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審決分類 |
審判 一部無効 2項進歩性 H04R |
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管理番号 | 1143666 |
審判番号 | 無効2005-80122 |
総通号数 | 83 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-12-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2005-04-19 |
確定日 | 2006-07-03 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3512087号発明「パネルスピーカ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.経緯 (a)本件特許に係る経緯 出願日 平成11年6月15日 (特願平11-168887号) 設定登録日 平成16年1月16日 (請求項の数:16、権利者:日本電気株式会社) (b)本件請求に係る経緯 請求書 平成17年4月19日 答弁書 平成17年7月21日 訂正請求書 平成17年7月21日 弁駁書 平成17年9月22日 2.請求人の主張 (1)請求の趣旨 特許第3512087号の、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8、請求項9、請求項10、請求項11、請求項15、及び、請求項16に係る発明についての特許を無効とする。 (以下、上記特許無効審判が請求されている請求項を総称して「本件各請求項」とも言う。上記「本件各請求項」に係る発明を総称して「本件各発明」とも言う。上記「本件各請求項」に係る特許を総称して「本件各特許」とも言う。) (2)請求の理由 (2-1)無効理由について 本件各発明は特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、本件各特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものである。 (a)先願および先願明細書等 特願2000-540693号は、本件特許に係る出願前に出願され本件特許の出願後に国際公開された出願であるところ(出願日:平成11年1月15日、優先日:1998年(平成10年)1月20日。国際公開第WO99/37121号:1999年(平成11年)7月22日。先願とも言う。)、本件各発明は、先願の願書に最初に添付した明細書及び図面(先願明細書等とも言う。甲第1号証。)に記載された発明と同一である。 (b)請求項1 先願明細書等には、一枚のパネル部材11(音響振動板)と、このパネル部材11を加振するための一つのトランスデューサ31(加振ドライバ)からなるパネルラウドスピーカ10について、トランスデューサ31がパネル部材11の中央部分から離れた位置に取り付けられ、かつ、その加振方向はパネル部材11の板面に対して「水平方向」である構成が記載されている(図2、図3)。すなわち、請求項1にいう「垂直以外の方向」が記載されている。 (c)請求項5 先願明細書等には、一枚のパネル部材11(音響振動板)と、このパネル部材11を加振するための複数のトランスデューサ(31〜34、加振ドライバ)とからなるパネルラウドスピーカ10について、複数のトランスデューサの全て(31〜34)がパネル部材11の「端辺位置」に取り付けられている構成が記載されている(図3)。すなわち、請求項5にいう「音響振動板の中心と音響振動板の縁を結ぶ線分の中点よりも外側に位置し、かつ、音響振動板に設定した任意の中心線に対してその一方の側にのみ取り付けられている」が記載されている。 (d)本件各発明が備えるその他の構成も全て記載されている。 (2-2)訂正請求について 訂正は、以下の理由(a)(b)により許されるべきではない。 (a)新規事項の追加 訂正は、特許法第126条第3項(第134条の2において準用)に違反する。すなわち、訂正に係る「水平以外の方向」は、特許明細書に記載されていない。 (a1)特許明細書(段落0031)の「角度(0≦θ<90)」との記載は、角度θが0(水平方向)を含むことを明らかにし、同じく「角度θが0に近いほどこの効果は大きくなり、パネルスピーカをダウンサイジングし、その収納性を向上することができる。」との記載は、角度θが0(水平方向)に近いほどダウンサイジング効果が大きいことを示している。すなわち、角度θが0(水平方向)を含むことは格別の技術的意義を有し本件発明の重要な特徴であり、したがって、特許明細書には、本件各発明の目的(ダウンサイジング効果)を大きく発揮する「水平方向」を含む発明しか記載されていない。 (a2)式「0≦θ」から「=」を除いて「0<θ」とすることは、一見、特許請求の範囲の減縮に合致するかに見えるが、式「0≦θ」は0を含み0より大きい角度範囲を規定する記載であって、0を除外した特定の角度範囲(水平以外の方向)を規定する記載ではないから、特許請求の範囲の減縮には該当しない。むしろ、特許請求の範囲の拡張に当たる。 (b)独立特許要件に違反 請求項1(訂正後)および請求項5(訂正後)に係る発明は、特許法第126条第5項(第134条の2で準用)に違反する。 (b1)訂正明細書には、角度θが0.010を含むのか、0.10を含むのか、あるいは、0.50を含むのか、更には、0に近い角度は一切含まないのかなど、「水平以外の方向」の具体的角度について記載がない。むしろ、水平方向に近いほどダウンサイジング効果が向上することを強調し(段落0031)、「水平以外の方向」よりも「水平方向」がより好ましい旨を記載している。 以上から、請求項1(訂正後)および請求項5(訂正後)に係る「水平以外の方向」は限りなく0に近い角度(実質的に0を含む)であると理解するのが合理的である。 (b2)先願明細書等において、タイプT1(トランスジューサ31)の加振方向はパネル部材11の板面に対して「水平方向」である。この「水平方向」は実質的に0とみて差し支えないような角度であり、0から極めて僅かに外れた範囲の角度も含むと理解するのが合理的である。 (b3)してみると、請求項1(訂正後)および請求項5(訂正後)に係る「水平以外の方向」と先願明細書等の「水平方向」とは「限りなく0に近い角度」において重複するから、実質的に同一である。したがって、請求項1(訂正後)および請求項5(訂正後)に係る発明は先願明細書等に記載された発明と実質的に同一であり、特許法第29条の2の規定に該当し特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (2-3)証拠方法 甲第1号証の1:特表2002-510182号公報 (特願2000-540693号の公表公報) 甲第1号証の2:国際公開99/37121号公報 (特願2000-540693号の国際公開公報) 3.被請求人の主張 (1)答弁の趣旨 本件審判の請求は成り立たない。 (2)答弁の理由 (2-1)無効理由について 特許請求の範囲を訂正する。本件各発明(訂正後)は、いずれも、特許法第29条の2の規定に該当しない。 (a)請求項1(訂正後)および請求項5(訂正後)に係る発明は、音響振動板の板面に対する加振方向が「垂直以外かつ水平以外の方向」であることを要旨とする。 (b)先願明細書等には、パネル部材11の励振方法として、パネル部材の板面に対して「水平方向」から励振するタイプ(T1)と、パネル部材の板面に対して「垂直方向」から励振するタイプ(T2〜T4)が記載されている。しかし、パネル部材の板面に対して「垂直以外かつ水平以外の方向」から励振することは記載されていない。 (c)したがって、請求項1(訂正後)および請求項5(訂正後)に係る発明は、先願明細書等に記載された発明と同一ではない。残る請求項に係る発明も同様に同一ではない。 (2-2)訂正について (a)訂正に係る「かつ水平以外」は、無効理由の回避を目的として、請求項1(訂正前)に記載された事項から先願明細書等に記載された事項のみを除外する記載であり、特許請求の範囲の減縮に該当する。すなわち、請求項1(訂正前)が加振方向につき、「垂直以外の方向」(訂正前)と規定していたところ、先願明細書等に「水平方向」から励振すること(タイプT1)が記載されていることに鑑み、「水平方向」を除外する趣旨の「かつ水平以外」という限定を加えて「垂直以外かつ水平以外の方向」(訂正後)と訂正することにより、特許請求の範囲を減縮するものである。 (b)かかる訂正は、特許明細書の段落0031及び図7の各記載を根拠とする。新規事項の追加ではない。 (c)特許請求の範囲の実質上拡張し変更するものでもない。 (2-3)証拠方法 提出なし。 4.訂正請求について(当審の判断) 《結論》 訂正請求書(平成17年7月21日付け)による訂正を認める。 《理由》 (1)訂正の内容 (a)訂正事項1 請求項1について、 「かつ前記加振ドライバの加振方向は、前記音響振動板の板面に対して垂直以外の方向であることを特徴とするパネルスピーカ。」(訂正前)とあるのを、 「かつ前記加振ドライバの加振方向は、前記音響振動板の板面に対して垂直以外かつ水平以外の方向であることを特徴とするパネルスピーカ。」(訂正後)と訂正する。 (b)訂正事項2 請求項5について 「かつ、前記音響振動板に設定した任意の中心線に対してその一方の側にのみ取り付けられていることを特徴とするパネルスピーカ。」(訂正前)とあるのを、 「かつ、前記音響振動板に設定した任意の中心線に対してその一方の側にのみ取り付けられているとともに前記複数の加振ドライバのうち、少なくとも一つの加振方向は、前記音響振動板の板面に対して垂直以外かつ水平以外の方向であることを特徴とするパネルスピーカ。」(訂正後)と訂正する。 (c)訂正事項3 請求項8(訂正前)を削除する。 (d)訂正事項4 請求項9(訂正前)を新たに請求項8(訂正後)とし、 「請求項5〜8のいずれかに記載のパネルスピーカ。」(訂正前)とあるのを、 「請求項5〜7のいずれかに記載のパネルスピーカ。」(訂正後)と訂正する。 (e)訂正事項5 請求項10(訂正前)を新たに請求項9(訂正後)とし、 「請求項5〜9のいずれかに記載のパネルスピーカ。」(訂正前)とあるのを、 「請求項5〜8のいずれかに記載のパネルスピーカ。」(訂正後)と訂正する。 (f)訂正事項6 請求項11(訂正前)を新たに請求項10(訂正後)とし、 「請求項5〜10のいずれかに記載のパネルスピーカ。」(訂正前)とあるのを、 「請求項5〜9のいずれかに記載のパネルスピーカ。」(訂正後)と訂正する。 (g)訂正事項7 請求項12(訂正前)を独立請求項に変更して新たに請求項11(訂正後)とし、 「少なくとも一つの前記加振ドライバの加振力を調節する手段が備えられていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のパネルスピーカ。」(訂正前)とあるのを、 「一枚の音響振動板と、この音響振動板を加振するための一つの加振ドラ イバとからなるパネルスピーカであって、前記一つの加振ドライバが、前記音響振動板の中央部分から離れた位置に取り付けられており、かつ前記加振ドライバの加振方向は、前記音響振動板の板面に対して垂直以外の方向であるとともに、前記加振ドライバの加振力を調節する手段が備えられていることを特徴とするパネルスピーカ。」(訂正後)と訂正する。 (h)訂正事項8 請求項12(訂正前)を独立請求項に変更して新たに請求項12(訂正後)とし、 「少なくとも一つの前記加振ドライバの加振力を調節する手段が備えられていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のパネルスピーカ。」(訂正前)とあるのを、 「一枚の音響振動板と、この音響振動板を加振するための複数の加振ドライバとからなるパネルスピーカであって、前記複数の加振ドライバの全てが、前記音響振動板の中心と前記音響振動板の緑を結ぶ線分の中点よりも外側に位置し、かつ、前記音響振動板に設定した任意の中心線に対してその一方の側にのみ取り付けられているとともに、少なくとも一つの前記加振ドライバの加振力を調節する手段が備えられていることを特徴とする パネルスピーカ。」(訂正後)と訂正する。 (i)訂正事項9 請求項13(訂正前)を独立請求項に変更して新たに請求項13(訂正後)とし、 「少なくとも一つの前記加振ドライバの加振方向を調節する手段が備えられていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載のパネルスピーカ。」(訂正前)とあるのを、 「一枚の音響振動板と、この音響振動板を加振するための一つの加振ドライバとからなるパネルスピーカであって、前記一つの加振ドライバが、前記音響振動板の中央部分から離れた位置に取り付けられており、かつ前記加振ドライバの加振方向は、前記音響振動板の板面に対して垂直以外の方向であるとともに、前記加振ドライバの加振方向を調節する手段が備えられていることを特徴とするパネルスピーカ。」(訂正後)と訂正する。 (j)訂正事項10 請求項13(訂正前)を独立請求項に変更して新たに請求項14(訂正後)とし、 「少なくとも一つの前記加振ドライバの加振方向を調節する手段が備えられていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のパネルスピーカ。」(訂正前)とあるのを、 「一枚の音響振動板と、この音響振動板を加振するための複数の加振ドライバとからなるパネルスピーカであって、前記複数の加振ドライバの全てが、前記音響振動板の中心と前記音響振動板の縁を結ぶ線分の中点よりも外側に位置し、かつ、前記音響振動板に設定した任意の中心線に対してその一方の側にのみ取り付けられているとともに、少なくとも一つの前記加振ドライバの加振方向を調節する手段が備えられていることを特徴とするパネルスピーカ。」(訂正後)と訂正する。 (k)訂正事項11 請求項14(訂正前)を独立請求項に変更して新たに請求項15(訂正後)とし、 「少なくとも一つの前記加振ドライバの加振波の位相を調節する手段が備えられていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のパネルスピーカ。」(訂正前)とあるのを、 「一枚の音響振動板と、この音響振動板を加振するための一つの加振ドライバとからなるパネルスピーカであって、前記一つの加振ドライバが、前記音響振動板の中央部分から離れた位置に取り付けられており、かつ前記加振ドライバの加振方向は、前記音響振動板の板面に対して垂直以外の方向であるとともに、前記加振ドライバの加振波の位相を調節する手段が備えられていることを特徴とするパネルスピーカ。」(訂正後)と訂正する。 (l)訂正事項12 請求項14(訂正前)を独立請求項に変更して新たに請求項16(訂正後)とし、 「少なくとも一つの前記加振ドライバの加振波の位相を調節する手段が備えられていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のパネルスピーカ。」(訂正前)とあるのを、 「一枚の音響振動板と、この音響振動板を加振するための複数の加振ドライバとからなるパネルスピーカであって、前記複数の加振ドライバの全てが、前記音響振動板の中心と前記音響振動板の縁を結ぶ線分の中点よりも外側に位置し、かつ、前記音響振動板に設定した任意の中心線に対してその一方の側にのみ取り付けられているとともに、少なくとも一つの前記加振ドライバの加振波の位相を調節する手段が備えられていることを特徴とするパネルスピーカ。」(訂正後)と訂正する。 (m)訂正事項13 請求項15(訂正前)を新たに請求項17(訂正後)とし、 「、請求項1〜14のいずれかに記載のパネルスピーカ。」(訂正前)とあるのを、 「請求項1〜16のいずれかに記載のパネルスピーカ。」(訂正後)と訂正する。 (n)訂正事項14 請求項16(訂正前)を新たに請求項18(訂正後)とし、 「請求項15に記載のパネルスピーカ。」(訂正前)とあるのを、 「請求項17に記載のパネルスピーカ。」(訂正後)と訂正する。 (2)訂正の適合性 (2-1)訂正の目的 (a)訂正事項1 請求項1(訂正前)の「垂直以外の方向」(すなわち、垂直以外の方向から水平方向まで)からその一部分である「水平方向」のみを除外することによりその範囲を「垂直以外かつ水平以外の方向」(すなわち、垂直以外の方向から水平方向以外の方向まで)に縮小するものである。 音響振動板の板面に対する加振方向としては、一般に、「垂直方向から水平方向まで」の90度の範囲において任意に設定することが可能であるところ、訂正事項1は、かかる角度範囲を縮小するものであり、特許請求の範囲の減縮に相当するものとして許可すべきものである。 (b)訂正事項2 請求項5(訂正前)に同請求項を引用する請求項8(訂正前)の構成を付加するとともに、「複数の加振ドライバ」(訂正前)につきその加振方向に関する構成を付加して、パネルスピーカの構成を限定するものである。特許請求の範囲の減縮に該当する。 (c)訂正事項3 請求項の削除である。特許請求の範囲の減縮に該当する。 (d)訂正事項4から訂正事項6まで 訂正事項3(請求項8の削除)による訂正に伴って生じる他の請求項との引用関係を整理するものである。特許請求の範囲の減縮および明りょうでない記載の釈明に該当する。なお、「前記複数加振ドライバ」を「前記複数の加振ドライバ」とする箇所は、誤記の訂正に該当する。 (e)訂正事項7および訂正事項8 請求項1(訂正前)から請求項11(訂正前)までの計11の請求項を引用する請求項12(訂正前)について、そのうち、請求項1(訂正前)および請求項5(訂正前)を引用する部分を、それぞれ、新たに請求項11(訂正後)および請求項12(訂正後)として書き換え、残りの引用する部分を削除する訂正である。特許請求の範囲の減縮に該当する。 訂正事項7において「少なくとも一つ」を削除するのは、「一つの加振ドライバ」に係る発明(請求項11(訂正後))に書き換えることに伴い記載を整理するものであり、明りょうでない記載の釈明に該当する。 (f)訂正事項9および訂正事項10 請求項1(訂正前)から請求項11(訂正前)までの計11の請求項を引用する請求項13(訂正前)について、そのうち、請求項1(訂正前)および請求項5(訂正前)を引用する部分を、それぞれ、新たに請求項13(訂正後)および請求項14(訂正後)として書き換え、残りの引用する部分を削除する訂正である。特許請求の範囲の減縮に該当する。 訂正事項9において「少なくとも一つ」を削除するのは、「一つの加振ドライバ」に係る発明(請求項13(訂正後))に書き換えることに伴い記載を整理するものであり、明りょうでない記載の釈明に該当する。 (g)訂正事項11および訂正事項12 請求項1(訂正前)から請求項11(訂正前)までの計11の請求項を引用する請求項14(訂正前)について、そのうち、請求項1(訂正前)および請求項5(訂正前)を引用する部分を、それぞれ、新たに請求項15(訂正後)および請求項16(訂正後)として書き換え、残りの引用する部分を削除する訂正である。特許請求の範囲の減縮に該当する。 (h)訂正事項13 訂正事項1から訂正事項12までによる各訂正に伴って生じる他の請求項との引用関係を整理するものである。特許請求の範囲の減縮および明りょうでない記載の釈明に該当する。なお、「特徴とする、請求項」を「特徴とする請求項」とする箇所は、誤記の訂正に該当する。 (i)訂正事項14 訂正事項13の訂正に伴って生じる請求項15(訂正前)との引用関係を整理するものである。特許請求の範囲の減縮および明りょうでない記載の釈明に該当する。 (2-2)訂正の範囲 (a)訂正事項1 訂正事項1は、請求項1(訂正前)について、同請求項に記載した事項から、その一部のみを、その記載表現を残したままで除外することを明示した請求項とする訂正であり、その除外の目的は、請求項1(訂正前)に係る発明が無効理由に係る先行技術と一部重複するために特許要件を失うおそれがあることに鑑み、重複する部分のみを除外することにより当該無効理由を回避することにあることが認められる。 このような除外を目的とする訂正は、特許明細書に記載した事項の範囲内においてする訂正として取り扱うべきものである。 (b)残る訂正事項についても、特許明細書に記載した事項の範囲内においてする訂正である。 (c)請求人の主張 請求人は、角度θが0に近いほどダウンサイジング効果が大きいことからすると(段落0031)、「水平方向(θ=0)」を含む発明しか記載されておらず、「水平方向(θ=0)」を除外した発明は記載されていないと主張する。 (c1)特許明細書には「図7には、加振方向に長い加振ドライバ2を、従来例のように音響振動板員ご垂直な方向に加振するように設置した場合と、音響振動板1に90度ではない角度 θ(0≦θ<90)を以て加振するように加振ドライバ2’を設けた場合の比較を示す。このような角度θを設けることで、後者のパネルスピーカの総合的な厚さ109’を、前者のパネルスピーカの総合的な厚さ109と比して小さくすることができる。角度θが0°に近いほどこの効果は大きくなり、パネルスピーカをダウンサイジングし、その収納性を向上することができる。」(段落0031)と記載されている。 この記載によれば、請求項1(訂正前)に係る発明は、加振ドライバが「加振方向に長い」場合において、「垂直以外の方向」(0≦θ<90)を以て加振するように設けたときは、厚さ109’を従来の「垂直方向」(θ=0)よりも小さくすることができるとの知見に立つものである(段落0013、図7)。すなわち、発明の本質は「垂直以外の方向」にあることが認められる。「水平方向」は、ダウンサイジング効果が最大になるとしても、「垂直以外の方向」を本質とする発明においては設計上の一設定値に過ぎないと言うべきである。 そうすると、「水平方向(θ=0)」を含む発明しか記載されておらず、「水平方向(θ=0)」を除外した発明は記載されていない、とは言えない。 (2-3)特許請求の範囲の拡張・変更 (a)上記各訂正事項は、いずれも、訂正の前後において、特許請求の範囲の記載された用語の意義の解釈、産業上の利用分野、解決しようとする課題及び効果に変更をもたらすものではない。いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 (b)請求人の主張 請求人は、式「0≦θ」は、「0を含み0より大きい」ことを規定する記載であり、式「0≦θ」から「=」を除外して「0<θ」とすることはできないので、「0<θ」とすることは特許請求の範囲の減縮ではなく特許請求の範囲の拡張に当たると主張する。 (b1)記号「≦」の意味につき請求人の主張は認められる。しかし、音響振動板の板面に対する加振方向を「垂直方向から水平方向まで」の90度の範囲において任意に設定することが可能であること、「垂直以外の方向」を本質とする本件においては「水平方向」は設計上の一設定値に過ぎないこと、以上は前記のとおりであるから、「0≦θ」を「θ=0」の場合と「0<θ」の場合とに分離して考えることに格別支障は認められない。本件の目的(ダウンサイジング)の範囲内において単に角度範囲を縮小するものであり、拡張には当たらない。 (2-4)独立特許要件 特許無効審判の請求がされていない請求項(訂正前)に由来する訂正後の請求項は、請求項11(訂正後)から請求項16(訂正後)までである。しかし、これら訂正後の各請求項は、訂正前の一請求項のうち他の請求項を引用する部分をそのまま独立請求項として書き換えたものであり、各請求項につきその内容自体を訂正(減縮)するものではない。上記各請求項(訂正後)については独立特許要件を要しない。 (2-5)小括(適合性) 以上、訂正事項1から訂正事項14までは、いずれも、特許法第134条の2第1項の規定、および、同条第5項で準用する特許法第126条第3項から第5項までの各規定(第5項にあっては読み替えて準用する)に適合する。 (3)まとめ 以上のとおりであるから、訂正を認める。 5.本件各発明 上記のとおり訂正を認める。 本件請求において、請求項1から請求項18までに係る発明は、それぞれ、訂正請求書に添付した訂正した明細書(訂正明細書)の特許請求の範囲の請求項1から請求項18までに記載された下記のとおりのものである。下線は訂正部分を示す。 記(訂正明細書の特許請求の範囲) 【請求項1】 一枚の音響振動板と、この音響振動板を加振するための一つの加振ドライバとからなるパネルスピーカであって、前記一つの加振ドライバが、前記音響振動板の中央部分から離れた位置に取り付けられており、かつ前記加振ドライバの加振方向は、前記音響振動板の板面に対して垂直以外かつ水平以外の方向であることを特徴とするパネルスピーカ。 【請求項2】 前記加振ドライバは、前記音響振動板の中心と前記音響振動板の緑を結ぶ線分の中点よりも外側に位置するように取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のパネルスピーカ。 【請求項3】 前記加振ドライバが、前記音響振動板の緑あるいはその近傍に取り付けられていることを特徴とする請求項2記載のパネルスピーカ。 【請求項4】 前記音響振動板はほぼ矩形の形状をしており、前記加振ドライバが、前記音響振動板の角あるいはその近傍に取り付けられていることを特徴とする請求項2記載のパネルスピーカ。 【請求項5】 一枚の音響振動板と、この音響振動板を加振するための複数の加振ドライバとからなるパネルスピーカであって、前記複数の加振ドライバの全てが、前記音響振動板の中心と前記音響振動板の緑を結ぶ線分の中点よりも外側に位置し、かつ、前記音響振動板に設定した任意の中心線に対してその一方の側にのみ取り付けられているとともに前記複数の加振ドライバのうち、少なくとも一つの加振方向は、前記音響振動板の板面に対して垂直以外かつ水平以外の方向であることを特徴とするパネルスピーカ。 【請求項6】 前記複数の加振ドライバのうち、少なくとも一つが前記音響振動板の縁あるいはその近傍に取り付けられていることを特徴とする請求項5記載のパネルスピーカ。 【請求項7】 前記音響振動板はほぼ矩形の形状をしており、前記複数の加振ドライバのうち、少なくとも一つが前記音響振動板の角あるいはその近傍に取り付けられていることを特徴とする請求項5記載のパネルスピーカ。 【請求項8】 前記複数の加振ドライバのうち、少なくとも一つの加振ドライバの加振力の大きさが、他の加振ドライバの加振力と異なることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のパネルスピーカ。 【請求項9】 前記複数の加振ドライバのうち、少なくとも一つの加振ドライバの加振方向が、他の加振ドライバの加振方向と異なることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載のパネルスピーカ。 【請求項10】 前記複数の加振ドライバのうち、少なくとも一つの加振ドライバの励振位相が、他の加振ドライバの励振位相と異なることを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載のパネルスピーカ。 【請求項11】 一枚の音響振動板と、この音響振動板を加振するための一つの加振ドライバとからなるパネルスピーカであって、前記一つの加振ドライバが、前記音響振動板の中央部分から離れた位置に取り付けられており、かつ前記加振ドライバの加振方向は、前記音響振動板の板面に対して垂直以外の方向であるとともに、前記加振ドライバの加振力を調節する手段が備えられていることを特徴とするパネルスピー力。 【請求項12】 一枚の音響振動板と、この音響振動板を加振するための複数の加振ドライバとからなるパネルスピーカであって、前記複数の加振ドライバの全てが、前記音響振動板の中心・と前記音響振動板の緑を結ぶ線分の中点よりも外側に位置し、かつ、前記音響振動板に設定した任意の中心線に対してその一方の側にのみ取り付けられているとともに、少なくとも一つの前記加振ドライバの加振力を調節する手段が備えられていることを特徴とするパネルスピーカ。 【請求項13】 一枚の音響振動板と、この音響振動板を加振するための一つの加振ドライバとからなるパネルスピーカであって、前記一つの加振ドライバが、前記音響振動板の中央部分から離れた位置に取り付けられており、かつ前記加振ドライバの加振方向は、前記音響振動板の板面に対して垂直以外の方向であるとともに、前記加振ドライバの加振方向を調節する手段が備えられていることを特徴とするパネルスピーカ。 【請求項14】 一枚の音響振動板と、この音響振動板を加振するための複数の加振ドライバとからなるパネルスピーカであって、前記複数の加振ドライバの全てが、前記音響振動板の中心と前記音響振動板の緑を結ぶ線分の中点よりも外側に位置し、かつ、前記音響振動板に設定した任意の中心線に対してその一方の側にのみ取り付けられているとともに、少なくとも一つの前記加振ドライバの加振方向を調節する手段が備えられていることを特徴とするパネルスピーカ。 【請求項15】 一枚の音響振動板と、この音響振動板を加振するための一つの加振ドライバとからなるパネルスピーカであって、前記一つの加振ドライバが、前記音響振動板の中央部分から離れた位置に取り付けられており、かつ前記加振ドライバの加振方向は、前記音響振動板の板面に対して垂直以外の方向であるとともに、前記加振ドライバの加振波の位相を調節する手段が備えられていることを特徴とするパネルスピーカ。 【請求項16】 一枚の音響振動板と、この音響振動板を加振するための複数の加振ドライバとからなるパネルスピーカであって、前記複数の加振ドライバの全てが、前記音響振動板の中心と前記音響振動板の緑を結ぶ線分の中点よりも外側に位置し、かつ、前記音響振動板に設定した任意の中心線に対してその一方の側にのみ取り付けられているとともに、少なくとも一つの前記加振ドライバの加振波の位相を調節する手段が備えられていることを特徴とするパネルスピーカ。 【請求項17】 前記音響振動板の少なくとも一部に、背景が透過可能な材料を用いたことを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載のパネルスピーカ。 【請求項18】 前記音響振動板の少なくとも一部に、光の反射を防止する反射防止膜を備えたことを特徴とする請求項17に記載のパネルスピーカ。 6.無効理由の検討(当審の判断) (1)先願明細書等の記載 先願明細書等には、甲第1号証によれば、以下のとおり記載されている。 (ア)「パネル形状ラウドスピーカーでは、・・・入力手段がパネル部材に機械動作を与えることにより起きる撓み波作用に依存する分布モード音響放射器として作動し、その結果撓み波作用の共振モードの励振が生じ、それが通常は空気である周囲の流体と結合することにより音響出力のための表面振動が発生する。」(段落0003) (イ)「本発明の用途に関して、適切な音響パネル部材又は少なくともその領域は、透明又は半透明であってもよい。代表的なパネル部材は一般的には多角形で実質的には矩形である場合が多い。複数のトランスデューサ手段は、少なくとも実質的に矩形のパネル部材に関しては、別々の端辺又はその近くにある。・・・トランスデューサ又は各トランスデューサは、パネル端辺に対して粗密波を送るように、及び/又はパネル端辺に沿って横撓み波を送る目的で横方向にパネル端辺を撓ませるように、及び/又はパネルコーナを横切ってねじりを与えるように、及び/又はパネルの局部域に線形撓みを作り出すように配置できる。」(段落0008) (ウ)「図1に示す分布モード音響パネルラウドスピーカ10では、WO97/09842号に説明されている通り、パネル部材11の通常最適な中心に近い(しかし中心から外れている)位置に駆動手段のトランスデューサ12を備えている。」(段落0026) (エ)「ラウドスピーカーの設計の最適化は、パネルの緑部又は外周に着眼した図2に示す4つのタイプの励振から選択され、それぞれのタイプは以下のようにT1-T4に分類される。T1-パネル部材11の・・端辺に粗密波を送るものであり、これは慣性作用又は基準面関連駆動トランスデューサにより行なわれる。T2-パネル部材11の・・端辺に沿って横撓み波を送るものであるが、撓み作用駆動トランスデューサを使用してパネル端辺を横方向に撓ませることにより行なわれる。T3-端辺18Aと18Bの間のコーナを横切って・・パネル部材11にねじれを与えるものであるが、撓み型か又は慣性型駆動トランスデューサの何れかの作用により行なわれる。T4-端辺18Bに示されるように、パネル部材11の端辺に線形撓みを直接生成するものであるが、慣性作用駆動トランスデューサにより接点の局所域に行なわれる。」(段落0027) (オ)「図3は、複合パネル11の断片図であり、・・・上述のT1-T4の4タイプの端辺/周縁駆動用の駆動トランスデューサ/励振器31-34と共に示している。実用に際しては、・・・パネル上で同時に使用される駆動タイプは4通りより少なくてもよい。つまり、最適化されたパネルは、如何なる1つまたはそれ以上の異なる駆動タイプによって駆動できるようになっている。」(段落0028) (カ)「1つより多いオーディオチャネルを、例えば複数の駆動トランスデューサを介して対象のパネル30に適用することが考えられる。このマルチチャネルの可能性は、音質を最適化するため、及び/又は音響放射特性を制御するため、及び/又は感知されるチャネル間セパレーション及び空間効果を改良するために、信号処理することにより高まる。」(段落0035) (キ)図2および図3によれば、1つのトランスデューサT1(31)の加振方向が、他のトランスデューサT2〜T4(32〜34)の加振方向と異なる構成が見てとれる。 (ク)「トランスデューサ間の及び/又は電気信号源に伴う不要な相互作用を低減し、インボードの好適な位置PLに対する図5の好ましい駆動トランスデューサ位置CP1-CP4に合わせるため、差動遅延、フィルタリング等、何れであれ希望される信号条件を適用してもよい。」(段落0036) (ケ)「この位置は、同一パネル部材の端辺に2個以上のトランスデューサ手段を配して使用する場合を考慮する際には更により明白になる」(段落0059) (コ)「透明パネルは、反射を低減し及び/又は耐引っかき性を改善するための光学的コーティング、或いは単に耐引っかきコーティングを施すことによっても価値を高めることができる。」(段落0033) (2)本件各発明について (2-1)先願明細書等に記載された励振方向 先願明細書等には、励振の方法として4つのタイプ(T1〜T4)を採用し、それらの中から選択することが記載されている(図2および図3)。 ところで、タイプ(T1)はパネル部材11の板面に対して「水平方向」に加振するものであり、タイプ(T2〜T4)はパネル部材11の板面に対して「垂直方向」に加振するものであることにつき、当事者間に争いはない。 当審も、タイプ(T1〜T4)の加振方向につき上記のとおりに認定をする。 (2-2)請求項1 (a)請求項1に係る発明は、加振方向が「垂直以外かつ水平以外の方向」であることをその要件とする。しかし、先願明細書等には、加振方向につき、「垂直以外かつ水平以外の方向」であることは記載されていない。したがって、請求項1に係る発明は、先願明細書等に記載された発明と同一ではない。 (b)請求人の主張 請求人は、請求項1に係る発明の「水平以外の方向」と先願明細書の「水平方向」とは「限りなく0に近い角度」において重複するから実質的に同一であるとの趣旨の主張をする。 タイプT1はパネル端辺に対して縦方向に粗密波を送るものであり(横撓み波を作り出すものではない)、概念上、「実質的に0とみて差し支えないような角度(0から極めて僅かに外れた範囲の角度)」は排除されている。製造上、トランスデューサ31を正確に「水平方向」に取り付けることはできないという事情があるとしても、技術的思想としては峻別すべきものである。当を得ない。 (2-3)請求項2から請求項4まで 請求項2から請求項4までは請求項1を引用する請求項であるところ、請求項1に係る発明が先願明細書等に記載された発明と同一ではないことは前記のとおりであるから、請求項2から請求項4までに係る発明のいずれも、先願明細書等に記載された発明と同一ではない。 (2-4)請求項5 請求項5に係る発明は、加振方向が「垂直以外かつ水平以外の方向」であることをその要件とする。したがって、請求項1に係る発明と同様に、先願明細書等に記載された発明と同一ではない。 (2-5)請求項6から請求項10まで 請求項6から請求項10までは請求項5を引用する請求項であるところ、請求項5に係る発明が先願明細書等に記載された発明と同一ではないことは前記のとおりであるから、請求項6から請求項10までに係る発明のいずれも、先願明細書等に記載された発明と同一ではない。 (2-6)請求項17および請求項18 請求項17および請求項18は、請求項1または請求項5を引用する請求項であるところ、請求項1または請求項5に係る発明が先願明細書等に記載された発明と同一ではないことは前記のとおりであるから、請求項17および請求項18に係る発明のいずれも、先願明細書等に記載された発明と同一ではない。 (3)むすび 以上のとおり、訂正後の請求項に係る発明のいずれも、先願明細書等に記載された発明と同一ではないから、特許法第29条の2の規定には該当しない。従って、本件各特許は、いずれも、特許法第123条第1項第2号の規定には該当しない。 7.むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許を無効とすることができない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 パネルスピーカ (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 一枚の音響振動板と、この音響振動板を加振するための一つの加振ドライバとからなるパネルスピーカであって、前記一つの加振ドライバが、前記音響振動板の中央部分から離れた位置に取り付けられており、かつ前記加振ドライバの加振方向は、前記音響振動板の板面に対して垂直以外かつ水平以外の方向であることを特徴とするパネルスピーカ。 【請求項2】 前記加振ドライバは、前記音響振動板の中心と前記音響振動板の縁を結ぶ線分の中点よりも外側に位置するように取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のパネルスピーカ。 【請求項3】 前記加振ドライバが、前記音響振動板の縁あるいはその近傍に取り付けられていることを特徴とする請求項2記載のパネルスピーカ。 【請求項4】 前記音響振動板はほぼ矩形の形状をしており、前記加振ドライバが、前記音響振動板の角あるいはその近傍に取り付けられていることを特徴とする請求項2記載のパネルスピーカ。 【請求項5】 一枚の音響振動板と、この音響振動板を加振するための複数の加振ドライバとからなるパネルスピーカであって、前記複数の加振ドライバの全てが、前記音響振動板の中心と前記音響振動板の縁を結ぶ線分の中点よりも外側に位置し、かつ、前記音響振動板に設定した任意の中心線に対してその一方の側にのみ取り付けられているとともに前記複数の加振ドライバのうち、少なくとも一つの加振方向は、前記音響振動板の板面に対して垂直以外かつ水平以外の方向であることを特徴とするパネルスピーカ。 【請求項6】 前記複数の加振ドライバのうち、少なくとも一つが前記音響振動板の縁あるいはその近傍に取り付けられていることを特徴とする請求項5記載のパネルスピーカ。 【請求項7】 前記音響振動板はほぼ矩形の形状をしており、前記複数の加振ドライバのうち、少なくとも一つが前記音響振動板の角あるいはその近傍に取り付けられていることを特徴とする請求項5記載のパネルスピーカ。 【請求項8】 前記複数の加振ドライバのうち、少なくとも一つの加振ドライバの加振力の大きさが、他の加振ドライバの加振力と異なることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のパネルスピーカ。 【請求項9】 前記複数の加振ドライバのうち、少なくとも一つの加振ドライバの加振方向が、他の加振ドライバの加振方向と異なることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載のパネルスピーカ。 【請求項10】 前記複数の加振ドライバのうち、少なくとも一つの加振ドライバの励振位相が、他の加振ドライバの励振位相と異なることを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載のパネルスピーカ。 【請求項11】 一枚の音響振動板と、この音響振動板を加振するための一つの加振ドライバとからなるパネルスピーカであって、前記一つの加振ドライバが、前記音響振動板の中央部分から離れた位置に取り付けられており、かつ前記加振ドライバの加振方向は、前記音響振動板の板面に対して垂直以外の方向であるとともに、前記加振ドライバの加振力を調節する手段が備えられていることを特徴とするパネルスピーカ。 【請求項12】 一枚の音響振動板と、この音響振動板を加振するための複数の加振ドライバとからなるパネルスピーカであって、前記複数の加振ドライバの全てが、前記音響振動板の中心と前記音響振動板の縁を結ぶ線分の中点よりも外側に位置し、かつ、前記音響振動板に設定した任意の中心線に対してその一方の側にのみ取り付けられているとともに、少なくとも一つの前記加振ドライバの加振力を調節する手段が備えられていることを特徴とするパネルスピーカ。 【請求項13】 一枚の音響振動板と、この音響振動板を加振するための一つの加振ドライバとからなるパネルスピーカであって、前記一つの加振ドライバが、前記音響振動板の中央部分から離れた位置に取り付けられており、かつ前記加振ドライバの加振方向は、前記音響振動板の板面に対して垂直以外の方向であるとともに、前記加振ドライバの加振方向を調節する手段が備えられていることを特徴とするパネルスピーカ。 【請求項14】 一枚の音響振動板と、この音響振動板を加振するための複数の加振ドライバとからなるパネルスピーカであって、前記複数の加振ドライバの全てが、前記音響振動板の中心と前記音響振動板の縁を結ぶ線分の中点よりも外側に位置し、かつ、前記音響振動板に設定した任意の中心線に対してその一方の側にのみ取り付けられているとともに、少なくとも一つの前記加振ドライバの加振方向を調節する手段が備えられていることを特徴とするパネルスピーカ。 【請求項15】 一枚の音響振動板と、この音響振動板を加振するための一つの加振ドライバとからなるパネルスピーカであって、前記一つの加振ドライバが、前記音響振動板の中央部分から離れた位置に取り付けられており、かつ前記加振ドライバの加振方向は、前記音響振動板の板面に対して垂直以外の方向であるとともに、前記加振ドライバの加振波の位相を調節する手段が備えられていることを特徴とするパネルスピーカ。 【請求項16】 一枚の音響振動板と、この音響振動板を加振するための複数の加振ドライバとからなるパネルスピーカであって、前記複数の加振ドライバの全てが、前記音響振動板の中心と前記音響振動板の縁を結ぶ線分の中点よりも外側に位置し、かつ、前記音響振動板に設定した任意の中心線に対してその一方の側にのみ取り付けられているとともに、少なくとも一つの前記加振ドライバの加振波の位相を調節する手段が備えられていることを特徴とするパネルスピーカ。 【請求項17】 前記音響振動板の少なくとも一部に、背景が透過可能な材料を用いたことを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載のパネルスピーカ。 【請求項18】 前記音響振動板の少なくとも一部に、光の反射を防止する反射防止膜を備えたことを特徴とする請求項17に記載のパネルスピーカ。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はスピーカに関し、薄型で、壁掛け、写真立て、車載用をはじめとする、様々な用途に適用可能なパネルスピーカに関する。 【0002】 【従来の技術】この種のパネルスピーカは、パネルとして兼用される音響振動板を、加振ドライバにて振動させることにより音声を出力するような構成となっている。加振ドライバは、例えば、特開昭58-210800号公報に記載されているように、音響振動板のほぼ中央部に、音響振動板に垂直な方向に加振するように取り付けられる。図20は、このような従来のパネルスピーカの概略構成図を示している。図において、1は音響振動板、2は加振ドライバである。 【0003】図24および図25は、音響振動板1の中央部分を加振ドライバ2により、5kHz並びに15kHzで加振した場合の、音響振動板の振動状態のシミュレーション結果例である。図中、矢印は加振ドライバによる加振方向を示し、音響振動板の変形量は誇張して表示されている。 【0004】さらに、特開平4-150298号公報には、音響振動板のほぼ中央部に一つの加振ドライバを設けたりあるいは音響振動板の中央部付近のほぼ対称な位置に複数の加振ドライバを設け、パネルスピーカの薄さを生かして額縁に適用する技術が開示されており、写真スタンドや額縁の裏面の押圧板をパネルスピーカとすることで、部屋の居住空間を狭めることなく、スピーカシステムを構築することを可能にしている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このように音響振動板の中央付近に加振ドライバがある場合、加振ドライバによる無駄な空間が多くなり、パネルスピーカを用いた機器のダウンサイジングの妨げとなっている。 【0006】パネルスピーカの厚さは、音響振動板の中央付近、或いは、音響振動板全体にわたり、音響振動板の厚さと加振ドライバの厚さを加えた厚さとなる。従って、このパネルスピーカを隙間等に収納するような場合、上記構造ではこの隙間容積を過大に取る必要が生ずる。 【0007】例えば、図21に示すように、このパネルスピーカを矢印111方向に移動させて収納する場合、仮に、音響振動板1を単体で収納するのであれば、マージンを考慮しない場合には、音響振動板1の厚さ19で音響振動板1の幅18を持った隙間を設ければ良い。しかし、この音響振動板1の中央付近に加振ドライバ2がある場合、上記隙間を、更に音響振動板1の端面から加振ドライバ2を含む加振ドライバ2の端面までの幅27の部分に於いて、加振ドライバ2の厚さ29だけ拡張しなければならない。即ち、幅方向だけを考えた場合、音響振動板1の端面から加振ドライバ2を含まない加振ドライバ2の端面までの幅27’の領域が、加振ドライバ2の厚さ29だけ無駄な空間になってしまう。 【0008】また、図22に示すように、パネルスピーカを2枚重ねて収納するような場合、その収納スペースの厚さ209は、音響振動板1および加振ドライバ2から構成されるパネルスピーカ100の厚さ109と、音響振動板1’および加振ドライバ2’から構成される第2のパネルスピーカ100’の厚さ109’の和となる。即ち、収納スペースとしての厚さは、音響振動板2枚分の厚さと、加振ドライバ2つ分の厚さの和となり、無駄な空間が多くなる。 【0009】なお、この厚さを減少すべく、両パネルスピーカ100、100’の加振ドライバ2、2’が、互いに重ならないように設置した例を図23に示す。総合的な厚さ209は、図22に示した上記例と比して加振ドライバひとつ分薄くなっているが、逆に全体の高さ110が、上記例と比して増大する。よって、パネルスピーカの薄型である利点を生かしきれていない。 【0010】更に、従来構造では、加振ドライバを音響振動板の中央付近に設置しているため、音響振動板には不透過材料を用いて、加振ドライバを視界から遮蔽しており、よって、これら従来構造は、パネルスピーカの適用範囲を狭めると共に、パネルスピーカや、その適用機器のダウンサイジングの妨げとなっていた。 【0011】本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、音響振動板に対する加振ドライバの取り付け位置を変更することにより、パネルスピーカ収容容積の減少を図ること、あるいはパネルスピーカ自体、或いはその適用機器をダウンサイジングすることにある。 【0012】本発明の他の目的は、音響振動板に透明な材料を使用することを容易にし、パネルスピーカの適用範囲を拡張することにある。 【0013】 【課題を解決するための手段】本発明は、一枚の音響振動板と、この音響振動板を加振するための一つの加振ドライバとからなるパネルスピーカにおいて、前記加振ドライバが、前記音響振動板の中央部分から離れた位置に取り付けられていることを特徴とするものである。より好ましくは、前記加振ドライバは、前記音響振動板の中心とその縁を結ぶ線分の中点よりも外側に位置するように取り付けられる。 【0014】前記加振ドライバは、前記音響振動板の縁、角、あるいはその近傍に取り付けることができる。また、前記加振ドライバの加振方向は、前記音響振動板の板面に垂直以外の方向であってもよい。 【0015】また、本発明は、一枚の音響振動板と、この音響振動板を加振するための複数の加振ドライバとからなるパネルスピーカにおいて、前記複数の加振ドライバの全てが、前記音響振動板の中心と前記音響振動板の縁を結ぶ線分の中点よりも外側に位置するように取り付けられていることを特徴とするものである。 【0016】前記複数加振ドライバのうち、少なくともひとつの加振ドライバは前記音響振動板の縁、角、あるいはその近傍に取り付けることができる。また、前記加振ドライバの加振方向は、前記音響振動板の板面に垂直以外の方向であってもよい。 【0017】また、前記複数加振ドライバのうち、少なくともひとつの加振ドライバの加振力の大きさ、加振方向あるいは加振波の位相は、他の加振ドライバの加振力大きさ、加振方向あるいは加振波の位相と異ならせることができる。 【0018】また、本発明は、前記パネルスピーカにて、少なくともひとつの加振ドライバの加振力、加振方向あるいは加振波の位相を、例えば外的要因に応じて調節する手段を備えたことを特徴とする。 【0019】また、本発明は、前記音響振動板の一部に、音響振動板の背景がある程度透過できるような材料あるいは光の反射を防止する反射防止膜を有する板を用いたことを特徴とする。 【0020】本発明のパネルスピーカに於いては、加振ドライバを音響振動板の中央部から離れた位置、更には、音響振動板の縁や角に設けることで、パネルスピーカを薄型化、或いはダウンサイジングし、パネルスピーカ自体、或いはその適用機器をより使い易いものとすることが可能となる。 【0021】更に音響振動板に透過材料を用いた場合、加振ドライバに妨げられることなく、音響振動板を透過してその背景を鑑賞することを可能とし、額縁スピーカでは、写真や絵画の前面にある透明な保護膜を音響振動板とすることが可能となる。また、反射防止膜を備えることにより、ディスプレイやそのシールド、窓などに、パネルスピーカの適用範囲を拡張することもできる。 【0022】 【発明の実施の形態】図1は、本発明の第1の実施の形態を示すパネルスピーカの概略構成図である。図1に於いて、1は音響振動板、2は加振ドライバである。本実施の形態においては、加振ドライバ2は音響振動板1の中央から外れた位置に設置される。 【0023】図2は、図1のパネルスピーカを矢印111方向から隙間に収納する際の必要容積を説明するための概略図である。図20にて示した、加振ドライバ2が中央近傍にある従来構造の場合と比して、音響振動板1の端面から加振ドライバ2を含む加振ドライバ2の端面までの幅27が小さくなり、その結果収納容積を縮小することが可能となる。 【0024】さらに、図1に示すように、加振ドライバ2を、音響振動板1の中心とその縁を結ぶ線分の中点よりも外側に位置するように取り付ければ、収納容積の縮小効果とともに、音響振動板の中央部分に広い空間を確保することができるので、その空間を利用したパネルスピーカ機器のダウンサイジング化、あるいは音響振動板1を他の用途と兼用させる等その適用範囲を拡げることができる。 【0025】また、パネルスピーカを2枚重ねるような場合、図3に示すように、音響振動板1および加振ドライバ2から構成される第1のパネルスピーカ100と、音響振動板1’および加振ドライバ2’から構成される第2のパネルスピーカ100’は、それぞれの加振ドライバ2および2’の位置が一致しないので、両パネルスピーカを重ねてもその高さ110は増加することがなく、また、その厚さは音響振動板2枚分の厚さと、加振ドライバ1つ分の厚さの和とすることができ、パネルスピーカをダウンサイジングし、その収納性を向上することができる。 【0026】図4は、本発明の第2の実施の形態を示すパネルスピーカの概略構成図である。図4に於いて、1は音響振動板、2は加振ドライバである。本実施の形態に於いては、加振ドライバ2は、音響振動板1の縁の部分に設置される。 【0027】これにより、前述の図2に於ける音響振動板1の端面から加振ドライバ2を含む加振ドライバ2の端面までの幅27は第1の実施の形態よりも更に小さくなり、収納容積も、より縮小できる。更に、額縁スピーカとして実施するような場合には、加振ドライバ2を額縁フレームの内部に設置することも可能となる。よって、額縁スピーカの厚さを更に薄くし、居住空間をより広く保つことが可能となる。 【0028】図5は、本発明の第3の実施の形態を示すパネルスピーカの概略構成図である。図5に於いて、1は音響振動板、2は加振ドライバである。本実施の形態に於いては、加振ドライバ2は、音響振動板1の角の部分に設置される。 【0029】これにより、前述の図2に於ける音響振動板1の場面から加振ドライバ2を含む加振ドライバ2の端面までの幅27は第1の実施の形態よりも更に小さくなり、収納容積も、より縮小できる。更に、額縁スピーカを実施するような際には、加振ドライバ2を額縁内部に設置することも可能となる。よって、額縁スピーカの厚さを更に薄くし、居住空間をより広く保つことが可能となる。 【0030】図6は、本発明の第4の実施の形態を示すパネルスピーカの概略構成図である。図6に於いて、1は音響振動板、2は加振ドライバである。本実施の形態に於いては、加振ドライバ2は、音響振動板1の角位置に、音響振動板に垂直な方向とは異なる方向に加振するように設置される。 【0031】図7には、加振方向に長い加振ドライバ2を、従来例のように音響振動板1に垂直な方向に加振するように設置した場合と、音響振動板1’に90度ではない角度θ(0≦θ<90)を以て加振するように加振ドライバ2’を設けた場合の比較を示す。このような角度θを設けることで、後者のパネルスピーカの総合的な厚さ109’を、前者のパネルスピーカの総合的な厚さ109と比して小さくすることができる。角度θが0に近いほどこの効果は大きくなり、パネルスピーカをダウンサイジングし、その収納性を向上することができる。 【0032】図8および図9は、本発明に係わるパネルスピーカの第3実施の形態(図5)に於いて、音響振動板1の角の位置を5kHz並びに15kHzで加振した場合の、音響振動板1の振動状態のシミュレーション結果をそれぞれ示している。図中、矢印は加振ドライバによる加振方向を示ししており、また音響振動板の変形量は誇張して表示されている。 【0033】本発明の第3の実施の形態に於ける音響振動板1の振動状態を、図23及び図24の従来パネルスピーカの振動状態と比較してみると、15kHz時には互いに近似した状態で振動しているのに対し、5kHz時には、両者は異なった様相を示している。即ち、第3の実施の形態にて生じる音声出力は周波数によって、従来のパネル中央への加振時とは多少異なる音声出力となる。 【0034】図10は、本発明の第5の実施の形態を示すパネルスピーカの概略構成図であり、上記振動状態をより従来のパネルスピーカに近づけるために音響振動板の他の角に第2の加振ドライバが設置される。図10に於いて、1は音響振動板、2は加振ドライバ、2’は第2の加振ドライバである。 【0035】図11および図12は、本実施の形態での、音響振動板の異なる二カ所の角位置をともに、5kHzおよび15kHzで加振した場合の音響振動板の振動状態のシミュレーション結果をそれぞれ示している。図中、矢印は加振ドライバによる加振方向を示し、音響振動板の変形量は誇張して表示されている。 【0036】5kHz時の音響振動板の振動状態は、部分的にではあるが、図24の従来例に近い結果となり、また、15kHzの場合は、第3の実施の形態と同様、図25の従来例に近い状態で振動している。よって、本実施の形態により、本発明の第3の実施の形態での15kHz時振動状態の従来構造との相似性を保ったまま、第3の実施の形態での5kHz時の従来構造との差異を縮小することが可能となり、第3の実施の形態での効果を保ったまま、第3実施の形態より出力音声を向上することができる。 【0037】図13は、本発明の第6の実施の形態を示すパネルスピーカの概略構成図である。図13に於いて、1は音響振動板、2は加振ドライバ、22は前記加振ドライバより加振力の小さい第2の加振ドライバである。本実施の形態に於いては、音響振動板1の異なる2つの角位置に、加振ドライバ2および加振ドライバ2より小さい加振力にて加振する加振ドライバ22がそれぞれ設置される。 【0038】図14および図15は、本実施の形態での、音響振動板の異なる二カ所の角位置をそれぞれ異なる加振力を以て、ともに5kHz並びに15kHzで加振した場合の音響振動板の振動状態のシミュレーション結果をそれぞれ示している。図中、矢印は加振ドライバによる加振方向を示し、音響振動板の変形量は誇張して表示されている。このシミュレーション結果によれば、5kHz時の音響振動板の振動状態は、第5実施の形態よりも更に図24の従来例に近い結果となり、また、15kHzの場合は、第5実施の形態と同様、図25の従来例に近い状態で振動していることがわかる。 【0039】本実施の形態によれば、本発明の第3および第5の実施の形態での15kHz時振動状態の従来構造との相似性を保ったまま、第5の実施の形態での5kHz時の従来構造との差異を縮小することが可能となり、第5の実施の形態での効果を保ったまま、第5実施の形態より更に出力音声を向上することができる。 【0040】なお、本実施の形態において、15kHzを含む周波数領域では、加振ドライバ2のみを動作させ、5kHzを含む周波数領域では、加振ドライバ2および22を動作させても同様の効果を得ることができる。その場合には、出力音声のレベルを保ったまま、更に消費電力を節約することもできる。 【0041】図16は、本発明の第7の実施の形態を示すパネルスピーカの概略構成図である。図16に於いて、1は音響振動板、2は加振ドライバ、2’は2とは加振方向および加振力の異なる第2の加振ドライバである。本実施の形態に於いては、図に示すように、音響振動板1の異なる二つの角位置に加振ドライバ2および2’が互いに加振方向をかえてそれぞれ設置される。このような構成としても、上記第5及び第6の実施の形態と同様に音声出力の向上効果が得られる。 【0042】図17は、本発明の第8の実施の形態を示すパネルスピーカの概略構成図である。図17に於いて、1は音響振動板、2は加振ドライバ、2’は音響振動板1に対して加振ドライバ2とは反対側の面から加振をする第2の加振ドライバである。本実施の形態は、設計上の理由から、2つの加振ドライバ2、2’を音響振動板1の両面に設置する必要が生じた場合の例を示すもので、加振ドライバ2’の励振位相を加振ドライバ2とは逆位相とすることにより、本発明の第5および第6の実施の形態と同様の効果が得られる。 【0043】なお、上記の各実施の形態では、加振ドライバは一つまたは二つの場合について説明したが、加振ドライバを3個以上取り付けてもよい。図18は、音響振動板1に、加振ドライバを3以上取り付けた本発明の第9の実施の形態を示している。この場合、前記複数の加振ドライバの全てを、音響振動板1の中心とその縁を結ぶ線分の中点よりも外側に位置するように取り付ける。このような構成とすることにより、音響振動板1の中央部分に広い空間を確保することができ、この空間を他の用途に利用することができる。 【0044】図19は、加振ドライバを3個以上個取り付けた本発明の第10の実施の形態を示している。本実施の形態では、複数の加振ドライバの全てを、音響振動板1の中心とその縁を結ぶ線分の中点よりも外側に位置させ、かつ、前記音響振動板に設定した任意の中心線に対してその一方の側にのみ取り付ける。本実施の形態によれば、上記第9の実施の形態の効果に加えて、さらにその容積の縮小化が可能である。 【0045】また、既述したように、加振ドライバによる加振位置が音響振動板の中央から離れることにより、加振位置や加振方向、加振周波数などの組み合わせによって、音響振動板は、従来構造の時とは異なる振動状態を示すようになる。 【0046】そこで、本発明の第11の実施の形態は、上記各実施の形態のパネルスピーカに設置されている加振ドライバに対し、そのうちの少なくともひとつの加振ドライバの加振力、加振方向あるいは加振波の位相を、例えば外的要因に応じて適宜最適に調節することにより、出力音声の質の向上を実現する手段を備えたことを特徴とする。 【0047】上記調節手段は、例えばパネルスピーカから出力される周波数特性が最適となるように動的に制御するフィードバック手段を設けて構成してもよい。 【0048】また、本発明の各実施の形態にて既述したように、本発明では、加振ドライバが音響振動板の中央部分には配置されないので、音響振動板の中央部分に空間が生ずるので、この空間を有効に活用することにより、パネルスピーカ適用機器のダウンサイジング化が可能となり、また、音響振動板として適用可能な範囲が拡がり、使用可能な材料の種類も拡張することができる。 【0049】そこで、本発明の第12の実施の形態は、上記各実施の形態のパネルスピーカにおける音響振動板1として、光を透過する板あるいは透明板を用いることを特徴とする。 【0050】このような構成とすることにより、パネルスピーカを、額縁スピーカに於ける透明な保護膜や、ディスプレイやそのシールド、窓などに容易に適用することが可能となる。また、その表面に光反射膜を設けることにより、ディスプレイとしての機能も、より向上させることができる。 【0051】なお、本発明は上記各実施例に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内において、各実施例は適宜変更され得ることは明らかである。 【0052】 【発明の効果】本発明のパネルスピーカは、加振ドライバを音響振動板の中央部から離れた位置、更には、音響振動板の縁や角に設けているので、パネルスピーカを薄型化、或いはダウンサイジングし、パネルスピーカ自体、或いはその適用機器をより使い易いものとすることが可能となる。 【0053】更に音響振動板に透過材料を用いた場合、加振ドライバに妨げられることなく、音響振動板を透過してその背景を鑑賞することを可能とし、額縁スピーカでは、写真や絵画の前面のある透明な保護膜を音響振動板とすることが可能となる。また、ディスプレイやそのシールド、窓などへ、パネルスピーカの適用範囲を拡張することもできる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明に係わるパネルスピーカの第1の実施の形態を示す概略構成図である。 【図2】図1のパネルスピーカの厚さの概念を説明する概略構成図である。 【図3】図1のパネルスピーカを2つ並べた厚さを説明する概略構成図である。 【図4】本発明に係わるパネルスピーカの第2の実施の形態を示す概略構成図である。 【図5】本発明に係わるパネルスピーカの第3の実施の形態を示す概略構成図である。 【図6】本発明に係わるパネルスピーカの第4の実施の形態を示す概略構成図である。 【図7】図6のパネルスピーカの厚さの概念を説明する概略構成図である。 【図8】図5のパネルスピーカの5kHz時の音響振動板の振動状態を示す図である。 【図9】図5のパネルスピーカの15kHz時の音響振動板の振動状態を示す図である。 【図10】本発明に係わるパネルスピーカの第5の実施の形態を示す概略構成図である。 【図11】図10のパネルスピーカの5kHz時の音響振動板の振動状態を示す図である。 【図12】図10のパネルスピーカの15kHz時の音響振動板の振動状態を示す図である。 【図13】本発明に係わるパネルスピーカの第6の実施の形態を示す概略構成図である。 【図14】図13のパネルスピーカの5kHz時の音響振動板の振動状態を示す図である。 【図15】図13のパネルスピーカの15kHz時の音響振動板の振動状態を示す図である。 【図16】本発明に係わるパネルスピーカの第7の実施の形態を示す概略構成図である。 【図17】本発明に係わるパネルスピーカの第8の実施の形態を示す概略構成図である。 【図18】本発明に係わるパネルスピーカの第9の実施の形態を示す概略構成図である。 【図19】本発明に係わるパネルスピーカの第10の実施の形態を示す概略構成図である。 【図20】従来のパネルスピーカの構成を示す概略構成図である。 【図21】従来のパネルスピーカの厚さの概念を説明する概略構成図である。 【図22】従来のパネルスピーカを2つ並べた厚さを説明する概略構成図である。 【図23】従来のパネルスピーカを他の方針で2つ並べた厚さを説明する概略構成図である。 【図24】図20のパネルスピーカの5kHz時の音響振動板の振動状態を示す図である。 【図25】図20のパネルスピーカの15kHz時の音響振動板の振動状態を示す図である。 【符号の説明】 1,1’ 音響振動板 2,2’ 加振ドライバ 18 音響振動板の幅 19 音響振動板の厚さ 22 異なる力で加振する加振ドライバ 27 音響振動板の端面から加振ドライバを含む加振ドライバ端面までの幅 27’ 音響振動板の端面から加振ドライバを含まない加振ドライバ端面までの幅 29 加振ドライバの厚さ 109,109’ パネルスピーカの厚さ 100,100’ パネルスピーカ 110,110’ パネルスピーカの高さ 111 パネルスピーカの収納方向 209 ふたつのパネルスピーカを並べて収納する際の総合的な厚さ |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2006-02-02 |
結審通知日 | 2006-02-08 |
審決日 | 2006-02-21 |
出願番号 | 特願平11-168887 |
審決分類 |
P
1
123・
121-
YA
(H04R)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 板橋 通孝、大野 弘 |
特許庁審判長 |
新宮 佳典 |
特許庁審判官 |
清水 正一 堀井 啓明 |
登録日 | 2004-01-16 |
登録番号 | 特許第3512087号(P3512087) |
発明の名称 | パネルスピーカ |
代理人 | 村社 厚夫 |
代理人 | 鈴木 康夫 |
代理人 | 松尾 和子 |
代理人 | 鈴木 康夫 |
代理人 | 臼田 保伸 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 竹内 英人 |
代理人 | 臼田 保伸 |