7〜甲9に記載された事項に基づいて、当業者であれば容易に想到し得ることといえる。 ここで、孔版印刷は、一旦マスターを作成(孔版原紙を製版すること)すれば、多量の印刷をこなし得る簡便な印刷方法として知られているものの、これに用いられる原紙には、熱可塑性樹脂フィルムと多孔質支持体としての繊維層を貼り合わせたラミネート構造とされており、時に、この多孔質支持体として用いられる繊維が塊となった状態に起因して、良好な孔が形成できない場合があることは、技術常識に属することであり、このような場合に印刷が所望のものとならない畏れがある(例えば、特開平9-104157号公報の段落【0003】等)。 また、多量の印刷を行った場合に、マスターの耐久性以上に印刷枚数を行えば、印刷品質が低下したり、マスター自体の破損が生じることも技術常識に属することであり(例えば、特開平11-151851号公報)、この場合に所望枚数の印刷を行う上で、再度のマスター製版を要することは道理であり、この点、本件特許明細書においても、指摘されていることである(段落【0006】【0007】)。 そして、孔版印刷装置においては、マスターが所望の印刷を行い得るか否かを確認すべく、試し刷りが行われており、この試し刷りによって印刷画像の濃度や位置を確認すると共に、必要があればこれらを調整して再度試し刷りが行われている(例えば、特開平11-151851号公報の段落【0089】等)。 よって、前記のように用いられた原紙に起因して良好な製版が行えず、所望の印刷が行い得ない場合には製版をし直して、再度の試し刷りを行い良好な印刷が可能であることを確認した後に、所望枚数の印刷が行われている。 してみれば、従来においても、時に再度の製版を必要とすることが認識されており、前記甲7及び甲9におけるごとくに、製版データを保持するデータ保持部を備え、これに記憶された製版データを編集して製版に用いるように構成されていれば、再製版を行い得るものといえる。 そして、それによる作用効果が格別なものであるとすることはできない。 前記相違点1に係る本件発明1の特定では、製版を実行させる制御部が、「装置本体に設けられた操作パネル部からの再製版動作の指示入力によって前記データ保持部に保持された再製版データを読み出して製版を実行させる」ことも特定されている。 しかしながら、前記で指摘したように、製版データを保持するデータ保持部を備え、これに記憶された製版データを編集して製版に用いるように構成されていれば、既に再製版を行い得るものといえるのである。 そこで、前記相違点1に係る「前記データ保持部に保持された再製版データを読み出して製版を実行させる」にあたり、「装置本体に設けられた操作パネル部からの再製版動作の指示入力によって」製版を実行させる点について検討する。 前記で引用した甲7の記載を参照するに、段落【0010】には、「印刷モードに関しては、選択された印刷モードによって試し刷りを行い、その結果に応じて、原稿に対応した画像形成条件を修正したりする必要が生じる場合がある。」との記載があると共に、段落【0042】において、図3を参照して、以下の記載がある。 「操作部21には、図3に示すように、画像形成モードを選択するためのキースイッチが設けられている。上記画像形成モードとしては、印刷用紙の片面に画像が形成される片面画像形成モード、印刷用紙の両面に画像が形成される両面画像形成モード、印刷用紙の同一面に異なる内容の画像情報に基づく画像が合成される画像合成モードがある。このため、操作部21には、片面への画像形成モードを印刷工程で行う場合を選択する印刷キースイッチ21Aおよび電子写真プロセスで行う場合を選択する電子写真キースイッチ(図では、普通紙複写を意味するPPCと表示されている)21B、両面への画像形成モードを選択する両面キースイッチ21C、画像合成モードを選択する合成キースイッチ21D、製版キースイッチ21Eがそれぞれ設けられている。これら各キースイッチのうち、製版キースイッチ21Eは、試し刷りを行う際に選択されるキースイッチであり、例えば、画像編集した内容に応じた孔版マスタの状態をチェックするような場合に用いられる。また、操作部21には、これらキースイッチの他に、モードクリアを選択するモードクリアキースイッチ21F、画像形成を中断するために用いられるストップキースイッチ21G、試し刷りキースイッチ21H、画像形成処理開始用のスタートキースイッチ21K、さらには画像形成される印刷枚数を指定するテンキーがそれぞれ設けられている。」 そして、同段落に先立つ段落【0041】には、「制御部20では、・・・、操作部21からの入力状態に応じて画像形成モードに対応した印刷用紙Sの搬送形態を含め、印刷工程および電子写真プロセスの動作制御を行うとともに、後述する操作部21での画像編集内容に応じた上記印刷工程および電子写真プロセス部の動作制御およびこれら各工程に見合う印刷用紙の搬送形態を制御する」と記載されている。 してみれば、試し刷りが想定される前記甲7及び甲9においては、ユーザ或いはオペレータからの操作パネル部からの指示入力入力に応じて、製版を実行させる制御部が再製版を行うものとして構成されていると認定し得るものである。 したがって、前記相違点1に係る構成は、前記甲7及び甲9に係る構成を備えた際に、付随的に備えられる構成を特定しているといい得るのであって、当業者であれば、容易に想到し得るものである。 以上のとおりであるから、本件発明1は、上記甲2記載の発明に、甲7及び甲9に記載された事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであって、本件発明1の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 7.本件発明2について (1) 甲2記載の発明との対比 本件発明2と甲2記載の発明とを対比する。 甲2記載の発明における製版印刷と、本件発明1における製版印刷は、いずれも画像データを孔版原紙に製版し、この製版された孔版原紙を用いて印刷するものである。 そして、甲2記載の発明における「読取部(1)」は、本件発明2における「画像読取部」に相当する。 また、甲2記載の発明における「制御部(100)」及び「イメージデータ」は、読取部(1)で読み取られ、アナログ処理部(2)においてA/D変換された画像データから、孔版印刷装置におけるイメージデータが生成されていることからして、本件発明2における、画像読取部が読み取った画像データを孔版原紙に対して製版可能な製版データに変換処理する「画像処理部」及び「製版データ」に相当する。 そして、甲2記載の発明の「製版部」は、制御部(100)からのイメージデータに基づき、孔版印刷用原紙にサーマルヘッドにより溶解穿孔を行うことで製版を行っていることから、本件発明2における画像処理部からの製版データの画像に応じた感熱穿孔を孔版原紙に施す「画像書込部」に相当する。 また、甲2記載の発明における「印刷部」は、製版部によって製版された前記孔版印刷用原紙を用いて印刷用紙に印刷するものであるから、本件発明2における、該画像書込部によって製版された前記孔版原紙を用いて印刷用紙に印刷する「印刷部」に相当する。 また、甲2記載の発明における「制御部(100)」は、製版を実行する制御部である限りにおいて、本件発明1の「製版を実行させる制御部」に相当する。 すると、本件発明2と甲2記載の発明とは、以下の点において一致し、相違している。 一致点: 原稿の画像を読み取る画像読取部と、 該画像読取部が読み取った画像データを孔版原紙に対して製版可能な製版データに変換処理する画像処理部と、 該画像処理部からの製版データの画像に応じた感熱穿孔を前記孔版原紙に施す画像書込部と、 該画像書込部によって製版された前記孔版原紙を用いて印刷用紙に印刷する印刷部とを備えた、 製版を実行させる制御部を備えた、 製版印刷装置。 相違点2: 本件発明2においては、「前記製版データによる前記孔版原紙への製版動作と並行して該製版動作時の前記製版データを再製版データとして保持するデータ保持部を備え」ていると特定されているのに対し、 甲2記載の発明においては、そのような特定がない点。 相違点3: 本件発明2においては、製版を実行させる制御部が、「装置本体に設けられた操作パネル部からの再製版動作の指示入力によって前記データ保持部に保持された再製版データを読み出して製版を実行させる」ことを特定されているのに対して、 甲2記載の発明においては、当該制御部がそのようなものでない点。 (2) 相違点に係る判断 相違点2について検討する。 ここで、当該相違点2に係る本件発明2においては、再製版データの保持が、「前記製版データによる前記孔版原紙への製版動作と並行して」行われるものであることが特定されているので、当該特定の技術的意味について以下検討する。 本件訂正明細書を参照するに、当該特定に係る「製版動作と並行して」なる記載は、段落【0041】、【0063】及び【0067】に認められる。 そして、これらの段落記載を素直に読むと、少なくとも製版動作を行っている際には、データ保持部で製版データが保持されており、再製版の必要が生じた場合には、直ちに保持されていた製版データを再製版のためのデータとして供し得ることを意味しているものと推察される。 ここで、前記「6.本件発明1について」で検討したように、甲7及び甲9には、孔版印刷において、製版データを保持するデータ保持部を備えること、そして、予め記憶した製版データを編集して製版に利用すること等が記載されている。 そして、記憶した製版データを再製版に供し得るためには、少なくとも現在行われている製版動作中、当該記憶保持が継続されていなければならないことは明らかである。 してみれば、前記「6.本件発明1について」で検討したと同様に、孔版印刷において、製版データを再製版データとして保持するデータ保持部を備えることで製版データを記憶しておき、この記憶した製版データを再製版に供し得るようになすこと、そして、製版動作と並行して該製版動作時の前記製版データを再製版データとして保持することを、甲7及び甲9に記載された事項に基づいて想到することは、当業者であれば容易であるといわざるを得ない。 そして、それによる作用効果も、既に慣用されていることからして格別なものを期待し得るものとはいえない。 次に、相違点3について検討する。 当該相違点3は、本件発明2において、製版を実行させる制御部が、「装置本体に設けられた操作パネル部からの再製版動作の指示入力によって前記データ保持部に保持された再製版データを読み出して製版を実行させる」ことに係るものである。 しかしながら、既に、「6.本件発明1について」の相違点1において検討したように、試し刷りで所望の結果が得られなければ、原稿に対応した画像形成条件を修正した上で再度の製版、即ち再製版を行う必要が生じることは技術常識に属するのに鑑みれば、試し刷りが想定される前記甲7及び甲9において、ユーザ或いはオペレータからの指示入力入力に応じて、製版を実行させる制御部が再製版を行うものとして構成することは必然的である。 したがって、相違点3に係る構成は、前記の検討と同様に、相違点4に係る製版データを保持するデータ保持部を備える構成を採用した際に、付随的に備えられる構成を特定しているものともいい得るのであって、当業者であれば、容易に想到し得るものといわざるを得ない。 以上のとおりであるから、本件発明2は、上記甲2記載の発明に、甲7及び甲9に記載された事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであって、本件発明2の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 8.本件発明4について (1) 甲2記載の発明との対比 前記「5.(1)」で甲2記載の発明を「製版印刷装置」として認定したが、これを構成する「読取部(1)」、「制御部(100)」、「製版部」及び「印刷部」の各々を装置として捉え、総体として「製版印刷システム」とも称し得るものであるから、以下、前記甲2記載の発明の末尾を「製版印刷システム」と読み替えて援用する。 本件発明4と読み替えた甲2記載の発明とを対比する。 読み替えた甲2記載の発明における 「画像データから孔版印刷装置におけるイメージデータを生成する制御部(100)」、 「該制御部(100)からのイメージデータに基づき、孔版印刷用原紙に溶解穿孔を行うサーマルヘッドを有する製版部」による製版、及び 「該サーマルヘッドを有する製版部によって製版された前記孔版印刷用原紙を用いて印刷用紙に印刷する印刷部」による印刷、が、 本件発明4における 「画像データを孔版原紙に対して製版可能な製版データに展開するデータ展開装置」、 「該データ展開装置によって展開された製版データに基づいて前記孔版原紙を製版」すること、及び 「この製版された孔版原紙を用いて印刷用紙に印刷する」こと、 にそれぞれ相当することは明らかである。 また、読み替えた甲2記載の発明における「印刷」は、製版部によって製版された前記孔版印刷用原紙を用いて印刷用紙に印刷することであるから、本件発明4における、製版された孔版原紙を用いて印刷用紙に印刷することに相当する。 すると、本件発明4と読み替えた甲2記載の発明とは、以下の点において一致し、相違している。 一致点: 画像データを孔版原紙に対して製版可能な製版データに展開するデータ展開装置を備え、 該データ展開装置によって展開された製版データに基づいて前記孔版原紙を製版し、 この製版された孔版原紙を用いて印刷用紙に印刷する製版印刷システムにおいて、 製版を実行させる制御部を備えた、 製版印刷システム。 相違点4: 本件発明4においては、「画像データを編集出力するデータ編集装置」を備え、これから出力された画像データを製版データに展開するものとされるのに対して、 読み替えた甲2記載の発明においては、前記データ編集装置を備えていない点。 相違点5: 本件発明4においては、「前記展開された製版データを再製版データとして保持するデータ保持部を備え」ていると特定されているとともに、製版を実行させる制御部が、「装置本体に設けられた操作パネル部からの再製版動作の指示入力によって前記データ保持部に保持された再製版データを読み出して製版を実行させる」と特定されているのに対し、 読み替えた甲2記載の発明においては、そのような特定を有しない点。 (2) 相違点に係る判断 相違点4について検討する。 前記のように、甲9には、孔版印刷システムにおいて、孔版印刷機で製版を行うに先立って、パーソナルコンピュータによりデータ編集を行う事項が記載されている。 してみれば、本件発明3におけるように、画像データを編集出力するデータ編集装置を備えることは、当業者であれば、適宜に採用し得た程度のことである。 次に、相違点5について検討する。 まず、前記「6.本件発明1について」で検討したように、甲7及び甲9には、孔版印刷において、製版データを保持するデータ保持部を備えること、そして、予め記憶した製版データを編集して製版に利用すること等が記載されている。 そして、記憶した製版データを再製版に供し得るためには、少なくとも現在行われている製版動作中、当該記憶保持が継続されていなければならないことは明らかである。 してみれば、前記「6.本件発明1について」で検討したと同様に、孔版印刷において、製版データを再製版データとして保持するデータ保持部を備えることで製版データを記憶しておき、この記憶した製版データを再製版に供し得るようになすこと、そして、製版動作と並行して該製版動作時の前記製版データを再製版データとして保持することを、甲7及び甲9に記載された事項に基づいて想到することは、当業者であれば容易であるといわざるを得ない。 そして、それによる作用効果も、既に慣用されていることからして格別なものを期待できるものとはいえない。 次に、相違点5においては、本件発明4において、製版を実行させる制御部が、「装置本体に設けられた操作パネル部からの再製版動作の指示入力によって前記データ保持部に保持された再製版データを読み出して製版を実行させる」ことに係るものとされる。 しかしながら、既に、「6.本件発明1について」の相違点1において検討したように、試し刷りで所望の結果が得られなければ、原稿に対応した画像形成条件を修正した上で再度の製版、即ち再製版を行う必要が生じることは技術常識に属するのに鑑みれば、試し刷りが想定される前記甲7及び甲9において、ユーザ或いはオペレータからの指示入力入力に応じて、製版を実行させる制御部が再製版を行うものとして構成することは必然的である。 したがって、前記の相違点3に係る検討と同様に、相違点5に係る製版データを保持するデータ保持部を備える構成を採用した際に、付随的に備えられる構成を特定しているものともいい得るのであって、当業者であれば、容易に想到し得るものといわざるを得ない。 以上のとおりであるから、本件発明4は、上記読み替えた甲2記載の発明に、甲7及び甲9に記載された事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであって、本件発明4の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 9.むすび 以上のとおりであるから、本件発明1、2及び4に係る発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、平成15年改正前特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 製版印刷装置および製版印刷システム (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】画像データを孔版原紙に対して製版可能な製版データに変換処理し、この変換処理された製版データに基づいて前記孔版原紙を製版し、この製版された孔版原紙を用いて印刷用紙に印刷する製版印刷装置において、 前記変換処理された前記製版データを再製版データとして保持するデータ保持部を備え、装置本体に設けられた操作パネル部からの再製版動作の指示入力によって前記データ保持部に保持された再製版データを読み出して製版を実行させる制御部を備えたことを特徴とする製版印刷装置。 【請求項2】原稿の画像を読み取る画像読取部と、該画像読取部が読み取った画像データを孔版原紙に対して製版可能な製版データに変換処理する画像処理部と、該画像処理部からの製版データの画像に応じた感熱穿孔を前記孔版原紙に施す画像書込部と、該画像書込部によって製版された前記孔版原紙を用いて印刷用紙に印刷する印刷部とを備えた製版印刷装置において、 前記製版データによる前記孔版原紙への製版動作と並行して該製版動作時の前記製版データを再製版データとして保持するデータ保持部を備え、装置本体に設けられた操作パネル部からの再製版動作の指示入力によって前記データ保持部に保持された再製版デーダを読み出して製版を実行させる制御部を備えたことを特徴とする製版印刷装置。 【請求項3】前記制御部は、印刷動作が開始され累積印刷枚数が予め設定された制限枚数の整数倍に達する毎に、前記データ保持部に保持された再製版データによる製版を実行させることを特徴とする請求項1又は2記載の製版印刷装置。 【請求項4】画像データを編集出力するデータ編集装置と、該データ編集装置から出力された画像データを孔版原紙に対して製版可能な製版データに展開するデータ展開装置とを備え、該データ展開装置によって展開された製版データに基づいて前記孔版原紙を製版し、この製版された孔版原紙を用いて印刷用紙に印刷する製版印刷システムにおいて、 前記展開された製版データを再製版データとして保持するデータ保持部を備え、装置本体に設けられた操作パネル部からの再製版動作の指示入力に基づき、前記データ保持部に保持された再製版データを読み出して製版を実行させる制御部を備えたことを特徴とする製版印刷システム。 【請求項5】前記制御部は、印刷動作が開始され累積印刷枚数が予め設定された制限枚数の整数倍に達する毎に、前記データ保持部に保持された再製版データによる製版を実行させることを特徴とする請求項4記載の製版印刷システム。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、孔版原紙を用いて製版・印刷する製版印刷装置および製版印刷システムに係り、特に、多枚数の印刷時においても良好な印刷画像を得ることができる製版印刷装置および製版印刷システムに関する。 【0002】 【従来の技術】 図10は製版印刷装置の概略構成を示すブロック図である。 図10に示すように、製版印刷装置50は、操作キーや表示器を有する操作パネル部51、イメージスキャナ等の画像読取部52、制御部(CPU)53、画像処理部54、孔版原紙に原稿画像を感熱穿孔する画像書込部55、穿孔画像が形成された孔版原紙を用いて印刷を行う印刷部56を備えて概略構成され、操作パネル部51からの操作入力に基づく制御部53の指令に基づいて孔版原紙の製版及び印刷動作の制御がなされる。 【0003】 更に説明すると、製版印刷装置50では、本体に設けられた操作パネル部51より製版動作の開始を指示する入力があると、セットされた原稿の画像を画像読取部52が読み取る。この原稿の読み取り動作に並行して、原稿画像を画像処理部54が製版可能な2値データ(製版データ)に変換処理する。そして、変換処理された製版データに基づいて画像書込部55が孔版原紙を感熱製版する。更に、製版された孔版原紙はドラムの版胴に装着され、操作パネル部51より印刷動作の開始を指示する入力があると、操作パネル部51より設定入力された枚数分の印刷動作が印刷部56で実行される。 【0004】 また、他の構成として、製版印刷装置にインターフェース装置(データ展開装置)を介してパソコン等のデータ編集装置が接続された製版印刷システムが知られている。この製版印刷システムでは、パソコン等のデータ編集装置からの画像データがデータ展開装置により製版可能な2値データ(製版データ)に変換処理され、この変換処理されて転送されてくる1版分の製版データに基づいて孔版原紙への感熱製版が行われる。 【0005】 このような製版印刷装置や製版印刷システムによれば、版胴を高速回転させることにより多枚数の印刷を短時間で高速に印刷することができる。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】 ところで、この種の製版印刷装置や製版印刷システムに用いられる孔版原紙は、感熱フィルムと多孔性支持体とを貼り言わせたものが大半であり、ある程度の耐印刷性能をもつが、1度に印刷可能な枚数には限度がある。 【0007】 したがって、孔版原紙の耐刷枚数以上の印刷を行うと、孔版原紙上に製版された細線、罫線が切れたり、ドラムに印刷用紙の紙粉が付着する。しかも、印刷枚数が増加していくにつれ、印刷用紙上で画像が形成されなくなる箇所が生じ始める。また、孔版原紙が印刷時の張力により徐々に伸び、印刷画像にも伸びが生じる。その結果、印刷画像の画質が低下して良好な画質による印刷物を得ることができない。 【0008】 このため、従来の製版印刷装置や製版印刷システムでは、1つの原稿を孔版原紙の耐刷枚数以上印刷したいとき、それまでに使用されていた孔版原紙を排版し、再度同じ画像データの処理(読込み処理、製版データへの展開処理、データの転送処理)を行った後、新規の孔版原紙に製版し直さなければならなかった。 【0009】 更に説明すると、原稿をイメージスキャナで読み込んで製版した場合は、もう一度同じ原稿をイメージスキャナで読み込んで製版し直さなければならなかった。 【0010】 パソコン等のデータ編集装置から画像データを転送して製版した場合は、もう一度画像データを転送し直して製版しなければならなかった。 【0011】 そして、原稿から再度製版を行うと、原稿の位置ズレやイメージスキャナの読み取り誤差などにより、一度目と同じ印刷物を得ることができない場合があり、再現性に欠けるという問題があった。 【0012】 パソコン等のデータ編集装置からの画像データにより再度製版を行った場合、製版位置ズレは発生しにくいが、再度データ編集装置の画像データを製版可能な2値データに変換して転送するため、画像の展開時間等が余分にかかり、作業時間のロスとなっていた。 【0013】 そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、1度製版したデータを保存し、再度製版する際に保存されたデータを使用することにより製版位置ズレがなく、作業時間を短縮して所望の製版印刷が行える製版印刷装置および製版印刷システムを提供することを目的としている。 【0014】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するため、請求項1の発明は、画像データを孔版原紙に対して製版可能な製版データに変換処理し、この変換処理された製版データに基づいて前記孔版原紙を製版し、この製版された孔版原紙を用いて印刷用紙に印刷する製版印刷装置において、 前記変換処理された前記製版データを再製版データとして保持するデータ保持部を備え、装置本体に設けられた操作パネル部からの再製版動作の指示入力によって前記データ保持部に保持された再製版データを読み出して製版を実行させる制御部を備えたことを特徴とする。 【0015】 請求項2の発明は、原稿の画像を読み取る画像読取部と、該画像読取部が読み取った画像データを孔版原紙に対して製版可能な製版データに変換処理する画像処理部と、該画像処理部からの製版データの画像に応じた感熱穿孔を前記孔版原紙に施す画像書込部と、該画像書込部によって製版された前記孔版原紙を用いて印刷用紙に印刷する印刷部とを備えた製版印刷装置において、 前記製版データによる前記孔版原紙への製版動作と並行して該製版動作時の前記製版データを再製版データとして保持するデータ保持部を備えている。 【0016】 さらに、装置本体に設けられた操作パネル部からの再製版動作の指示入力によって前記データ保持部に保持された再製版データを読み出して製版を実行させる制御部を備えたことを特徴とする。 【0017】 請求項3の発明は、請求項1又は2の製版印刷装置において、 前記制御部は、印刷動作が開始され累積印刷枚数が予め設定された制限枚数の整数倍に達する毎に、前記データ保持部に保持された再製版データによる製版を実行させることを特徴とする。 【0018】 請求項4の発明は、画像データを編集出力するデータ編集装置と、該データ編集装置から出力された画像データを孔版原紙に対して製版可能な製版データに展開するデータ展開装置とを備え、該データ展開装置によって展開された製版データに基づいて前記孔版原紙を製版し、この製版された孔版原紙を用いて印刷用紙に印刷する製版印刷システムにおいて、 前記展開された製版データを再製版データとして保持するデータ保持部を備えている。 【0019】 さらに、装置本体に設けられた操作パネル部からの再製版動作の指示入力に基づき、前記データ保持部に保持された再製版データを読み出して製版を実行させる制御部を備えたことを特徴とする。 【0020】 請求項5の発明は、請求項4の製版印刷システムにおいて、 前記制御部は、印刷動作が開始され累積印刷枚数が予め設定された制限枚数の整数倍に達する毎に、前記データ保持部に保持された再製版データによる製版を実行させることを特徴とする。 【0021】 【発明の実施の形態】 図1は本発明による実施の形態の概略構成を示すブロック図、図2は図1の操作パネル部の構成を示す図、図3は図1の操作パネル部の平面図である。 【0022】 図1に示すように、本実施の形態では、操作パネル部1、製版部2、印刷部3、制御部4、データ保持部5を備えた製版印刷装置6、データ編集装置7、データ展開装置8により製版印刷システム9を構成している。 【0023】 図3に示すように、装置本体に設けられた操作パネル部1は、操作手段10と表示手段11を備え、操作手段10の操作入力は制御部4に入力される。 【0024】 図2及び図3に示すように、操作手段10は、印刷枚数や孔版原紙耐刷枚数等を設定するためのテンキー10a、後述する自動再製版モードを設定するための自動再製版キー10b、データ保持部5に保持された再製版データによる再製版を手動で指示するための再製版キー10c、製版動作又は印刷動作を選択する選択キー10d、動作を開始させるスタートキー10e、動作を停止させるストップキー10f等の複数のキーを有している。 【0025】 表示手段11は、1回の製版で印刷可能な枚数(孔版原紙耐刷枚数)を表示する第1表示部11a、操作入力された全体の設定印刷枚数(及び残り印刷枚数)を表示する第2表示部11bを有する。図3に示すように、第1表示部11a、第2の表示部11bは、7セグメントのLEDを4桁配置してなり、最大9999枚の枚数が表示可能である。 【0026】 製版部2は、画像読取部2a、画像書込部2b、画像処理部2cを備えて構成される。画像読取部2aは、例えばイメージスキャナで構成され、セットされる原稿の画像を読み取っている。この読み取られた画像データは、画像処理部2cにより画像書込部2bに送られると同時に、再製版データとしてデータ保持部5に保持される。 【0027】 画像書込部2bは、サーマルヘッドを有しており、画像処理部2cから入力される画像データに基づいて孔版原紙に感熱穿孔を施している。この画像書込部2bに入力される画像データは、例えば「1」が孔版原紙に孔を開けるデータに対応し、「0」が孔版原紙に孔を開けないデータに対応した2値のデータである。 【0028】 画像処理部2cは、画像読取部2aが読み取った画像データにより孔版原紙に製版を行う場合、入力される画像データを製版可能な2値のデータ(製版データ)に変換処理し、この処理された製版データをデータ保持部5と画像書込部2bに同時に転送している。 【0029】 これに対し、データ編集装置7からデータ展開装置8を介して転送されてくる画像データにより孔版原紙に製版を行う場合、画像処理部2bは、データ展開装置7から製版可能なデータに展開されて送られてくる2値の画像データ(製版データ)を画像書込部2bに転送している。 【0030】 画像処理部2cはまた、再製版動作が指示されたときに、制御部4からの指令によりデータ保持部5に保持されている1版分の再製版データを読み出して画像書込部2bに転送する。 【0031】 印刷部3は、印刷用紙を給紙する給紙部、孔版原紙が取り付けられ回転により印刷用紙に印刷するドラム、ドラムで印刷された印刷用紙を排紙する排紙部とを備えている。特に図示はしないが、上記印刷部3の構成の一例について更に説明すると、ドラムは、装置本体に対して交換可能に取り付けられ、自身の中心軸線回りに回転可能に支持された円筒状の版胴を備えている。版胴は多孔構造に構成され、外周部に孔版原紙の一端を係止するクランプ機構を有している。版胴は、駆動手段としてのドラムモータの動力により一方向に回転駆動される。 【0032】 版胴の内部には、印刷インク供給手段が設けれている。印刷インク供給手段は、外周面が版胴の内周面に接触するべく配設されている。印刷インク供給手段は、自身の中心軸の回りに回転可能なスキージローラと、スキージローラの外周面に対し、所定の間隔をもってスキージローラの母線方向に沿って延在するドクターローラとを有している。印刷インク供給手段は、スキージローラが版胴の回転に同期して版胴と同方向に回転駆動されることにより、インク溜まりの印刷インクを版胴の内周面に供給している。 【0033】 インク溜まりの印刷インクは、版胴の回転と連動して同期駆動されるスキージローラの回転に伴い、このスキージローラとドクターローラとの間隙を通過し、スキージローラの外周面に一様な厚さの印刷インク層を形成する。印刷インク層は、スキージローラの回転に伴って版胴の内周面に供給されて印刷に供される。スキージローラと対向する版胴の外側位置には、印刷用紙を版胴の外周面に所定の圧力で圧接するローラ部材としてのプレスローラが設けられている。 【0034】 給紙部は、印刷用紙を積載するための給紙台と、給紙台上の印刷用紙を版胴側に供給する給紙機構を有している。給紙台は、セットされた印刷用紙の積載量に対応して駆動装置により上下動される。給紙機構は、ゴム等からなる給紙ローラと、一対のタイミングローラとを備えて構成される。給紙ローラは、給紙台上に積載された印刷用紙の最上のものから一枚づつピックアップしてタイミングローラ側に搬送している。タイミングローラは、給紙ローラから送られた印刷用紙を撓んだ状態で一時保持し、適当なタイミングで版胴とプレスローラとの間に印刷用紙を送り出している。 【0035】 排紙部は、印刷が終了した印刷済用紙を版胴上から取り外すための印刷用紙分離爪と、印刷用紙分離爪により剥がされた印刷済用紙を搬送するベルトコンベア装置から構成される排紙装置と、排紙装置によって搬送されてくる印刷済用紙を積載収容する排紙台とを備えている。 【0036】 制御部4は、操作パネル部1のキー操作に基づき、製版部2及び印刷部3を制御して製版・印刷を実行する。制御部4は、中央処理部を構成するCPU4a、記憶手段を構成するROM4b,RAM4c、I/Fなどのハードウェアと、製版印刷動作の制御プログラムで構成される。 【0037】 データ保持部5は、所定のメモリ領域を有するメモリ装置(記憶手段)からなり、画像処理部2cから転送されてくる画像読取部2aの画像データに基づく製版データ、データ展開装置8から送られてくるデータ編集装置7の画像データに基づく製版データを、再製版データとして1版分のデータ毎にメモリ領域に割り当てて格納保持している。 【0038】 データ編集装置7は、製版印刷装置6とは別体に構成された例えばパソコン等の端末装置からなり、孔版原紙に感熱製版される画像データの編集を行い、キーボードやマウス等の入力装置の操作入力により所望の画像データをデータ展開装置8に出力している。 【0039】 データ展開装置8は、データ編集装置7からの画像データを孔版原紙に対して製版可能な2値のデータ(製版データ)に展開している。この展開された2値の製版データは、データ保持部5に再製版データとして保持されるとともに、画像処理部2cに送られる。 【0040】 次に、上記製版印刷システム9により画像読取部2aが読み取った画像データに基づいて製版を行う場合の動作を図4に基づいて説明する。なお、図4の矢印はデータの流れを示している。 【0041】 製版画像の元になる原稿がセットされ、操作パネル部1の選択キー10dの操作により製版動作が選択され、スタートキー10eの押下により制御部4に対して製版動作の開始が指示入力されると、画像読取部2aはセットされた原稿の画像を読み取る。この読み取られた原稿の画像データ(多値データ)は画像処理部2cに送られる(図4の矢印a)。画像処理部2cでは、画像読取部2aから送られてくる画像データを製版データ(2値データ)に変換しながら画像書込部2bに転送する(図4の矢印b)。そして、画像書込部2bは、画像処理部2cからの製版データの画像による感熱製版を孔版原紙に施す。この製版動作に並行して、その時の製版データが再製版データとしてデータ保持部5のメモリ領域に保持される(図4の矢印c)。 【0042】 次に、上記製版印刷システム9によりデータ編集装置7からの画像データに基づいて製版を行う場合の動作を図5に基づいて説明する。なお、図5の矢印はデータの流れを示している。 【0043】 まず、データ編集装置7より製版画像の元になる画像データ(例えば圧縮データ、ポストスクリプトなどの多値データ)がキーボードやマウスのキー操作入力により選択されてデータ展開装置8に送られる(図5の矢印d)。データ展開装置8では、データ編集装置7からの画像データを画像書込部2bによる製版が可能な2値のデータ(製版データ)に展開する。そして、データ展開装置8で展開された1版分の製版データは、再製版データとしてデータ保持部5のメモリ領域に保持されるとともに(図5の矢印e)、画像処理部2cに転送される(図5の矢印f)。画像処理部2cでは、データ展開装置8から送られてくる1版分の製版データを画像書込部2bに転送する(図5の矢印g)。そして、画像書込部2bは、画像処理部2cからの製版データに基づく感熱製版を孔版原紙に施す。 【0044】 次に、図6は自動再製版モードの設定動作を示すフローチャート、図7及び図8は自動再製版モード設定時の動作を示すフローチャート、図9はデータ保持部に保持された再製版データにより製版(再製版)を行うときのデータの流れを示すブロック図である。 【0045】 以下、図6を参照しながら自動再製版モードの設定動作について説明する。 【0046】 制御部4は、自動再製版キー10bが押下されたときに(SP1-Yes)、自動再製版モードがオンと判断すると(SP2-Yes)、自動再製版モードをオフにする(SP3)。 【0047】 これた対し、制御部4は、自動再製版キー10bが押下されたときに(SP1-Yes)、自動再製版モードがオンでないと判断すると(SP2-No)、1枚(1回)の製版で実行する制限枚数(孔版原紙耐刷枚数)が操作者によりテンキー10aで入力されるのを待ち、第1表示部11aにこの制限枚数を表示する(SP4)。この制限枚数は画質が維持可能な限度(即ち、それ以上印刷をすると画質が落ちると判断する)枚数が設定される。ここでは、例えば2000枚が設定、表示される。 【0048】 次に、再度自動再製版キー10bが押下されると(SP5-YES)、この制限枚数をレジスタAに格納する(SP6)。レジスタAは、CPU4a、あるいはRAM4cの所定エリアである。ここでは、レジスタAに前記2000枚が格納される。これにより、自動再製版モードがオンに設定される(SP7)。この設定により製版印刷システム9は、以降、自動再製版モードで製版、印刷動作する。 【0049】 上記自動再製版モードの設定操作は、操作者あるいは管理者が所定の時期に設定することができる。即ち、システムの管理者の設定によれば、システムを常時自動再製版モードで動作させることができる。これに対し、操作者が任意に設定すれば、この操作者が使用する際のみ自動再製版モードでシステムを動作させることができる。 【0050】 次に、上記自動再製版モードでのシステムの動作を図7及び図8のフローチャートを用いて説明する。 【0051】 まず、テンキー10aで設定印刷枚数を操作入力すると、この入力された設定印刷枚数が第2表示部11bに数値表示される(SP11)。例えば設定印刷枚数が6000枚の場合、この6000枚が設定、表示される。 【0052】 次に、選択キー10dにより製版動作が選択された状態でスタートキーが押下されると(SP12-Yes)、設定された印刷枚数がレジスタBおよびレジスタCに格納され(SP13)、上述した図4又は図5に示す製版動作が行われる。この製版動作時の製版データは、再製版データとしてデータ保持部5のメモリ領域に保持される(SP14)。 【0053】 上記製版動作により孔版原紙が感熱製版されると、その後、印刷部3は、製版された孔版原紙の一端を版胴のクランプ機構により係止し、孔版原紙を版胴に巻き付ける。そして、印刷動作を開始する(SP15)。すなわち、給紙部より1枚つつ印刷用紙を版胴とプレスローラとの間に給紙し、版胴を回転させながらプレスローラにより印刷用紙を版胴の外周面に所定の圧力で圧接させる。これにより、版胴の内部に設けれられたインク供給手段からの印刷インクが孔版原紙の穿孔部分を通過して印刷用紙に転移し、所望の印刷がなされる。この印刷された印刷済用紙は、版胴から剥ぎ取られた後に排紙部に排紙される。 【0054】 制御部4は、1枚の印刷により、レジスタCから1を減算し、レジスタCの内容を更新する(SP16)。同時に第2表示部11bは、それまで表示していた枚数から1枚減算した枚数を表示する。このとき、上記例では、6000枚から1枚が減算されるので、5999枚と表示される。 【0055】 以上の印刷動作は、操作者が入力した印刷枚数(6000枚)を印刷完了するまで継続される。即ち、(SP17-No)を満たすまでの間は、SP18に移行する。 【0056】 次に、制御部4は、印刷枚数が制限枚数に達したか否かを判断する(SP18)。ここでは、レジスタBの値からレジスタCの値を減じた値、即ち印刷終了枚数が設定された制限枚数Aのn(但し、0より大きい整数)倍に達したか否かが判断される。 【0057】 本例では、制限枚数が2000枚なので、累積印刷枚数が2000枚に達する迄の間は(SP18-No)、SP15に移行して印刷動作を連続させる。 【0058】 累積印刷枚数が2000枚に達したときには(SP18-Yes)、この1回(1枚)の製版による印刷を一旦停止される。そして、データ保持部5から再製版データを読み出し(SP19)、この読み出した再製版データにより再度製版動作を実行させる(SP20)。これにより、1回(1枚)の製版での印刷は、制限枚数で設定した2000枚迄となる。 【0059】 上記入力された設定印刷枚数は6000枚なので、合計3回の製版動作(うち2回はデータ保持部に保持された再製版データに基づくもの)が行われる。そして、2000枚づつの連続印刷を計3回行って印刷動作が終了する(SP17-Yes)。 【0060】 このように、自動再製版キー10bの押下により自動再製版モードが設定された場合には、印刷動作中、印刷枚数が制限枚数に達すると、印刷動作が自動的に一旦停止され、データ保持部5に保持された再製版の動作が実行される。そして、この再製版の動作後、設定印刷枚数が終了するまで印刷動作が継続される。 【0061】 なお、上記印刷動作中に、強制的に再製版動作を実行する場合には以下の処理が行われる。まず、再製版キー10cを押下すると、制御部4に対して再製版の指示が割込み入力され、印刷動作が中断される。そして、画像処理部2cは、図9に示すように、データ保持部5のメモリ領域から再製版データを読み出して画像書込部2bに転送する(図9の矢印h,i)。画像書込部2bは、画像処理部2cからの再製版データの画像による感熱製版を孔版原紙に施す。この再製版動作が終了した後、スタートキー10eが押下されると、中断された印刷動作が再開される。 【0062】 なお、上記実施の形態において、データ保持部5に保持される再製版データは、1版分のデータであるが、複数版分のデータを保持してもよい。この場合、データ保持部5に保持された再製版データを不図示の表示画面上に表示させ、その選択を操作パネル部1のキー操作(例えばテンキー10aとモード設定キー10bの併用)で行えるようにする。これにより、前回のデータに限らず、それ以前のデータを利用して再製版を行うことができる。 【0063】 このように、本実施の形態によれば、イメージスキャナ等の画像読取部2aやパソコン等のデータ編集装置7による原稿画像の製版を行った際に、この製版動作と並行して1版分、もしくは複数版分の2値に展開された画像データを再製版データとしてデータ保持部5に保持することができる。 【0064】 そして、制限枚数(孔版原紙耐刷枚数)以上の印刷を行う場合には、データ保持部5に保持されている再製版データを使って再度製版することにより、読み込みのズレも無く、製版時間を短縮して必要枚数の印刷を行うことができる。 【0065】 また、以前製版動作が実行されたデータ編集装置7からの画像データにより再製版を行う場合には、既に製版可能な2値に展開された画像データが再製版データとしてデータ保持部5に保持されているので、従来のようなデータ展開装置8による展開処理作業が不要となり、その分だけ処理時間の短縮を図ることができる。 【0066】 ところで、本実施の形態では、画像読取部2aが読み取った原稿の画像データによる製版、又は、データ編集装置7から転送される画像データによる製版を選択的に行える構成として説明したが、図1において画像読取部2aを削除した構成、又はデータ編集装置7とデータ展開装置8を削除した構成としてもよい。 【0067】 【発明の効果】 以上の説明で明らかなように、本発明によれば、イメージスキャナ等の画像読取部やパソコン等のデータ編集装置による原稿画像の製版を行った際に、この製版動作と並行して1版分、もしくは複数版分の製版可能なデータを再製版データとして保持することができる。そして、制限枚数(孔版原紙耐刷枚数)以上の印刷を行う場合には、保持されている再製版データを使って再度製版することにより、読み込みのズレも無く、製版時間を短縮して必要枚数の印刷を行うことができる。 【0068】 また、以前製版動作が実行されたデータ編集装置からの画像データにより再製版を行う場合には、既に製版可能なデータに展開された再製版データがデータ保持部に保持されているので、従来のようなデータ展開装置による展開処理作業が不要となり、その分だけ処理時間の短縮を図ることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明による実施の形態の概略構成を示すブロック図、本発明による実施の形態の概略構成を示すブロック図 【図2】 図1の操作パネル部の構成を示す図 【図3】 図1の操作パネル部の平面図 【図4】 画像読取部が読み取った画像データに基づいて製版を行う場合のデータの流れを示すブロック図 【図5】 データ編集装置からの画像データに基づいて製版を行う場合のデータの流れを示すブロック図 【図6】 自動再製版モードの設定動作を示すフローチャート 【図7】 自動再製版モード設定時の動作を示すフローチャート 【図8】 図7に続く自動再製版モード設定時の動作を示すフローチャート 【図9】 データ保持部に保持された再製版データにより製版(再製版)を行うときのデータの流れを示すブロック図 【図10】 従来の製版印刷装置の概略構成を示すブロック図 【符号の説明】 1…操作パネル部、2…製版部、2a…画像読取部、2b…画像書込部、2c…画像処理部、3…印刷部、4…制御部、5…データ保持部、6…製版印刷装置、7…データ編集装置、8…データ展開装置、9…製版印刷システム。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2006-02-02 |
出願番号 | 特願2000-11924(P2000-11924) |
審決分類 |
P
1
652・
121-
ZA
(B41C)
|
最終処分 | 取消 |
特許庁審判長 |
酒井 進 |
特許庁審判官 |
藤本 義仁 津田 俊明 |
登録日 | 2003-02-21 |
登録番号 | 特許第3400763号(P3400763) |
権利者 | 理想科学工業株式会社 |
発明の名称 | 製版印刷装置および製版印刷システム |
代理人 | 鈴木 典行 |
代理人 | 西村 教光 |
代理人 | 西村 教光 |
代理人 | 鈴木 典行 |